インタビュー
往年のダビスタファンも納得の内容。ダビスタの面白さはそのままに,スマホならではの快適性を追求した「ダービースタリオン マスターズ」インタビュー
そんなダビスタシリーズの最新作「ダービースタリオン マスターズ」(iOS / Android,以下ダビマス)は,往年のダビスタファンでも納得できる昔ながらのゲームシステムや雰囲気はもちろん,ストーリー性に富んだシナリオモードや,シリーズ初心者にも分かりやすいシステムなど,スマホならではの快適性を実現しつつも,あくまでダビスタであることにこだわった作品だ。
今回4Gamerでは,本作の開発を手掛けるドリコムの姥 義信氏(プランナー),神谷 健氏(エンジニア),金山圭輔氏(ディレクター)に,開発の経緯やダビマスの魅力,今後の予定など色々な話を聞いたので,興味のある人はぜひ読み進めてほしい。
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スーパーファミコン時代のダビスタを遊んでいるような感覚を味わってほしい
本日はよろしくお願いします。ダビスタシリーズとして初のスマホ向けタイトルとなるダビマスですが,どのようなきっかけで開発することになったのでしょうか?
姥 義信氏(以下,姥氏):
スーパーファミコンやPlayStationのダビスタって,100万本以上のセールスが当たり前のタイトルだったんですが,近年は昔ほど元気がありません。そんなダビスタをもう一度,スマホでみんなが夢中になれるものにしたい,そういった気持ちからこのプロジェクトを立ち上げました。そして,企画書を作ってダビスタの版元であるパリティビットさんに見てもらったところ,二つ返事でOKをいただけました。
私自身がダビスタの大ファンなので,開発が決まって非常に嬉しかったのはもちろんですが,それと同時に,絶対に成功させなければいけないというプレッシャーもすごく感じました。
4Gamer:
ポジティブに考えれば,ダビスタ復活のカギを握るのはダビマスなのかもしれませんね。
姥氏:
そうなってくれると嬉しいです。
4Gamer:
ダビスタのゲーム性は,スマホとの相性がすごくいい気がするのですが,スマホに落とし込むうえでこだわった点などはありますか?
これはスマホゲームに限ったことではないのですが,“快適なプレイ”という点には非常にこだわりましたね。また,すぐに始められてすぐに止められることを重視し,スキマ時間でサクッとプレイできることを意識しました。
4Gamer:
スマホゲーム向けにアレンジしているということでしょうか?
神谷氏:
一概にそうとも言えず,ダビマスには「スーパーファミコン時代のダビスタを遊んでいるような感覚を味わってほしい」というテーマがあるので,スマホゲームやソーシャルゲームっぽさを感じさせないような作りを心がけました。あくまでも,従来の作品らしさを忘れず,ストレスになっていた部分を排除している感じです。
4Gamer:
スーパーファミコン時代にダビスタを遊んでいた世代(30代〜40代)は,今現在,バリバリ働いている人が多そうですし,先ほどおっしゃられていたように,スキマ時間にプレイできることは大きなポイントになってきそうですね。
金山圭輔氏(以下,金山氏):
それと,最近のゲームはログインボーナスが当たり前になっていて,個人的には毎日ログインするのって結構しんどいんですよ。そういう人って意外といると思うので,ダビマスでは週に1回くらいログインすれば,ちゃんとボーナスをもらえるような設計にするつもりです。「毎日ログインをしなきゃいけない」といった負荷がかからないので,やりたいときに気軽に遊べると思います。
「ログインだけでもしとかなきゃ……」という,ある種の脅迫概念みたいなものが生じない作りは嬉しいですね。
では,具体的なゲーム内容についてもうかがっていきたいと思いますが,レース部分でのこだわりなどはありますか?
神谷氏:
バランスには相当気を遣いました。従来のシリーズ作品は,「追い込み」や「差し」が有利とされていたタイトルもありました。我々としては,状況によってさまざまな選択肢を試してほしいと思っているので,昔のダビスタの醍醐味だった自由なレース(馬場や展開によって「先行」「差し」などの脚質の選択)を楽しめるように調整しています。
4Gamer:
それってかなり大変な作業なんじゃ……。
神谷氏:
おっしゃるとおりすごく大変で,血のにじむような日々です(笑)。
4Gamer:
調教に関してはどうでしょうか?
