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[E3 2018]「MONSTER HUNTER: WORLD」と「ファイナルファンタジーXIV」のコラボはどう実現したのか。辻本良三氏と吉田直樹氏にインタビュー
E3の会期中,今回のコラボレーションについて,FFXIVのプロデューサー兼ディレクターである吉田直樹氏と,モンスターハンターシリーズプロデューサーの辻本良三氏に,合同インタビューを行う機会を得た。その模様をお伝えしよう。
「MONSTER HUNTER: WORLD」公式サイト
「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター」公式サイト
――本日はよろしくお願いします。まず,今回のコラボについて,どのような経緯でスタートしたのか教えてください。リリースによると,7年前からお話があったとのことですが。
今からですと,もう約8年前になるんですけど,僕がFFXIVの新生を担当することになった翌日,たまたま辻本さんに声をかけられたんです。「何考えてんの!?」って。それに対して「やるって決めたから」という話をしたら,「モンハン作ってほしかったのに……じゃあ,ダメだったらモンハン作りに来て。うまくいったら,その実績を持ってモンハン作りに来て」って言ってくれたんです。それと,「立て直すために何でもやるんだろうから,そのためにモンハンの力を貸せるから何でも言って」とも。
僕にとって,この辻本さんの言葉はかなり大きくて,当時のものすごい状態のFFXIVをひっくり返さなきゃいけない中で,自分を応援してくれる人がいるというのは,とても勇気づけられました。
でも,だからこそFFXIVがモンハンと並べる位置に行ってからじゃないと,コラボしても本当に力を借りるだけになってしまうので,その時が来るまでがんばるよと伝えました。
辻本良三氏(以下,辻本氏):
僕が初めて吉田さんに会ったのは10年前ぐらいで,そのときからディレクターの才能がある人だな,いつか一緒にゲームを作りたいなと思っていました。それなのに,FFXIVの担当になると聞いて,ちょっと待てと。マジか,本当にやるのかと。申し訳ないですけど,すごく大変なことになると思いましたから。
吉田氏:
誰がどう見ても失敗する確率のほうが高かったですからね(笑)。
辻本氏:
でも一度やるって言ったら言うことを聞かないのも分かっていましたから,そこは応援したいし,どこかのタイミングでコラボしたいと思っていました。
吉田氏:
今回のタイミングでコラボすることになったきっかけは,MHWが発売される前のことです。藤岡さん(カプコンの藤岡 要氏)と食事に行ったときに,MHW――当時はまだその名前もありませんでしたが――が世界で戦っていくにあたって,FFXIVと一緒に何かできたらというお話をいただいていました。それで,ちょうど1年ぐらい前に正式に話があり,じゃあ満を持してやりましょうと。
モンハンは,国内の新しいお客様を作ってきた,日本一のタイトルだと思うんです。モンハンと一緒に育ってきたという人もたくさんいます。我々としても,そういう人達にモンハンの力を借りてFFXIVのようなMMORPGの体験を伝えたいし,逆に世界でFFXIVを遊んでいる人達に,モンハンのすごさを伝えたい。どちらにとっても,今がコラボするのに一番良いタイミングじゃないかなと。
辻本氏:
逆に,今回のタイミングまで,お互い一度も「コラボしたい」と言うことはなかったですね。こちらとしても,世界ではあまり知名度の高くないモンハンがコラボしたら,迷惑をかけるかもしれないという心配がありましたから。MHWなら,ワールドワイドで展開していますし,現在もアップデートは続いていますから,今のタイミングならベストだと,コラボを提案させていただきました。
――コラボの具体的な内容を,お互いどのように決めていったのかを教えてください。
辻本氏:
企画の出しあいはしましたけど,僕はFFXIVのチームをすごく信用していますし,吉田さんもうちのチームを信用してくれていたので,お互い任せ合っていました。お互いのタイトルをリスペクトしているので,良いアイデアも出てきましたし,スムーズに進みましたね。
吉田氏:
お互い企画書一発ずつで,とくに差し戻しもなく「やるなら思い切って料理してください!」という感じでした。うちのチームには,僕も含めてガチのモンハンプレイヤーがいるので,預かるとなったら全力でやります。逆に,カプコンさんも「本当にここまでやるの!?」って思うようなものが出てきたり。
辻本氏:
「ここまでやるんですか!?」はこちらも思いました。しかも,参加条件そんなに厳しくていいんですかと(笑)。
――FFXIV側にはリオレウスが,MHW側にはベヒーモスが登場しますが,その選定理由はなんでしょうか。
吉田氏:
