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  • IELLO games
  • 発売日:2016/10/28
  • 価格:29.99ドル
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和風のビジュアルが目を惹く「KANAGAWA」プレイレポート。浮世絵師(見習い)となり,大作の完成を目指すフランス産ボードゲーム
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印刷2016/11/01 00:00

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和風のビジュアルが目を惹く「KANAGAWA」プレイレポート。浮世絵師(見習い)となり,大作の完成を目指すフランス産ボードゲーム

画像集 No.001のサムネイル画像 / 和風のビジュアルが目を惹く「KANAGAWA」プレイレポート。浮世絵師(見習い)となり,大作の完成を目指すフランス産ボードゲーム
 2016年10月25日に掲載したSPIEL主催者へのインタビューでもお伝えしたように,欧米のボードゲーム市場では,近年,日本やアジアを題材にした作品が増加傾向にある。しかもそうしたタイトルは,戦国時代などのメジャーなテーマではなく,日本人から見てもちょっとマニアックに感じるものを主軸にしたものが多い印象だ。

 そんな作品の中から,本稿ではフランスのパブリッシャ,IELLO gamesが発表した新作ボードゲーム「KANAGAWA」を紹介したい。Bruno Cathala氏Charles Chevallier氏がデザインした同作は,ビジュアルやコンポーネントにこだわりを感じる作品として,SPIEL'16の出展タイトルの中でも一際注目を集めていた。

画像集 No.005のサムネイル画像 / 和風のビジュアルが目を惹く「KANAGAWA」プレイレポート。浮世絵師(見習い)となり,大作の完成を目指すフランス産ボードゲーム

「KANAGAWA」公式サイト(英語)

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北斎に師事して浮世絵を完成させよう


 このタイトルの名前を聞いた瞬間に多くの日本人が考えるのは,「なぜKANAGAWA?」という疑問だろう。マニュアルによれば,これは葛飾北斎の代表作である「富嶽三十六景」の1シーンである「神奈川沖浪裏」に由来しているという。これは世界的に知名度の高い1枚でもあるので,浮世絵マニアではなくとも「波の合間に富士山が浮かんでいる構図」と言えば,イメージできる人は多いのではないだろうか。

 このタイトルが示唆するように,本作は葛飾北斎をモチーフとした作品だ。プレイヤーは北斎に師事する絵師見習いとなって,師匠のような見事な風景画を描くことがゲームの目的となる。
 ゲーム開始時,各プレイヤーの手元にはスタートタイルと筆壺を模した駒が2個が与えられる。スタートタイルの上半分は絵柄パート,下半分は工房パートになっていて,プレイヤーは場から獲得した追加のカード(レッスンカードと呼ぶ)を,この横に並べていく。1枚のレッスンカードには,左右に絵柄と工房の両方が描かれているため,好きなほうを使えば良い。
 こうしてどんどん絵をつなげ,1人のプレイヤーが11枚綴り(スタートタイルを合わせて12枚)の絵柄を完成させればゲームは終了。その時点での総合得点によって勝者が決定となる。これが本作の大まかな流れである。

スタートセットはこんな感じ。筆壺型のコマがちょっと面白い
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実際にレッスンカードを並べてみたところ。カードを回転させることで,絵柄と工房のどちら側にも置くことができる。使用しない部分が隣のカードで隠れるため,絵が(あるいは工房が)つながっているように見える
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さらにゲームが進んだところ。なお,レッスンカードの情報量は多いが,アイコンで表現されているので言語依存性は低い。また絵柄はどう並べてもつながるようになっている
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 レッスンカードは,簀子(すのこ)のような模様が描かれた,「スクールボード」と呼ばれるマットから獲得できる。ここには4行×3列のマス目があって,ここにレッスンカードが並べられていく。これは北斎が主催する学校という設定になっていて,見習い絵師であるプレイヤーは,スクールボードに並べられたレッスンカードを「勉強する(つまりカードをドローする)」ことで手札にできるというわけだ。

