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[TGS 2017]ダークなアジアンホラー「Detention」と,ロボ好き感涙のレースゲーム「BREAK ARTSII」を開発したクリエイターにインタビュー
台湾の歴史を題材に,モノクロ世界で展開するホラーアドベンチャー「Detention」
「Detention」は,台湾のRed Candle Gamesが開発したホラーアドベンチャーゲームで,呪われた学校からの脱出を目指す。
学校には恐ろしい悪霊が徘徊しているが,直接攻撃することはできず,息を止めて逃げたり,お供えのご飯で注意をひいたりするしかない。
台湾の文化が前面に押し出されているのが特徴で,国民党政権が戒厳令を敷いていた1960年代の事情や,東南アジアの怪談などが盛り込まれているため,西洋のホラーとは一味違った作品になっている。詳しくは1月25日に掲載したプレイレポートを参照してほしい。
というわけで,Red Candle Gamesの共同創設者であるライト・ワン氏と,PRディレクターのティフ・リウ氏に話を聞いた。
「Detention」公式サイト
4Gamer:
よろしくお願いします。まず,お2人の役割を教えてください。
ライト・ワン氏(以下,ワン氏):
僕は「Detention」のプロジェクトマネージャーで,レベルデザイナーでもあり,またプログラマーでもあります。
ティフ・リウ氏(以下,リウ氏):
私はPRディレクターで,我々の作品をゲームイベントに出展する仕事などを担当しています。
4Gamer:
ホラーゲームには西洋的なものが多いのですが,「Detention」では台湾の文化が前面に押し出されているのがとても印象的でした。
ワン氏:
当初,「Detention」はプロデューサーのヤオ・シュンティンの子供時代を描くゲームになる予定でした。学校が舞台なのは,子供時代に一番怖いと思っていた場所だからです。さらに,「せっかく作るなら,台湾人なら誰でも共感できる内容にしよう」ということで,台湾の文化や歴史,神話や怪談を取り入れたものになりました。
4Gamer:
日本でも,学校を怖いと思っていた人は多いと思います。学校が舞台の怪談もありますし。ですから,ゲームに感情移入できました。
ワン氏:
台湾の学校は昔,スパルタ的な教育で愛国心を叩き込む場所でした。校長をはじめ,ほとんどの教師が元軍人だったりして,政治的な圧迫感を感じることも多かったんです。最近は,そうしたこともなくなってきていますが。
4Gamer:
悪霊と戦うのではなく,息を止めてやり過ごしたり,お供え物を置いて気をちらすというところが印象的でしたが,こうしたゲームシステムにした理由はなんですか。
ワン氏:
物語を身近なものにするためです。悪霊を殴ったりしても倒せないでしょうから,逃げるしかないんですね。息を止めるのは,昔流行したキョンシー映画から,また,お供え物は台湾の怪談から来ています。
4Gamer:
物語の後半では,1960年代の台湾の「白色テロ」(ここでは,中国国民党政権による弾圧を指す。台湾の行政院によれば,1万8000〜2万8000人が犠牲になったという)が重要なポイントになりますが,こうした問題を取り入れようと思った理由はなんですか。
ワン氏:
さきほども言ったように,最初はシュンティンが子供時代を過ごした1980年代を舞台にする予定でした。しかし,プレイヤーに強い圧迫感を感じてもらうためにはどうすればいいかを考えた結果,設定を変えて,1960年代を取り上げることになったんです。この時代,人々は政府が怖くて仕方ありませんでした。友達や隣人と話すときも言葉に気をつけなければなりませんでしたし,政治的な話なんてもってのほかでした。
4Gamer:
グラフィックスがモノクロ調なのも,1960年代という過去を題材にしているからですね。
ワン氏:
そうです。昔の新聞や古びた写真のイメージですね。
4Gamer:
歴史の暗い部分を取り上げるあたり,インディーズゲームらしい取り組みだと思いました。
ワン氏:
こうした問題をゲームで取り上げるには,バランスが必要です。舵取りを間違えると,僕達の考えをプレイヤーに押しつけているように感じられるでしょう。ただ,「Detention」は政治的なテーマがメインになる作品ではありません。白色テロの話は,あくまで背景です。
リウ氏:
私達,開発チームの世代だと,祖父母が弾圧を実際に体験しており,子供の頃から話を聞いて育ってきています。しかし,最近は歴史の教科書でもほとんど取り上げられていないそうなんです。ですので,若い世代が自分で自国の歴史を考えてくれるようなものにもしたかったんです。
4Gamer:
Steamで全世界に配信されている「Detention」ですが,プレイヤーの反応はいかがですか。
ワン氏:
