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[G-Star 2016]「Azera: Iron Heart」の開発者インタビュー。美少女型から動物型まで約60機のロボットが実装予定
本作はアジア圏(日本は未サービス)で提供されているMMORPG「Azera Online」を原作としたスマホゲームで,両作ともに韓国のゲーム開発会社・Timber Gamesが手掛けている。
今回話をうかがうことができたのは,Timber Gamesの国内第2ディビジョン チームリーダーであるヨン・ククブク氏。巨大ロボットという心惹かれる要素はもちろん,今回のG-Star 2016に対する印象や,昨今の韓国におけるゲーム事情についてまで,話題は多岐に上ったので,それぞれに注目しながら読み進めてほしい。
韓国でも,巨大ロボットは男のロマン
4Gamer:
本日はインタビューのお時間をいただき,ありがとうございます。Webzenさんの「Azera」シリーズに関するインタビューは,一昨年のG-Star 2014を含めて,今回が2回目となりました。
ヨン・ククブク氏(以下,ヨン氏):
前回は弊社のトミー・チョンがインタビューさせてもらったので,私は今回が初となりますね。
4Gamer:
そうですよね。実は私も前回は担当ではなかったので,初の顔合わせです(笑)。それでは改めまして,よろしくお願いいたします。
ヨン氏:
こちらこそ,よろしくお願いします。
4Gamer:
まずはじめに,今回発表された「Azera: Iron Heart」の簡単な説明をしてもらいたいのですが。
ヨン氏:
話の前提としてまず,スマホゲームの「Azera: Iron Heart」とPCオンラインゲームの「Azera Online」とでは,完全に違うゲームとなっています。本作のグラフィックスはMO指向で,ゲームジャンルはMMO指向のゲームを目指しているんです。
また,「Azera Online」の素材を使い,ゲーム中に挿入されるシネマティック映像を用意しました。スマホゲームといえど,PCオンラインゲームに近いクオリティになっていますよ。
4Gamer:
企画の発端となる“Azeraをスマホゲームにしようと考えた理由”はなんだったのでしょうか。
ヨン氏:
MMORPGに巨大ロボットの要素を取り入れたゲームというのは珍しく,プレイヤーの皆さんには「Azera Online」のその点を評価していただけました。ただ,昨今の韓国のゲーム市場は,スマホ向けのゲームにシフトしています。そのため,Azeraの巨大ロボットの魅力をスマホゲームでも発揮できたらと思い,モバイルゲーム化にチャレンジしたのが,今回の「Azera: Iron Heart」となります。
4Gamer:
「Azera Online」はPC向けMMORPGということで,規模の大きなコンテンツに注力されたかと思いますが,スマホゲームでは内容のスリム化に悩ませられたのではないでしょうか。
ヨン氏:
いえ,我々には最初から「Azera Online」をそのままスマホゲームとして持っていく考えがありませんでした。前述した通り,完全に違うゲームとして,新規のコンテンツをベースに,スマホ向けに作っています。なので,そういった心配はしていません。
4Gamer:
開発を開始してからここまで,どれくらいの期間が経ちましたか。
ヨン氏:
現時点(インタビュー実施日,11月19日)で1年と1か月が経ちました。
4Gamer:
開発は「Azera Online」のスタッフが引き続き担当しているのですか。
ヨン氏:
グラフィックス担当は「Azera Online」と同じですが,企画や今後の運営など,開発陣は一新しています。これは原作の魅力を引き継ぎつつも,本作ならではの新しさを生み出していきたいと考えての人事でした。
4Gamer:
本作は「Azera Online」の既存のファンと,Azeraを知らない新規の人と,どちらに重きを向けているのでしょう。
ヨン氏:
既存のファンはもちろんですが,今回は新規プレイヤーをより多く獲得できるようにと,さまざまな施策を凝らします。例えばシネマティック映像にしても,「Azera Online」を知らないファンが,「原作をプレイしていないから」と不安にならないよう,実装することを決めたものです。
4Gamer:
韓国のゲーマーは「難しいゲーム」と「簡単なゲーム」のどちらを好みますか。昨今はスマホゲームでも,それらの振り幅が大きくなっていると思いますが。
ヨン氏:
