企画記事
パックマンやギャラクシアンを“昔話”で終わらせないために。約2年が経過した「カタログIPオープン化プロジェクト」の手応えを聞いた
二次創作ならではのスマホアプリが続々と誕生
4Gamer:
プロジェクトの発表から2年弱が経過し,特設サイトでは作品が続々と公開されています。現在の手応えはいかがでしょうか。
桝井氏:
IPをリスペクトしていただき,そのうえでクリエイターさんの思いをたっぷり乗せてくれた作品ばかりです。どれも非常に丁寧な作りで,率直に言って感激しています。
4Gamer:
対象となる二次創作の作品はデジタルコンテンツ全般とのことですが,特設サイトを見る限り,実際に作られているのはスマートフォン向けのアプリが多い感じでしょうか。
桝井氏:
そうですね。現時点(2017年3月上旬)ではスマートフォン向けアプリが53作品。それ以外は,ブラウザ向けゲームやLINE向けアプリなどが合計で26作品といった内訳になっています。
4Gamer:
かなりの数ですが,とくに印象に残っている作品などはありますか?
桝井氏:
沢山ありすぎて絞り込めません(笑)。
あえて言うならば,そうですね……。「ゼビウス ガンプの謎はすべて解けた」(iOS / Android)と「タッチ・ザ・マッピー 復活のニャームコ団」(iOS / Android)の2作品は,単なる移植やリメイクに留まらず,プラスアルファの要素がたっぷり盛り込まれており,完成度が非常に高いです。
4Gamer:
その2作品は自分も遊ばせていただきましたが,仮にカタログIPの看板抜きにしても,2017年に登場するアプリとして十分に面白いですよね。
桝井氏:
一方で,通常の進化とは軸がちょっとズレた,ユニークなアプリも心に残っています。
「ゼビウス対ご当地怪獣ドキラ」(iOS / Android)は,“ゼビウス×地方創生”をテーマに作られたアプリです。あのソルバルウが田植えをしながら観光客をお腹いっぱいにして帰すという,おそらく話を聞くだけでは何がなんだかさっぱり伝わらないカオスなゲーム内容になってまして(笑)。
こういうゲームを企画して,実際にリリースできるところに,今回のプロジェクトの面白みをあらためて感じました。
4Gamer:
それは確かに,社内からは絶対に出てきそうにない企画ですね……。
桝井氏:
あと個人的に嬉しかったのが,数十年前にカタログIPの開発に直接関わられた方が,今回のプロジェクトにクリエイターとして参加されていたことです。たとえば先ほどの「タッチ・ザ・マッピー 復活のニャームコ団」や,「バトルシティ電撃作戦 オフライン」(iOS / Android),「オラッ!ディグダグ ホレゆけ!ブラジル」(iOS / Android)などが挙げられます。
現在は弊社から離れられている方もいますが,こういった形で再び関わってくれたのを見て,プロジェクトを行って良かったと思いました。
収益化よりも大切なこと
4Gamer:
桝井氏:
基本プレイが無料のアプリは,広告SDKを実装してもらい,その収益に応じた分配金を受け取っています。有料系のアプリも同様で,基本的にはクリエイターさんからの自己申告の形となりますね。
4Gamer:
これまで話されたように,御社は運営面で大きな手間,つまりコストを掛けられています。その割には,収益化にそれほどこだわっていないように見受けられますが。
桝井氏:
ざっくりとした考えとしては,プロジェクトを継続するための費用が,収益と同じくらいになればいいかな,といったところですね。仰るとおり,通常のビジネスほどこだわってはいません。
4Gamer:
では,今回オープン化を行った狙いは,どの部分にあるのでしょうか。
桝井氏:
直接の収益以外にも,さまざまなメリットがあります。たとえば,これまで関係のなかった会社やクリエイターさんとの接点が生まれ,新たな事業へ結びつけられるチャンスとなっています。今回の二次利用はゲームに限った話ではないので,たとえば教育や医療などの分野に,パックマンやギャラクシアンなどを絡めることも可能なんです。
そしてもうひとつ大きいのは,最初にも申し上げているように,弊社が持っているIPを再活用できたことですね。
4Gamer:
その辺りの話を,詳しく聞かせてください。
桝井氏:
IPを所有する側としては,これからも末永く親しんでほしいですし,そのために何ができるのかを今回のプロジェクトを通じて模索しているんです。
4Gamer:
なるほど。仮に何もしないでいると,忘れられてしまうのはそんなに遠い未来ではないのかもしれません。
桝井氏:
まだ弊社も手探りの段階なんですけどね。
今回,オープン化を行って難しいと感じたことのひとつは,メーカー側から「やってください」と強くアプローチするのは,ときとして逆効果となりかねないことです。先ほどの面談の話にも通じますが,「やりたい」という人にとっての障害を取り除いてあげることが大事なんだなと。
4Gamer:
そういえば,プロジェクトが最初に発表されたときには,対象とするデジタルコンテンツに動画配信も含まれていましたね。
桝井氏:
ええ。この方面に,IPのオープン化をどういった形で結びつけたらいいのか,まだ見極められていないです。視聴者・配信者・メーカーの3者が幸せになれる方法というのは難しいんですよ。
パックマンやギャラクシアンを“昔話”で終わらせないために
4Gamer:
今回のプロジェクトは今のところ2018年3月までの受付で,作品の公開も2020年3月末で終了する予定です。その後は,どのような展開を考えていらっしゃいますか。
桝井氏:
プランは2つあります。ひとつは,たとえば対象IPを増やしたり,地域を拡大したりする方向です。そしてもうひとつは,「カタログIPオープン化プロジェクト」とは別の形でのIPの再活用です。
時代の流れに沿った形で,旧来のIPに親しんでもらうのが今回のプロジェクトの本質ですので,もしかするとゲーム以外での展開もアリかもしれません。
4Gamer:
御社は今回のプロジェクトのほかにも,ゲーム展覧会「あそぶ!ゲーム展」および「GAME ON」への参加や,映画「ピクセル」の許諾など,IPを新たな世代に伝えていくための活動に積極的に取り組んでいますよね。
桝井氏:
4Gamer:
こういった活動を継続されているのは,ナムコ黄金期のファンの一人としてとても心強く思います。
桝井氏:
弊社は2015年4月に,バンダイナムコゲームスからバンダイナムコエンターテインメントへと社名変更を行っています。この社名変更には,既存のゲーム事業に限定せず,エンターテインメント全域での活動を目指す意思も込めています。これからもゲームに限らず,エンターテインメント全体を盛り上げていくためにも,弊社のIPをさまざまな形で活用していければと。
4Gamer:
そういった意味では,今回のカタログIPオープン化プロジェクトは,実に“バンダイナムコエンターテインメントらしい”取り組みですね。
桝井氏:
そう言っていただけるとありがたいです(笑)。
4Gamer:
それでは最後になりますが,今回の記事を通じて初めて興味を持った人に向けて,メッセージをお願いします。
桝井氏:
一般のクリエイターさんにとっては,通常なら扱えないであろうIPを用いて,比較的自由に二次創作が行えるメリットは大きいのではと思います。お話ししたように,弊社としては門を広く開けて待っていますので,もし興味を持たれたら気軽に検討してみてください。
また,プロジェクトを通じて制作されたアプリも良作揃いなので,ぜひ一度,特設サイトをチェックして遊んでみてください。よろしくお願いします!
