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    「必ずやらなければならないこと」や「絶対にやらないこと」は作らない―――変化に対応し続けて14年。Perfect Worldはいまどういう会社になっているのか
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    印刷2018/10/25 18:26

    インタビュー

    「必ずやらなければならないこと」や「絶対にやらないこと」は作らない―――変化に対応し続けて14年。Perfect Worldはいまどういう会社になっているのか

    画像集 No.001のサムネイル画像 / 「必ずやらなければならないこと」や「絶対にやらないこと」は作らない―――変化に対応し続けて14年。Perfect Worldはいまどういう会社になっているのか
     「Perfect World -完美世界-」といえば,古くからの4Gamerの読者にはお馴染みのMMORPGだ。遡ること十数年前に突如として中国に登場し,自社開発のオリジナル3Dエンジンを使ったシームレスなマップでローディングがなく,空を飛んだりHugしたり騎乗で二人乗りしたりと,12年前の時点で最先端の仕様とかなりの自由度で,業界を驚かせた。その作品を作ったのが,完美世界(Perfect World)という会社だ(ややこしい)。
     元々は,教育系ソフトウェアの開発会社からスピンアウトしたPerfect Worldは,同名のMMORPGによって一躍名を挙げ,その後もいくつものMMORPGを作っていたが,時代が変わり,スマホゲームが隆盛となり,日本国内でその名前を聞くことが少なくなってきていた。「最近は何をしているんだろう」といささか気になっていたので,ChinaJoyの機会に経営陣へのインタビューを申し込んでみた次第だ。

     答えてくれたのは,CEOである萧 泓(Robert Hong Xiao)氏。外部からの参加であるXiao氏は,Perfect WorldのSenior Vice Presidentを経て,Co-CEOを1年務めたのち,2013年3月からCEOとなっている。中国ではいろいろなメディアに登場しているが,日本のメディアの前に姿を見せたことはあまりなく,とても貴重な機会となった。
     前述のように,最近の日本のゲーム業界においてはややその名前を聞くことが少なくなってきたものの,中国においては依然巨大なゲーム企業であり続けるPerfect Worldは,Tencent,NetEaseに次ぐ中国ゲーム業界シェア3位という規模を誇っている。中国のゲーム業界が激変しつつあるこのタイミングで,Perfect Worldはどんな道を採って,どんな方向に進んでいくのだろうか。

     なお,Perfect Worldといえば「Steamの中国国内での展開」がホットトピックとして存在することは筆者も重々承知しているが,その件については「一切ノーコメント」と事前に言い渡されていたので,話題にすることはかなわなかったことを予めお伝えしておく。中国でのSteam展開については,いろいろな要素が大きく関わってくるので,いち企業の,しかもCEOとしてはコメントしたくないということなのだろう(そしてそれはとても理解できる)。
     なお,中国ではとても大きな会社であり,そこのCEOともなると,インタビュー前も,インタビュー中も,インタビュー後も,入れ替わり立ち替わりいろんな人が――行政のVIPなども多く見られた――ひと言挨拶しようとXiao氏の元へとやってきていた。そんな彼が1時間を割いてくれたことに感謝しつつ,Perfect Worldの世界戦略について聞いてみよう。

    Perfect World公式サイト


    Perfect World
    CEO
    萧 泓(Robert Hong Xiao)
    画像集 No.002のサムネイル画像 / 「必ずやらなければならないこと」や「絶対にやらないこと」は作らない―――変化に対応し続けて14年。Perfect Worldはいまどういう会社になっているのか
    4Gamer:
     本日はお忙しいところ時間を取っていただきありがとうございます。
     経営陣のどなたかとお話がしたい,とオファーしたらまさかCEOが自ら出てくるとは思いませんでした。ありがとうございます。

    萧 泓(Robert Hong Xiao)氏(以下,Xiao氏):
     いえいえ,メディアとのコミュニケーションもCEOとしての重要な責務ですので。

    4Gamer:
     4Gamerはもうかれこれ18年間運営しているメディアなんですが,中国の会社で初めて「この会社すごいなぁ」と思ったのが,Perfect Worldでした。あのMMORPG(編注:「Perfect World -完美世界-」)の登場のとき。なので,お会いできてとても光栄です。

