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[TGS 2019]プロゲーマー・ウメハラ氏インタビュー。円熟を迎えつつある氏に,近々の出来事や新たな挑戦について語ってもらった
ウメハラ氏の公式Twitter
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。昨年行ったインタビューでもお聞きしましたが,現在行っている活動の目標はありますか。
ウメハラ氏:
昨年と同じ回答になってしまうんですが,やっぱり思い浮かびませんね。
僕は物事がうまくいっていない状況のほうが力を出せるタイプでして,この10年間にプロとしてやりたかったことをやり尽くしてしまって,今はもう,これと言って挙げられることが少なくなっています。このままだとまずいぞって状況だと,めちゃくちゃがんばるんですけどね。
[TGS 2018]プロゲーマー・ウメハラ氏インタビュー。今後の活動や国内のeスポーツについてアレコレと聞いてきた
東京ゲームショウの2日目(2018年9月21日),プロゲーマーのウメハラ氏にインタビューを行った。格闘ゲーム界のレジェンドとして,今なお最前線で輝かしい記録を残し続ける氏に,今後の活動や国内のeスポーツについて聞いてきた。
もっと小さな目標ではどうでしょうか。
ウメハラ氏:
Capcom Cup 2019の出場がまだ確定していないので,それを確定させることですかね。おそらくは大丈夫とは思いますが,確定しないことにはじっとはしていられないです。
4Gamer:
ウメハラさんは2019年春にレバーレスコントローラを使用し始め,ファンを驚かせました。このきっかけを教えていただけますか。
ウメハラ氏:
きっかけは,ガフロさんが自作のレバーレスコントローラを,普段みんなが練習している対戦部屋に持ち込んだことでした。なんかたくさんボタンが付いてて……なんだこれ? って。これまでの格闘ゲームの歴史で,レバーレスコントローラを使用してトップクラスに強かった人はいなかったので,色物――戦国時代で言うと鎖鎌のようなものだと思っていたんですね。確かに使いこなせれば強いかもしれないけど,やっぱり刀でしょみたいな(笑)。
4Gamer:
例えが絶妙ですね(笑)。
ただ,理屈で考えると間違いなく強い。それで,ふ〜どとカワノがいち早くレバーレスコントローラを触り始めたんですよ。ふ〜どは遊びでしたけど,カワノが元々ピアノをやっていたというものあってか,数週間で対戦できるようになっていて。それを見てこれならすぐに実戦投入できるかもと思ったんです。
でも,自分の使っているガイルの性能が昨年と同程度に強ければ,わざわざ挑戦しなかったと思います。レバーレスコントローラに時間を割くリスクがあるわけで,もしも通常のレバーで操作する強さに到達できなかったら,投資した時間が無駄になってしまいますよね。
4Gamer:
レバーレスコントローラは,一般的には操作が難しいと言われていますね。
ウメハラ氏:
来年以降,使うキャラが変わるかもしれないですし,リスクリターンを考えると,どうにもリスクのほうが大きい。ただ,それでも今年は道具を変えていかないと,未来が見えなかったんです。Capcom Cup 2019には出場できても,優勝争いに絡むのは難しそうだと。なので,レバーレスコントローラは自分にとってリスクが高い半面,チャンスなのかなと思い,使用を開始したわけです。
4Gamer:
なるほど。
ウメハラ氏:
それに,最近は自分の中で効率のいい練習方法が確立できていて,昔ほどがむしゃらに練習をすることも無くなってきていました。洗練はされていますけど,これまではもっとすごい熱量でやってきたので,それが寂しい気持ちで……。今,若くてものすごい熱量を持っている選手って,僕の身近だとカワノなんですよ。彼を見て,懐かしく羨ましくもかんじたので,カワノと同じことすることで,自分もあの頃の感情を味わえるかしれない,と考えたりもしました。
4Gamer:
レバーレスコントローラもそうですが,ウメハラさんは新しいものに挑戦するバイタリティに溢れているように感じます。それはどこから生まれてきているんでしょうか。
ウメハラ氏:
