プレイレポート
「真・女神転生V」プレイレポート。崩壊した東京を舞台としたナンバリング最新作は,“伝統”を守りつつ挑戦的な要素が追加された意欲作
「真・女神転生IV FINAL」以来5年ぶり,据置機で遊べるタイトルとして考えると「真・女神転生III-NOCTURNE」以来およそ18年ぶりという,ファン待望の完全新作となる本作は,“現代の東京の一人の若者がある出来事に巻き込まれ,魔界と化した東京で自身の運命と向き合う”という「これぞメガテン」な世界設定と物語が特徴だ。そんなシリーズ最新作を発売前にプレイできたので,ゲームの魅力を紹介しよう。
「真・女神転生V」公式サイト
突如として巻き起こる東京の異変から始まる,新たな“メガテン”の物語
本作の物語は,現実世界の延長上にあるかのような“現代の東京”で幕を開ける。主人公は,都内にある縄印学園高等科に通う一人の高校生だ。ごく普通の平和な学生生活を送る彼だったが,とある出来事によってその日常は大きく変化する。
都内で発生している,連続通り魔事件。それは人の所業とは思えない謎の深い事件で,縄印学園では生徒の安全確保のための集団下校といった対策を取っている。
ある日,友人たちと下校した主人公は,帰路にある品川駅を通り抜けようとしたところ,そこで足止めされることに。例の連続通り魔事件なのか,近くで殺人事件が発生したらしく,通路全体がブルーシートに覆われ通行止めとなっていたのだ。
周囲の状況を確認するため別行動を取った敦田ユヅルを探すため,駅近くのトンネルを訪れた主人公は,突如として発生した巨大な地震のような異変と,それによる崩落事故に巻き込まれ意識を失う。
目を覚ますと,周囲の景色は一変していた。主人公の視界に広がっていたのは,砂で覆われた見知らぬ土地。あてもなくこの地をさまよっていると,今度はこの世のものとは思えない異形の存在――悪魔と遭遇し,襲われてしまう。
そのとき,その場に突如として現れた者がいた。アオガミと名乗る謎の男は,「……少年,死にたくなければ手を取れ」と一言。その言葉に従った主人公はアオガミと“合一”し,ナホビノへと姿を変える。
その力で悪魔を退けた主人公は,ナホビノが悪魔に対抗しうる力を持つ禁忌の存在であること,ここはダアトと呼ばれる魔界で,“かつて東京と呼ばれていた場所”だったが,18年前に巻き起こった神と悪魔の戦争によっていまの荒廃した世界になったことを知る。
しかし,それを教えてくれたアオガミも記憶を失くしている部分があるらしく,なぜ東京がこのような姿になったのか,なぜアオガミは主人公の元に現れ,合一してナホビノとなったのか,そしてなにより“この東京は,主人公が暮らしていた東京なのか”など,不明なところは多い。
こうして主人公は,この世界の謎を解く手がかりを探るべく,アオガミの記憶につながる何かがあるという東京タワーを目指す……というのが,本作のプロローグとなる。
一見現実と変わらないものの,謎の連続通り魔事件から異質さと“歪み”が見え隠れする東京。突如として巻き起こる怪異。そして,何も分からないまま放り込まれる,魔界と化した東京。それらの緻密な表現や物語の展開は,シリーズファンはもちろん,初めてメガテンをプレイするという人も“ニヤリ”とさせられるはずだ。
魔界と化した東京の表現が圧倒的なフィールドは,サブクエストや探索要素も充実
プロローグが終わると,本格的にフィールド内を動き回れるようになる。メインの物語は,目的地として表示される場所や人などを目指し,そこにたどり着くことでまた次の話が進んでいくというクエスト形式だ。
フィールドは,タマチやミタ,カミヤチョウ,ニシシンバシなど,“かつての東京”の地名でエリアが分かれており,その一つ一つはなかなかの広さで,さらに高低差もあるため,各エリアは探索し甲斐のあるものとなっている。
なにより“崩壊した東京”の表現がたまらないものがあるので,「この一帯ではどんなことが起きたのだろう」と,考えながら寄り道するだけでも楽しい。倒壊したビルの裏に何があるかを探り,道すがらで出会った友好的な悪魔と会話し,そして,かつての東京への思いを巡らせながら目的地を目指そう。
敵となる悪魔たちも,崩壊した東京の雰囲気作りに大きく貢献している。シンボルエンカウントが採用されているのは「真・女神転生IV」と「真・女神転生IV FINAL」と同様だ。だが,本作では前2作のホログラムのようなシンボルではなく“悪魔そのもの”がシンボルとなっている。そんな,我が物顔でフィールドに存在している悪魔たちの姿は,崩壊した世界をより“それらしく”してくれているのだ。