    Xiao氏:
     そう言っていただけて嬉しいです。4Gamerさんはこちらでも有名ですので,こちらこそお会いできて光栄です。

    4Gamer:
     恐縮です……。
     さて中国という国で,ゲーム会社が――ゲームに限りませんが――長く生き残っていくのはとても大変なことだと思います。それを実践しているPerfect World(完美世界)のこれまでの歩みについて,改めて教えていただけないでしょうか。

    Xiao氏:
     いいですよ。Perfect Worldはまだ設立から14年しか経っていないんですが,最初はゲーム開発だけをする会社でした。たぶん読者のみなさんもご存じの「Perfect World」というMMORPGなどがそうですね。その後ナスダックに上場(2007年)してからは,映画やドラマの制作やスタジオの運営などにも業務を拡大していきました。最近では,ゲーム開発と映画ドラマの制作を並行してやっている総合エンターテイメント企業としての顔が強いですね。
     ユニバーサルピクチャーズと共同制作した「Darkest Hour」(邦題:ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男)は,オスカー賞の6部門にノミネートされ,2部門を受賞しました。これは中国の会社として初めての快挙です。

    4Gamer:
     不勉強ですみませんでした,あの作品の共同制作だったんですね……。

    Xiao氏:
     実はそうなんです(笑)。またグループ会社には,アニメや漫画,教育に関わっている会社もありますし,もちろん,eスポーツについてもアクションを起こしています。また,世界中に20以上の拠点を持っています。日本だとシーアンドシーメディアですね。アメリカとフランスにはワークショップスタジオを持っていて,ゲームの開発や運営,広報などを行ってますよ。

    4Gamer:
     海外に開発会社を持っていて,映画関係に参入していたのは存じていましたが,そこまでさまざまな事業で世界に展開していらしたとは知りませんでした。
     ……そういうことなら改めてお聞きしたいんですが,御社はこの先何を主軸としてワールドワイドのビジネスを進めていくのでしょうか。私はゲームメディアの人間なので,古くからあるゲーム会社「Perfect World」が,ゲームではない方向に行ってしまうのではないかという懸念も出てきました。

    Xiao氏:
     いえいえ。ゲームは会社全体の利益の70%を占めているので,ゲーム事業は絶対にやり続けます。やはりPerfect Worldはゲーム会社なんですよ(笑)。ではなぜゲーム以外の事業を始めたのかと言いますと,ゲームをプレイする人の中には,ゲームだけが趣味ではなくて,映画やドラマが好きな人もいますし,アニメや漫画が好きな人もいますよね。そういったゲーマーたちのあらゆる娯楽のニーズに応えたいと思ったからなんです。

    画像集 No.004のサムネイル画像 / 「必ずやらなければならないこと」や「絶対にやらないこと」は作らない―――変化に対応し続けて14年。Perfect Worldはいまどういう会社になっているのか

    4Gamer:
     それはつまり「ゲーマーの可処分時間は全部我々がもらうぞ」ということでしょうか(笑)。

    Xiao氏:
     もちろんそうなればいいなと思っていますし,目標ですね(笑)。

    4Gamer:
     あとはちょっと当たり前すぎる発想ですが,IPの相互利用なんかも狙えますよね。そういった部分もお考えですか?

    Xiao氏:
     おっしゃる通りです。IPの利用はいろいろな分野で共通してできることでもありますので。

    4Gamer:
     なるほど。中国では日本のIPがずっともてはやされてきて,いろいろなIPを買ってゲームにしたり,アニメを放映したりするということが繰り返されていました。でもたいがいそのワンショットで終わりだったんですよね。中国は人もパワーもたくさんあるのにちょっと非効率的なことをやっているなぁと思っていたんですが,御社のようなアプローチをその規模でやるというのは,確かにまだあまり聞かないかもしれません。

    Xiao氏:
     IPを利用するには3つの手段があります。
     1つ目は,昔からユーザーに愛されている有名なIPをそのまま使うということですね。有名なシリーズ映画のように,年々新しい内容にして出すことなんかもそれです。
     2つ目は,オリジナルのIPを作り出すということです。ゲームやアニメ,映画などいろいろな手段からアプローチして,マーケットでIPを育てて大きくしていきます。弊社の例ですが,今オリジナルの女性向けIPを中国で展開しています。日本ではまだ展開していないんですが,中国ではじわりと育ってきている段階です。日本でローンチしたときには,皆さんにも受け入れてもらいたいですね。

    4Gamer:
     あー……「夢間集 -ムカンシュウ-」のことですか?