僕はモンハンを初代からプレイしていて,リオレウスと戦ったときに「どうするんだこれ」と思ったんです。当時,あんなにシビアなサシで戦うアクションゲームはなかったので,ドラゴンに人間が勝てるわけないじゃんと。でも,動きを見極めて,生態を追っていけば倒せる。僕の中で,モンハンを象徴するモンスターなんですよね。
ずっとパッケージを飾ってきたのもリオレウスでしたし,世界にこのモンスターを伝えるというのも今回のコラボの使命だと考えていたので,ほかのモンスターの選択肢はあまりありませんでした。
辻本氏:
うちはシンボル的なモンスターというのは大前提として,モンハンに入ってきたときに,ほかのモンスターと被らない,アクションゲームとしてのアイデアを盛り込めるかどうかも重要視しています。そうした遊びの部分を検証した結果,ベヒーモスはいけるという結論になりました。
――お二人はお互いのタイトルをどれぐらい遊んでいるのでしょうか。
実は僕はほとんどFFXIVを遊んでいなくて,今回のコラボ参加条件は,僕に向けた挑戦状なんじゃないかと思っています(笑)。
吉田氏:
でもモンハンチームには,明らかにガチ光の戦士が何人かいますよね? 監修でベヒーモスを見ていると,作り込みが異常ですよ。仮に良三さんが挫折したとしても,余りあるぐらいの光の戦士力です(笑)。
逆に僕は,ガチモンハンプレイヤーです。一番遊んだのは「モンスターハンターポータブル 2nd G」(以下,P2G)だと思いますけど,1200時間ぐらいやりました。全クエスト,全ダウンロードコンテンツ(配信クエスト)を大剣1本でクリアしたので。飛んでくるリオレウスを後ろ薙ぎで落とすのを趣味にしていたぐらいなので,おそらく当時動画配信をやっていたら,もうちょっと有名になっていたと思います。
辻本氏:
吉田さんとの初めての出会いも,P2Gを一緒にやったときですよね。カプコン2人,スクエニさん2人が集まって,その中に僕と吉田さんがいました。吉田さんがずっとP2Gをやっていると聞いて,じゃあみんなでやりましょうという話になったんですけど,カプコン側がまさかの3落ちをしてしまって。
吉田氏:
確か,その日にラージャン2頭のクエストが配信されて,すごい数の生命の粉塵を使いましたね。最初のうちはまだ笑っていたんですけど,カプコンさん側がそれぞれ1落ちして,「次死んだら終わりですけど? まさかカプコンさんが3落ちはないですよね?」って言っていたら,本当に死んでしまいました。
辻本氏:
ああやって人って仲良くなっていくんですね……。
――モンスターハンターには,各モンスターに細かな生態の設定があると思いますが,ベヒーモスにもそうした設定は考えられているのでしょうか。
辻本氏:
コラボモンスターなので,そこはアクション部分を楽しんでもらうことに重点を置いています。でも,だからといって違和感があるとかは絶対にありません。
吉田氏:
僕も監修させていただいていますけど,FFXIVとのつながりがきちんと落とし込まれていますし,テキストから出現理由まで,プレイしてもらえれば納得できるので,ぜひ確認してみてほしいです。
――モンスターハンターのモンスター達は,「○○龍」などの漢字表記もされますが,ベヒーモスはどうなるのでしょう。
辻本氏:
「魔獣」になると思います。
――ということは,「魔獣の角」や「魔獣の爪」みたいな素材が取れそうですね。
辻本氏:
素材といえば,ベヒーモスを作るにあたって部位破壊してしまっていいのかを最初に確認したんです。そしたら,「ガンガン破壊してください」と言われました。
吉田氏:
折れるもの,壊れるものは全部壊してほしいですね。プレイヤー目線で言えば,明らかに角は折れなきゃダメだし,2本あるから1本ずつ折れてほしいし,爪も明らかに破壊できるじゃないですか。背びれもいけるし,尻尾も長さがあるので切れるはずです。
辻本氏:
最終的にどうなったかは,実際に破壊して確かめてください。
吉田氏:
仮に,ベヒーモスの部位破壊ができず,グラフィックスの欠損も起こらないとしたら,きっと「スクエニがダメだって言ったんだな」と言われると思うんですよ。それは,せっかくコラボしても冷めてしまうので,思い切りやっていただきたいです。
――モンスターだけでなく,装備品などのコラボもあるんですよね。
辻本氏:
もちろんあります。ただ,詳細は続報をお待ちください。
今回のコラボは,先ほどお話ししたとおり,世界で展開できるタイミングだから実施したというのもあって,まずはE3で情報を出させていただきました。これを皮切りに,詳しい情報をお伝えしていきます。
吉田氏:
ここまでガチでやっているコラボですから,手に入るものもガチだと思っていただいて大丈夫です。
――実装はどちらも夏になるんですよね。
吉田氏:
そうなんですけど,コミュニティの反応で「カプコンとスクエニの夏はかみ合うのか」というのがあって面白かったですね。
辻本氏:
(爆笑)。
吉田氏:
よく「スクエニは9月も夏だと思ってる」とか言われるんですよね。実はカプコンさんの言っている夏とは違う月のことかもしれない(笑)。
――今回のコラボで,プレイヤーの皆さんにどういった効果があると期待していますか?
