プレイレポート
ここだけの話,彼女たちは実在してるっぽい。「拡張少女系トライナリー」プレイレポート
アニメクロスリンクRPGと題する本作は,ガスト制作のゲーム部分と,東映アニメ制作のアニメ部分が連動し,相互に内容が補完されていくという,意欲的な取り組みで展開される。今回は先行プレイをする機会を得たので,その感想をお届けしよう。
「拡張少女系トライナリー」公式サイト
※画面は開発中のものです
リアルとゲームがつながった
前述したゲーム×アニメの展開はもとより,最新のスマホゲームならではのコミュニケーションパートの凄みなどに,心をキャッチされている人は多いだろうが,まずは下地として,世界観の紹介からさせてほしい。
「拡張少女系トライナリー」の舞台は,架空の日本の首都圏。そこでは,辺り一帯が繭状に覆われる現象“フェノメノン”が発生していた。繭の中には,人間の潜在意識が形になった超常生物“クラン”が存在しており,パラレルワールドを広げて待ち構えている。ここに入ってしまった人は,狂気の世界に囚われ,やがて洗脳されてしまうのだ。
そんなフェノメノンとクランに対抗すべく結成されたのが,ヒロインたちの所属部隊,あるいは少女たち自身を指す,総務省情報管理庁管轄拡張現実特殊戦略隊群特別攻撃隊……こと“トライナリー”。事件を解決する唯一の術は,特殊な武装を用いて戦う,トライナリーの活躍だけ。彼女たちはそれぞれの日常を過ごしながらも,日夜その脅威と戦っているのだ――というのが物語の背景。
そしてさらに重要なのは,ゲームにおけるプレイヤーの立ち位置である。当然だが我々プレイヤーは,彼女たちとは住む世界の異なる“こちら側の世界の住人”だ。つまり,プレイヤー(=現実の世界)とヒロイン(=架空の世界)という構図になる。
しかし,それがなんの因果か,スマホ上でつながっちゃった。「プレイヤーはスマホを使ってヒロインたちと交信できるようになって,彼女たちを応援したり,時にはアドバイスしたりと,コミュニケーションがとれるようになっちゃった!」のだ。
2つの世界の時間軸は等しくはない。プレイヤーからの交信は,ヒロインたちの過去・未来に自由にアクセスできるらしい。結果,危険な戦闘中にいきなりメッセージを送ったり,それよりも過去の時間帯で,別のヒロインと会話することもできる。ややこしく聞こえるだろうが,単に「いつでもいろいろなシナリオ・バトルに介入できるプレイヤーの立場」を補完してくれる,ありがたい設定と考えておこう。
本作がもたらすゲーム体験は,自身を主人公キャラクターに投影することでも,物語を俯瞰的に客観視することでもない。リアルの自分自身が,ゲームの主人公として,物語に介入できることだ。
もちろん,ゲームという媒体の性質上,上記の説明文の語尾に「(という設定)」とでも追記すれば,その通りかもしれない。だが,そんな手軽な言葉で,この練られた世界観と斬新な体験を片付けてしまうのは,ゲームプレイヤーとしてはナンセンスというほかない。
一度遊んでみる。それだけでいい。それだけで,彼女たちと会話しているのが自分自身であり,彼女たちの実在を疑う人はいなくなるだろう――たぶん。なお,旧来のガストファンであれば「サージュ・コンチェルト」シリーズを思い起こしてほしい。「拡張少女系トライナリー」では,それに近しい体験が待っている。
深夜に布団の中でチャットするのとか,いいと思う
ゲーム内容へと移る前に,まずは大事な大事な5人のヒロインを紹介。
逢瀬つばめ(おうせ つばめ)
CV:たけだまりこ
15才。トライナリーじゃないのに,フェノメノンに対抗できてしまった少女。
「世間知らずのところがウザカワイイ……かも」(千羽鶴談)
國政綾水(くにまさ あやみ)
CV:中恵光城
21才。リーダー格の武闘派少女にして,少女たちの中ではお姉さん的存在。
日本で最初のトライナリー。友人からの愛称は“アーヤ”。
ガブリエラ ロタルィンスカ(がぶりえら ろたるぃんすか)
CV:八木侑紀
14才。ポーランド出身で銃の名手。祖国ワルシャワは現在,戦火にある。
いつもツンツンしてるが,メルヘンなものが大好き。
恋ヶ崎みやび(こいがさき みやび)
CV:萩原あみ
17才。世界を相手取るスーパーハッカ―。
土佐弁・IT用語・ネットスラングを駆使した口調が特徴。
『喋らなければ綺麗なお姉さん』(千羽鶴談)
卯月神楽(うづき かぐら)※ゲーム開始時は非プレイアブル
CV:平山笑美
15才。同い年のつばめとは仲良し。エース級の力を持つトライナリー。
オシャレも好きだが,アニメやラノベも大好き。頻繁に秋葉原に通う。