 カード獲得の流れを見て行こう。
 各ラウンドの最初,スクールボードの1行目には,プレイ人数分(ちなみに本作は2〜4人用)のカードが置かれる。プレイヤーは自分の手番時に,この中から好きな“列”を選んでドローする。ポイントは1枚を選ぶのではなく,列を選ぶというところで,2行目,あるいは3行目にもカードがあった場合,そのカードも獲得できる。
 では,2行目以降にカードが置かれるのはどんなタイミングかというと,プレイヤーのうち1人以上が“パス”を宣言した場合。ただし,増えるのは1行目にカードが残っている列のみで,すでにカードを獲得したプレイヤーは新たにカードを得ることはできない。
 つまり,1度パスをしたプレイヤーは2枚,2度パスをすれば3枚を獲得できるというわけだ。もちろん,後から良いカードが出るかは運次第であり,単純に枚数が多ければ良いというものではないので,そこは駆け引き次第ではあるのだが。

スクールボードは3行まであり,パスは2回まで可能。なお赤色のマスにはカードが裏返しで置かれるため,内容が分からない
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 一方,絵柄を並べるためには,そのコストとして設定された絵具の色が,工房に存在し,かつその絵具の上に筆壺コマが置いてある状態でなくてはならない。ゲームスタート時に与えられているのは筆壺2つ,絵具1種類のみなので,プレイヤーは絵柄をつなげながら,同時に工房も充実させていく必要がある。
 得点に直接つながるのは絵柄を並べることだが,それだけではすぐに行き詰まってしまう。工房の充実とバランスを取りつつ,先のレッスンカードをどういう順番で取得し,そのカードをどちらに置けば良いのか。それを考えるのが,本作で求められる戦略なのだ。

得点の計算は並べた絵柄に描かれた得点の単純な合計に加えて,いわゆる“役”を作ることによるボーナスがある。例えば,「異なる建物の絵柄を4つ揃えると7ポイント」「スタートタイルの工房パートに同じ色の絵具を3つ揃えると3ポイント」など。また,同じ季節の絵柄(カード右上に表示されている)を連続して並べたり,カードに描かれた猪鹿蝶のシンボルを集めることでも得点となる
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日本の伝統文化を巧みに料理した個性派作品


 「KANAGAWA」は浮世絵という特殊な題材を,うまくボードゲームに落とし込んだ作品だ。厳密にいえば,カードの絵柄は日本の伝統的な浮世絵というより,西洋の水彩画に近い。画風も骨太な北斎というよりも,まず柔らかさが印象に残る筆致である。にも関わらず,本作が日本文化をモチーフにした作品だということは,日本人である筆者ですら,疑問を持つことなく理解できてしまう。

 それはおそらく,アートデザインを担当したJade Mosch氏による本作のビジュアルが,単に浮世絵の模倣ではなく,氏の中で解釈された浮世絵の世界がここに表現されているからなのだろう。

ボードゲームの仕事を引き受けるのは初めてというMosch氏は,SPIEL会場では本作のイラストを次々と即興で書き上げていた
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 さらに言えば,ゲームのモチーフとメカニクスに乖離がないことも,本作に説得力を与えている。こうした作品の中には,「そもそも舞台設定を日本にする必要はあったのか?」と感じるものもあるが,本作は違う。絵を完成させるために修行を積んでいくというゲームの目的も理に適っているいるし,ルールの端々(例えば“役”の名前など)やコンポーネントからも,デザイナーの日本文化への関心が見て取れ,うれしくなってしまう。そして,こうしたポイントを見つけることこそが,「海外パブリッシャによる日本もの」ならではの面白さではないだろうか。

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 長々と説明してしまったが,美しいビジュアルと戦略性を兼ね備えた本作が,楽しいゲームであることに間違いはない。この記事を読んで興味を持った人には,ぜひ一度遊んでみてほしい一作だ。

会場では本作をリリースしたIELLO gamesのスタッフ(右)が直々にルールを教えてくれた。なお,写真中央のお兄さんを始め,筆者が一緒にプレイした3人はイタリアのベルガモからSPIELのためにやってきたのだとか。ゲームを通じてのこうした一期一会の出会いも,このイベントの大きな魅力だろう
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