韓国のゲーマーはMMORPGに強い関心を持っていますが,大多数は「レベル上げやお金稼ぎが簡単で,PvPやレイドダンジョンは手動で精密な操作が求められる」ことを好みます。本作にしても,ゲーム序盤は手軽にキャラクターを育てられる作りにしていますが,エンドコンテンツ等ではプレイスキルが影響する面白さを付与していくつもりです。
美少女型も存在する約60機のロボットを実装
4Gamer:
G-Star 2016のWebzenブースにプレイアブルを出展されていますが,プレイヤーからの反応はいかがでしたか。
ヨン氏:
幸いなことに,会場では多くのプレイヤーさんから反響をいただくことができました。プレイ後に書いてもらったアンケートは,今後のフィードバックに役立てていきたいと思います。
4Gamer:
ブースには青いロボットと赤いロボットが巨大展示物として飾られていますが,制作するのは大変だったのではないのでしょうか。
ヨン氏:
どちらもペーパークラフトですが,制作には約2か月ほど掛かりました。担当者はその間,すごく苦労していましたね(笑)。
4Gamer:
あの2機のロボットは,ゲームのイメージロボットといいますか,作中でも重要な役回りが与えられているのでしょうか。
ヨン氏:
はい,作中でも重要な存在として描いています。この2機は先日公開したティザートレイラーに登場するということもあり,プレイヤーさんの関心をより惹きつけられるようにと,プレイアブル版では一足早く操作できる作りにしました。
4Gamer:
ゲームに登場するロボットは,全部でどれくらいの数が用意されますか。
ヨン氏:
本作ではプレイヤーキャラクターのレベルを上昇させることで,搭乗できるロボットの数が増えていきます。ロボットは最終的に,約60機を収録する予定です。
4Gamer:
60機ですか。それらのロボットをカスタマイズすることは可能なのでしょうか。
ヨン氏:
約500種類の武器を付け替えることはできます。
4Gamer:
ロボットの外見は?
ヨン氏:
……できるようにしたいんですけどね。現時点では「外見もカスタマイズできるようにしてくれ!」と,開発スタッフの背中を押している段階です(苦笑)。
4Gamer:
それは……楽しみにしています(笑)。ちなみに韓国では“巨大ロボット”という概念がいたく人気らしいですね。
ヨン氏:
もちろんです。韓国の男性は年齢に関係なく,“巨大ロボットへの憧れ”を強く抱いていると思います。Azeraはその憧れにフォーカスしたIPなので,韓国のゲーマーには好まれやすい題材だと考えています。
4Gamer:
そういう事情を鑑みるに,開発陣では「俺はこういうロボットを作りたいんだ!」という,クリエイターならではの熱い想いが飛び交っていそうですね。
その通り,70%はクリエイターたちの熱い想いを形にしたロボットです。残りの30%については,プレイヤーの皆さんから頂いた意見を反映し,それらを集合した“みんなが好きそうなロボット”として制作しています。
それと未発表ではありますが,美少女風の小さなロボットであったり,可愛らしい動物型のロボットなど,巨大ロボットだけではなく,さまざまなバリエーションのロボットを収録していく予定です。
4Gamer:
非常に興味がそそられる話ですが,本作のロボットは「キャラクターが乗っている」のか,「キャラクターが召喚している」のか,どちらなのでしょう。プレイアブル版やトレイラーを見た感じ,どちらとも言えそうな演出でしたので。
ヨン氏:
「Azera Online」では実際にロボットに搭乗するところまで演出しているのですが,本作で搭乗シーンを描くには,モバイルならではの課題がいろいろとありまして……。ただ,“ロボットにはキャラクターが乗っている”ことは確かです。
4Gamer:
それではプレイヤーキャラクターについてもお聞かせください。キャラにはいくつかのクラスが存在するようですが,それらを簡単に説明してください。
ヨン氏:
はい,まず「ファイター」は頑強さを生かしたタンカーです。「ソーサラー」は魔法主体のダメージディーラーで,一撃の重さが特徴です。続いて「アーチャー」はバフ/デバフを扱えるダメージディーラー兼サポート役で,最後に「アサシン」がカイティング特化の近接職となります。
4Gamer:
選択できるクラスは全部で4つですか。
ヨン氏:
いえ,未発表のクラスが2つ存在します。これらの開発もすでに終了していますが,発表までのお楽しみということで。
4Gamer:
MMORPGとしては気になる,強化・育成システムについてはいかがでしょう。
ヨン氏:
プレイヤーキャラクターのレベルに加え,ロボットに装着しているパーツの強化が可能です。
4Gamer:
