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競走馬と,馬を愛する人たちの世界を描く。「Winning Post 8 2018」プロデューサーインタビュー
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印刷2017/12/16 00:00

インタビュー

競走馬と,馬を愛する人たちの世界を描く。「Winning Post 8 2018」プロデューサーインタビュー

画像集 No.005のサムネイル画像 / 競走馬と,馬を愛する人たちの世界を描く。「Winning Post 8 2018」プロデューサーインタビュー
 コーエーテクモゲームスが2018年3月15日に発売予定の「Winning Post 8 2018」PC / PS4 / PS Vita / Nintendo Switch。以下,WP8 2018)。2014年から最新のデータや新システムを導入して定期的にリリースされているシリーズの最新作だが,本作では競走馬の育成に大きく関わる「調教」のシステムを一新し,いつにも増して進化しているという。

 4Gamerでは,プロデューサーを務める山口英久氏に,本作にかける想いを聞いてみた。


「馬が日々成長していく喜び」を狙った調教システム


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。WP8 2018はシリーズ恒例となっている3月の発売ですが,今回は「Winning Post 8 2017」Nintendo Switch版が9月に発売されたばかりですね。開発状況はいかがでしょうか。

Winning Post 8 2018プロデューサー 山口英久氏
画像集 No.001のサムネイル画像 / 競走馬と,馬を愛する人たちの世界を描く。「Winning Post 8 2018」プロデューサーインタビュー
山口英久氏(以下,山口氏):
 Nintendo Switch版の開発が終わってからWP8 2018に取りかかったので,いつもと比べてあまり時間がありませんし,今回は調教という,ゲーム全体のバランスにも大きく関わるところを細かく指示できるようにするために,かなり苦労しています。

4Gamer:
 今回,調教に手を入れる狙いは何なのでしょうか。

山口氏:
 「馬が日々成長していく喜び」を強調したいと思ったからです。Winning Postは,調教師でも騎手でもなく,馬主になるゲームなので,調教に関しては調教師にお任せという形で作ってきましたが,もっとプレイヤーの皆さんに,馬の育成を楽しんでもらいたいと思いました。

4Gamer:
 ゲームとして面白くするためとはいえ,現実とは違う形にするのですから,思い切った決断ですね。

山口氏:
 シリーズを重ねながら,「本当に調教はいらないのだろうか」と常に考えていて,今回決断したという流れです。
 「Winning Postは馬を育てるのではなく,馬主として見守るゲーム」というような捉え方をされていた方にも,手に取っていただけるようなものを目指しました。

4Gamer:
 既存のプレイヤーがどのような調教をするのかも興味深いです。

山口氏:
 はい,調教がどの程度必要とされているのかも判断できますので,今後の方針にもつながっていくのではないかと考えています。

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4Gamer:
 調教はダート,芝,坂路などのコースを選んで,併せ馬の有無を選ぶといった感じになっているようです。実際の競走馬だと,芝コースでの調教は,あまり見ないような気がするのですが……。

山口氏:
 はい。芝で追い切ることはほとんどなくて,ウッドチップや坂路などが一般的です。現実の調教はかなり感覚的なところがあったりして,そこに近づけすぎるとプレイヤーさんがついてこられなくなる恐れもあるので,今回は「100万人のWinning Post」と同じような,ゲーム的なものにしています。競走馬育成ゲームをプレイしたことがある人なら,すんなり入れるのではないでしょうか。
 管理する調教師の能力や「縁の騎手」によって,特別な効果が発生するのは「人馬の絆」を表現しているWP8ならではなので,そのあたりも楽しんでほしいですね。

4Gamer:
 馬主というと,実際の競馬では歌手の北島三郎さんや,元プロ野球選手の佐々木主浩さんの所有馬が活躍していますよね。WP8ではプレイヤーのほかにもたくさんの馬主が登場しますが,それぞれの個性のようなものも表現しているのでしょうか。

