インタビュー
位置情報ゲーム「マップラス+カノジョ」のある生活――波多紘幸氏に教えてもらった,リアルライフとバーチャルライフのエバーグリーン
情報ではなく,人を見せる
波多氏:
現代社会が抱えるストレスの原因はさまざまですが,その中に「インターネット」があります。ネットワークの通じた社会では情報が氾濫していて,ひとりの人間が抱える情報量も膨大になっています。
4Gamer:
いろいろ離れている実感はするものの「若者のインターネット離れ」はいまだに聞いたことないかも。
波多氏:
その前提のうえで,物語は今の日本にある,東京郊外の海辺の街の一角(鎌倉。湘南地域を想定)ではじまります。
4Gamer:
うち(編集部)から遠そう。
波多氏:
そこでは大量の情報を受け止めきれず,意識を閉ざして深い眠りについてしまう現象「眠り病」が社会問題化しています。そして行政機関は被害者の治療を目的とし,医療機関「ミチビキ研究所」を発足しました。
4Gamer:
意外と物々しい。
波多氏:
そしてこの研究所の所長というのが,プレイヤー(主人公)の従姉「柊木ひびき」です。プレイヤーは彼女の助手として眠りについている女の子達,つまりカノジョ達を眠りから覚まさせる手助けをしていくことになるんです。
4Gamer:
カノジョ達は情報を受け止めきれなかった子達なんですか。
波多氏:
思春期の子供は15才ごろから親の庇護下を徐々に離れていき,自身の目で新しいものを見て,自身の足で知らなかった場所に行くようになります。いわば人生における扇状地です。多感な年代の子達はいろいろな物事を吸収し,成長していきます。ですが,中には受け止めきれない子もいます。プラカノはそういう少女達と歩む物語です。
4Gamer:
小学生・中学生は自宅と学校,周辺の遊び場といった目に見える場所がすべてになりがちですが,高校生ともなるとあらゆる場所が「行けるところ」になるというか,その人の世界が一気に広がりますもんね。
波多氏:
まあ,このあたりの設定だけ見るとファンタジー寄りではありますが。
4Gamer:
それにしても,今の公式サイト(5月時点)とは雰囲気がちょっと違うというか,私はもっとライトな印象を持っていました。どちらかと言うとカノジョ達の繊細さよりも,偶発的な事故からはじまるラブコメみたいなイメージが強かったんですが。
波多氏:
この記事を掲載してもらえるころ,事前登録がはじまるタイミングで公式サイトの雰囲気がガラッと変わる予定なんですよ。今話したような仕込みをすべてお見せするので,以前の印象を持たれている方は公式サイトをあらためて見てもらえると幸いです。
4Gamer:
それは楽しみです。では,手持ちの情報があてにならなくなったところで,主人公とカノジョ達がどのように関わっていくのかを教えてもらえますか。
波多氏:
分かりました(笑)。主人公はひびきに誘導され,カノジョ達の夢の中に入っていきます。プレイヤーはカノジョ達がまた社会生活を営めるよう,現実の素晴らしさに共感してもらえるよう,コミュニケーションを取っていきます。すると,カノジョ達はやがて目を覚まし,夢の中で抱いた“自身の夢”のために新しいステージへと向かっていきます。ついでに言うとそこから先,カノジョ達が「歌手になりたい」「小説家になりたい」といった夢の実現までたどり着いたとき,現実でもCDや本を出しちゃうわけです。
4Gamer:
つまるところ,このゲームは「夢の中のカノジョ」「現実で頑張るカノジョ」「夢を叶えたカノジョ」といった3つのフェイズが用意されると? クロスメディア展開やリアル連動イベントの核心って,これだったんですね。
波多氏:
そのとおりです。現時点で発表している講談社さんとの提携も,そういった先の展開を見据えてのことです。地名や駅名など,実在する固有名詞もできるかぎりゲーム内で使えるよう,江ノ島電鉄などの関係各所との交渉を進めています。これらの世界観のうえで,プレイヤーにカノジョをめぐる日常を体験してもらうわけです。
4Gamer:
主人公はプレイヤー投影型のようですが,どのようなキャラ付けがされているのでしょう。現公式サイトでは“とある学園都市で暮らす冴えない男子学生”という,ティーンエイジ設定の数え役満みたいな存在ですが。