4Gamer:
今後の展開にも期待しています。本日はありがとうございました。
「カタログIPオープン化プロジェクト」特設ページ
「オープンゲーム」特設ページ
(プロジェクトを通じて制作されたタイトルを紹介)
「カタログIPオープン化プロジェクト」で生み出された中から,筆者がオススメのスマホアプリを紹介
「ゼビウス ガンプの謎はすべて解けた!?」
見てのとおりの「ゼビウス」で,昔ながらのアーケードモードとは別に,自機がギャラクシアンなどに変化するなど,アレンジが施されたパワーアップモードが用意されている。当時のファンにとっては,懐かしさと新鮮さを一緒に味わえるだろう。
スクロールの方向が斜めになっているのも特徴で,これにより片手プレイでも思いのほか操作しやすい印象だ。シューティングゲームとしての完成度は高く,有料版とは別に,広告入りの無料版も用意されているので,ぜひ一度プレイしてほしい。
「ゼビウス ガンプの謎はすべて解けた」公式サイト
「ゼビウス ガンプの謎はすべて解けた」ダウンロードページ
「ゼビウス ガンプの謎はすべて解けた」ダウンロードページ
「タッチ・ザ・マッピー 復活のニャームコ団」
1983年にアーケードゲームの「マッピー」を直接手がけたクリエイターたちが,今回のプロジェクトを機に再び集まって作り出されたアプリ。
今作のマッピーは,(「レミングス」のように)自動で進んでいく。プレイヤーは画面のタップで“床”を一時的に作り出すことができ,これを利用してマッピーを上手く誘導し,ステージに点在するお宝を取り返していくのだ。グラフィックスやBGMのアレンジも秀逸で,ナムコ黄金期のファンなら思わず唸らされるだろう。
「タッチ・ザ・マッピー 復活のニャームコ団」公式サイト
「タッチ・ザ・マッピー 復活のニャームコ団」ダウンロードページ
「タッチ・ザ・マッピー 復活のニャームコ団」ダウンロードページ
「オラッ!ディグダグ ホレゆけ!ブラジル」
地中をひたすら掘り進み,日本の裏側にあるブラジルを目指していくゲーム。ディグダグとは異なり,マイキャラの進行は止めることができない。画面をタッチしている最中だけ“反時計回りに”軌道を変えられるので,これを利用してマントルやモンスターなどの障害物を避けたり,酸素や食料を補給したりして進めていくのだ。
元々は「ザ・ブラジル」(iOS / Android)という別アプリに,ディグダグを絡めたコラボ作品である。しかし実際にプレイしてみると,「最初からこうあるべきだった」と思わずにはいられない。
「オラッ!ディグダグ ホレゆけ!ブラジル」ダウンロードページ
「オラッ!ディグダグ ホレゆけ!ブラジル」ダウンロードページ
「狭くて小さいドルアーガの塔」
個人のクリエイターによって作られた,「ドルアーガの塔」をスマホサイズにギュッと凝縮したアプリ。見てのとおりフロアのサイズはたったの5×4マスだが,実際にプレイすると,ドルアーガらしさを見事に再現できていることに驚かされる。
宝箱の出現方法やフロア内のギミックなどの難度は,簡単すぎず難しすぎず,自力で解く面白さを満喫できるだろう。しかもドルアーガ以外のカタログIPからもネタをふんだんに取り込んでおり,制作者の知識とセンス,そして愛情をひしひしと感じさせられる。
「狭くて小さいドルアーガの塔」公式サイト
「狭くて小さいドルアーガの塔」ダウンロードページ
「狭くて小さいドルアーガの塔」ダウンロードページ
「ゼビウス対ご当地怪獣ドキラ 世界の食いしん坊越後魚沼大集合!」
「新潟県魚沼地方のお米が美味いらしい」という噂を聞いてやってきたお客さんに,ソルバルウがおにぎりの弾を当てまくり,お腹いっぱいになって帰ってもらうという相当キてるシューティングゲーム。
要するに一発ネタなのだが,インタビュー本文でも触れているように,こういったアプリが公認でリリースできる懐の深さも,本プロジェクトの醍醐味といえるだろう。とりあえず“新潟県魚沼地方”という地名はしっかり覚えられた気がする。
「ゼビウス対ご当地怪獣ドキラ」ダウンロードページ
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