山口氏:
 ライバルとなる馬主たちには,毛色や配合の好みといったアルゴリズムがあります。
 「WP8 2015」からは海外の馬主,「WP8 2016」からは一口クラブの馬主も追加しているので,今後も強化していきたいですね。

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馬を愛する人たちが,同じ夢に向かって頑張る世界


4Gamer:
 WP8 2018は,現役の競走馬に加えて過去の馬まで収録していて,「1982年」からスタートして競馬史をたどる過去シナリオや,現役馬が引退した世界でifの競馬史を楽しめる未来シナリオがあります。ほかのスポーツゲームでは,その時点の最新データで,最新の時代をプレイするのが一般的だと思うのですが,過去から始められるようになっているのは,なぜでしょうか。

山口氏:
 競馬における“過去”は非常に重要なものだと考えています。競馬は血統をつないでより強い馬を作る,いわゆる「ブラッドスポーツ」ですし,過去にどんな馬がどんな活躍をして,どんな仔を生んだのかを追いかけるのも楽しみの1つですから。そこはWinning Postでもとくに大事にしている部分です。
 過去を懐かしむだけでなく,それほど強くはなかったけれど,思い入れがある馬を強くするといった楽しみ方ができるのも,ゲームならではの醍醐味だと思います。

4Gamer:
 そうなると,古い時代からプレイを始めるのがよさそうですね。

山口氏:
 そのほうが断然楽しいと思います。古くからのファンだけでなく,最近競馬を始めた方でも競馬の歴史を知ることができますから。実際にこのゲームで昔の競走馬を覚えたという方もたくさんいます。

4Gamer:
 本作ではやれることが多いと思うのですが,初心者の方でも戸惑わずにプレイできるスタイルはありますか。

山口氏:
 これまでと同じように,すべてお任せでも進められます。調教も方針を決めるだけで構いませんし,極端な話,馬を買わなくても牧場長が生産してくれますので,最初はそれで問題ありません。
 そうやって進めるうちに,何か物足りなくなってくるはずなので,例えば年1回の種付けは自分でやってみるといったように,興味を持ったことから少しずつ手をつけてみるというのが,初めての方には一番遊びやすい方法ですね。

4Gamer:
 基本お任せでいいというのは,ある意味で馬主らしいかもしれないですね。

山口氏:
 Winning Postシリーズは,馬主さんの視点で競馬界全体を表現したゲームなんです。「競馬は仕組みよりもまず人」,馬を愛する人たちががいろいろな職業に就いて,同じ夢に向かって頑張っているところが競馬の一番の魅力であり,私達もずっとこだわってきたところです。

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4Gamer:
 確かに,実際にプレイして登場人物の多さに驚いた人も多いと思います。実際の競馬関係者の声も反映されていると聞きましたが。

山口氏:
 ええ,実際に競馬に関わっている方々の話は参考にしています。この仕事をやっている関係で,ジョッキーの方のお話はとても参考になりますし,生産系では社台さんの関係者の方などとも仲良くさせていただいています。

4Gamer:
 シリーズ作品にはそういったエピソードが収録されていて,WP8 2018でも新しいものが追加されるとのことですが,どんなものがあるのでしょうか。

山口氏:
 かつて活躍した「イナリワン」という馬は,レースだけでなく馬房でもかなりテンションが高く,壁を蹴り飛ばしていたそうです。そこで怪我を防ぐために,馬房全面に畳を貼ったらしいのですが,同じような気性の荒い馬を育てるときには,このイベントが発生することもあります。最近の馬ですと,「キタサンブラック」がスパルタ坂路調教で筋力をアップして強くなったというエピソードがあって,そのあたりも入っていますね。
 競馬に詳しい方なら「あったねー,そんな話」と感じるかもしれません。

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4Gamer:
 そのほかの新要素としては,自分で出走馬を選んでレースができる「ドリームマッチ」がありますが,これはどのような意図で入れたものでしょうか。