波多氏:
眠り病に陥ってしまったカノジョ達は根が繊細で優しいんです。でも,カノジョ達自身は「自分がそういう女の子だ」と気づいていないし,気がつけません。現実でも自分自身を客観的に捉えるのは中々難しいことですから。でも,主人公はカノジョ達がそうであると知って,共感することができます。なので主人公もカノジョ達と同じく,純粋で繊細さを持った人間像であると捉えておいてください。
4Gamer:
まさに僕みたいだ。
波多氏:
よかったです(笑)。ちなみに「自分はそういう人間じゃないから,主人公に感情移入できない」と考えるのは間違いです。単純な話,古今東西で読まれている漫画や小説の登場人物で,自分とはまったく違うと思っているのに感情移入してしまうキャラクターは皆さんの中にも存在しているはずです。感情移入というのは,自分でも気づいていないちょっとしたところからはじまるものです。
4Gamer:
そう言われるとそうですね。「完全に物言わぬ主人公だから自分を投影できる」だけを正解としていなければ,そのように考えておくほうが好みの打率も上がりそうですし。
波多氏:
主人公の人格というのはある意味,催眠術の手法とも言えますからね。それと強調しておきたいのは,プラカノでは情報を見せるのではなく“人を見せる”ようにしたいと考えていることです。
4Gamer:
深そう。詳しくお聞きしても?
波多氏:
今の世の中,人と会うと“その人に付帯する情報”を見がちです。ほとんどの人は無意識に肩書きや所属など,その人をとりまく情報から目を向けてしまいます。
また,SNSなどを使えば個人が広告となって,自身の人格をさまざまな形に視覚化できます。それを見た人達は“視覚化された人格”に対して「いいね」を押します。
仮に自分自身をSNS上で正しく表現できている人がいても,その人の本当は誰も知り得ません。だって,見ている人は視覚化された情報で「こういう人だ」と認識しているだけなのですから。
4Gamer:
耳の痛い話だ。私と話している波多さんが「クレイジーでファンキーな人」だったとしても,読者に伝えている情報化した波多さんが「聡明で物静かな人」だったら,皆さんの波多さんのイメージは後者になってしまいますもんね。
波多氏:
できれば例を逆にしてほしいですけど(笑)。要はその人に会わなくても,その人の情報を見たり読んだりすれば分かった気になれるのが現代社会というわけです。
4Gamer:
しかし,プラカノはそうじゃない。
波多氏:
はい。プレイヤーは作中でカノジョ達の本質に直接向き合います。互いに優しい人だからときには傷つけ合うこともありますが,キャラクターの特徴や要素を押し出すだけじゃない,人間味の詰まった少女達のディテールを感じられると思います。
4Gamer:
小賢しい逆説を吹っかけますが,「情報化された人格を見ることが現代の人付き合いのスタンダード」とした場合,本作の楽しみ方は対岸にあると言えるのでは。
波多氏:
問題自体は否定しきれませんが,現代でいかに人を見なくなったと言えども,コミュニケーションの本質はそれほど変わっていません。たどり着く先は誰でも「実際に会って話して」でしょう? 人情味が溢れていたというイメージを持たれやすい昭和世代も,あくまで「人を見るしかないから人を見ていた」だけです。そしてプレイヤーはプラカノをやるとき,誰もがカノジョを見るしかないんです。そう見せる工夫を重ねています。偽りすらも気づかせられるゲームという媒体だからこそ表現しやすいのも利点です。
4Gamer:
人を見る手段の割合が変わっているだけだから問題にはならないと。得心いきました。それと同時に「ものすごく難しそうな表現をいかにコンセプトどおりに体験させるのか」が最大の懸念点となりそうですが,いかかでしょう。
波多氏:
仰るとおりです。僕もゲーム開発における企画倒れの前例は数多く目にしてきましたしね。ですが,ゲームを作る側にとって大切なのは“その着想を持てるか持てないか”です。着想がなければ新しさに挑むことなんてできませんし,もしダメでも次またチャレンジすればいいんです。もちろん,プラカノがダメって意味じゃないですよ(笑)?
