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「Eden Obscura」のBaiyon氏にインタビュー。「透けたもの」への言語化できない愛情が幻想的なビジュアルを生み出した
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印刷2018/05/14 15:39

インタビュー

「Eden Obscura」のBaiyon氏にインタビュー。「透けたもの」への言語化できない愛情が幻想的なビジュアルを生み出した

 京都府・みやこめっせで2018年5月12日,13日にインディーズゲームの祭典「BitSummit Vol.6」が開催された。その会場で,PixelJunkシリーズ初のスマホアプリ「Eden Obscura」iOS / Android)のクリエイティブ・プロデューサー Baiyon氏に,カメラから取り込んだ光景をリアルタイムで処理し,幻想的な背景にする同作について,気になるところを聞いてみた。

「Eden Obscura」のクリエイティブ・プロデューサーであるキュー・ゲームス Baiyon氏
画像集 No.002のサムネイル画像 / 「Eden Obscura」のBaiyon氏にインタビュー。「透けたもの」への言語化できない愛情が幻想的なビジュアルを生み出した

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画像集 No.004のサムネイル画像 / 「Eden Obscura」のBaiyon氏にインタビュー。「透けたもの」への言語化できない愛情が幻想的なビジュアルを生み出した

4Gamer:
 よろしくお願いします。まずは「Eden Obscura」の配信日決定,おめでとうございます(関連記事)。

Baiyon氏:
 ありがとうございます。2018年5月18日に配信(※iOS版。Android版は6月1日配信予定)されますので,ぜひダウンロードしてみてください。
 私が初めて手がけたゲームである「PixelJunk EDEN」をモチーフとしたモバイルゲームが「Eden Obscura」です。「PixelJunk EDEN」は「グリンプス」を操り,ステージのどこかにある「スペクトラ」という生命の源を回収していくゲームで,こうした基本ルールは「Eden Obscura」でも変わりません。「ポレン・プラウラー」という敵に体当たりして「ポレン」を回収すると,植物状の足場が成長していきます。こうして行動範囲を広げていき,スペクトラを探すんです。


4Gamer:
 「PixelJunk EDEN」的な遊びが,モバイルデバイスでも楽しめるわけですね。

Baiyon氏:
 「Eden Obscura」は,スマートフォンやタブレットのカメラから取り込まれた現実の光景をリアルタイムで処理し,背景に使うのが特徴です。切り子のグラスを通して見たような感じになったり,現実の光景をバラバラのピースにして再配置し,デバイスが動くにつれてピースも動いたりと,独特のビジュアルを楽しんでいただけます。

4Gamer:
 現実の光景をそのまま背景にするのではなく,独特な処理を施して,幻想的なビジュアルを表現していると。

ステージを選ぶ画面では,取り込まれた光景がどうなるかをプレビューできる。「Snip snip clang clang α」では,タブレットのカメラから取り込まれたBaiyon氏の顔が,切り子ガラスを透かしたかのようにリアルタイム処理されている(写真左)。こちらはデバイスを動かすとシャボン玉状の物体がキラキラと輝く(写真右)
画像集 No.005のサムネイル画像 / 「Eden Obscura」のBaiyon氏にインタビュー。「透けたもの」への言語化できない愛情が幻想的なビジュアルを生み出した 画像集 No.006のサムネイル画像 / 「Eden Obscura」のBaiyon氏にインタビュー。「透けたもの」への言語化できない愛情が幻想的なビジュアルを生み出した

Baiyon氏の顔がシルエット状になっており,ゲーム内で主人公が回転すると,これに伴ってシルエットもかき混ぜられる
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Baiyon氏:
 ええ。僕は子供の頃から,透けているものが大好きだったんです。子供の頃は,糊を固めたものをはがしたりして,透けたものを集めていました。こうしたものには独特の魅力があるじゃないですか。例えば昔のiMacやスケルトンのゲーム機,クッキーを包んでいる半透明のワックスペーパーなど,うまく言葉にはできないけれど「いいな」と感じるんです。

4Gamer:
 確かに,骨董屋にあるステンドグラスや,色のついたガラスのボトルなんかは見入ってしまいますね。

Baiyon氏:
 透けているものを見ると,何となく感心したり,快く感じるけれど,それが何故かは分からない。人間の根源的なところを刺激する何かがあるのかもしれませんね。

