インタビュー
[gamescom]ニーアシリーズ最新作「NieR:Automata」の現状をプロデューサーとコンポーザーにインタビュー
――gamescomでは,2つのバージョンのテーマ曲が公開されました。このテーマ曲のモチーフ,もしくは狙いはどのあたりにあるのでしょうか。
岡部氏:
まずは,ニーアとして新しい音楽を提供したい,という思いはあります。エミ・エヴァンスさんの歌はニーアのファンにとっても非常に印象深いものだと思うのですが,やっぱりサプライズもお届けしたいじゃないですか(笑)。
そこでジュニーク・ニコールさんのバージョンをまず聴いてもらい,「新しい音楽」を感じてほしかったんです。その上でエミさんのバージョンも聴いてもらうことで,「ああ,やっぱりニーアだ!」という感覚も持っていただければな,と。そういう,新しさと「やっぱりこれだ」という印象の,両方を作っていきたかったんですね。
なので楽曲のアレンジも,ジュニークさんバージョンとエミさんバージョンでそれぞれ変えています。
――gamescomでは海外メディアからも質問をいろいろ受けていると思うのですが,どのような質問が多かったのでしょう。
岡部啓一氏(以下,岡部氏):
やはり音楽に対する期待感の高さは感じますね。実際,「ヨーロッパでもコンサートを開いてくれないか」という要望は,すでにいくつも聞いています。
ただ,日本でやったニーアのコンサートがありますが,あれはすごく大変だったんです。僕がじゃなくて,スタッフ達が。国内でやるだけでもあんなに大変なのに,スタッフから機材から全部運んでやるとなると,半端無く大変そうだなと。
「NieR:Automata」がたくさん売れたら考えますかね(笑)。
齊藤陽介氏(以下,齊藤氏):
あとはやはり,前作との差というところはたくさん聞かれますね。
ニーアというゲームとして,変わってほしいところもあれば,変わってほしくないところもある,というのをヒシヒシと感じます。
「ニーア」シリーズコンポーザーの岡部氏が所属するMONACA |
レコーディングも可能なMONACAオフィスには,吸音材がいたるところに張り巡らされている |
展示されたトロフィーに混じって,ファンから贈られたエミールが…… |
DAWソフトウェアの画面 |
――現状で,音楽関係の作業としては,ほぼ終わったというところなのでしょうか。
岡部氏:
レコーディングは一通り終わりました。もちろん,まだ微妙な抜けもあるので,そのあたりの調整は必要ですが,gamescomに出発するその直前まで必死で作業して,あとはスタッフに「任せた!」と言って飛行機に乗った感じです。
おかげで今も日本から「ここがこんなことになってますが,どうしますか?」みたいなメールがバンバン来ています(苦笑)。
齊藤氏:
まあ,ここから先は,実機に乗せたときの調整が重要になってきますね。
岡部氏:
そうなんですよね。ジュニークさんの歌声は,こっちもそれを意識したアレンジをしているという部分もあるんですが,「強い」んです。だからそれをそのままゲームに乗せてしまうと,「強すぎ」になるところがあって。
そういった部分をミックスしなおして調整するなど,細かな再調整は必須ですね。
ピアノパートのレコーディング風景 |
都内のスタジオにてストリングスのレコーディング。本作ではストリングスは生音を使用している |
奥のブースで弦楽クインテットが演奏している |
レコーディングのディレクションをする岡部啓一氏とMONACAの帆足圭吾氏 |
――進捗はどうでしょうか。
齊藤氏:
一般的なゲーム音楽の制作工程としては順当なところですね。
ただ,ニーアはゲームに乗せるところでの調整をとくに厳密にすすめているところがあります。なので工程表と見比べてみると,だいたい2か月押しているという感じでしょうか。
実際のところ,ゲームの中でただ音を鳴らすっていうだけなら簡単なんです。でもそれではニーアにならない。音楽へのこだわりを追求するとなると,まだまだ時間がかかりますね。
岡部氏:
そこはほんと,苦労をおかけしております。
ただ,時間がかかったぶん,というわけでもないんですが,クオリティとしては満足してもらえるものができたと思いますね。実機に乗せてみて,自分でそれを聞いてみても,「良いな」と思えますので。
そういう,「前回よりもっと喜んでもらえるものを作ろう」「どうしたらよりよいものが作れるだろうか?」というとこでいろいろと悩んで,時間もかかったんですが,もうそのフェイズは終わって,より具体的な作業に入ったというところです。
ストリングスレコーディング用のシーケンス |
ヴァイオリンからコントラバスまで,帯域が広いためアナライザーも活用 |