4Gamer:
分かります。成功するか失敗するかは二の次として,着想を持たずに新しいモノなんて生み出せないってことですよね。
ええ,賢しらげに「失敗したら目も当てられない」「そんなことできるわけない」と立ち止まっていてはありふれたモノしかできません。
しかしまあ,先ほど自分で関係ないと言っておいてなんですが,振り返ると今このチャレンジ精神を明確に持っていられるのは“中国のゲームクリエイターの姿”を目にしてきたおかげかもしれません。
この気持ちは間違いなく,彼らの姿勢にインスパイアされたものなので。
4Gamer:
市場だの技術だのより,そういう刺激を逆輸入するほうが風向きが良くなるんじゃ。
波多氏:
かもしれませんね。タイミングが違ったら僕も「無理だやめとこう」の思いで,紋切型のIPゲームを量産していたでしょうし。
4Gamer:
ご冗談を。さて,プラカノの提供者には非常に答えづらい質問かと思いますが,波多さんは「2次元のカノジョ」と「3次元の彼女」のどちらを優先すべきと考えていますか。
波多氏:
いろいろな意味で難しい質問ですね(笑)。人が現実で生活していくうえでパートナーが求められるのは必然です。でも,ゲームの中ではさまざまな人格の理想的な異性と関係を持てるので,現実にはない楽しみが体験できます。そして,そのうえで僕が考慮してきたのは「我々はゲームの世界を作る側にいる」という自覚を持つことでした。
4Gamer:
普通なことに聞こえますが,その真意は。
波多氏:
したり顔で言うつもりはありませんが,ゲームを作る側というのは存在自体がメタであり,ゲームにおいての神でもあります。僕も自分自身が神の視点であるとしっかり認識したうえで,作品の世界を形成しています。プラカノのようなコンセプトで異性間の関わりを描くときはとくに,どこか一方向に視点が偏ると「木を見て森を見ずのアンバランスさ」につながる恐れがあります。多くの人達に違和感なく受け入れてもらえる人物像を作り上げるためにも,なるべく俯瞰的に見ようと心がけてきました。
4Gamer:
欲望の赴くままに理想の美少女を仕上げる方法とは対極にありそうなスタンスです。作中のカノジョ達がどのような温度感なのかも,なんとなくですが分かる気がします。一応尋ねますが,プラカノは恋愛ゲームに種別されるのでしょうか。
波多氏:
いやライフゲーム,ですね。
4Gamer:
ライフエンターテインメントだけに。でも,メインターゲット層ってやはり10代,20代の男性ですよね。
波多氏:
そうですね。もっと言えば“夢男子”です。
4Gamer:
ヒロインとの恋愛を夢見る系の男子,という解釈でしょうか。
波多氏:
ええ,このゲームを長く遊んでくれるのはきっとそういう方々です。そのためにも今から「カノジョと付き合いたい!」「カノジョと結婚したい!」といった,いずれくるであろう要望にいかに対応するのかを考えておかなければなりません。
4Gamer:
最初からコアユーザーに向けた方針を持っているんですね。
波多氏:
そういった先々の展開までたどり着けたとしても,「ほかの子と付き合ってるのに,違う子と結婚するのってどうよ?」などの問題はありますけどね。ゲーム的な仕組みで解決するか,いっそ割り切って「みんなで結婚してもいい世界」にしてしまうか,しかしそうするとリアリティが薄れるしどうしたもんかと……いろいろ思案のしどころです。
4Gamer:
そこまでいっても,恋愛ゲームではない?