「Azera Online」では“戦闘したロボットが消耗していく”というシステムが採用されていましたが,この部分はモバイル版にも継承されていますか。
ヨン氏:
本作でもロボットで戦闘すれば,そのロボットが消耗します。
4Gamer:
スマホゲームとしての快適性を考えた場合,その仕様はプレイヤーにストレスを与えてしまうのではないのでしょうか。
ヨン氏:
配慮していないわけではありませんが,ゲーム的に「狩りや攻略はプレイヤーキャラクター」で,「ボスや要衝は巨大ロボット」と役割を分けているので,ストレスを頻繁に与えるようなことにはならないと考えています。
4Gamer:
なるほど。では続けて本作のメインコンテンツについてです。ストーリーやマルチプレイと,MMORPGらしくさまざまな遊び方が想起させられますが,メインとなるのはどのようなコンテンツですか。
ヨン氏:
基本的に,プレイヤーさんにはストーリーモードを遊んでもらいます。ストーリー中は約40個のシネマティック映像が随時挿入されるので,ゲームの世界観を含めて楽しんでもらいたいです。もちろんMMOらしく,ギルド戦などのコミュニティコンテンツも実装しますが。
4Gamer:
そのギルド戦とは,どのような対戦形式になりますか。
ヨン氏:
本作ではまず,自身の所属ギルドの「ドラゴン」と「タワー」を育てていく要素を備えています。そして,ギルド戦では16vs16のPvPを通して,両ギルドが育てた“ドラゴンとタワーを先に攻略”することが目的となります。制限時間は1戦15分を予定しています。
4Gamer:
そのほかのコンテンツについてはいかがでしょう。
ヨン氏:
パーティで挑むレイドダンジョンがあります。「レイドダンジョンはプレイ時間が長いから,スマホゲームに向いてない」とも考えていたのですが,「Azera Online」では最適解に近いコンテンツを提供できていたこともあり,それを参考にしつつ,多彩なギミックを備えたダンジョンを作っています。一例を挙げると,「アーチャーのスキルがないと,攻略が困難になる」などですね。
ほかにもオークションであったり,ペット同士を戦わせるコンテンツ,3vs3のPvP,拠点攻略を行うギルドコンテンツなども予定しています。
4Gamer:
マルチプレイを楽しませるためには,プレイヤー同士をつなげるマッチングシステムが重要な課題になると思います。その辺りは何か工夫はされていますか。
ヨン氏:
マッチングで予定しているのは,パーティ作成時に「〜〜のパーティが作成されました」というチャットログが流され,それをタップした人が気軽に参加できるシステムです。同時に,招待制のクローズドタイプのパーティ作成も可能にします。
4Gamer:
結構気になるのですが,“巨大ロボット同士で大規模PvP”は予定されていないのでしょうか。
ヨン氏:
構想はありますが,あくまで構想段階ですね。キャラクターがロボットに乗って戦うというゲームなので,なるべく避けずに実装していきたいです。
MMORPGの人気にはじまり,MMORPGの覇権につながる
4Gamer:
今年のG-Star 2016の印象をお聞かせください。
ヨン氏:
今年はSIEブースの「PlayStation VR」でしょうか。来場者の注目がとくに集まっていたような気がします。あと,韓国のMMORPGやスマホゲームに関しても,グラフィックスの質が年々向上しているのを実感します。
それとやはり,ネクソンさんですね(※G-Star 2016では会場の約1/3をネクソンブースが占めていた)。ネクソンさんからはPC/スマホともにさまざまな新作が発表されたので,前年と比べると,今年の出展タイトルはレベルが高かったです。
ヨンさんはVRゲームにも注目されているのでしょうか。
ヨン氏:
個人的にとても注目しています。
4Gamer:
韓国におけるVRゲームの人気や認知度は,ヨンさんから見てどのような印象ですか。
ヨン氏:
一般層に浸透しているとは言えず,まだまだこれからだという印象を持っています。ただ,韓国のさまざまなゲームメーカーとお話しをしていると,ただ単にVRを使っただけのゲームからは脱却し,工夫を凝らしたVRゲームに関する構想を聞くことができます。今後はVR市場の本格的な広がりに注目していきたいところです。
4Gamer:
その一方で,本作はスマホゲームでの挑戦になりますが,韓国におけるスマホゲーム市場はどのように見られているのでしょう。
ヨン氏:
最近,韓国ではスマホ向けアクションRPGが徐々に台頭してきました。これは韓国のスマホユーザーのレベルが向上してきた証拠です。
4Gamer:
というと,つまり?