吉田氏:
それでプレイヤーが何人増えるとか,売り上げがどうとかは関係なく,「この2つのゲームならまた面白いことをやってくれるんだろうな」と思ってもらえれば成功ですね。ゲーム業界で,本当にゲームが好きな会社同士が,しかも世界で戦っているタイトルがコラボするというお祭り感を楽しんでいただければいいんじゃないかと思います。
辻本氏:
モンスターハンターのコンシューマーシリーズ,アクションシリーズとして,コラボでモンスターが出てくるのは初めてなんですよ。一体どんなことをしてくるんだというワクワク感があると思うので,ぜひ楽しんでほしいですね。
吉田氏:
先ほどお話しにあったとおり,モンスターの生態系などはすごく大事にされているのに,コラボで「今回はぜひモンスターで!」と言ってもらえたのは,すごく光栄なことです。ですから,これまでコラボモンスターが出てこなかったのは,僕は勝手に「FFXIVがここまで来るのを待っててくれたんだな」と思うことにしています。
――FFXIV側の参加条件は,キャラクターのレベルを70にして,メインクエスト「紅蓮のリベレーター」までクリアが必要と,ハードルが高いように見えますが,なぜこの条件にしたのでしょうか。
吉田氏:
リオレウスの強さをFFXIVで表現するには,レベル70で戦ってもらわないとできないと思ったからです。社内でも,広報などからは「高くないですか?」と言われましたけど,モンハンプレイヤーはガチ勢だから大丈夫だと説き伏せました。もう僕らからハンターに対しての挑戦状ですね。
こうした設定なので,リオレウスの強さはちゃんと感じてもらえますし,現役のトッププレイヤーでも楽しめると思います。
――お互いのモンスターを出すにあたって,例えばオリジナルにはない攻撃モーションなどが必要になることもあると思いますが,そのあたりはどのように落とし込んでいるのでしょうか。
辻本氏:
確かにモーションはこちらで作る部分も出てくるのですが,絶対にイメージを損なわないよう作っていますね。モデルの形状なども,イメージどおりになるよう調整しています。
吉田氏:
お互い,無理やり感みたいなものはないですよね。FFXIVプレイヤーがMHWのベヒーモスを見ても,その逆でも,納得できると思います。モデルやテクスチャ,アニメーション,SEやBGMも,使えるなら全部使ってくださいとお互いデータを渡し合っています。
今回,データのやり取りをしていて面白かったのが,MHWのリオレウスって,ちょっと色が薄いんです。MHWのシェーダってすごく特化したものなので,元テクスチャの色が薄くて,僕の知っているリオレウスはもっと赤いなと。シェーダもレンダリング環境もライトの当たり方も違う中で,リオレウスの赤みを表現するために,かなりこだわって調整しているので,そういった点でもイメージどおりだと思います。
――最後に,各ファンに向けてメッセージをお願いします。
辻本氏:
今回のコラボは,すごくいいものができたと思っています。違う会社でありながらも,こんなバカなことをやるんだと思ってもらえたら嬉しいですし,できれば両方のゲームを触ってもらいたいです。どちらもオンラインのゲームなので,お互いのコミュニティの輪が広がるといいですね。
吉田氏:
どうしても,オンラインゲームって聞いただけで毛嫌いしてしまう人はいると思います。MHWでも,ずっとソロプレイをしている人もいますし。でも,今回こういうコラボが生まれたのは,良三さんや藤岡さんとつながれたからです。もちろん,1人で遊ぶのが悪いとは思いません。僕も1200時間ソロプレイで遊びましたし。ただ,今は人と遊ぶことに理由をつけなくていい時代ですから,あまり気負わずにどっちも触ってもらいたいです。
プレイヤーを交換したいわけではなく,それぞれの良いところを再認識できると思うんですよ。モンハンファンがFFXIVを遊んで,モンハンの良さを改めて認識するですとか。そういう波及効果がそれぞれに生まれてほしいですね。
あとは,こういうバカなことをする日本の開発者が,まだまだいっぱいいるんだということを,世界も含めて見せられれば,成功かなと思います。
――ありがとうございました。
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