波多氏:
皆さんが期待している恋愛的なアプローチは少なくないとはいえ,焦点をそこだけに置いているわけじゃないので。もっと広い視点でカノジョと付き合ってもらえると嬉しいです。プラカノでは架空の世界で仮想の恋愛体験をしてもらうのではなく,リアルな世界でリアリティのある人付き合いをしてもらいたいので。
4Gamer:
だとすると,カノジョとの恋愛が成就してエンディングでめでたしめでたし,ともならないんですか。
波多氏:
現実でも恋愛が成就したらエンディングになって終了,なんてことにはならないでしょう?
4Gamer:
そりゃそうか。
行かなくても行ったことにできちゃう
4Gamer:
キャラクターデザインには「涼宮ハルヒの憂鬱」「けいおん!」「たまこラブストーリー」などの作品で有名な,京都アニメーションの作画の顔役とも言える堀口悠紀子さんが起用されていますよね。
波多氏:
はい,大きなウリのひとつです。
4Gamer:
堀口さんともなると“すでに確固たるカラーが付いたデザイナー”だと思うのですが,選定された理由はなんでしょう。知名度のブーストなどの意図は分かりますが,私なんかはキャラデザを見た瞬間,「これ京アニの新作かな?」と思ってしまいましたし。
波多氏:
最初に言ったとおり,プラカノには昨年から今年にかけて大きな断層があったので,そこで大いに頭を悩ませたうえでオファーさせていただきました。大きな理由としては,カノジョ達の設定負けしないデザイン性を確保し,キャラクターの良さを最大限生かしたかったからです。
4Gamer:
それじゃあ,もうひとつ。アニメ調のキャラクター自体は悪いことなく満点に感じますが,デザイン的にはリアルな人物像と見るより,架空の人物像であることを強く浮き彫りにしてしまうのではと。重箱の隅をメタで突いてしまって恐縮ですが。
波多氏:
ゲームである以上,メタの超越には限界があるとしたうえでの回答ですが,仮に写実的なキャラクターを用意したら,エバーグリーンな体験はできないと思うんですよね。
4Gamer:
ビックリするほど納得しやすい。オタク気質な私の場合,良いか悪いかは別の話としても間違いなく「生々しさ」が先行するはずですので。
波多氏:
キャラクターデザインの第一印象で架空であることを強調してしまうのは事実ですが,未来の日本や眠り病といった設定を内包させるのに適した“ゲームらしいバランス感”を踏まえると,堀口さんの絵は最適だと考えています。
4Gamer:
メインの登場人物は,新たに急ピッチで加えた、小宮由花(CV:※随時発表),句保詩乃(CV:佐倉綾音),倉丘伊都(CV:内田真礼)をはじめ,相沢美緒(CV:三澤紗千香),片岡 栞(CV:大西沙織),橘 奈央(CV:伊藤美来),興梠絵麻(CV:高野麻里佳),伊野波彩野(CV:芹澤 優),神代由希子(CV:大久保瑠美),綾波亜衣里(CV:藤田 茜),優木香於里(CV:山下七海),柊木 響(CV:高橋李依)の計12人ですか。年齢や趣味もバラバラです。出演声優に頭を悩ませたりは。
波多氏:
社内で熱量の高い議論を交わし,キャラクター性にマッチする最大公約数を目指しました。キャスティングには満足いっていますが,悩ましいのは「収録が終わっちゃったけどあのセリフを変えたい,このセリフを追加したい」に苛まれていることですかね。
4Gamer:
弄りようがないですもんね。
波多氏:
一応,ゲームをはじめたばかりの段階では「小宮由花」「句保詩乃」「倉丘伊都」の3名が初期開放されているので,ビビっと来た子を選んでみてください。
4Gamer:
カノジョは複数人の同時攻略もできるんでしょうか。
波多氏:
できます。
4Gamer:
俗に言う「ヤンデレ」のような悲劇が引き起こされたりは。
波多氏:
カノジョによります。ひとりひとりのパーソナリティは細かく設定しているので,ヤンデレとまではいかずとも,皮肉っぽいことを言う子もいますね。
4Gamer:
女の子同士のイチャイチャはどうでしょう。今のトレンドかと思いますが。
波多氏:
サービス開始時には予定していません。“プレイヤーとカノジョの世界”に重点を置きたいので。ただ,プレイヤーがカノジョと話している場面でほかの子が乱入してきて「2人ってさあ,なんか恋人みたいだね?」などと,ちょっかいをかけてくる要素は入れようと思っています。