これが本作のメインヒロインたちだ。彼女らの姿を目に焼き付けたら,次はゲームの基本的な流れに進もう。
ゲームのメインサイクルは,「バトルをクリア」→「シナリオを解禁」→「シナリオを読んで」→「バトルを解禁」→以下略……というもの。本作はいわゆるスタミナ制が採用されているが,ストーリー・アニメ・チャットなどのシナリオコンテンツは,物語の進行に関わるものであってもノーコストで遊べる。バトルでのみスタミナが消費される仕組みだ。
サブ要素も盛りだくさんで,各ヒロインとのイチャコラな会話が楽しめる「らぶとーく」をはじめ,着せ替え&ポージングをじっくりと楽しんだり,ヒロインたちの夜のプライベートを覗き見たり,物を餌にしてデートに誘ってみたり,飴玉を使ってより親密になってみたりと,いろいろできる。説明のディテールを削ったせいで,やましい事に聞こえてしまう人がいるかもしれないが,おおむね語弊はない。
ゲーム中は,細かなタイミングで彼女たちとのコミュニケーションをとることができ,会話内容も日常会話から,踏み込んだものまで,バリエーションが豊富だ。しかも,プレイヤーの自称を「私」「僕」「俺」「ミー」と変更できるため,男女関係なく楽しめる。むしろ,デフォルト設定が私になっているので,そういうほうがアリなのかも……?
メインストーリーは各ヒロインごとに用意されており,時系列を同じくした1つのエピソードが,ヒロインそれぞれの異なる視点で展開する(※例:3つのストーリー×ヒロイン4人=計12ストーリー)。
同じ事件のエピソードでも,部隊の本部で仕事をしているみやびや,電車の中で友人と談話している綾水など,場面はさまざま。複数のストーリーを見ることで,物語の隙間が埋められていく。
また,各チャプターはアニメ映像を核としてはじまり,それを元に事件解決などの道のりがゲーム側で描かれていく。アニメはすべてゲーム内で鑑賞できるため,アプリのみでコンテンツを包括して楽しめるのが大きな特徴だ(※アニメはインターネット配信も予定)。
アニメの内容に応じてゲームが進み,アニメ外のシーンがゲームで補完される。施策自体は,これまでのゲーム業界においてもいくつかの前例があるのだが,それをアプリ内オンリーで,シナジー高めに提供する例は,「拡張少女系トライナリー」が初かもしれない。
公式サイトなどで,異なるメディアのコンテンツを逐一追わなくていいのは,考えるだけでありがたい。端的に言えば「アプリでゲームもアニメも楽しめる」だけのことだが,本作の仕組みであれば「ゲームはやるけど,アニメは見ない」,もしくは「その逆の層」も偏らず(※インターネット配信のアニメのみを見る層は生まれるかもしれない),ガストおよび東映アニメの渾身の制作物を,限りなく等しいバランスで享受することができる。
手軽さを命題としてきたスマホゲーム市場で求められるフォームは崩さず,かつ異なるメディアのコンテンツへの相互相客をロス無しに行えるこの作りは,スマホゲームにおける新たなワン・ストップ・サービスになりえるかもしれない。
トライナリーの苦悩を取り払おう
残念なことに,ゲーム中,我々プレイヤーはフェノメノンと直接対峙する術をもたない。いかに女の子たちとコミュニケーションをとろうと,いかにスマホを持ってる君がリアルモンクだろうと,戦闘は彼女たちトライナリーの領分だ。プレイヤーができることは,“彼女たちの縁の下を支える”だけである(※ゲーム的な操作は除いての話)。
ここで,トライナリーが“何と戦うのか”も知っておきたい。本作は,アニメでは「クランとの戦いと,物語の主軸」が描かれ,ゲームでは「少女たちの日常と,内面の葛藤や成長」が描かれる。実のところ,ゲームではフェノメノンの元凶であるクランと戦うわけではなく,「ヒロインたちの戦いに対するトラウマや,日々の悩みを解消するため,プレイヤーは彼女たちの精神世界に入り,悩みの元凶(これもまたクラン)と戦う手助け」をすることになる。
文面だけで理解するのは困難かもしれないが,なに,ゲーム内で納得いくまで親切に教えてくれるので,気にせずともよし。
本題だが,バトルではトライナリーのうち1人を選び,各々に編成した「サーバントクラン」(キャラクター・カードに相当)を4体+フレンドの1体を借りて,敵と戦う。バトルはWAVE制となり,ボス戦で勝利できればクリアだ。
戦闘の流れは,プレイヤーの攻撃→敵の攻撃を交互に行うターン方式だが,一般的なコマンド選択型のスキームとは異なる,独自の要素が取り入れられている。攻撃方法は,トライナリーに編成した5体のサーバントクランのうち,4体を順番に選ぶというもの。クランは選んだ順で敵を攻撃し,ダメージを与えていく。
