レビュー
美しく,激しく,そして哀しい死闘に終止符が打たれる
MALICIOUS FALLEN
(マリシアス フォールン)
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名作アクションゲームが7年越しの完結
2010年にリリースされたPS3用ソフト「マリシアス」は,強大なボスと戦う爽快バトル,練り込まれたシステム,800円という破格の値段が話題を呼んだ。2012年には後日談「再誕編」を収録したPS Vita用ソフト「マリシアス リバース」が登場。続編もコアなゲーマーから高い支持を獲得している。
そして2017年2月,プラットフォームをPS4に移し,物語の完結を描く「終焉編」,エンドコンテンツとなる「追討編」を加えた「MALICIOUS FALLEN」が配信された。いわば7年越しのシリーズ完結というわけだ。
要するに,「MALICIOUS FALLEN」は第1作から最新コンテンツまで収録した「全部入り」。シリーズの第3作ではあるが,最初から最後まで収録されているので,本作からスタートしてもまったく困ることはない。“最大30分という1ステージで,全力を出し切るスタイル”“練習した成果が如実に反映されるため,上達するのが嬉しい”というシリーズの持ち味はそのままなので,もちろんシリーズファンも安心だ。ちょっと空いた時間に1ステージだけ楽しむにもピッタリで,ゲームセンターに長く通う筆者にとっては,どことなくアーケードゲームを思わせる。
天地を揺るがす超人バトルが繰り広げられる
謎の「預言者」によって異世界へと呼び出されたプレイヤー。人の悪意が具現化した災厄「マリシアス」を倒すべく,強大な力を持つ「魂の器」を操り,「討伐者」として戦うことになる。最初の標的は,裏切り者の先代討伐者達。彼らを倒して力を取り戻し,マリシアスに挑むのだ。
ボス戦のステージのみで構成されているため,開始直後からいきなりクライマックスに突入。不気味な魔物や巨大兵器,魂の器とよく似た力を使う超人など,個性豊かなボスとの天地を揺るがすバトルを繰り広げていく。
魂の器にまつわるシステムはかなり独特だ。マントを変形させて多彩な攻撃を繰り出すだけでなく,「オーラ」や「パーツ」といった本作独特のリソースを管理しなければならない。
敵を殴る「拳」,広範囲を切り裂く「剣」,飛び道具を放つ「魔弾」,高速突進する「槍」,空中を飛ぶ「翼」といった武器を操れるが,1つの武器を連打するだけではボスに太刀打ちできない。ボスの体型や動き,戦況に応じて使い分けなければならないのだ。
通常の敵に囲まれたら剣でなぎ払い,小型のボスには拳で接近戦を挑み,危険が迫ったら距離を取って魔弾を発射。巨大なボスは槍で貫き,逃げ回るボスを翼で追いかける。マントが次々に変形する不思議なビジュアルと相まって,武器を切り替えながらの戦いは存分に自己陶酔できる。
ただし,最初からすべての武器を渡されるわけではない。まずは拳と魔弾でボス戦に挑み,彼らを倒すことで新たな武器や追加能力が手に入る。徐々に新たな攻撃や操作に慣れていくというわけだ。
また,プレイヤーはどのボスと戦うかを選べるが,最初に選んだボスは難度が最も低く,あとになるにつれて難度が高くなる。どの武器を先に入手するか,それはプレイヤー次第。往年のゲーマーなら,アクションゲームの名作「ロックマン」を思い浮かべるだろう。
オーラとパーツは,バトルをさらに奥深くする要素だ。パワーアップや回復に使うリソースがオーラ,HPを示しているのがパーツである。
敵を倒したり,ボスの部位を破壊したりするとオーラが増加する。これを使うことで,武器にオーラを込めて攻撃力を引き上げる「オーラアタック」や,能力を底上げする「オーラ開放」が可能になる。通常の敵を倒してオーラを稼ぎつつ,ボスに対してはオーラ開放やオーラアタックで攻撃するのが,戦いのセオリーだ。
魂の器がダメージを受けると,手や足といったパーツが損壊していき,すべてを失うとゲームオーバーだ。これを避けるためには,オーラを消費してパーツを再生しなければならない。HP回復にもオーラが必要になるあたりが面白い。
パーツの再生中は無防備になるので,障害物に身を隠したり,空中に飛んだりして安全を確保しなくてはならない。少年少女のような姿をした魂の器が手足を吹き飛ばされても再生し,幾度となく巨大な敵に挑む。その姿には痛々しさだけでなく,空恐ろしさすら感じる。
もちろん,これは意図的な演出だろう。「MALICIOUS FALLEN」のテーマとして「巨大な力を持つことの恐ろしさ」があり,ゲームシステムと物語がうまくリンクしているのだ。
ステージにもよるがオーラを最大値(9999)まで溜めることはそう難しくない。とにかく溜め込んで,ひたすら回復だけに使えばいいと思うかもしれない。しかし,1つのステージには30分の時間制限が存在するため,「守り」だけではジリ貧になりかねない。勝負どころを見極めて,攻めと守りに適切な“投資”をする必要がある。
ステージとボスの特徴を把握すれば,効率的にオーラを稼いで開放状態を維持することも可能だ。オーラを費やして積極的に攻めつつも,万が一に備えて回復用のオーラも残しておく。リソースの管理が鍵を握るタイムアタックは,ゲーマーの琴線に触れることだろう。クリアしたステージを自由に遊べる「フリーモード」で,自分の限界に挑戦してほしい。
ボスの特徴を表現するなら,とにかくド派手。魂の器とボスが立体的なステージを駆け巡り,死闘を演じる。水彩画を思わせるシェーディングは美しく,まるで伝奇アクションコミックがそのまま動き出したかのようだ。
銃弾を撃ちまくるロボット,毒や粘液を吐きかける巨大昆虫,合体技で攻撃してくる双子,雲つくような巨大怪獣。ボスのバリエーションも多彩で,抜群の存在感はプレイヤーを飽きさせない。
そんなボスは,ボタン連打だけで勝てるような甘いものではない。モーションを覚えて,それに対応するというアクションゲームの楽しさが存分に味わえる。
また,ボスの攻撃をタイミングよくガードすると,「ジャストガード」によってオーラが回復する。その回復量は危険な攻撃ほど高くなるので,ピンチだからこそ相手の懐に飛び込み,ジャストガードを狙うのも作戦となる。そのままオーラ開放につなげて,大ダメージを与えられると気持ちいい。
最初はボスに翻弄されるばかりだったのが,戦いを繰り返すうちに華麗な超人バトルを演じている。そんな自分に出会えるはずだ。
終焉編と追討編はボリューム抜群!