神谷氏:
ダビマスの調教は,今までの基本的な形を踏襲しつつ,調教師の性格が出るようになっています。
4Gamer:
性格が出るといいますと?
神谷氏:
今までの作品を振り返ると,「藤枝厩舎一択!」ということが多かったんですが,ダビマスにはいろいろな性格の調教師がいて,プレイヤーの考えにあった人を選べるようにしています。例えば,勝てる確率の高い小規模なレースでお金を稼ぐため,重賞に出場しない調教師もいるんです。
金山氏:
それと,牧場や厩舎,ジョッキーなど,現地に足を運んで現場の声も聞いてきました。東京競馬場に行ったときには,「ダビスタやってました!」と,関係者の方に言ってもらえたこともあり,開発に関わっている身としてはとても嬉しかったですね。
お金をかけなくても遊び続けられる作品にしたい
4Gamer:
そういえば,ダビマスの料金形態はどのような形なのでしょうか? ダビスタの復活ということで,買い切りという可能性もあると思うのですが……。
姥氏:
なるべく多くの人に遊んでほしいので,スマホで出す以上「買い切り」は難しいと思っています。なので,基本プレイ無料のアプリ内課金制を予定しています。
4Gamer:
なるほど。マネタイズはどのような形を取るのでしょうか?
姥氏:
ダビマスでは,月日を進める際に消費するスタミナ的な要素を回復したり,馬の能力を解析したり,牧場を拡張したりする際に,有料通貨が必要になります。もちろん,ゲーム内資産でもこれらを行うことは可能ですよ。また,馬の解析については,さまざまな要因から自分で分かるプレイヤーもいると思うので,必ずしも必要というわけではないです。
4Gamer:
つまり,経験の差を有料通貨で埋めることが可能ということですね。昨今のタイトルでは主流となっているガチャ要素は入っていないのでしょうか?
姥氏:
ダビマスでは,種牡馬の種付け権利をガチャ(種抽選)で入手する形になります。種牡馬にはランクがついており,有料のプレミアム種抽選で手に入る種牡馬は比較的ランクが高く設定されています。
金山氏:
ただし,高ランクの種牡馬を親にすれば強い馬が生まれるというわけではなく,配合理論や知識の積み重ねが重要です。逆に言えば,弱い馬から強い馬を誕生させることも可能なので,お金をかけずともきちんと遊べるバランスになっています。
4Gamer:
ちゃんと考えて馬を組み合わせていけば,お金をかけずに強い馬へたどり着くことも可能ということですか?
神谷氏:
そうですね。むしろそちらのほうが,コアなプレイヤーには定着すると思います。強い馬同士を掛けあわせたからといって,必ずしも強い馬が生まれるとは限らないところが,ダビスタの面白いところの1つですからね。
金山氏:
それと,本作からブリーダーズカップが復活するのですが,こちらの登録枠を増やすのも課金要素となっています。
4Gamer:
おお,ブリーダーズカップ! 従来のように,馬を登録しておくことで,ほかのプレイヤーの馬と戦える感じですか?
金山氏:
そのとおりです。馬は登録したときの状態が維持されるので,一番状態のいいときに登録してもらいたいですね。それと,公式ブリーダーズカップも構想しているので,みなさんの強い馬が揃ってきた頃を見計らって何かしら開催したいです。
4Gamer:
ちなみに,直近のシリーズ作品では実装されていなかったブリーダーズカップですが,本作では開発当初から実装するつもりだったのでしょうか?
姥氏:
ブリーダーズカップのシステムは開発の初期から練っていました。最初は馬のデザインがなかったので,ひとまず馬に見立てた“パラメータ付きの楕円”を走らせたんですね。そしたらもう大盛り上がりで……。週に1回,会議室でテストプレイしていたんですが,隣の会議室に聞こえてるんじゃないかってくらい熱狂していました(笑)。
神谷氏:
あれは盛り上がりましたね(笑)。そこで,競走させることが大事なのであって,見えるもの,つまりグラフィックスはさほど重要ではないということに改めて気づきました。コンセプトは,たくさんの人に遊んでもらうことなので,グラフィックスに力を入れすぎて端末に要求するスペックが上がらないようにする,という点は気を使いましたね。
4Gamer:
ちなみに,どの世代の端末までフォローしているのでしょうか?