プロゲーマーという職業を長くやっていますが,未だにこれが仕事でいいのかなと考えることがあるんです。「ゲームはよくないもの」と,子供の頃から刷り込まれた印象があるからでしょうね。ただ何かに挑戦していると,そういった気持ちから開放されると言うか。
4Gamer:
レバーレスコントローラへの挑戦は,技術以外のプラスを考慮してのことだったわけですか。
ウメハラ氏:
レバーレスコントローラを触って,「格闘ゲームって少しずつ上達を楽しむゲームだったなぁ」って,久しぶりに思い出しました。レバーレスコントローラを練習するのって,格闘ゲームをやったことがない人が,初めてアーケードスティックに触るのと変わらないわけですよ。そういう初心者の気持ちになってみて,格闘ゲームの難しさに改めて驚いたわけです。「全然技とか出ないし,こんなに難しかったんだ!」って(笑)。
4Gamer:
配信では,真空波動拳を出すのにだいぶ苦労していたようでした。
ウメハラ氏:
もう,普通の波動拳ですら全然出なくて(苦笑)。
4Gamer:
しかし2019年6月には,“特殊な挙動を可能にする”レバーレスコントローラは,Capcom Pro Tourでの使用は禁止される裁定が下されました。これについて何か思うことはありましたか。
カプコンの綾野智章氏に「CAPCOM Pro Tour 2019」における,賞金と改造コントローラ問題への見解を聞く
2019年6月21日,カプコンは「ストリートファイターV アーケードエディション」を競技タイトルとするワールドツアー「CAPCOM Pro Tour 2019」の公式規定を更新した。今回大幅に加筆されたのは,公式大会ルールの「CPTにおけるコントローラー利用の理念」部分。カプコンとしてどのような見解を示したのか,プロの賞金問題と合わせて綾野智章氏に話を聞いた。
禁止する側の理屈はさておき,客観的には当たり前のことだと思いますよ。ただ,格闘ゲームって,そもそもが不平等なことだらけですから。中身がカオスなんだったら,道具もカオスなほうが面白いんじゃないのとは,いち選手としてちょっと思いますね。
4Gamer:
新しい挑戦という意味だと,ウメハラさんは最近は「TEPPEN」(iOS / Android)を遊ばれていますよね。今年に入ってポケモンカードゲームも触っていましたし,以前は「Shadowverse」(iOS / Android / PC)もプレイされていました。カードゲームもお好きですか?
ウメハラ氏:
最初に触ったカードゲームが「Shadowverse」でしたね。少し麻雀ぽいところがあって,もともと雀荘の店員をやっていたということも相まって,自分に合っているってすぐに感じました。
4Gamer:
「TEPPEN」は,実際にプレイしてみてどんな感想ですか。
ウメハラ氏:
面白いですね。格闘ゲーマーなんで,リアルタイムですばやく判断しないといけないのが性に合っています。
4Gamer:
昨日はプロゲーマーによる「TEPPEN」のエキシビションマッチが,ガンホーブースで開催されました。参加してみていかがでしたか。
ウメハラ氏:
カードゲームの大会に出たことはこれまでなかったので,ドキドキしました。若いころは格闘ゲームの大会でも緊張したものですが,そんな気持ちは久々でした。もう20年以上前ですが,東京ゲームショウで開催された「ストリートファイターZERO3」の全国大会で優勝した時の風景を思い出したくらい。ああ,そういやずっと昔,東京ゲームショウの大会で優勝したことがあったな〜って(笑)。
4Gamer:
今の環境は比較的珍しいジルを使って優勝されましたが,なぜジルを選んだのでしょう。
ウメハラ氏:
ウェスカーやリオレウスも触ってはいたんですけど,どうにも天邪鬼なもので。ほかに何かないかなって探していたら,探索のシステムが面白くて。しばらくジルを触っていたら,気が付いたら当日でした。
4Gamer:
「TEPPEN」での今後の活動について教えてください。
ウメハラ氏:
直近ですと,9月16日にオフラインで集まって開催する「BeasTV Cup - TEPPEN -」があります。あとは,BeasTVでの配信も週イチでやってます。
4Gamer:
配信はどういった内容なんですか?