クランには攻防などのステータス値と,攻防結果に影響を与える属性が設定されているので,強力&相性の良いクランを持っているほど強い――というのはある種のお決まりだ。
「じゃあ,強力なクランだけで編成を固めればいいじゃん」と考えるのはゲーマーとしては妥当だが,もちろんそれだけではない。バトルではプレイヤーの戦術眼とその手腕が問われる,「スタンス」という要素が存在するからだ。
スタンスは毎ターン,5体のクランそれぞれに「アタック」「エナジー」「ヒール」のいずれかが付与される。そして攻撃時,スタンスの並び順によって,攻撃力UPやHP回復などの追加効果が発生する。つまり“4体のクランの攻撃順”がカギとなる。
どのクランに,どのスタンスが割り当てられるかは,ターンが始まるまで分からないので,攻撃の要のクランに望みのスタンスが付くとも限らず,ときには回復したい状況下でヒールがまったくこないなど,結構悩まされる。いい意味で。さまざまなパターンを想定しながら最善を選ぶ様は,実にパズル的だ。
加えて,サーバントクランは各自が2つの「クランスキル」を所有している。スキルにはダメージ系,バフ/デバフ系,回復系などさまざまな種類が存在し,ココロエナジー(MPに相当。攻撃時に少量充填される)を消費して使用できる。
スキル使用時は手番を消費せず,続けて通常攻撃を行える。また,スキルはエナジーが残っている限り,いくつでも使用できるので(※同じクランの同じスキルはダメ),ボス戦に向けてエナジーをいかに確保していくかも重要だ。
どう転ぶか分からないランダムな手札を,編成で組み込んだスキルでフォローしていく。この駆け引きが本作のバトルの醍醐味といえる。
戦闘に勝利すると,サーバントクランやココロキャンディなどが獲得できるほか,プレイヤー&ヒロインには経験値が入る。各ヒロインはレベルが存在するため,選び方によってステータスや,編成コストの上限に差異が出てくる。また,特定のクランを入手した際は,該当ヒロインの能力値が恒常的に上昇する「ココロクランブースト」の恩恵を受けられる。
クランをコレクションするモチベーションにもつながるし,なによりお気に入りの娘の最大強化に躍起になることが,プレイヤーの使命かもしれない。
★そのほか,気になる部分のスクリーンショット★
ゲーム開始後,無料10連ガチャが引ける |
ガチャでコスチュームも一緒にゲット |
着せ替えしている様子 |
クランはもちろん強化可能 |
メニュー画面の一覧 |
特殊なゴキゲンポイントを消費して,さまざまなコンテンツをアンロック。「彼女と一緒にアニメを見る」はぜひとも入手したい |
「拡張少女系トライナリー」の登場人物たちは,トライナリーのみならず,敵であるクランたちも,さまざまな葛藤を抱えている。トライナリーがクランと対峙し,そのトラウマに応えるように,プレイヤーはヒロインの助けてコールに応じて,彼女たちをサポートしていく。人物も状況もプレイングも,すべてが世界観に落とし込まれ,それらが原動力となって物語を循環させている。これが「拡張少女系トライナリー」の印象だ。
プレイヤーが白けそうになる部分や,設定だけでは受け止められそうにない仕様は,謎の人物である千羽鶴が,メタ的で,シニカルな発言でガス抜きをし,あくまで没入感を破綻させてこない。会話の選択肢もバリエーション豊かなので,テンションに任せた選択肢を選んでいるだけでも,笑いながら楽しめる。というより,ゲーム全体がキュートもシリアスもコミカルも内包しているので,楽しみ方の幅が広い。
それと文中では触れてこなかったが,本作は徹頭徹尾「オシャレな演出」と「ゴキゲンなBGM」で着飾っている。それはゲームを始めた途端,“これは楽し気なゲームだな”と感じとれてしまうほど,うまく練り込まれているものだ。思わず高揚してしまうテクノ調のバトルサウンドは,個人的にはツボであった。
いろいろと世界観が凝っているだけに,「かわいい女の子とキャッキャできるゲームだよ!」の一言で済ませられなかったものの,設定に吸い寄せられるのは生粋のガストファン,もしくは世界観好きのゲーマーの領分なので,ゲームを始めるときの最初の気持ちは「ガブリエラって子がカワイイ!」くらいで十分。100点である。
「拡張少女系トライナリー」公式サイト
- 関連タイトル:
拡張少女系トライナリー
- 関連タイトル:
拡張少女系トライナリー
- この記事のURL:
キーワード
(C)コーエーテクモゲームス・東映アニメーション
(C)コーエーテクモゲームス・東映アニメーション