プレイレポート
「アンチャーテッド 古代神の秘宝」は追加エピソードという位置づけながら,フルサイズのボリュームで楽しめる正真正銘のシリーズ最新作
「アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝」の追加エピソードとして発表された本作は,シリーズ通しての主人公であるネイト(ネイサン・ドレイク)に代わり,「アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団」で初登場したトレジャーハンターのクロエ・フレイザーが新たな主人公として活躍する。
さらに,「海賊王と最後の秘宝」でネイト達の敵として登場したナディーン・ロスがクロエの相棒を務めるなど,ファンにとっては注目すべき点も多い。
しかも本作は追加エピソードでありながら単体でも起動でき,フルサイズのボリュームになっている。さらに「海賊王と最後の秘宝」のマルチプレイモードにも参加可能など,内容も充実している。本稿では,そんな「古代神の秘宝」のインプレッションを掲載しよう。
リアルな人間を描く濃密なストーリー
クロエの新たな一面にも注目
クロエの目的は,かつてインドに存在した王国,ホイサラ朝の秘宝「ガネーシャの牙」を探し出すこと。ナディーンは,クロエに腕を見込まれてパートナーとして雇われた形だ。過去作を踏襲したTPSスタイルで進んでいくので,シリーズに慣れ親しんでいる人なら,問題もなくゲームに入り込めるだろう。
注目すべきは,クロエとナディーンの関係性が丁寧に描かれていることだ。2人は決して仲良しこよしの生ぬるい間柄ではない。一定の距離感を保ち,時として衝突もする。
行動的なクロエと理知的なナディーンの関係性は,人間ドラマとしてもリアリティを感じるものであるため,ゲームキャラクター特有の誇張を良い意味であまり感じないのだ。
また奔放な性格のクロエだが,時に考古学者だった父親への思いが顔をのぞかせる瞬間もあるなど,パワフルなだけではなく,女性らしい魅力も兼ね備えている。
一方のナディーンも,前作では描かれなかった側面が深く描かれている。とくに,クロエとの関係性が徐々に変化していく様子は必見だ。まるで,バディものの映画を見ているような感覚で楽しめる。
アンチャーテッドといえば,キャラクター同士のフリートークも見逃せない。過去作では,ネイトとサリーの気の抜けたダベりを楽しめたが,軽快なクロエと生真面目なナディーンの掛け合いも聴き応え十分。ネイトとサリーとはまた違った,女性同士ならではのトークが楽しめるだろう。セリフ選びも秀逸で「あっ,このセリフうまいな」と思わずニヤリとしてしまったことも,一度や二度ではない。
ストーリーやバトルだけではなく,会話の部分にも注目してみると,本作をより深く楽しめるだろう。
ちなみに,ストーリー後半に差し掛かると,とあるキャラクターがクロエ達と合流するのだが,その人物とクロエ達の絡みも,なんとも言えない味わいがある。ネタバレを防ぐため詳細は伏せるが,シリーズファンはぜひ楽しみにしていてほしい。
バディものならではのアシストも
気がつけばナディーンが気になる存在に?