ウメハラ氏:
ふ〜どや板ザン(板橋ザンギエフ選手)が「TEPPEN」をやっているので,彼らと一緒に雑談しつつ,ランクマッチやルームマッチをやったりといった内容です。
4Gamer:
TGS 2019では,HyperXJapanブースでボンちゃん選手とエキシビションマッチを行われるとのこと。ボンちゃん選手は今絶好調ですが,その理由をどう分析されますか。
ウメハラ氏:
使用キャラで苦労していた部分が払拭されたこともありますし,シーズン1の頃から先を見据えた攻略に取り組んでいたので,ボンはそのうち勝つでしょ? とは思っていました。だから意外でもなんでもないですね。それにしても,今の勝ちっぷりは出来過ぎとは思いますけど(笑)。
4Gamer:
ほかにも「CAPCOM Pro Tour 2019 アジアプレミア」がTGS 2019中に開催されますが,ご自身の調子はいかがでしょうか。
ウメハラ氏:
調子は普通ですね。大会は毎回テーマを持って参加するようにしているんですが,今回はまた新しいコンセプトで挑む予定です。大会前なので,内容は内緒にさせてください。
4Gamer:
優勝賞金が500万円とかなりの高額ですが,それが大会で気が散る原因になったり,意識してしまったりといったことはないのでしょうか。
ウメハラ氏:
ないと思っています。ただ,潜在的に意識してしまうってことはありえそうなので,絶対とまでは言い切れません。ただ自分に関していうなら,これまでも高額賞金の大会には幾度となく出場していますし,今さら影響はないとは思いますけど。
4Gamer:
いささかゴシップ的な話になってしまいますが,先日もけ選手や板橋ザンギエフ選手らが成田空港で足止め状態になった際,空港ロビーに即席のプレイスペースを作り,夜通し対戦を行ったことで批判を浴びる一幕がありました。この件について,なにかコメントはありますか。
その話を聞いたときにまず思ったのは……その場にいなくてよかったなって。
4Gamer:
参加する気満々じゃないですか(笑)。
ウメハラ氏:
そうそう(笑)。やっちゃってた可能性は大ですよ。ただ,決して肯定するわけではないですけど,ゲームの大会――とくに海外大会って非日常なんですよ。普段は騒いだりしない人でも,その場にいたらつい盛り上がっちゃう。それを体感して日本に戻ってきたら,空港から動けなかったわけで。海外遠征の非日常感が出てしまったんじゃないですかね。これが出発前だったら,彼らも同じことはやらなかったかもしれません。
4Gamer:
その後,両選手とも謝罪していましたし,誠実な対応だったと思います。
ウメハラ氏:
単に調子に乗っていたわけではないと思うので,大きな問題にならなくてよかったですね。ともあれ,外側から批判的に見られてもおかしくない行動ではあったわけで,気を付けないといけません。
4Gamer:
最後の質問になります。年々規模が拡大しているeスポーツ市場ですが,ウメハラさんは何か思うところはありますか。
ウメハラ氏:
格闘ゲームコミュニティが苦しい時期があったじゃないですか。その時期に無理をしてでもコミュニティの火を消さないように努力をしていた人がいるんです。でも,その人達が今の恩恵を享受しているかというと……そんなことはありません。畑を耕したけど,収穫したのは別の人だった,みたいな。そういうのを見ていると無常だし,切なく感じてしまいます。
4Gamer:
分かります。
ウメハラ氏:
個人としての気持ちは,うれしさが7,寂しさが3,くらいの割合です。今現在,自分がその恩恵を十分に受けられているうれしさがある一方で,これから出てくる若い人達は,これからさらに盛り上がるeスポーツの世界しか知らないことになると考えると……寂しさも感じてしまいます。ただ,そんな贅沢は言ってはいけないですよね。本当にただ好きという気持ちで支えてきた人達がいたからこそ,今もまだ盛り上がっている業界なんですから。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
ウメハラ氏の公式Twitter
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