    「夢間集 -ムカンシュウ-」iOS / Android
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    Xiao氏:
     そうです! そうか,さすがにもうご存じでしたね(笑)。
     3つ目のやり方は,海外の他社タイトルを購入して,代理で運営するパターンです。これもまぁ一般的です。それとはちょっと違うんですが,Perfect Worldでは,香港でとても有名な作家(編注:金 庸氏)と契約して,特に有名な3つの作品をゲームにしたり,映画にしたりしています。こういった長期的な契約を結ぶことで,それらのIPを使って,さまざまな娯楽市場に同時進出できるようにしています。

    4Gamer:
     なるほど。さすがに業界3位の会社は,四方八方に手は打ってあるんですね。


    中国のゲーム業界全体は,正しい方向へと向かっている――コンソールの普及にはもう少し時間が必要


    4Gamer:
     数年前のChinaJoyまで,出展されていた中国の作品といったら「何かのコピーなのでは」というものだらけでしたが,ここ最近は劇的にそのレベルや開発力を上げてきています。中国がこのまま進化を続けると,世界のゲーム業界はなかなか大変なことになるんじゃないかと思うんですが,中国国内で見ている側として,そのあたりはどう思われていますか。

    Xiao氏:
     ええ。おっしゃる通り,中国のマーケットはコピーやパクリが多かったですね。しかし,市場が大きくなっていくにつれ,そしてユーザーが成熟していくにつれて,よりクオリティが高く,より面白く,オリジナリティのある作品を選ぶようになってきます。
     そもそもゲームというものは,アイデアから生み出される1つのアートだと言えると思いますが,オリジナルのアートを作るには,良いアイデアが必要です。Perfect Worldは,常にオリジナルタイトルを作る方針でこれまで歩んできましたし,最近ではそういう会社も増えてきました。中国のゲーム業界全体は,正しい方向へと向かっているのではないでしょうか。

    4Gamer:
     そうですね。「正しい方向」へと向かっているからこそ,日本や欧米などもうかうかしていられないと思います。
     ではちょっとだけミクロな視点に戻して,中国のコンソールマーケットはこれからどうなると思われますか。

    Xiao氏:
     非常にいい質問です! 中国で初めてコンソールゲームに進出したのはPerfect Worldなんですよ。

    Neverwinter
    画像集 No.005のサムネイル画像 / 「必ずやらなければならないこと」や「絶対にやらないこと」は作らない―――変化に対応し続けて14年。Perfect Worldはいまどういう会社になっているのか

    4Gamer:
     はい,存じてます。

    Xiao氏:
     正直なところ,MicrosoftとSIEが中国に入ってくれば,中国のコンソール市場も急速に発展するだろうと思っていましたが,やはりハードウェアの価格がネックになってまだまだ普及していない状況です。今はまだ利益をあげるのは難しい市場ですが,あと3年ぐらい経てばメーカーに利益がもたらされるレベルには発展するのではないかと思っています。

    4Gamer:
     やはり「失われた20年」は大きいですか。

    Xiao氏:
     そうですね。おっしゃるように中国はコンソール市場に20年ほどのブランクがあったので,マーケットが成熟しておらず,欧米や日本のレベルにはまだまだ達していません。しかし,コアなゲーマーはスマホゲームだけでは絶対に満足できないと思います。もっと大きな画面で,迫力のグラフィックスで,長時間ゲームをプレイする刺激を得たい,もっと深い世界観のゲームがしたい,という欲求があるはずです。

    4Gamer:
     ゲームというエンターテイメントをもっと追求したい人達ですね。しかもそういう人達は,お金を遣うことを惜しみません。

    Xiao氏;
     ええ。なので客単価も高いのです。実際,世界のコンソールゲーム市場の6割を占める欧米のマーケットでは,私たちが展開しているIPがすでに大成功しています。なにしろ日本は独特なマーケットなので(笑),まだちゃんと参入もしていませんが,今後はぜひ日本のマーケットにも進出していきたいと思います。

    本インタビューの直前には,プレスカンファレンスで熱弁を振るっていたXiao氏。内容に感銘を受けたいろんなVIP達がインタビュー中に入ってきて大変でした……
    画像集 No.006のサムネイル画像 / 「必ずやらなければならないこと」や「絶対にやらないこと」は作らない―――変化に対応し続けて14年。Perfect Worldはいまどういう会社になっているのか

