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[TGS 2016]ドット絵からのVR。VRの新たな可能性に挑んだ「V! 勇者のくせになまいきだ R」のメディアセッションをレポート
9月13日に行われた「2016 PlayStation Press Conference in Japan」で発表されたばかりの本作(関連記事)について,シニアプロデューサーを務める山本正美氏(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)と,ディレクターの大橋晴行氏(アクワイア),プロデューサーの鳥山晃之氏(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)という開発者3名から話を聞けたので,その内容をお伝えしよう。
セッションはゲームの紹介から始まった。ゲーム内に昼と夜があり,昼は魔物の巣をバランスよく配置して戦力を集めながら勇者を迎え撃ち,夜は魔物の軍団を「進軍」させて勇者の拠点を攻撃し,その拠点を奪っていくという本作。これまでのシリーズ作品のように,地下ダンジョンを掘り進めてモンスターを生み出し,勇者を誘い込むというものではなく,フィールドマップ風の戦場を舞台としたリアルタイムストラテジーとなる。そんなゲームの流れが,鳥山氏のデモプレイを通して紹介された。
続いて,初めてのVR作品を制作するうえで苦労した点や,工夫した点について多くのことが語られた。
「目の前にRPGのフィールドが広がっていて,そこに勇者と魔物がいる。それをただ眺めるだけではなく,VR体験者がそのフィールドに介入できるとしたらすごく素敵なことだ」と考えて企画を進めたという大橋氏。そうして開発を進め,実際にできあがったフィールドに魔物と勇者を置いて自由に動かしてみたところ,どこを見ていいか分からないどころか,何が起きているのか分からない。それをどう整理するかに苦労したようだ。
山本氏は,プレイヤーにVRでの“見てもらいたいところを見てもらうこと”の難しさについて触れた。例えば勇者の拠点を攻めているときは重要なのはその拠点であるが,VRの場合は,そんな場面においても違うところに目がいってしまうプレイヤーが多いそうだ。その,見てほしいところを見てもらう対処として,派手なエフェクトやボイスで誘導する形を作ったが,“プレイヤーが能動的に,自分がしたいと思うことを順序立てて考えられるような導線を作ること”がゲーム開発のポイントだと考える大橋氏も,山本氏と同じくVRではその導線が作りづらいところに苦労を感じたようだ。
次の話題は,VR作品を制作する多くの人達が苦労していると思われるVR酔いについて。フレームレートは落とせないが,しかしキャラクターをたくさん出さないとゲームが成立しない本作。それに対処するため,視界の端のアニメーションの更新頻度を抑えたり,処理を間引いたり,そして意外と気づかないところとしてキャラクターの影をなくしたりといった,細かなところのチューニングに注力して,VR酔いに対応したという。
それについて山本氏は,ファミコンやスーパーファミコンの時代のような,限られた制限の中でどれだけの表現を生み出すかというノリに近く,ゲームを制作するうえで,工夫が生きるところがVR制作の面白いところでもあると語った。
そして魔王のデザイン。ゲームの進化に逆行する形で生まれたのがこのシリーズのドット絵表現だが,その“ドット絵からの脱却”という重要な決断は,本作を制作するうえでかなり早い段階で下されていたようだ。本作のキーキャラクターである魔王は,これまでのイメージをそのまま生かしたい。しかしドット絵の頭身のまま人間と同じスケールで作り上げると違和感のあるものになる。現在の6頭身ほどのデザインにたどり着くまでの苦労は相当だったようだ。
大橋氏からは,ドット絵では実在感と生命感を出すのが難しかったからという,ドット絵からの脱却のもうひとつの理由も語られた。テラリウムのような,生き物を世話するような感覚を出したかったそうで,実在感と生命感というのは重要と考えていたようだ。
魔王についての苦労はドット絵だけではない。特徴的な言い回しのテキストが魅力のひとつである魔王。しかしテキストを読むという行為に向いてないVRでは,これまでのようにテキストを表示するわけにはいかない。そこでボイスを入れるという決断に至ったのだが,いざしゃべるとなった際にどんな口調がその特徴的な言い回しに合うのか。大橋氏は自分自身で声を当てていろいろ試し,そうして試行錯誤の末に“しゃべる魔王”が作り上げられたとき,ゲームの完成イメージも共に湧いてきた。
このような苦労があるなか,開発が進んでいる本作。アトラクション色が強いものに注視され,シミュレーションのようなゲームのルールで遊ばせるものは,VRに向かないと見られているのが現状だが,大橋氏は見せ方や表現次第で新しい体験を生み出せると考えているそうだ。そのトライの形が本作なのだろう。
山本氏も,本作はニッチなジャンルだと思うが,それも含めて気づかれていない埋蔵金と呼べるジャンルが,VRにはたくさんあると考えているそうだ。VRはもう特別視されるものではなく,ゲーム文化の食物連鎖の輪の中に入っているという気持ちで,新しいものを作りあげていきたいという。
最後に,セッションのあとに行われた,参加メディアからの質疑応答をお届けしよう。
――本作のゲームの一番のポイント,キモとなる部分はどこだと考えているのか?
大橋氏:
目の前に広がる世界です。その世界に入り込むというのではなく,俯瞰として見られるというのが一番やりたかったところですね。
山本氏:
世界を見下ろしていると,気づいた人が「あっ」と思うんじゃないかというネタはたくさん仕込んでいます。あとは,ゲームのルールで遊んでもらうVR作品って,まだ目立ったものがないので,早くやりたいという強い意志があります。
鳥山氏:
ゲームとしてしっかり遊べるVRタイトルを作り上げる。それが今回の狙いとして制作に取りかかっています。
――本作のボリュームは?
山本氏:
15から20のステージは用意しようと考えていますが,例えば1ステージに20分かかるとなるとプレイヤーも疲れてしまうので,短い中にやりごたえのあるものを作りたいですね。ステージデザインも多彩なものを用意して,見ためのバリエーションも出したいです。
鳥山氏:
このシリーズは繰り返しプレイするところが重要だと思うので,いろんな構成のマップも考えていますよ。
――いま公開されているものは平面のフィールドですが,高低差を生かした要素もあるのか?
大橋氏:
もちろん考えています。
山本氏:
高低差ももちろんですが,[Lボタン]や[Rボタン]でステージを回せるというところを,遊びとして生かしたいと思っています。
――VR関することで,ユーザーに直接聞いて見たいことはあるのか? また,技術的にできるかは別として,こんなことがやってみたいという展望は?
山本氏:
「どんな魔物を出してほしい?」と聞くのは普通すぎてつまらないかな。(制作も進んでいる現在)何か聞けるとしたら,開発に関するダイレクトな質問になりそう。展望は……今はこの作品で手一杯なので(笑)。
大橋氏:
VRでの展望という話だと,生物とのコミュニケーションを描ければと思っています。それは1対1ではなく生態系としての話で,何か刺激をあたえることで生まれるチェインリアクションや進化といったものが目の前に感じられるものを作りたいですね。本作はもっと楽しく遊ばせる方向に振っていくので,そういう作品にはなりませんですけど(笑)。
鳥山氏:
ユーザーに聞きたいことは「VRで“体験”したいですか? それとも“遊びたい”ですか?」ということです。まだ体験するというコンテンツが多い中,根本として聞きたい点でもあります。
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