冒頭でも触れたとおり,「MALICIOUS FALLEN」には2つのチャプターが追加されている。
終焉編では,マリシアスを巡る物語の完結が描かれている。再誕編において,怨敵マリシアスの悪意を取り込んで危険な存在と化した魂の器。その後が明らかになるチャプターだ。
新たな敵は,これまで味方だったはずの預言者達。すべての能力を奪われた魂の器は,彼らにどう立ち向かうのか。そして,内に潜む悪意とどのような決着を付けるか。
終焉編の難度は非常に高い。耐久力を回復するフィールドを巧みに出現させるボスをはじめ,あらゆる攻撃を防ぎ止めるバリアを張り,城を駆け巡りながら兵器と連携するボス,魂の器のコピーや無数の防衛施設が守る巨大な施設。そして,4人の預言者との集団戦といった,これまでとは違ったシチュエーションの戦いが待っている。
PS4専用ソフトだけあり,グラフィックスも注目すべきポイントだ。黒雲のような“何か”がモヤモヤと形を変え続ける最終ボスは,迫力を感じると同時に幻想的ですらある。
もちろん,ボスを倒すと新たな武器の追加機能が手に入る。攻撃が多段ヒットする「鎌」,高速の突き連打を繰り出す「杭」,バリアを張る「壁」など,さらに戦いのバリエーションが広がるというわけだ。
一方,追討編は最高難度を誇るエンドコンテンツだ。時系列的には再誕編と終焉編の間にあたり,エレベーターのような「潜行数式陣」に乗ってマリシアスの元へと下っていく。途中のセーブは不可能で,降下した距離を競うことになる。
プレイヤーは潜行数式陣の動力「制御器」を守りつつ,無数の敵を撃破しなければならない。敵が増えすぎると潜行数式陣が降下するスピードが落ち,複数のボスが同時に襲いかかってくる。
また,魂の器の能力を低下させたり,パーツの再生を不可能にしたりする敵も登場するため,真っ先に倒さなければならない。
ここで特筆したいのが,潜行数式陣に点在する「数式核」だ。これはオーラを注ぎ込むと,能力強化や全体攻撃といった効果が発動する。オーラに新たな使い道が生まれたというわけだ。無数の敵と激しく戦いつつオーラを管理し,あちこち駆け回って数式核を起動させるのは,本当に忙しいが面白い。
セーブができない一発勝負のコンテンツだが,それだけにちょっとした息抜きにピッタリ。まるでアーケードゲームのようだ。
「MALICIOUS FALLEN」は練習して強くなる過程が楽しく,華麗なプレイを追究したり,タイムアタックに挑んだりすると遊び応えがさらに増す。アクションゲームが好きなら,末永く楽しめるのではないか。3600円(税込)の元を取るのは容易だろう。
しかも,終焉編と追討編では“マリシアスらしさ”を突き詰めているのが興味深い。シリーズ特有のオーラに新たな使い道を加えることで,リソース管理の面白さが増している。追討編にセーブ機能をあえて設けていないのは,シリーズが一貫して追求してきたアーケードライクな感覚を,これまでとは別の形で表現したものであると感じられた。
物語に目を向けると,作中のメッセージこそ少ないものの,実は世界設定が非常に充実している。それは,ゲーム内に収録されている小説を読めば分かるはずだ。異形のボスが抱く理想と正義,背負った過去と哀しい宿命を知ることで,戦いがより感慨深くなる。そして,多くの余韻を残す物語の結末には,思わずホロリとしてしまうことだろう。
7年越しの完結を迎えたマリシアスシリーズ。「練習してうまくなる」「アーケードライクに楽しめるアクションゲーム」「美しく幻想的なグラフィックス」といったキーワードが気になるアクションゲーマーなら,この最終章はきっと心に刺さるはずだ。
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