プレイレポート
「KORG Gadget for Nintendo Switch」でサウンドクリエイターになろう! ガチの作曲家が初心者向けに使い方の基本や作曲の基礎を紹介
オリジナル楽曲を作ってみよう
ここまでで,「KORG Gadget for Nintendo Switch」の画面の見方と,基本的な使い方が理解できたと思う。ここからは自分たちで手を動かして遊ぶフェーズに入っていく。「あくまで一例」として,音楽の基本的な作り方をご紹介する。読者諸氏の参考になれば幸いだ。
どこから音楽を作り始めるか?
とにかく作曲は自由だ。リズムから作る人もいればメロディから作る人もいるし,ギターリフから曲の展開を考えることもある。ご高名な先生方には怒られるかも知れないが,前半でやって来たように「音を1個置いて鳴らしたら,それが作曲だ」と言っても間違いではないだろう。
筆者は鍵盤奏者なので,はじめにシンセサイザーで面白い音を作ったあと,その音色からインスピレーションを受けてリフを考えることが多い。KORG Gadget for Nintendo Switchの場合は,ユニークなシンセサイザーが多いので,まずはプリセットから音色を探していく。
動画では試しにピアノ系の音色で同じフレーズを鳴らしてみたが,アシッドハウス系のChicagoに向けた打ち込み方だと頭拍がズレており,ピアノでは破綻してしまう。打ち込みは,グリッドにぴったり合っている必要はなく,その音色で格好良いやり方こそがベストだ。
ドラム,ベースの追加
音楽の三大要素は「メロディ」「リズム」「ハーモニー」だ。先ほど打ち込んだリフがハーモニーを補完しているので,次はリズムを打ち込んでいく。今回のドラムトラックは前半で紹介した「典型的な4つ打ち」を繰り返したもので,非常にシンプルなパターンとなっている。
今回のドラムトラックは前半で紹介した,Londonでの「典型的な四つ打ち」を繰り返したもので,非常にシンプルなパターンとなっている。
ベースはバスドラムの裏拍に入れることが多い。1〜2〜3〜4〜と4分音符でバスドラムが鳴っているので,その間の“〜”にベースを置いていくのが基本となる(一般的なDAWで言えば,サイドチェーンを行うようなノリとなる)。文章よりも画像で見たほうが早いと思うので,以下を参考にしてほしい。
また,ベースはこれだけではなく,追加でMiamiを3台入れてみた。このDublinが下支えをしっかりしてくれているぶん,Miamiでふざけたフレーズを入れても問題ない。
ここまでのフレーズすべてを合わせて聞いてみよう。前半はシンセのリフ,リズム,ベースだけが再生されている。続いてコード感を補強するトラックとしてオルガンの音を入れ,低域ばかりに耳が行ってしまうのを避けるために高い音域でピコピコ鳴っているシンセの音を追加した。シーン自体はだいぶ賑やかになってきたので,ここから先は曲の“展開”(※)を作っていく。
※イントロやサビなど,全体的な盛り上がりのポイントを踏まえた,1曲として成立させるための流れ。
「トラックの抜き差し」で楽曲を展開させる
ある程度の素材はできたので,展開を付けて,より曲らしくしていく。よく行うのが,上手くいったシーンをコピー&ペーストで増やして,そこからトラックの抜き差しを行うというもの。ストーリーと同じように音楽にも起承転結があるが,今回は「静かに始まって途中盛り上がって静かに終わる」というシンプルな盛り上がり曲線を想定して曲作りを進めていく。
イントロの作り方はいくつかあって,サビからドカーンと始まる楽曲もあれば,うねるようなベースから始まるものもあるが,今回は先述の通り「静かに始まって〜」という形を目指しているので,まずはリフだけ鳴らしてみる。
シーン1の終わりでは,次のトラックが入る前に「ドドタン!」といったフィルイン(ドラムによるアクセント)を入れていて,シーン2からはベースとともにバスドラムの4つ打ちが始まる。シーン3ではLondonにスネアの音を追加し,徐々に盛り上がっていく感じを演出した。
もちろんハーモニーを変えてもいい。前半はA(ラ)を基準にリフを作ったのでコードはAmとなっているが,今回は途中でベースの音をF(ファ)に移動させてコードをFM7に変えている。難しいコード理論の話は割愛するが,「ベースが変わるとコード進行が変わる」と理解してもらえれば幸いだ。
また,今回の曲ではアウトロ(曲の終わり)を除いて,基本は2コードしか用いていない。FM7→Amから,続けざまに「ドラムを抜いたブレイク」を聞いてみよう。
あとは組み合わせの問題だ。KORG Gadget fot Nintendo Switchではシーンの挿入,複製,削除,上下移動が可能なため,良い感じにシーンを入れ替えて,一番「それっぽい」と思える展開を作っていこう。
他にも,「Kiev」による細かなリフと,「Belrin」によるシンセリードを小音量で追加した。これによってリズムに複雑性が生まれるだけでなく,音色が増えることでなんとなく「サビらしきもの」が見えてくる。
楽曲完成!全体のまとめ
これが完成した楽曲だ。最後はブレイクで終わらせても良かったのだが,それだと面白みに欠けた(抑揚に乏しいという言い方もできる)ので,その後にもう1つだけ短いシーンで盛り上がりを作ってみた。動画には打ち込みの細かい部分も収めているので,詳しい中身が気になる方は参照してほしい。
これまで説明した通り,この曲はひとつのフレーズの反復とトラックの抜き差しによってのみ構成されている。初心者だと,初めは「何から作っていいか分からない」という場合も多いと思うが,「まずはガジェットを選んで,気に入ったプリセットで適当にフレーズを鳴らしてみる」というところからスタートすれば,このレベルまでのハードルは高くないはずだ。
今回は音楽の骨組み的な説明を多く行ったが,ここから先のステップアップとしては「シンセサイザーの使い方を覚える」「コード理論を覚える」「MIXの基本を覚える」など,さまざまな段階がある。しかし,もっとも大切なのは音を鳴らして楽しむこと――そしてKORG Gadget for Nintendo Switchは,その楽しさを味わうのに最適なソフトウェアだと思う。難しく考えず,読者の皆さんも気軽に遊んでみてほしい。
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