    4Gamer:
     これだけの歴史があって,日本で長年MMORPGを運営しているPerfect Worldにとっても,日本のマーケットは独特なんですね。

    Xiao氏:
     ええ,少なくとも私はそう思ってます。

    4Gamer:
     私はつい最近まで日本と中国こそが独特だと思ってました。世界から見たらどちらも入りづらい地域で,どちらの国も世界に出て行きづらいイメージです。

    Xiao氏:
     確かに,世界に出るのは容易なことではないですね。

    4Gamer:
     ただ,昨年から中国のPS4の開発レベルは格段に上がっていると感じます。御社もそうですし,China Hero Projectなどを見ていると本当にそう思います。しかも日本と違うのは,皆さん“最初”から世界の市場を目指して作っているんですよね。その時点で気合の入れ方が違うなと。

    Xiao氏:
     確かにそういう側面はあるかもしれません。みんな“国内じゃないところ”を念頭に置いて作ってるんですよね。

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    画像集 No.009のサムネイル画像 / 「必ずやらなければならないこと」や「絶対にやらないこと」は作らない―――変化に対応し続けて14年。Perfect Worldはいまどういう会社になっているのか

    4Gamer:
     先ほど,コンソールゲームもあと3年ぐらい経てばで売れてくるのではないかとおっしゃっていましたが,日本人の私個人としての考えでは中国でコンソールゲームが浸透しづらい理由は2つあると思っています。
     1つ目の理由は,Xiaoさんが先ほどおっしゃっていたハードウェアやソフトウェアの値段が高いという問題。そして2つ目が,リビングのテレビを長時間占拠するので,中国のカルチャーにそぐわないのが理由ではないかと思っているんですが,どうでしょう……?

    Xiao氏:
     いろいろ考えてますね(笑)。
     でも今,中国の若者はテレビ番組をあまり見なくなっていて,リビングにテレビがあっても番組を見ないでゲームだけをプレイしてる人が多いんですよ。さらに,あなたが気にしているファミリーでの団らんについても――たぶんそういうことをおっしゃってるんですよね?――今は1つの家庭で2,3台を持っていることも珍しくなくなりました。中国人の若者は,PCやタブレット,スマホでずっとストリーム配信を見ていて,伝統的なメディアであるテレビ業界にとっては大きなダメージになっていますし,テレビの販売量も減少傾向にありますね。たぶんほかの先進諸国と同じでは。

    4Gamer:
     なるほど,テレビに関しては私の感覚が古かったですね(笑)。

    Xiao氏:
     年がばれてしまいますよ(笑)。

    4Gamer:
     Xiaoさんは確か52歳ですよね。僕はそれよりちょっと若いですが,ほぼ同世代だと言ってもいいと思います。
     そういえば,同じ時代を生きてきた――というのもちょっとおこがましいですが――Xiaoさんの,Perfect World以前の経歴はどういったものだったんですか?

    Xiao氏:
     Perfect World以前は,モトローラやシスコ,フィリップス,デルにマネージャーとして在籍していました。10年間でそれらの会社を移動した後に,Perfect Worldに入ったんです。

    4Gamer:
     そうそうたるラインナップですね……。でもハードウェア畑から,なぜ急にソフトウェアの会社に?

    Xiao氏:
     いえいえ,一見ハードウェアの会社ばかりに見えますが,そういったところは通信関係の部門もあり,ソフトウェアの部門も抱えているので,そんな畑違いのところから来たという感じではないですよ。あと,そもそも私はマネージャーという立場だったので,技術的な知識の細かい部分まで分からなくとも,業界や“人”について理解していれば大丈夫だったんです。

    4Gamer:
     なるほど,それもそうですね。
     にしても,そういう経歴だったんですね。先ほど部屋に入ってきたときに,「あれ,ゲーム業界の人の独特のにおいがしないな」と思っていたんですが理由が分かりました(笑)。

    Xiao氏:
     ははは(笑)。ラフな格好もあまりしないですしね。

    4Gamer:
     Tシャツ&短パンでタトゥーを入れているわけではありませんでした(笑)。

    Xiao氏:
     そうです,そうです。そういうイメージです(笑)。

    そしてこのインタビューが終わって部屋から外に出た瞬間,次のメディアにつかまって廊下で立ったままインタビュー
    画像集 No.008のサムネイル画像 / 「必ずやらなければならないこと」や「絶対にやらないこと」は作らない―――変化に対応し続けて14年。Perfect Worldはいまどういう会社になっているのか