4Gamer:
悪友ポジションのわき役がよくやるアレだ。
波多氏:
アレです。
4Gamer:
それではゲーム部分の話も進めたいのですが,まずは遊び方を教えてもらえますか。
波多氏:
はい。基本的なゲームサイクルは「プレイヤーの位置が示される」「マップ内のオブジェクトをホールドする」「手に入れた“記憶のかけら”を使って,カノジョ達とコミュニケーションを取る」となります。女の子との物語を進行させ,眠りから覚まさせるのが最初の目標です。ほかにもスマホゲームらしいさまざまな機能を搭載しています。
4Gamer:
記憶のかけらさえあればコミュニケーションはやり放題なんですか。
波多氏:
物語のアンロックには,記憶のかけらと「ユーザーランク」が関係してきます。ランクはマップ上のオブジェクトを回収したりして経験値を獲得すると上げられます。そしてマネタイズの話につなげると,プラカノのゲーム内リソースは「記憶のかけら」に集中させています。かけらはガチャにも使えるようになっていて,ガチャで新しいカノジョと出会えると専用ルートが開放される仕組みです。
4Gamer:
なるほど,そういう構造でしたか。
波多氏:
かけらは時短要素にも関係します。マップ上での操作はいわゆるスタミナを消費しますが,そのときのスタミナ回復で利用できます。
4Gamer:
ゲーム進行,ガチャ,スタミナ回復など,ひとつのリソースに役割が集中されている作品は「どう使っていくかが悩ましい」という楽しさがあるんですよね。それと,カノジョとはどのようなコンテンツで触れ合えるのですか。
波多氏:
夢の中に入るのはいわゆる物語が進行するアドベンチャーパートで,日常的な触れ合いが楽しめるのは「ホーム」となります。ホーム内の背景は,室内や室外などの環境によって変化できるようにします。
4Gamer:
プレイヤーの応答によって反応が変わるなど,双方向の会話もできたりは。
波多氏:
サービス開始時にはありませんが,チャットボットのようなAI会話の仕組みで“より自然な会話を楽しんでもらう”などの構想はすでに用意しています。いずれ実現させたいですね。
4Gamer:
場所によって特有の会話が発生するとかは。カノジョ達の趣味欄の「映画鑑賞」「カラオケ」といった項目が反映される,みたいな。
波多氏:
ありますよ。歌が好きな女の子ならCDショップで独自の会話が展開されますし,プレゼントアイテムの種類によってそれらの反応を引き出せるようにもしています。あとプラモデルが好きなカノジョであれば「専門的な模型の情報」を喋ってくれるなど,趣味嗜好に関する“有益な情報の提供”も予定しています。
4Gamer:
趣味が合う子だと相性がよさそうですね。
波多氏:
関連施設などとの交渉が必要なケースもあるので網羅的にとはいきませんが,会話情報をどのように拡張していくのかは随時検討していきます。ネット上のニュースソースをリアルタイムで活用できる仕組みを形成するとか。
4Gamer:
「ゲームが好きなカノジョ」に4Gamerの記事を会話リソースとして提供したら,「〜〜ってこういうゲームシステムなんだって」のポップをタップしたプレイヤーが該当記事に飛んでくる,なんてこともできるんですか? ぜひとも協業させてください。その子はファンから“4亀の刺客”とか呼ばれてしまうと思いますが。
波多氏:
いいですね,全然できますよ。ぜひともやりましょう(笑)。
4Gamer:
周辺のおすすめのお店を教えてくれる機能とかはどうですか。食べログ的な。
波多氏:
紹介する機能はありませんが,「CDショップに行こうよ」などと誘ってくることはあります。実際に足を運ぶとゲーム内で特典が付与されます。
4Gamer:
キャバメきちゃった。その類のシステムを搭載されると「立ち寄るのがプレイヤーとしての義務」になりそうでちょっと怖いんですが。負担的な意味で。
波多氏:
安心してください。そこはプラカノならではの工夫として“行かなくても行ったことにできるシステム”を搭載しています。
4Gamer:
どんなシステムです?