アクション面でも,ネイトとクロエで違いがある。女性であるクロエはネイトほどのパワーがないため,テクニックを生かした「いなし技」を使うのだ。とはいえ,操作性は基本的に同じだし,プレイフィールが大きく異なるわけではないので,操作面で違和感を覚えることはないだろう。
銃撃戦も基本的には前作と同じだ。カバーポイントに隠れながらの攻防は,緊張感を伴った普遍的な楽しさに満ちている。
もちろん,ステルスで敵を暗殺したり,コンバットスタイルで攻めていくアグレッシブな戦い方もできるなど,戦い方はすべてプレイヤーに委ねられる。この辺りの攻略の自由度の高さは,アンチャーテッドの魅力だ。
バディものならではの展開もある。バトルでは死角で敵が目視できない時なども多いのだが,ナディーンが「右にいるよ!」などと敵の位置を教えてくれることもあり非常に心強い。イベントだけではなく,こういった細かい部分に連帯感を感じさせてくれるため,いつの間にかナディーンへの思い入れも深まっていくのだ。
地形を生かしたアクションも健在だ。例えば,ビルや崖を登る際,ほんの僅かな出っ張りにしがみつき,ロッククライマーのごとく高所をサクサクと移動するシリーズ伝統のアクションは,本作にももちろん引き継がれている。
ポイントを見つけられず方向を見失うこともあるが,それだけに,目的地までたどり着けた時の達成感は確かなものがある。頂上に到着した時などは,景色のあまりの美しさにスクリーンショットを撮ってしまったほどだ。
ステージによっては,ヌメリのある地面で滑ってしまい,そのまま高所から真っ逆さまなんてシチュエーションもある。そんなとき役に立つのが,前作から登場したロープアクションだ。
グラップリングフック(鉤爪の付いたロープ)を引っ掛けてターザンのように空中を移動したり,崖を左右に走り回ったりと,スリリングながらも非常に気持ちのいいアクションを体験させてくれる。ちなみにロープアクションはボタンをポンポンと二回押すだけで完結し,フックを引っ掛けられる箇所はアイコンで表示してくれるので,とくに難しい操作は必要ない。
一度ロープアクションの気持ちよさを知ってしまうと,やみつきになること請け合いだ。
同じく,前作から登場している車の移動も,アクション面の幅を大きく広げている。運転操作はややクセがあるものの,うまく走れるようになったときは,まるで暴れ馬を乗りこなしたような感覚で嬉しくなってくる。ウィンチを門にひっかけ,無理やりこじ開ける力技があるのも,前作同様だ。
目的地を目指すのも良いが,時には車から降りて辺りを探索してみるのも面白い。洞窟を探っていたら宝物を発見したなんてことも珍しくないので,トロフィーを集めている人は,そういう部分にも気を配ってみるといいだろう。
アンチャーテッドといえば忘れてはならないのが謎解きである。パズルのようなものから,正しい足場を的確に選ばないと先に進めないものまで,その種類はバラエティ豊かだ。
ただ,筆者は謎解きがあまり得意ではないため,ものによってはかなりの時間を要してしまったことも事実。フラストレーションが溜まりそうになったのだが,そんな時,絶妙のタイミングで「スキップしますか?」の表示が出現した。ここで,諦めるか続けるかを選択できるのだ。できれば自分の力でクリアしたかったものの,泣く泣くナディーンに解いてもらうことにした。とはいえ,こうしたアシスト機能があるのは,筆者のように謎解きが苦手な人には嬉しい配慮と言えるだろう。
本作はスピンオフという位置づけではあるものの,アンチャーテッドの本編シリーズと比べても見劣りする部分はない。追加エピソードのためボリュームが少ないのではと心配する人もいるかもしれないが,先に書いたように,フルサイズと遜色ない内容になっているので,その辺りはご安心を。
単体起動も可能なので,初めてアンチャーテッドに触れるという人でも問題なく遊べるが,やはりスピンオフという性質上,シリーズ経験者を前提に作られている部分はある。アクションの楽しさだけでなく,キャラクター同士の人間関係なども堪能したい場合は,やはり前作をプレイしていたほうが馴染みやすいだろう。現在,過去作は「アンチャーテッド コレクション Best Hits」および「アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝 Best Hits」として再販されているので,ぜひこちらもプレイしてみてほしい。
過去作もばっちりプレイしているシリーズファンであれば,この秋は「古代神の秘宝」で,ぜひクロエとナディーンの活躍をその目に焼き付けよう。
「アンチャーテッド 古代神の秘宝」公式サイト
- 関連タイトル:
アンチャーテッド 古代神の秘宝
- この記事のURL:
キーワード
(C)2017 Sony Interactive Entertainment LLC. Created and developed by Naughty Dog LLC