プレイレポート
[gamescom]ミニマルな横スクロールアクションパズルというインディーズ激戦区に出現した期待の星「FAR」はどんなゲームなのか
事実,gamescomのIndie Arenaでも,「モノクロ(ないしハイコントラスト)」「横スクロール」「パズル要素の強いアクション」を組み合わせたゲームは,筆者が覚えている範囲でも3つほど存在する(正確に数えればたぶんもっとある)。
そのような人気ジャンル(悪く言えば「よくあるタイプのインディーズゲーム」)にあって,ひときわ目をひいた作品があるので紹介したい。Mr. Whale's Game Serviceが開発を進めている「FAR: Lone Sails」だ。
遠く,どこまでも遠く。
「FAR」のジャンルは,上で説明した通り,類型的な横スクロールアクションと言えるだろう。アクション要素は(筆者が試遊した範囲で言えば)少なめで,パズル要素のほうが強めだった。
本作の特徴は,なんといっても「遠い」ことだろう。ゲームのテーマとして「遠くまで旅していく」ことが含まれているのは当然なのだが,本作においては何もかもが「遠い」のだ。実際に何がどう遠いのか,まずはゲーム画面を見ていただこう。
はい,こちらの画面の中央,家の前にあるポストの左隣に立っている赤い小さな人影が,主人公である。プレイヤーはこのキャラクターを操作してゲームを進めていくのだ。いやはや,なるほどこれは「遠い」感がすごい。
ちなみに惜しくも写真は残せなかったのだが,もっとも「遠く」までカメラが引くと,肉眼では主人公が確認できなくなるくらいにまで小さくなる。なんというかそこまでしなくても……。
移動方法も面白い。本作において主人公は,巨大なメカを操縦して前進していく。もちろん,徒歩でも移動できるが,原則としてメカを前進させ続けねばならない――というかこのメカを目的地まで届けるのがゲームの目的のようだ。
このメカは高度な技術で作られた動力源を搭載しており,物体をエネルギーに変換して駆動する。プレイヤーは道すがらに落ちてる箱などを船内(サブタイトルに「SAIL」とあるので,ロボットは船と言うのが適切だろう)に運び込み,将来的な燃料として備蓄しておくことになる。船の燃費は異様に悪いので,それなしではあっというまに立ち往生してしまうのだ。
またこの船も,先に進むにつれて姿を変えていく。最初はただの蒸気機関車的な外見なのだが,途中で帆を積むことで風を受けて走れるようになるのだ。筆者が試遊した範囲では,帆を張るところまでしか進められなかったが,この先さらに改造されていく可能性もある。
巨大な「船」を転がしながら,ひたすら遠くに向かって旅していく――そういう不思議な旅情やときめきが,「FAR」からは強く感じられる。
優れたUIと船内設計
「FAR」を語るうえでもうひとつ注目したいのは,本作のUIが非常に練りこまれた構造を有していることだ。
コントローラにボタンの数が増えてからこの方,ゲームを始める前に(あるいはゲームを遊びながら)「どのボタンで何ができるかを覚える」という作業は,ことのほか面倒になり続けている。
反面,「FAR」においては,左アナログスティックでキャラクターを左右に動かし,ジャンプボタンで「物を使う/掴む/離す」という,ほぼほぼ最小構成だ。これだけで巨大な船の操縦もこなすのである。
どうやって? という話になるのだが,ここがまたよくできている。
船を前進させたい場合,キャラクターを使って船の内部にあるアクセルボタンを押し込むと,船は前進する。ブレーキや蒸気の排出も同様だし,エレベーターの上下,物質転換炉の起動などもすべて「船内にあるボタンを押す」ことで賄う。しかも,コントローラのボタンを押すのではなく,キャラクターを体当たりさせてゲーム内のボタンを押すという感じだ。
このUIは直感的であるだけでなく,世界観ともよくフィットしているし,「巨大なものを動かしている」という実感も得られる。また主人公が小さく表示されているぶん,船内の各ボタンを一望し,行きたいところに向かって(慣れがなくても)迷わず移動できるというのも,ポイントが高い。
「FAR」が乗り出そうとしている領域は,名作と傑作が立ち並ぶ,競争の激しいジャンルだ。しかしそれでもなお,「FAR」はそこで新たな名作としてカウントされる可能性を十分に有しているように思う。なお,「FAR」は2017年2月に,PC(Steam)およびXbox Liveでの配信が予定されているとのこと。
「FAR: Lone Sails」公式サイト
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