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[E3 2017]2D? それとも3D? 「The Last Night」の独特のグラフィックスは,どのようにして作られているのか
このタイトルは,E3 2017の開幕直前に行われた「Xbox E3 2017 Briefing」でお披露目され,海外メディアから絶賛された作品だ。
もともとは,2014年にデジタル配信サイトの「itch.io」が主催した「Cyber Punk Game Jam」において,フランスのティム・ソーレー(Tim Soret)氏が6日間で開発したFlashゲームをベースにして,産声を上げたプロジェクトである。このときのデモは,現在でもitch.ioで無料公開されているが,ここで見られるような粗いドット絵のピクセルアートのスタイルはそのままに,ソーレー氏のアイデアをさらに詰め込んで4K解像度にも対応した商業ゲームとして作り直したものが,本作というわけだ。日本のアニメが好きだというソーレー氏は,セルアニメの手法をゲームメディアに持ち込むというアイデアを,この作品に取り入れているという。
そうして作られた本作は,パッと見だとキャラクターや背景画,車などのオブジェクトがピクセルアートそのままの平面体であるのに,カメラが左右に移動するとまるで立体のキャラクターやオブジェクトであるかのように見えるという,何とも不思議なものになっている。
後方から照射される光がキャラクターに当たると,実際に3Dのオブジェクトに光が当たったかのように輪郭が浮かび上がるといった感じで,2Dなのか3Dなのか,瞬時に判別することは難しい。しかし,3Dのオブジェクトはいっさい使われていないというのだ。
これがどのようなカラクリになっているのか,Unityエンジンを使ったツールで見せてもらったところ,ゲーム内に登場するキャラクターやオブジェクトが,すべてポリゴンで構成されていることを確認できた。そして同時に,ポリゴンで描いた3Dオブジェクトに,フラットなピクセルアート風のシェーディングをかぶせているのではなく,何百枚ものポリゴンで平面体のオブジェクトを作成するという,何とも奇妙な発想で一つ一つのシーンを生み出していることも判明した。
そのため,実際に後方からの光が貴婦人の白いドレスに当たったときには,そのキャラクターの縁が透けて見えるように,特定のポリゴン面の明度だけを変更できるのである。
セル画を何十枚,何百枚も重ねているのを想像してみると分かりやすいかもしれないが,要は,すべての平面体をほぼ無限かつダイナミックに配置できるということである。ここに,照明や濡れた路面の反射,霧,雨などの効果を合成することで,独特の見た目を持つゲームとして成立させているのだ。
しかも,それぞれのピクセルアートがすべて手描きされたものであるというのも大きな特徴である。例えば床を覆うタイルでさえ一つとして同じものはないし,キャラクターの髪の毛の揺れもパターンが存在しないという凝りようである。
左右のみならず前後にも動いたり旋回したりするカメラワークに合わせ,大きさや形状が微妙に変化するオブジェクトにも,手作業で対応しているというのだから驚きだ。
ちなみに,Odd Talesのスタッフは,現在でもオーディオ担当を含めてわずか5人。しかも,フランス,イギリス,アメリカに散らばるリモートオフィス形態の開発チームであるという。にも関わらず,ここまで独創性にあふれるグラフィックス表現を作り込む姿勢には舌を巻くしかない。
本作の舞台となっているのは,生まれてすぐの乳児の脳内にチップを埋め込んで,その人生を完全にコントロールしている未来世界。主人公のチャーリーは,幼少期の事故によってチップを埋め込むことができない状態だったため,「二級市民」として扱われている。プレイヤーは,そんな世界の中で,自らの意志を持って生きる人物として活動することになるのだ。ゲームは複数のエリアで構成されており,それぞれのエリアを自由に散策できるオープンワールドタイプが採用されているという。
本作はPCおよびXbox One向けに2018年にリリース予定で,Steamのプロダクトページには,インタフェースと字幕が日本語化予定であることも明記されている。今後の続報にも注目していきたい作品の一つと言えるだろう。
「The Last Night」公式サイト
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