ヨン氏:
スマホゲームの人気はカジュアルゲームから口火を切りましたが,最近のユーザーさんからは,よりアクション性の高いゲームを求めている傾向が見て取れます。そしてこの先でもう一段階,“アクションRPGからMMORPG”への切り替わりが発生すると考えているんです。「Azera: Iron Heart」はそのための布石でもあります。ゲームは時代によって求められるジャンルが変遷しますからね。
4Gamer:
スマホでもコアなMMORPGが求められる,そういうことでしょうか。
ヨン氏:
そうです。昨今は韓国の大手パブリッシャがスマホ向け新作MMORPGの大規模な開発を進めているという話を聞きますし,中国や北米などのメーカーからもスマホ向けMMORPGが提供されてきますから,ここで出遅れるわけにはいきません。
4Gamer:
あれ,でも私の勘違いでなければ,韓国ではそもそもMMORPGが圧倒的に強いのでは? 技術面の問題ならまだしも,徐々にとは言わず,スマホ向けMMORPGから打っていくのが得策なのではないのでしょうか。
ヨン氏:
それも正解ですが,その一方でスマホでゲームを遊んでいる人達には別の層もいるので。
4Gamer:
……ああ,なるほど。韓国でもスマホゲームは“若年層”が主流というわけですか。韓国産のPCオンラインゲームで経験値を稼いできた大人ゲーマーとは違い,彼らもスマホゲームでゲーマーとしての経験値を稼ぎ,それがまもなくMMORPGにたどり着くであろうと。なんというか,スマホが切り開いた戦略は世界共通とも言えますね。
ヨン氏:
これまで人気を博していたスマホ向けアクションRPGは1人用が主流でしたが,これからはリアルタイム性のマルチプレイに関心が移ります。スマホのハードスペックも年々向上していますし,開発における制約も取り除かれてきています。
ご存知の通り,韓国はMMORPGを好んで遊ぶ人達がとても多い国ですので,これまでMMORPGをまったくプレイしてこなかったという人達でも,拒否反応は薄いはずです。そのため,現在のスマホユーザーが後々,「Azera: Iron Heart」のフィールドに進んできてくれるだろうと考えています。
4Gamer:
韓国のあまりゲームをやらない一般層というのは,カジュアル系アクションゲームやパズルゲームの訴求対象になっているのでしょうか。
ヨン氏:
セールスランキングではMMORPGやアクションRPGが多数ランクインしていますが,単純な人気ランキングではカジュアルゲームが幅を利かせています。この辺りは女性層からの人気も得ていますから。対してMMORPGはセールスでは強いですが,学生やコアゲーマーに頼っているところもあるので……スマホユーザーさんの成長を期待しなければいけないジャンルなんです。
4Gamer:
本作に限らずですが,御社では女性層へのアプローチは考えましたか。
ヨン氏:
カジュアル層や女性層も当然欲しいのですが,本作ではそれは難しいです。
4Gamer:
ちなみに,Azeraのコアターゲットはどの辺りになるのでしょう。
ヨン氏:
我々としては,30代から40代の男性をターゲットとしています。
4Gamer:
意外に高めに聞こえますが,先ほどの話を踏まえるとそうなりますよね。それなら課金要素も攻め気味にいけるのでは?
ヨン氏:
いえ,そうはしないです。本作の課金要素はアバターや時間短縮がメインとなり,前提として“強さを買わせる課金は行わない”という方向でまとまっています。
4Gamer:
その理由はなぜでしょうか。
ヨン氏:
コアターゲットが30代〜40代の男性なのは確かですが,「Azera: Iron Heart」は先ほどお伝えした通り,これまでのスマホゲームで経験値を積んできた若年層にも遊んでほしいからです。「課金すれば強くなるシステム」を採用すると,ゲーム内での強さが年齢別に分かれてしまいます。お小遣いの少ない学生たちは「大人ばかりが強いゲーム」と認識してしまい,このゲームから離れていくことでしょう。
そのため,課金と強さとは切り分けました。お金で強さを買えるゲームにしたら,セールスの結果は確実に変化するかと思いますが,我々は「Azera: Iron Heart」が集金力の低いゲームになろうとも,巨大ロボット好きの人達が年齢関係なく楽しめるゲームとして提供したいんです。Azeraは,それでいいんです。
4Gamer:
スマホゲームに持たせるビジョンとしては,素晴らしいと思います。それでは,アプリのリリースが楽しみになってきたところで,今後の配信事情についてお聞かせください。
ヨン氏:
本作は2016年内に韓国でテストプレイを実施し,そのフィードバックをもって,改めて正式なアナウンスを行っていきます。
4Gamer:
対応端末はiOS/Androidでしょうか。
ヨン氏:
そうです,両対応でリリースします。
4Gamer:
日本を含む,海外配信については予定されていますか。
ヨン氏:
今は国内に集中していますが,その先のこととして考えていきたいです。今回の出展で受けた意見も,「Azera Online」で受けた意見も,さまざまな角度から良いものを取り入れていきますので,ぜひ楽しみにしていてください。
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Azera: Iron Heart
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