テストレポート
Motorolaの新型スマートフォン「Moto G5 Plus」テストレポート。3万円台半ばの価格でバランス良好な1台
Moto G5のほうは,Qualcomm製のエントリー市場向けSoC(System-on-a-Chip)である「Snapdragon 430」を採用しているので,ゲーム用途を重視するユーザーには非力であろう。そこで今回は,ミドルクラスSoCとしては性能面で定評ある「Snapdragon 625」を採用するMoto G5 Plusをテストしてみよう。
Moto G5 Plus |
Moto G5 |
グローバルで好調なMotorolaのスマートフォン
端末メーカー独自アプリの少なさをアピール
発表会には,モトローラ・モビリティ・ジャパン社長のDanny
Adamopoulos氏によると,中国を除いたグローバルなスマートフォン市場で,
ちなみに,Adamopoulos氏の話でちょっと面白かったのは,Moto Zシリーズに取り付けて使う周辺機器「Moto Mods」についての話題だ。Moto Modsには,光学10倍レンズ付きのカメラユニット「Hasselbrad True Zoom」や,JBLのステレオスピーカーユニット「JBL SoundBooster」,オプションバッテリーといったものがあるのだが,その需要は国ごとで異なっているのだという。
日本国内ではHasselbrad True Zoomが人気で,Moto Zユーザーのうち,43.5%がこれを購入しているそうだ。今やすっかりコンパクトデジタルカメラの市場を奪ったスマートフォンだが,光学ズームはやはりニーズが高いということだろう。
ところで,発表会の合間にAdamopoulos氏と筆者の目が合ったとき,氏は笑顔で,スマートフォンを持ってゲームをプレイしているジェスチャを筆者にしてみせた。発表会場で「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」(iOS / Android,以下 デレステ)をプレイする筆者が面白かったのか,すっかり目を付けられているようだ。
ガッシリしていて持ちやすいボディに好印象
それではMoto G5 Plusを外観からチェックしていこう。
Moto G5 Plusは,5.2インチサイズの液晶パネルを採用するスマートフォンである。本体サイズは74(W)×150.2(D)×7.7(H)mmで,重量は約155g。5インチ台前半のスマートフォンとしては,取り立てて薄かったり軽かったりするわけでもなく,ごくごく普通だ。軽さを最優先とはしていないためか,手に持った感触がガッシリしている印象が強く残っている。
なお,筐体の素材は「金属」とのこと。詳しい説明はなかったが,例によってアルミニウム合金と思われる。
ボディ前面の形状は,四辺のエッジを削り落としてカーブを付けた流行のデザインを踏襲したものだ。ただ,前面のカバーガラスはごく普通のフラットなもので,四辺が湾曲した「2.5Dガラス」ではない。
背面は微妙に丸みを帯びており,手の中に収まりやすい印象だ。横画面時でも持ちやすい。背面がフラットな端末に比べると,手に持った感触の違いは明らかなので,店頭で試す機会があったら試してみることをお勧めする。
ホームボタンを兼ねた指紋認証センサーは,Moto G4 Plusよりも横長になっていた。指をセンサーに当ててから,ロックが解除するまでの時間は短く,20回ほどテストした限りでは,認証ミスも起きなかった。
スペックはミドルクラス相応
IEEE 802.11acに非対応は気になるかも
スペックをチェックしてみよう。
搭載SoCは,冒頭で述べたとおりSnapdragon 625。ミドルクラス市場向けSoCとしては,安定した性能を発揮することで定評あるプロセッサだ。
メインメモリ容量は4GBで,内蔵ストレージ容量は32GB。最大128GBのmicroSDXCカードにも対応する。バッテリー容量は3000mAhと,2017年前半の5.2インチ級としては,ごく平均的な仕様といったところか。
ミドルクラス市場向け製品の中でも,Moto G5 Plusの価格は安いほうなのだが,コストを削ったところがこういう仕様に表れてしまうわけだ。コストをかけるすべきポイントは,「手に持った感触や操作感」であると見極めて作った製品……というのは褒めすぎだろうか。
プリインストールOSはAndroid 7.0(Nougat)。先述したように,独自仕様はワンボタンナビやジェスチャ操作に関わる「Motoエクスペリエンス」がある程度で,すっきりしたものだ。チューニングした部分はあるものの,ほぼAndroid 7.0そのままといった認識でいい。
Snapdragon 625搭載機の中でも性能は上に位置する
それではMoto G5 Plusの実力を,ベンチマークで検証していこう。
今回テストしたのは,グラフィックスベンチマークアプリ「3DMark」の「Sling Shot Extreme Unlimited」プリセットと,総合ベンチマークアプリ「PCMark for Android」の「Storage test」,CPUの動作クロックを見る「CPU-Z」と連打応答性を調べる「ぺしぺしIkina」の4種類だ。
ゲームのテストでは,定番のデレステとAndroid版「艦隊これくしょん -艦これ-」(以下,艦これ),それに加えて「Pokémon GO」も簡単にテストしてみた。
まずはSling Shot Extreme Unlimitedだが,総合スコアは「515」となった。Snapdragon 625搭載機でこのスコアは高いほうだ。計測時間は述べ20分ほどかかるのだが,テスト中の温度変化は少なく,手に持ったときも顕著な発熱は感じないなど,放熱設計の良さも確認できる。