もちろんですが,地域や国によって反応が違います。台湾のメディアやプレイヤーは,ゲームの中で政治的な話を取り上げたことに反応しています。さきほども言ったように,政治的な話がメインのテーマではないんですが,発売後はゲームだけでなくいろいろなメディアが取り上げてくれて,ちょっとしたブームのような状態になりました。映画監督やプロデューサーからも声をかけてもらい,今はテレビドラマ化が進んでいます。
一方,ほかの国のプレイヤーからは,キャラクターが織りなすドラマに感動した,泣いたといった感想をもらいました。ゲームを通して台湾の歴史や文化に触れてもらったことも嬉しいですね。
4Gamer:
日本語版はいつ頃になりそうでしょうか。
ワン氏:
2017年1月にゲームを出して以降,日本のプレイヤーから同じような問い合わせをたくさんもらっています。すごく反応が大きかったので,早く日本語版を出したかったんですが,チームに日本語のできる者がいなかったんです。英語版を出したときと同様,メッセージ一語一語にこだわっているため,和訳には時間がかかっています。現在は最後の微調整をしている段階ですので,正確な日時はまだお約束できませんが,10月頃には配信したいと思っています。
4Gamer:
日本のホラーゲームファンにとって,朗報だと思います。
ワン氏:
アクティブゲーミングメディアのローカライズ担当者がすごくがんばってくれています。チェックのために台湾の歴史書を何冊も買い込んだそうなので,精度の高い翻訳になっていると思います。
リウ氏:
翻訳のチェックに関しては,私達よりもアクティブゲーミングメディアのほうが厳しいですね。こちらがOKを出したところも「もう少しがんばります」と言って微調整してくれたり,一応完成したところも,あとで直してくれたりしました。
4Gamer:
それは楽しみです。ちなみに,テレビドラマのほうはどれくらい進んでいるんでしょうか。
ワン氏:
今は初期の段階なので,詳細についてお話しできることはまだありません。作品に込めたメッセージがしっかり伝わるようにしていきたいです。
リウ氏:
遊んでくれたプレイヤーと,取り上げてくれたメディアに感謝しています。ゲームを作ったときは,まさかテレビドラマになるとは思っていなかったので,今は嬉しくて仕方ないです。
4Gamer:
では,最後に読者にメッセージをお願いします。
ワン氏:
日本語版を長くお待たせして,すみません。10月頃には日本語版を楽しんでもらえたらと思います。また,東京ゲームショウに出展できたこと,そしてたくさんの来場者がゲームを遊んでくれたことに深く感謝しています。
リウ氏:
自分達のゲームを東京ゲームショウに出せるなんて,金のトロフィーをアンロックしたような気分です。台湾では昔から日本のゲームやゲーム文化が人気ですから。
4Gamer:
日本語版のリリースを楽しみにしています。どうもありがとうございました。
ロボットへの愛が特盛り。カスタマイズも充実した「BREAK ARTSII」
「BREAK ARTSII」は,スマートフォン向けゲーム「BREAK ARTS:cyber battle racing」の続編で,プレイヤーはロボットを操作してレースに挑む。ロボットには武器が装備されており,これでライバルを攻撃して妨害することも可能だ。
また,カスタマイズも充実しており,さまざまなパーツを装備して操縦性や耐久力を変えられる。特徴的なのが「可動ジョイント」の存在で,これは性能に影響を与えないパーツだが,「加速時」「ブレーキ時」など,動くタイミングを自分で設定できるため,状況に応じて変形するロボットも作れるのだ。ロボ好きから注目を集めている同作について,MercuryStudioのray氏に話を聞いた。
4Gamer:
よろしくお願いします。日本では初めてプレイアブル出展された「BREAK ARTSII」ですが,開発体制と進捗状況を教えてください。
ray氏:
開発は私1人で行っています。現在はゲームの基本がほぼ完成したところで,コースやパーツなど,コンテンツ量を増やしている段階です。
4Gamer:
ロボットゲームといえばバトルものが多いですが,なぜレースゲームにしたのでしょうか。
ray氏:
理由は大きく2つあります。まずは私がロボットとレースゲームが好きなので,自分の好きなものを合わせました。もう1つは,バトルものにするとプログラミングの難度が上がってしまうことがあります。個人で開発しているので,レースにバトルのエッセンスを加えた内容にすれば,開発の工数も抑えられるのではないかと考えました。
4Gamer:
開発で苦労されている部分はどこですか。
ray氏:
個人開発者なら誰でも同じ悩みを抱くと思いますが,いろいろとやりたいことがある中での取捨選択に苦労しています。
4Gamer:
グラフィックスがかなりキレイですね。
ray氏:
ロボットものといえば無骨なイメージのゲームが多いので,自分で作るのなら,ほかにないようなアートスタイルにしようと思いました。工数を抑えつつ美しいグラフィックスにしようとして,現在のようになっています。「バーチャロン」などいろいろなロボットゲームに加えて,インディーズゲームの「AudioSurf」などの影響を受けています。
4Gamer:
カスタマイズ機能に関して教えてください。
ray氏:
自分が望む,世界で1つのロボットが作れます。さまざまなパーツを取り付けることで,装甲や速度,旋回能力といった各種性能が変化しますし,特定の状況で動く「可動ジョイント」というパーツもあります。可動ジョイントは性能に影響は与えませんが,ロボットの見た目を大きく変えることができるんです。
4Gamer:
可動ジョイントが動く条件は,自分で設定できるんですか。
ray氏:
「ブレーキ時」「ブースト時」「武器を発射したとき」「武器を構えたとき」,また一時的にパワーアップする「オーバーライドが発動したとき」などの条件があり,自由に設定できます。例えば,ブースト時に翼を開いて加速したような雰囲気にしたり,ブレーキ時にエアブレーキが展開したように動かすことが可能です。「オーバーライド時にスーパーモード的な真の姿を現す」といった楽しみ方ができますね。
4Gamer:
なるほど,ロボット好きにはたまらない感じですね。こういう風に使うとカッコイイ,というアドバイスはありますか。
ray氏:
レース中に一番よく使うのはブースト機能なので,このとき,どれだけ変形させるかを考えるのが楽しいですよ。また,ゲーム中は背後から自分のロボットを見ることになるので,背中に可動ジョイントを付けるとテンションが上がると思います。
レースの最中,あらかじめ用意しておいた2機のロボットを瞬時に切り替える「リバースシフト」というシステムがありますので,これを活用して装甲のパージ(切り離し)を表現することもできます。1体のロボットを元に,「装甲装備時」「装甲パージ後」の2機を作り,これをリバースシフトで切り替えれば,あたかも装甲をパージしたかのように見えるわけです。これは熱いのではないでしょうか。
4Gamer:
エディットできるのは機体だけですか。
ray氏:
武器のエディットもできます。本作には,銃のような射撃武器,後方へ罠を置くトラップ型の武器,ブレードなどの接近戦用の武器という3系統があり,機体と同様,さまざまなパーツを入れ替えることで性能が変化します。また,可動ジョイントは武器にも取り付けられ,機体と異なり,こちらは性能にも影響を与えます。例えば,バレルに可動ジョイントを取り付け,「ブレーキ時にうしろに向く」という指定を行えば,「普通は前に弾が飛ぶが,減速したときだけ後方に撃てる」武器も作れるわけです。
4Gamer:
レースゲームであると同時に,エディット系のゲームでもあるわけですね。
ray氏:
ポーズを付けたりエフェクトをかけたりして,自由にスクリーンショットを撮れますよ。
4Gamer:
そこまでエディット機能を充実させた理由はなんでしょう。
ray氏:
少人数でインディーズゲームを作る場合,どうしてもネックになるのがコンテンツの量です。開発者の数が少ないので,一般のソフトと比べて,どうしても物量的に見劣りしてしまいます。こうした点を補うには,いっそプレイヤーに任せてしまうのがいいんじゃないかと考えました。プレイヤーを巻き込んで進化していくようなゲームにしたかったんです。
4Gamer:
エディットしたロボットを,ほかのプレイヤーに見せるような機能はありますか。
ray氏:
用意しています。ただ,制作レシピを共有するような機能は現在,検討中です。
4Gamer:
PAXで公開された時の反応はいかがでしたか。
ray氏:
私が直接会場に行ったわけではないんですが,開場してすぐに行列ができるほど反響があったと聞いています。4日間の会期中,毎日タイムアタックしていた人もいたそうですし,オープン前の設営時,会場のスタッフがこっそり遊んでいたということもあったそうです。
4Gamer:
発売時期はいつ頃になりそうでしょうか。
ray氏:
検討中ですが,今年の冬には出したいですね。10月か11月には,体験版の配信を予定しています。
4Gamer:
では,最後にロボット好きの読者にメッセージをお願いします。
ray氏:
「あなたはロボットが好きですか? 私はロボットが大好きです。あとは分かるよな」といったところですね(笑)。
4Gamer:
ありがとうございました。
- 関連タイトル:
返校 Detention
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BREAK ARTS II
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