かといって,「これぞ魔界」とノンビリ眺めてはいられない。悪魔たちは,主人公を発見すると執拗に追いかけてくる。戦いを挑むときは,刀状の光で切りつける[Y]ボタンの攻撃アクションを敵にヒットさせて先制攻撃するなど,有利な状況を作ることを心掛けたい。こちらに気付いていない悪魔に攻撃アクションを当てれば確実に先制攻撃を決めることが可能だ。
ダアトには所狭しと悪魔が湧いてくるので,全部を相手にしていてはなかなか先に進めない。悪魔たちの視界に入らないよう慎重に歩き,一気にダッシュで駆け抜けたり,近づいてきたところをジャンプでかわしたり,高いところに登ったりといった形で戦いを回避しよう。
要注意なのが,悪魔はそれぞれ移動方法や速度が異なるため,すべての悪魔に同じ避け方は通用しないという点。「高所に登って地上の悪魔から逃れほっと一安心……と思ったとたん,空を飛ぶ悪魔に背後から奇襲された」なんてこともあり得るのだ。一度逃げ切っても気を抜かず,周囲を再度確認してから態勢を整えよう。
場所が変われば敵やギミックも変わり,いままでのエリアには存在しなかった手ごわい敵に遭遇することもある。新しいエリアに着いたらまず,セーブや回復ができる場所「龍穴」を探し,そこを拠点に周囲の探索を進めるといいだろう。
龍穴では,後述する悪魔合体や写せ身合体が行える「邪教の世界」や,アイテムの売買や珍しいものの買い取りなどを行うギュスターヴがいる「骸の隠れ家」にもアクセスできる。ここでしっかりとキャラクターやパーティを強化すれば,最初は苦戦した強敵相手でも不安なく戦えるだろう。
ちょっとした会話からサブクエストまで,大小さまざまなイベントが発生する探索はやり応えがあり,クエスト形式でメインストーリーを進めながらそれらに挑戦できるのは,オープンワールドのアクションゲームに近い感覚もあり遊びやすい。軽やかかつスピーディーな主人公(ナホビノ)のアクションによって,あちこち歩きまわるのが苦にならないところも,本作の探索の楽しさにつながっていると感じた。
行く先々で発生するクエストをこなしながら進めていれば,自然とその先に進めるだけの力が付くし,無駄な戦いを避け,寄り道せずにひたすらメインストーリーのみを進めれば,過酷な戦いが楽しめる。プレイヤーのプレイスタイル次第で異なる楽しみ方ができるところも,本作の大きな特徴だろう。
新要素のマガツヒスキルによってさらなる戦術性が生まれたプレスターンバトル
ダアトを生き延びるうえで避けられないのが,悪魔たちとの戦い。強敵たちとのバトルは,現在のアトラスのRPGのコマンドバトルのベースとなったプレスターンバトルだ。
パーティメンバー分のプレスターンアイコンが割り振られ,それを1つ消費することで1回の行動を行っていく。ここで敵の弱点を突いたり,クリティカルを発生させたりするとアイコンは消費されず行動回数が増え,逆に攻撃をミスしたり,敵の防御相性が無効以上の属性で攻撃してしまったりすると通常より多く消費する。
敵も同様の“ルール”のため,防御相性の悪いパーティで敵と戦い,弱点を突かれると,あっという間に全滅するという,分かりやすくそしてシビアなバトルは本作も健在だ。
難度は「Casual」「Normal」「Hard」の3段階あり,Normalでも序盤からなかなか厳しいバトルが体験できる。普通の“ザコ敵”と思ってちょっと気を抜いたら,仲魔が弱点を突かれたことをきっかけに次々とやられていき,気がつけば主人公だけに……という展開もあり,最低難度のCasualでも,相性の悪い敵に先制攻撃を受け全滅のピンチに陥るといったことがあった。初めて挑戦する人やあまりRPGを遊ばないという人なら,Casualでも十分にやり応えが感じられるはず。CasualとNormalはゲームの途中で難度変更が可能なので,慣れてきたら難度をNormalに上げてみるといいだろう。
なお,難度の違いでストーリーの内容が変わることはないので,そのあたりは安心して自分にあった難度を選んでほしい。
そんなプレスターンバトルに,駆け引きの要素を新たに加えるものとなっているのが「マガツヒスキル」だ。
マガツヒスキルは,バトルのターン経過やフィールド上にある結晶を集めることで溜まるゲージが100%になると,プレスターンアイコンを消費せずに使用できる特殊なスキル。ゲーム初期から,魔法を含むすべての攻撃がクリティカルヒットになるスキル(禍時:会心)があるなど,使うタイミング次第で戦況が大きく変わる,かなり強力なものばかりだ。
だからといって,一方的にプレイヤーが有利になるわけではない。敵もマガツヒスキルを使ってくるのである。パーティ全体に影響を及ぼすスキルを持つ敵に発動を許すと,パーティが崩壊し兼ねない,もしくは全滅を待つのみといった展開を見届けなければならなくなることも。そのターン中に敵が倒せないときは,全員で防御を固めたり,睡眠効果のあるスキルなどで行動を阻害したりといった対策を考えよう。