――「NieR:Automata」では,キャラクターデザインに吉田明彦氏を迎えていますが,これにはどういう経緯があったんでしょうか。
齊藤氏:
話の始まりはアクシデントでして,実は前作のキャラクターデザインを担当した人間が肘を壊しましてね。今は3Dモデリングとかをやっているんです。で,こうなると新しくキャラクターデザインをしてくれる人を探さないといけない。
そこで真っ先に出てきたのが,吉田明彦氏なんです。氏のデザインであればニーアの世界に絶対にマッチするという確信がありましたし,ニーアの新しいファンはもちろん,古いファンも満足できるものになるとも思っていました。
なので,最初はダメモトのつもりで,お願いにうかがったんです。吉田明彦氏が忙しいのは分かっていましたから。
で,いま氏はCygamesさんの子会社でデザイン制作を専門にやっているCyDesignationさんに所属しておりまして。幸い,Cygamesさんの渡邊社長とは知り合いだったので頼んでみたら,実は彼はニーアのファンで,「やりましょう」と話が進みました。こっちはコンシューマ機で,あっちはモバイルという形なので,市場がぶつかることもないですしね。
結果として,ゲームに登場する主要キャラは吉田氏にデザインしてもらえることになりました。主人公の頭上に浮いてるロボットも,吉田氏デザインです。ゲーム内に登場するそれ以外のキャラクターについても,CyDesignationさんの内部で,吉田氏監修のもと,制作されています。
それ以外の背景画像やステージ画像なんかはプラチナゲームズで作っていますね。
――ヨーロッパでもニーアは人気ということですが,ヨーロッパですとPCゲームも盛んです。PC版の予定はあるんでしょうか。
齊藤氏:
SteamでPC版を販売する予定です。4Kグラフィックスにも対応予定ですね。
ただここで「予定」と言わざるをえないのは,それをするとPCの要求スペックがかなり上がってしまうからです。
――Xbox One版の予定はあるのでしょうか。
齊藤氏:
現状では難しいですね。
――オンライン要素などは入ってくるのでしょうか。
齊藤氏:
今のところ,直接的なものはありません。ですが間接的に他のプレイヤーさんとつながるような仕組みは考えています。
――DLCなどの予定はありますか?
齊藤氏:
やりたいです。が,今は未定としか言えないですね。まずは「NieR:Automata」を完成させるのが第一ですし。
その上でさらに厄介なのは,「NieR:Automata」は全世界同時リリースを目指しているというところです。ここで各国版の品質管理をちゃんとやって,さらに各国のプレイヤーさんが同じ体験をできるよう調整して,という部分がとても大変なんですよ。
――全世界同時リリースということは,例えば音声は日本語で,字幕はフランス語といったことが可能なのでしょうか。
齊藤氏:
ボイスは日英があって,字幕は各国の言語を予定しています。とくにフランスとかですと日本文化に強い興味を持っている人も多いので,「音声は日本語で聞きたい!」という要望が結構大きいんですよね。
なので逆に言うと,海外版の「NieR:Automata」を購入しても,日本語のボイスも入っているということになります。
とにかく,こっちに来て驚いたんですが,ヨーロッパの人たちは,僕の想像以上にニーアに対して思い入れが強いんです。それこそ,日本でのコンサートに嫉妬するくらいに(笑)。なので,グラフィックスにしても何にしても,「これは彼らが納得するような,高いクオリティで作っていかなくちゃアカンな」と,改めて感じました。
――gamescomが終わると東京ゲームショウですが,そちらの予定はどうなっていますか?
齊藤氏:
まずは新トレイラーですね。「RPGだ!」みたいな感じのトレイラーを出します(笑)。あと,体験版も発売前に出していきたいと思っています。30〜40分遊べるくらいの,しっかりしたものです。
東京ゲームショウのステージには,最新のデモを持っていく予定でいます。
――最後になるのですが,ニーアというとセーブデータを消去したりといった,とんでもないギミックが潜んでいるというイメージがあるのですが,今回はどうなんでしょうか?
齊藤氏:
そこはね! 皆さんがそういうことを言えば言うほど,ヨコオタロウディレクターがその気になっちゃうんですよ! それこそ「押すなよ,絶対に押すなよ」のメソッドですよ(一同笑)。
なので僕からは「不用意なことは言うな!」と,皆様に釘を刺しておきたいところです。
――ありがとうございました。
「NieR:Automata」公式サイト
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