波多氏:
詳細な数字は調整段階にありますが,ゲーム内では半径数百メートル圏内をマップ上に反映し,そこにポップアップしたオブジェクトを消化してもらいます。そしてどこかへのアクセスが求められたときは「現在位置から該当地点までを一筆書きしてつなげる」と,現地に行かずとも“行ったことになる”んです。
4Gamer:
いいですね。店舗の入り口でニヤニヤしながらスマホを操作したらすぐに出ていく案件を起こさずに済みそうです。
波多氏:
周辺環境に対するフォローもできていると思います。
4Gamer:
周囲にお店がないのに「俺君だったら絶対に行ってくれるよね?(怒)」みたいな苦境に立たされることはありませんか。
波多氏:
そのあたりは位置情報のデータベースをひも付けて,無茶な要求をさせないようにすることを課題としています。裏技として「オンラインショップへのアクセス」で消化できればよさそうなんですけどね。できるかどうかはまだ不明ですが。
4Gamer:
休日のお出かけ先ガチャと考えれば悪くないかも。さて,プレイの一連の流れをまとめると,通勤・通学で家から駅まで10分,電車に乗って30分,駅から学校・会社まで10分くらいとして,その間にマップ上で操作をするんですよね。リアルで動き回り,外で立ち止まってと能動的なプレイが求められそうですが,寝っ転がって遊ぶのは難しいですか。
波多氏:
順に説明すると,マップ上の操作は数分でこなせますし,一回のゲームサイクルでスタミナがちょうど枯渇するようなバランスにしているので,ゲーム画面をずっと眺め続けるような遊び方はしなくても大丈夫です。動きたくないときや電車の中にいるときは物語を進めたり,ルームで会話したりして楽しんでもらおうと考えています。
4Gamer:
マップ上の操作はササッとこなせそうですね。ゲームプレイの回転率もよさそうなので,スタミナ回復をうまく活用すればそれほど手間なくランクを上げられそうですし,わりと快適に遊べる仕様に思えます。
波多氏:
プラカノでは狙いを定めなければいけない,複雑なアクション性を求められるなど,ゲーム的な難しさはいっさいありません。日々のライフサイクルにスッと入り込めるような,適度なゲーム性に抑えることを重視してきましたので。
4Gamer:
ゲームプレイのストレスが少なそうな反面,ゲーム性の薄さと捉えられはしないでしょうか。「なぞるだけのゲーム」みたいな言われ方で。
波多氏:
個人的に「操作性の単純さとゲーム性の薄さはイコールではない」と思っています。リアルマップがゲームマップに反映される仕組みは,それだけでゲームの遊び方に無数の楽しみ方を与えられるため,ゲームプレイにさまざまな快感を用意できます。それにUX(User Experience。ユーザー体験などの意)が実際にどのように受け取られるのかは,サービス開始後も絶えずチェックしていくつもりです。
4Gamer:
最適化されたプレイで適切な快感を覚えてもらう,みたいなことですか。
波多氏:
そうなります。あと独自の機能として「ジオフェンシング」を取り入れる予定です。
4Gamer:
ジオフェンシング。聞き覚えはあるけどよく分かっていない。とりあえず基本的なところから教えてもらってもいいでしょうか。
波多氏:
ジオフェンシングとは「特定の位置に仮想的なフェンス(柵)を作る仕組み」を指します。この仕組みを使って内部的にフェンスを設定し,該当地点を通過したプレイヤーにゲーム内ポイントを付与するシステムを構想しています。
4Gamer:
ゲームを起動していなくてもフェンスは反応するんですか。
波多氏:
ええ,起動していなくても大丈夫ですし,通過時はプッシュ通知でお知らせします。ただ,フェンスの在りかはゲーム画面では見られないようにするつもりです。それとフェンスは観光名所ではないごく普通の場所も対象としていて,該当箇所も一定周期で変化させようと思っているのでルーチン的なプレイになりません。極論で言えば「北海道の原野で彷徨っていてもポイントが貯まる」ようにしていく予定です。