PCMark for AndroidのStorage testは,「5510」と上々の結果だ。細目別に見ると,SQLite関連のスコアの高さが目立つ。このスコアは実アプリの動作に反映される傾向にあるので,似たような価格帯のミドルクラス市場向けスマートフォンよりも,快適な動作を期待できるかもしれない。
CPU-Zで,アプリのインストールやテスト中の挙動を確認してみたところ,CPUコア 8基の動作クロックが揃って変動している様子を確認できた。この挙動は,同じSnapdragon 625を搭載する「HUAWEI nova」と同じである。
CPUの動作クロックはざっくりと変化する印象で,アイドル時〜低負荷時は652MHzで動作,少し高い負荷を与えると1036MHzまで上昇といった具合だった。最大動作クロックは2.02GHzと認識しているのだが,実際に1036MHzを超えたのは,ゲームプレイ中だけだ。
なお,理由は不明であるが,GPUの情報は正常に取得できていない。
Android 7.0で追加されたマルチウインドウ機能を使い,デレステや艦これのプレイ中における動作クロック変動も確認してみた。
デレステのMV再生中,CPUの動作クロックは652〜1036MHzの範囲で変動していた。一方の艦これは,1036MHz〜2.02GHz間を頻繁に変動するといった具合だ。艦これがCPUヘビーなアプリであることが,よく分かるだろう。
ぺしぺしIkinaの結果は「88」と優秀なものだった |
さて,デレステのテスト結果だが,「条件付きでOK」としておきたい。発表会でテストした端末の挙動と,発表会後に触る機会のあった端末で,挙動が異なっていたためだ。どちらも製品版相当の端末なので,ハード,ソフトとも差はないはずである。
チュートリアル時の判定は「3D標準」で,描写自体にも問題はない。しかし,発表会で触った端末は,3D標準でプレイすると入力面で問題が生じた。3D標準の設定でプレイしていると,曲の後半になるにつれて,タップの取得ミスが不自然に増えてしまうのだ。また,長押しの操作が連続タップと判定されてしまうこともあった。なお,この現象は2D標準や2D軽量では生じない。
発表会後に触った端末では,3D標準でときおり問題が生じる程度だった。SoCの高負荷によって生じるノイズの影響かもしれないが,それ以上に端末の個体差という可能性もありそうで,正直結論が出せていない。
もしMoto G5 Plusを購入した人が,3D標準でのプレイで同様の現象を確認した場合は,3D標準設定はMV再生だけにしておいたほうが無難だろう。
テストに必要なデータを端末上にダウンロードしておくために1回プレイして,そのあとに行った2回めのプレイを撮影したものだが,デレステで生じたタップ取得の問題に似ているように思う。ただ,艦これの場合はタップし直せばいいだけなので,支障を来すほどではない。
艦これで多少気になったのは,サウンド再生時に少し音飛びがあったことぐらいか。これは,CPU負荷の高さが影響していた可能性がある。
まとめに入ろう。
Moto G5 Plusだけでなく,「ZenFone 3」や「HUAWEI nova」など,Snapdragon 625搭載端末はさまざまな製品が発売されているが,それぞれ特徴は異なっている。4万円前後という価格帯を実現するために,各社ともどこかで仕様を削っているのだが,どこをコストカットの対象にするかも異なるので,それぞれ一長一短があって,選択に悩むところだ。
同じSnapdragon 625を搭載していても,ゲームプレイ時の快適さが異なる場合があるのも悩ましい。艦これは「サクサク動くか,ちょっともたつくか」程度の違いで,プレイに支障を来すようなことはないのでまだマシだ。
問題が表面化しがちなのはデレステで,いずれの製品も,入力取得に問題を確認している。個体差の可能性は否定できないとはいえ,Moto G5 Plusも高負荷時に問題を感じる可能性がありそうだ。ミドルクラス市場向けスマートフォンの限界が,ちょうどデレステで表面化するといったところだろうか。
気になるところはあるものの,Moto G5 Plusの全体的なバランスは良好で,価格も考えれば満足感の高い製品であると言える。ミドルクラス市場向けスマートフォンを狙うなら,Moto G5 Plusは選択肢に入れるべき製品であろう。
Moto G5 Plusの主なスペック
- メーカー:Motorola Mobility
- OS:Android 7.0(Nougat)
- ディスプレイパネル:5.2インチ液晶,解像度1080×1920ドット
- プロセッサ:Qualcomm製「Snapdragon 625」(MSM8953,CPUコア Cortex-A53×8,最大CPU動作クロック2GHz,Adreno 506 GPUコア)
- メインメモリ容量:4GB
- ストレージ:内蔵(容量32GB)+microSDXC(最大容量128GB)
- アウトカメラ:有効画素数約1200万画素
- インカメラ:有効画素数約500万画素
- バッテリー容量:3000mAh
- 対応LTEバンド:FDD-LTE 1/3/5/7/8/19/20/28,TD-LTE 38/40/41
- 対応3Gバンド:W-CDMA 1/2/5/6/8/19
- 待受時間:未公開
- 連続通話時間:未公開
- 無線LAN対応:IEEE 802.11n(※5GHz帯対応)
- Bluetooth対応:4.2
- USBポート:Micro-B
- 本体公称サイズ:74.0(W)×150.2(D)×7.7(H)mm
- 本体公称重量:約155g
- 本体カラー:ルナグレー,ファインゴールド
Moto G5 Plus 製品情報ページ
モトローラ・モビリティ・ジャパン公式Webサイト
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