プレイレポート
マスターアップした「A Plague Tale: Innocence」を体験。開発者インタビューと共に,序盤のインプレッションをお届け
※後述しますが,取材により,本作はエピソード形式ではないことが分かりました。お詫びして,関連記事を訂正いたします
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「A Plague Tale: Innocence」公式サイト
暗黒時代のフランスを舞台に描かれる,姉弟の逃避行
A Plague Tale: Innocenceのストーリーは,ヨーロッパ全土を黒死病が襲っていた14世紀のフランスを舞台に展開する。史実であれば,十字軍遠征での負担が大きかったフランスは国土が弱体化しており,百年戦争によって領土の北部および西岸沿いのボルドー地域はイギリスの侵略を招いていたり,宗教的な過激思想に走る異端審問官(インクイジター)達が横暴を重ねていたりといった時代である。フランスが国家のアイデンティティを失いかけていた頃と言えるだろう。
今回は,デ・ルーン家の領地にある森で,アミシアが父親から狩りの仕方を教えてもらうという,本作のチュートリアル部分からプレイできた。
チュートリアルでは,周囲を見回したり,オブジェクトの下をくぐったりよじ登ったり,「父親が10を数え終わる前にリンゴの木から10個のリンゴをスリングショットで落とす」といった,ちょっとしたチャレンジをこなしたりしていく。アミシアは勝ち気な性格なようで「剣術も学びたい」とねだるが,「まあとりあえずスリングショットでイノシシくらいなら捕獲できるから我慢しておきなさい」という会話もある,父と娘のほのぼのとした雰囲気のチュートリアルである。
そして母親はその傍らの作業部屋に籠り,ヒューゴの病気の治療法を見つけ出そうと一心不乱に研究を重ねている。そんな母と弟,仕事で忙しい父親と,アミシアはなんとも悲しい状況で10代を過ごしてきたのだ。
物語を楽しんでもらうため詳細には踏み込まないが,本作ではこうした形で,しっかりとアミシアという少女の背景が描かれていく。
ある時,アミシアが森の異変に気付いてシャトーに戻り,異端審問官の一軍が迫っていることを知る。アミシアはヒューゴと家の中から脱出し,母と落ち合って広大な庭の中を彷徨いながら,敵軍に見つからないように腰をかがめ,ステルス状態で進むことになる。
アミシアのスリングショットは使用時に音が出るため人間のそばでは使いづらい。そのため,小石や陶器を投げて敵方の注意をそらしつつ,その背後をコソコソ進む。こういった,おそらく本作で基本となる手段を学んでいくわけだ。
壁をよじ登るなどのアニメーションは一度動き出すとキャンセルできないため,途中で気づかれたら為す術なく殺される,といったシチュエーションがあった点は少し気になったが,オートセーブはマメに行われているようなので,それほど無慈悲な感じはしない。チュートリアルはサクサクと進めていけるはずだ。
村では黒死病が蔓延しており,ヨソ者を受け入れようとしないばかりが,村の若者達からも追われることになる。アミシアとヒューゴの「居場所のなさ」を痛切に感じられるところだろう。
なお,キャラクターを操作して村の狭い路地を走り回ることとなったわけだが,この時にキャラクターが「つっかえる」ことはほぼなかった。このあたりは巧みにデザインされているようである。
重要なのは,ヒューゴがまったく戦力にならないコンパニオンキャラクターであるという点だ。その操作はゲームパッドの場合ならD-Padを使っうわけだが,たとえば現在いる場所にじっとさせたり,自分(アミシア)のもとに寄せたり,アミシアが通れない隙間を進ませたり,といったことくらいしかできない。彼の手を引いて進んでいても,恐怖や,病気による頭痛が原因でパニックに陥りそうになり,アミシアが彼を必死で落ち着かせるような場面もあった。
病気のためほとんど外に出ることなく育ったヒューゴは,過酷な現実とは無縁の無垢(Innocence)な存在であり,アミシア自身もまた,外の世界を知らない貴族の娘でしかない。そんな2人が突如として暗い現実を突きつけられるのだから,プレイしているほうも堪らない。果たして,アミシアとヒューゴに安全な場所があるのだろうか。
とりあえずは,母が話していた“ロレンシアス”という人物を探し出すことになるが,今回のデモプレイは村人の追っ手を振り切ったところで時間切れになってしまった。
本作は「感情」という難しいテーマを扱った作品。Asobo StudioのCOO,ダビッド・デデイン氏インタビュー
本誌ではお馴染みともいえる,Asobo Studioのダビッド・デデイン氏 |
今回は短時間だが,Asobo StudioのCOOであるデデイン氏に本作について詳しく話を聞けたので,以下でお届けしよう。
4Gamer:
まずは確認させてください。本誌(4Gamer)を始めとするいくつかのメディアは,本作がエピソード形式でリリースされると報道していますが,これは正しいのでしょうか。
ダビッド・デデイン氏(以下,デデイン氏):
それは違いますね。開発者ビデオダイアリーで使った表現が誤解を招いてしまったようですが,A Plague Tale: Innocenceでは1つの完結したストーリーを用意しています。全部で16種類のチャプターがありまして,ユーザーテストでは大体12時間くらいのプレイスルーでしたね。
4Gamer:
本作では5000匹のネズミが表示されますが,チュートリアルではまったく登場しませんでした。これはどういったスタンスからなのでしょうか。
デデイン氏:
冒頭の森の中で,何かが穴の中にいますけどね(笑)。チュートリアルは基本的なゲームプレイを知ってもらうのが主な目的ですし,このゲームを「ネズミのゲーム」と思わせてしまうのは避けたかったのです。そもそもオープニングメニューではしっかりとネズミの群れを表現していますので,そこでその後のゲーム体験を予想していただければなと。