山口氏:
 これまでできなかった「時代を越えたレース」を楽しめるようにしようと思いました。とくにオールドファンの方は,自分が見てきた中での最強馬を,一度は考えたことがあると思うんです。
 ディープインパクトを挙げる人が多いと思いますが,ドリームマッチでは当然ながら出走馬やコースによって展開が変わりますので,本当にそうなのかを確かめてもらいたいです。そして,自分の馬でドリームマッチに勝つことにも挑戦してもらいたいですね。

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完全新作を作るなら,世界が大きく変わるものに


4Gamer:
 野暮な質問かもしれませんが,開発陣の皆さんは競馬好きなのでしょうか。

山口氏:
 はい。少なくとも休憩時間に競馬の話しかしていないようなメンバーです(笑)。私は基本的に予想をすることが好きで,毎週日曜は馬券を買って楽しんでいます。

4Gamer:
 チームの皆さんの熱が,ゲームに反映されているということですね。

山口氏:
 基本的なところは反映できていると思います。ただ,コアな競馬ファンの想いをそのまま入れ込むと大変なことになってしまうので(笑),そこはある程度抑えていますね。

4Gamer:
 あまりマニアック過ぎる方向性にはしないということですね。

山口氏:
 ええ,万人に楽しめる作り方を守るようにしています。私も競馬番組で知った血統の細かい話をゲームに反映させられないかと思うこともありますが,冷静に考えてみると,そこまで網羅しても,ほとんどの人にとっては逆に分かりづらくなるだけだろうと。

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4Gamer:
 ちょっと余談になるのですが,山口さんには東京ゲームショウ2017の4Gamerブースで行われたステージ(関連記事)に出演いただきました。いろいろと予想外の展開があったと思いますが……。

山口氏:
 あのときは本当に何をするのか聞かされずにステージに立っていて,私もディーノ選手から自分の唇を守るのに必死で(笑)。

4Gamer:
 試合で勝ったDDTプロレスの竹下選手が「Champion Jockey Special」に“馬として”出る,ということが,山口さんの了承をしっかり得ないまま,なんとなく決まってしまうという流れでしたが,あの件はいかがでしょうか……。

山口氏:
 細かいところは決まっていませんが,前向きに検討中ですのでご期待ください。

4Gamer:
 それを聞いて安心しました。ところで,Winning Post 8シリーズはすでに5作品を数えているので,そろそろ「Winning Post 9」に期待する声もあるかと思います。9が出るとしたら,どのようなタイミングになるでしょうか。

山口氏:
 まだ何も決まっていませんので,確かなことはお話しできませんが,もしナンバリングを改めるとするなら,調教に限らず,プレイヤーの行動次第で世界がガラッと変わるような内容にしたいというイメージは持っています。

4Gamer:
 世界ということは,馬の育成だけでなく,もっと広い範囲での変化が起こるということでしょうか。

山口氏:
 これまでのWinning Postも,自分だけの競馬の世界を作ることが目的でしたが,途中の過程こそ違っても,たどり着く先は意外に同じようなところになったりするんです。そこをプレイヤーによってまったく違う世界にしたいですね。
 もちろんこれまでのWinning Postの良さもありますし,変えることだけが正義ではないですから,そのバランスを取りながら新しさをうまく出すというのが今後の課題になるかと思います。

4Gamer:
 これからの展開も楽しみにしています。では最後に,来年3月の発売に向けてのひと言をいただけますでしょうか。

山口氏:
 競馬という自分たちが好きなものをゲームで表現することに長年こだわってきた開発陣が完成させた最新作です。競馬をよく知っている方はもちろん,あまり知らない方でも,本作をプレイすれば競馬の世界全体の楽しさを実感できると思いますので,ぜひ手にとって遊んでみてください。

4Gamer:
 ありがとうございました。

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