4Gamer:
まったく気にせず生活していても特典が貯まるんですね。まさにライフエンターテインメント。通勤・通学路を遠回りさせる可能性すら秘めています。
波多氏:
人によっては,あるいは(笑)。
4Gamer:
しかし,車や新幹線でひとっ走りしてごっそり貯めることもできちゃいそうですが。
波多氏:
いえ,マップやジオフェンシングの反映には速度制限をかけているので,乗り物の速度では反応しないようにします。厳密にはフェンスの外側に出るときの速度を判定しますが,そのときの基準を“徒歩やランニングくらいの速さ”と定義するつもりです。
4Gamer:
対策済みでしたか。まあ,新幹線に乗っているだけでウッハウハになってしまうと,頻繁に出張する人が最強ですもんね。その生活が最強かは別の話として。
波多氏:
フェンス内外を出たり入ったりでポイントを貯められてしまうとまずいですし,サーバーの負荷も馬鹿にできないですし,システムの詳細はまだ調整中ですけどね。
4Gamer:
シリアスな課題としましては,位置情報とスマホゲームを組み合わせたプロダクトでは「歩きスマホ」「不法侵入」「プレイヤーの集団化」などの問題を引き起こす可能性があります。いくつかはすでに機能面で解消されているかと思いますが,あらためてプラカノが生みかねない弊害についての対策を聞かせてください。
プラカノはスマホ画面をずっと見続けなければいけないゲームではないため,歩きスマホのリスクを大幅に軽減できています。
マップ操作にしても歩きながら片手で処理するのは難しく,本能的に立ち止まって両手で操作してもらえるバランスを目指してきました。
位置情報システムを利用するときの安全ラインの確保は,エディアが培ってきたノウハウが大いに役立っています。
4Gamer:
作中ではなんらかの注意喚起も行うのでしょうか。
波多氏:
カノジョ達の口から「歩きスマホしないでね」と注意喚起してもらおうと考えています。義務的な表示に聞こえるかもしれませんが,従来の位置情報ゲームのように機能美を集約したゲーム内容ではないので,世界観に浸っている人への訴求力は強く発揮できるはずです。ジオフェンシングも一定以上の速度を無効とするため,車で無茶な運転はさせません。
4Gamer:
運転中のスマホ操作は論外なので置いときますが,例えば「徐行運転でフェンスを通過」が抜け道として機能すると,不審な速度で走る車が出てきてしまうなんてことは。
波多氏:
絶対にないとは言いきれませんね。あとで実験しておきます。ともあれ,先ほど言ったとおりフェンスの箇所はゲーム内では明示しないので,効果的なゲームプレイにはならないでしょうね。楽に感じる人はいないと思います。
4Gamer:
ガソリン代のほうが心配になるので大丈夫そうですね。ではもう一点。位置情報を利用するということで,ジャンルは違えど「Google マップ」などのライフサイクルに根付いたアプリと競合してしまうのではと考えていますが,いかがでしょう。それこそ「MAPLUS+声優ナビ」とは正面から食い合ってしまいそうですが。
波多氏:
いや,心配はありません。プラカノは“地図としての用途は想定していない”ので。
4Gamer:
あっ,そうだったんですか。これまでずっと「MAPLUSだし,たぶん地図としても使えるのだろう」と思い込んでいました。
波多氏:
ゲーム画面に反映される地図情報もあくまでゲームナイズしたものです。とはいえ,建物や道路のディテールはなるべく寄せていて,「この交差点はこういう形だから,こっちだ」といった判断ができるくらいの精細さは確保しています。地図情報はGPSを反映すれば事細かに描画することもできるので,バランスを考えてデザインしているんです。リアルすぎる地図にはせず,リアルさがない地図でもない,そんなイメージで。