悪魔との戦いにおいて気をつけなければならないのが,フィールドの各所に存在する「マガツカ」だ。これは,禍々しい空気に満ちた一帯の中心にある悪魔の拠点で,その領域に足を踏み入れると大量の悪魔が出現し,行く手を阻んでくる。その悪魔たちは周囲のものより手ごわいが,マガツカを破壊してここを突破しないと,目的地に向かうことができない。
湧いてくる悪魔をかわし,マガツカの元に辿り着くと強敵との戦いが待っている |
近くに複数のマガツカが存在することも。マップの表示も実に不気味 |
そんな,手ごわい悪魔たちと戦ううえで重要なのが,ともに戦ってくれる仲魔の存在。属性の異なる悪魔を複数仲間にし,それを敵に合わせて入れ替えて戦えるようにすれば,強敵だらけのフィールドでも戦い抜くことができるだろう。
仲魔を増やす方法は,こちらもメガテンやその派生作品でおなじみ,敵として登場した悪魔に話しかけて仲魔に誘う「悪魔会話」と,仲魔にした2体以上の悪魔を合体させて新たな悪魔を生み出す「悪魔合体」だ。作る悪魔のスキル適性によって、スキルが「+1」「+2」といった形で強化されたり,固有のスキルを持つ悪魔が誕生したりするので,どの悪魔を残し,どの悪魔を使って新たな仲魔を生み出すかはなかなか悩まされることになるはずだ。
悪魔たちはとても気まぐれ。マッカやアイテムをもらうだけもらってそのまま去っていったり,かと思えば即答で仲魔になったりする |
月齢によっては気分が荒ぶって話ができないことも。逆にご機嫌なときは,少ない要求で仲魔になってくれる場合もある |
本作には新たなキャラクター強化の要素が加わっている。それが「神意」と「写せ身合体」だ。
神意は,特殊なアビリティを習得させることで主人公を強化させる新要素。遺物(フィールド内のアイテム)の入手量がまれに1個増える「神の手」や,レベルアップ時のHPとMPがそれぞれ回復する「成長の祝い」,その名前にある属性の適正が上昇する「火炎の心得」「氷結の心得」など,神意の種類はさまざまあり,何を選ぶかでプレイヤー好みの形で主人公を強化できるのが特徴となっている。
敢えて何も覚えさせず,そのままでいくというストイックな“生き方”もありかと思うが,仲魔のストック数や仲魔が覚えるスキルの数を増やすという重要なものもあるので,このあたりは優先的に覚えさせた方がよさそうだ。
もう一つの写せ身合体は,「ピクシーの写せ身」「モコイの写せ身」といったように悪魔それぞれに存在する,防御相性やスキル構成が記録された写せ身を消費し,主人公にその悪魔の防御相性やスキルを“写す”という強化方法だ。例えばジャックフロストの写せ身を使用した場合,ジャックフロストが所持するブフなどのスキルを獲得するか,火炎が弱点だが氷結に強いというジャックフロストの防御相性が得られる。
写せ身は貴重なアイテムだが,たくさん集めることができれば,特定の属性を伸ばすのはもちろん,探索中のフィールドの敵に合わせて属性を変えるといった使い方も可能だ。ボス戦に合わせてスキル構成や耐性を変えれば,多少不利なレベルでも渡り合えるようになるだろう。
なお,写せ身は,主人公だけではなく仲魔と合体させることも可能となっている。主人公とは違ってスキルの付け替えのみだが,「この仲魔に,あと一つ補助スキルがあれば……」といったときに使用すれば,戦力の底上げにもつながるはずだ。
このように,悪魔と戦い,悪魔会話で仲魔にし,悪魔合体や写せ身合体,神意でさらに主人公や仲魔を強化。サブクエストをこなしながら行く手を遮る強敵やマガツカを撃退し,さらなるフィールドに進むことで物語が進んでいく……というのが本作の基本的なゲーム進行となる。
敦田ユヅルなどの友人たちとの再会や謎の組織ベテルとの接触によって物語が大きく動いていく。それによって一つまた一つと新たな謎が生まれ,そして想像だにしない出来事や事件が巻き起こるのだが,これはぜひ実際にプレイして物語を追いかけてほしい。
真・女神転生と言えば欠かせない,プレイヤーの選択によって物語の結末が変化するという仕組みももちろん健在だ。とはいえ今回プレイした範囲は序盤のため,これという大きな決断を迫られることはなかったが,独特の演出で表示される選択肢は,一見些細に見えるものでも,「この選択によって何かが大きく変わってしまうかもしれない」という緊張感のある表現となっていた。
伝統とも言える世界観の雰囲気やゲームシステムを守りながら,挑戦的な要素を加えつつ,現代的で遊びやすくまとまっている真・女神転生Vは,ファンはもちろん,シリーズを知らなかったという人たちにもプレイしてほしい作品だ。
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