4Gamer:
 言語化するのは難しいけれど,心惹かれるものがあります。

Baiyon氏:
 そんな透けたものの魅力を,モバイルデバイスのカメラを用いて表現するというアイデアがうまくいったので,「Eden Obscura」に使いました。カメラで取り込んだ光景が,プレイヤーの操作やデバイスの動きに応じて変化するのもポイントで,例えば,グリンプスが「シルク」というワイヤーにつながれた状態でグルグル回転すると,それに伴って背景もかき混ぜられたようになる……といった具合です。

4Gamer:
 こうした変化はプレイに影響を与えますか。

ゲームはフリックやタップで操作する。植物状の足場から飛んで敵に体当たりし,ステージ内に配された「スペクトラ」を探す
画像集 No.009のサムネイル画像 / 「Eden Obscura」のBaiyon氏にインタビュー。「透けたもの」への言語化できない愛情が幻想的なビジュアルを生み出した

Baiyon氏:
 あくまで背景で起こる出来事なので,基本的にプレイには関係ありません。カメラに光を取り入れると真っ暗だったステージが明るくなるような例外はありますが,プレイヤーさんにアート的な体験をしてもらえるといいんじゃないかと思って取り入れているんです。
 また,カメラの面白い使い方としては「Color Catcher」というものを用意しています。指定された色の物体をカメラに収めると色のパワー的なものが蓄積されていき,新たなステージが開放されます。

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「Color Catcher」は,指定された色の物体をカメラ内に収め続けていると,色のパワー的なものが蓄積されていく
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このステージは最初真っ暗だが,カメラに光が当たると闇が晴れていく

4Gamer:
 カメラに収める物体は何でもいいんですか。

Baiyon氏:
 はい。床でも,服でも,本の表紙でも何でもOKです。人の生活と「Eden Obscura」を結びつけて,ゲームと現実の境界線を曖昧にしたかったんです。

4Gamer:
 収益モデルはいわゆる基本プレイ無料でしょうか。それとも買い切り型ですか。

Baiyon氏:
 基本プレイ無料で,アプリ内購入があります。課金要素としては,追加のステージや背景エフェクトを購入していただく形になります。DLC的な感覚ですね。ただ,最初の状態でもいろいろなステージが収録されていますので,かなり遊べますよ。

4Gamer:
 キャラクターについてはどうでしょうか。

Baiyon氏:
 キャラクターはプレイを進めていくことでアンロックできます。「PixelJunk EDEN」からかなり数が増えていて,名前やキャラクター性,セリフなどに音楽ネタがたくさん含まれていますし,糸井重里さんからの影響もとても大きいです(笑)。

4Gamer:
 キャラクター達の性能に違いはありますか。

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Baiyon氏:
 違いはありますが,その日の気分で選んでほしいので,そこまで大きな差違はありません。また,さまざまな効果を持つ「スパイス」という消費アイテムがあり,こちらも気分で使ってもらうことでプレイが変化しますよ。

4Gamer:
 スパイスの効果はどういったものに?

Baiyon氏:
 敵の攻撃を跳ね返したり,制限時間を延ばしたりといったゲームっぽいものから,「フロントカメラとバックカメラの画像を入れ換える」という趣味的なものまでいろいろです。プレイの結果に応じてスパイスの欠片が手に入り,これが規定数集まると完成して使えるようになります。
 ちなみに,スパイスのアイコンは水彩で描いたものを取り込んでいて,色のかすれなどもわざと残してあります。理屈で作られたゲームの中に,人間っぽさを残したかったんです。

プレイに変化をもたらす消費アイテム「スパイス」
画像集 No.013のサムネイル画像 / 「Eden Obscura」のBaiyon氏にインタビュー。「透けたもの」への言語化できない愛情が幻想的なビジュアルを生み出した

4Gamer:
 最後にメッセージをお願いします。

Baiyon氏:
 「今の自分にはこのように世界が見えている」というところを詰め込んだ作品になっているので,「PixelJunk EDEN」を楽しんでくださった方は,ぜひダウンロードして遊んでみてください。ゲームというメディアの可能性を広げる意味でも面白いタイトルで,エンターテイメントアプリにもなっています。また,ゲームとしてハードコアに遊べるものになっているので,初めての方も触っていただければと思います。

4Gamer:
 ありがとうございました。
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