4Gamer:
位置情報となるとしがらみがありそうですし,海外展開は難しいですか。
波多氏:
現状,海外でのサービスは予定はしていません。海外の方々が日本にいる間だけ楽しんでもらうことはできると思いますが。
4Gamer:
海外とは言わず,こういう位置情報ゲームには付き物ですが,全国各地に遠出しないと集められないものはあったりしますか。
波多氏:
特定の場所にサブキャラクターを配置しようかとは考えていますが,基本的に“全国津々浦々に行かないとコレクションできない”といった要素はありません。むしろ,これらの否定からはじまっているのがプラカノです。
4Gamer:
位置情報における地域格差がない作りを目指していると。
波多氏:
はい。どこに住んでいても平等に楽しめるようしたいです。ただ,運営フェーズでは「〜〜に行こう!」といったイベント施策を予定しています。そのほか,ご当地の名所でカノジョとのAR記念撮影ができる仕組みも,ローンチ後のアップデートで実装予定です。
4Gamer:
全国の彼氏が集ってしまう……。そういえばマルチプレイ的な機能はあるのでしょうか。ないだろう,と思って聞いていますが。
波多氏:
ええ,ないです。
4Gamer:
完全な1人用ゲームというわけですか。
波多氏:
プレイヤー同士で共感してもらいやすい「どのカノジョにどれだけアイテムをプレゼントしたのかランキング」などは一案として挙がっているものの,とりあえずサービス開始時には未実装ですね。
4Gamer:
選ばれし彼氏が君臨したら,それはそれで“戦争”になりそうな。それではゲーム部分についての結論をいただきたいのですが,このゲームは「どのように遊んでもらいたい」のでしょうか。
波多氏:
僕としましては男子中高生といった若い世代の人達だけでなく,40代や50代の男性方にも「可愛い女の子とイチャイチャしながら健康になろう」の名目で遊んでもらえると嬉しいです。それと女性であっても楽しめるはずです。いろいろな性格のカノジョがいるので,女性ならではの感性で共感してもらえると思っています。
4Gamer:
すごい安直な発言をしますが,この立て付けならプラカレこと「マップラス+カレシ」も作れますよね? 立案者や私のようなゲーマーはカノジョに軍配を上げるでしょうが,今の市場では“プラカレのほうが売れそう”な印象があります。
波多氏:
すでに考えています。「カノジョがあるのにカレシがないのはおかしい!」と言われてしまったら,うまく反論できませんから(笑)。今後,社内で検討していきたいプロダクトのひとつです。
4Gamer:
長々と引っ張りましたが,リリースがいつごろになるのかも教えてください。
波多氏:
スマホゲームにおける事前登録の一般的なルールは,受付を開始してから数か月後くらいにサービスインというものです。
4Gamer:
なるほど。期待しております。
波多氏:
すでに配信日を引っ張ってしまっているので,待っていた人達に申し訳なく思っていますが,決して手を抜いているわけでも,逃げていたわけでもありません。今現在も開発一同で全力を注いでいますから,ぜひとも配信日を楽しみにしていてください。
4Gamer:
最後にユーザビリティ向上のための質問ですが,もしプレイヤーがリアルの彼女とデートしていて,外出中にリアリティのあるカノジョとも遊んでいて,「なにやってんの! 信じらんない! ウザい! もう別れる!」と言われて破局したとの悲壮な問い合わせを送ったとき,カスタマーサポートは適切な対処プランを教えてくれるのでしょうか。
波多氏:
考えておきましょう(笑)。
「マップラス+カノジョ」公式サイト
- 関連タイトル:
マップラス+カノジョ
- 関連タイトル:
マップラス+カノジョ
- この記事のURL:
キーワード
(C)エディア・講談社
(C)エディア・講談社