    「必ずやらなければならないこと」「絶対にやらないこと」という枠は作らない


    4Gamer:
     すみません,話が逸れてしまいました。VRの市場についても,Xiaoさんの考えを聞かせていただけますか。

    Xiao氏:
     すでに,Unknown Worlds Entertainmentと協力して「Subnortica」というVRゲームをSteamでリリースしています。つまりPerfect Worldとしては「ヤル気」だということです。
     ただ,VRはゲームのジャンルとしてはまだまだ未成熟の分野だと思います。それは,ソフトウェアを作る技術にも言えますが,ハードウェアの値段もまだ高額で,成熟にはしばらく時間がかかるのではないでしょうか。

    Subnortica
    画像集 No.007のサムネイル画像 / 「必ずやらなければならないこと」や「絶対にやらないこと」は作らない―――変化に対応し続けて14年。Perfect Worldはいまどういう会社になっているのか

    4Gamer:
     確かに昨年のChinaJoyに比べ,今年はVRゾーンがすごく縮小した印象を受けます。
     日本もそうですが,VRはテクノロジーが先行している段階なので,マネタイズの部分が完全に後送りで,精力をつぎ込んでいる会社の中にも,そろそろ限界が近づいているところもあるかもしれません。

    Xiao氏:
     そのテクノロジーにしても,まだまだ多くの投資が必要だと思いますよ。

    4Gamer:
     はい。なので,テクノロジーがもっとより良い方向に進化する前に,VRというジャンルそのものがシュリンクしていくような気がしています。御社ぐらいの規模の会社がどんどん投資していただけると……。

    Xiao氏:
     さすがに今はまだ「試し」でやっている段階ですね。収益の見込みがほとんどないので,まだ大規模な出資はしていません。VRは,ハードウェアの技術がネックになっていると思っていますが,弊社としてもその点に強みを持っているわけではありません。なので,現在はマーケットで強みのある会社を選んで探しているところです。

    4Gamer:
     もしかして,条件が整えばFacebookのようにハードウェアごとVR市場に参入してくるとか……?

    Xiao氏:
     そういう計画はいまのところはないですが,可能性はあると思いますよ。弊社は「必ずやらなければならないこと」「絶対にやらないこと」という枠を作らない方針でこれまでやってきました。なので,市場では成長性のある分野に素早く進出したいと思います。

    4Gamer:
     決められたことしかやろうとしない(できない)日本の企業とは違いますね。
     では最後に,「中国マーケットに進出したい!」と思っている日本の会社に向けて,何かアドバイスがあれば教えていただけますか。

    Xiao氏:
     最後なのに難しいことを聞きますね(笑)。
     まず最も重要なのは,市場の特徴を十分に理解したうえで参入することです。アドバイスとして私から言えるのは,まず現地の人や,パートナーとなる人や会社のことをよく知ってからビジネスを進めていくべきだということです。例えば,弊社はアメリカに子会社を持っていますが,総経理(CEO)以外はすべて現地で採用しています。彼らは現地マーケットに詳しいですし,そうすることで会社はうまくいっているわけです。
     そして,もう1つのアドバイスは,中国に参入するなら中国の会社としてマーケットに参加したほうがいいということです。日本の本社からコントロールばかりして人形のように動かそうとするのが一番ダメですよ。

    4Gamer:
     あぁ……耳が痛い会社がたくさんありそうです。

    Xiao氏:
     日本だけでなく,欧米のグローバル企業も同じく耳が痛いと思いますよ。
     海外マーケットへ参入する場合は,その国のローカル企業と競争しなければなりません。多くの外資系企業に勤めていた私の経験からお話しますと,やはり現地の事情に詳しい人が最先端に立って決断できるようにしなければダメです。特にインターネット業界は決断のスピードが肝心なので,本社からコントロールしていたら絶対に遅れてしまいますよ。

    4Gamer:
     なるほど,とても参考になります。ちゃんと記事に記しておきますので,ぜひ日本の会社に読んでほしいです。
     本日はありがとうございました。

    Xiao氏:
     あんまりライバルが増えても困るので,やっぱり書かなくてもいいですよ(笑)。

    ―――2018年8月4日収録
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