このゲームでは,ネズミは黒死病を体現するものとして登場しますが,必要以上にモンスター化させたり,たとえばミュータントになった凶暴な生物が出てくるということはありません。
4Gamer:
ここしばらくリリースされてきた映像では,ヒューゴは明らかに黒死病らしい病気に罹っています。今回プレイした限りでは,母親のビートリスと異端審問官のリーダーであるニコラス卿は,ヒューゴの“価値”のようなものを知っている様子でしたが。
デデイン氏:
その点については,ストーリーの核心的な内容につながっていくのでお話しできません。
ただ,ニコラスは異端審問官の進める秘密プロジェクトの前線に立っている人物であり,さらにその背景には,デ・ルーン家が持つ秘密を知っている人物がいます。第1章のタイトルが「The De Rune Legacy」(デ・ルーン家の遺産)となっていたことからも,このあたりは推測していただけるかもしれませんね。
4Gamer:
レガシーというくらいですから,過去から受け継いでいるものがあるな,とは感じました。
デデイン氏:
(意味深に)ひょっとしたら,ストーリーの後に続く“遺産”かもね。
4Gamer:
では,それはプレイを通じて知ろうと思います(笑)。
ちなみに私が今回プレイした序盤はまだチュートリアルであるせいかもしれませんが,ミニマップなどはないにも関わらず,迷ったり,つっかかったりすることがありませんでした。
デデイン氏:
本作はオープンワールド型のゲームではなく,かなり直線的にゲームを進めていくことになるので,マップやコンパスは用意していません。たとえば序盤の逃走シーンでは,迷うことなく突っ走っていくことで,「アミシアとヒューゴの日常生活が急変したことによる緊張感」を表現する形に調整しました。
もちろん,ただ単にレールに乗ってプレイするだけというのは面白くありませんので,ゲームが進行するなかで寄り道する場所はありますし,いくつかオプションを用意している点もあります。直線的なゲームながらも,その狭さを意識しないようなゲームになれば良いと思っていますね。
4Gamer:
そういえば本作はクローズアップを多用しているようですが,その時のグラフィックスが実に精妙で,母親のキャラクターの美しさにはドキっとしてしまいました。彼女はどうなってしまったのでしょう? 何か裏のある人物のようにも感じましたが。
デデイン氏:
本当? それは面白い感想をいただきました。
実は今朝,チームメンバー達とも食事をとりながらその事を話していたんです。「良い人物として描かれていない」という意見もありましたが,私はそうした白黒がハッキリとしない形で良いんじゃないかと思っています。おそらく,3年前にリリースしたプロトタイプ映像(関連記事)で,ヒューゴをネズミの巣窟に呼び入れるような声のイメージからそうお感じになったのかもしれませんが,「あの声の主は母親ではない」とここで断言しておきましょう(笑)。
4Gamer:
分かりました(笑)。
さて本作は4年にわたって開発されているわけですが,その中で最も難しいと感じた点はどこですか。
デデイン氏:
そうですね。やはり感情部分に強く問いかけてくるような繊細なテーマを持つゲームですので,その表現やテンポには気を使いました。
とくにBGMがもたらす効果には気をつかいましたね。一秒早くても遅くても,プレイヤー側の感情移入が途切れてしまうようなことがあります。このあたりはしっかりと調整を続けてきました。
そしてユーザーテストを何度も重ねて,理解してもらっていない部分を見つけ出し,我々の表現したいことを体験してもらえるよう努力しました。もちろん映画ではなくゲームですから,どこまでを映像で表現し,どこまでを無機質なゲームプレイで表現するのか,といった部分でバランスをとっていくのは難しかったですね。自由度の高いゲームではありませんが,プレイヤー達に不自由を感じさせず,しっかりとストーリーを味わってもらえるようにするというのが,最も難しい部分だったかもしれません。
4Gamer:
本作は,Asobo Studioにとって最も野心的なプロジェクトだと言えますか。
デデイン氏:
開発規模でいえば2009年にCodemastersからリリースした「Fuel」のほうが大きかったですし,2016年に世界で初めてARゲームとして公開した「Fragments」は技術面で非常に前衛的な作品で,苦労も多かったです。
ただ,今回お話しさせていただように,本作が「感情」という難しいテーマを扱った作品であることを考えると,確かにA Plague Tale: Innocenceは我々にとって最も野心的だったと言えるかもしれません。
4Gamer:
本作をプレイして,ゲーマー達に何を感じ取ってもらいたいとお考えですか。
デデイン氏:
アミシアとヒューゴという幼いキャラクターが,現代では考えられないような苦難を抱え込む時代が本当にあったということを,プレイしながら実感してほしいですね。
たとえば,映画や小説を楽しんだあと,ふと登場人物について思い返すようなことがありますよね。それと同じように,プレイヤーのみなさんには2人のキャラクターを思い起こしてもらえるようなゲームになればと願っています。
4Gamer:
ゲームが完成した今,デデインさんにとってもアミシアとヒューゴはそんな存在ですか。
デデイン氏:
ええ,そりゃもう。ゲームを作り終えたあとの「燃焼したな」という気持ちはゲーム開発者であれば誰でも体験するものですけど,今回はゲームがマスターアップしてすることがなくなった時点で,まるで娘と息子を遠くに送り出したような寂しい感覚に襲われています。
4Gamer:
私も同じような感覚になるのか,実際にプレイして確かめようと思います。本日はありがとうございました。
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