神谷氏:
2013年発売の端末でも動きましたし,私が使っているiPhone 5Sでも動いたので,そうとう古い端末でない限り大丈夫だと思いますよ。仮にレースシーンで処理速度が追いつかなくても,可変フレームレートなので(コマ落ちはするものの)テンポ感はそのままで遊べます。
4Gamer:
ダビスタというゲーム自体,端末のスペックを要求する作りではないですもんね。ダビスタファンも超美麗なグラフィックスを望んでいるとは思えないですし。
姥氏:
ネットなどでファンの反響を見てみると,「グラフィックスはスーパーファミコンレベルでいいから,データだけ新しくしてほしい」といった意見もあるんですよ。僕らも,ダビスタが楽しく快適に遊べれば,グラフィックスにそこまでこだわる必要はないと思っているので,グラフィックスを高精細にして重くなってしまうよりは,快適性を重視したいですね。
薗部博之氏のアドバイスを独自に解釈して,ゲームに落とし込んだ
4Gamer:
改めてこうした話を聞いてみると,やはりダビスタは緻密な計算や経験則から答えを導き出す“職人的なゲーム”で,初心者にはなかなかハードルが高い作品だと思うんです。スマホゲームになることで,新しい層が入ってくると思うのですが,そうした人達にはどうのようなアプローチをするのでしょうか。
金山氏:
ダビスタは,「バネがありそうですね」などのコメントから「スピードがありそう」といった推測をしたり,繰り返し遊んで理解が深まっていったりする過程が面白いので,今回のダビスタも,人との会話や馬の分析などから感じ取れる情報を大事にしていきたいと考えています。
ただ,難しい専門用語が並ぶとグッとハードルが高くなってしまうので,競馬初心者でも理解しやすい言葉を使うなど,できるだけかみ砕いてプレイヤーに届けられるよう意識しましたね。
4Gamer:
なるほど。
姥氏:
ほかにも,初めてダビスタシリーズに触れる方がスムーズに入っていけるように,シナリオを準備しました。メインキャラクター達のデザインはイラストレーターのコザキユースケさんにお願いしたので,親しみやすいキャラクターになっていると思います。
それと,シナリオは1話完結型で,レースを勝ち抜きながら進行していくのですが,育成に注力したい人もいると思うので,そういった方が煩わしく感じないようにも心がけています。
4Gamer:
入り口としてストーリーがあると,初心者も入っていきやすそうですね。
神谷氏:
ダビスタシリーズにおけるシナリオは必須事項ではないんですが,ストーリーを通して「競馬」やダビスタのことを知ってもらえれば,よりダビスタを楽しめると思うんです。もちろん,初心者だけでなく経験者も楽しめるストーリーになっているので,ぜひいろんな人に触れてもらいたいですね。
4Gamer;
少し話は変わりまして,スマホのゲームといえばコラボが盛んな印象ですが,ダビマスは何かとコラボをする予定はあるんでしょうか?
金山氏:
ぜひやりたいんですが,ゲームの特性を考えるとなかなか難しいんですよね。
神谷氏:
具体的なものが思いつかないです(笑)。
姥氏:
ダビマスは,JRAさんの協力を得ているので,実際の競馬とコラボしているとも言えます! ちょっと強引ですけど(笑)。現実でGIが開催されたときにゲーム内でも同じレースでひと盛り上がりする,といった感じになってもらえると嬉しいですね。
4Gamer:
このほか,リリース後の動きに関してはいかがでしょうか?
姥氏:
まだ最終決定したものではないのですが,伝説の馬に挑戦する「ブリーダーズカップ レジェンド」みたいなゲーム内イベントをやりたいと思っています。いわゆる降臨イベントですね。勝利すると,その馬を種牡馬にできる権利が得られる,といった報酬を用意しつつ。これもリアルタイムに情報を更新できるスマホゲームならではの要素になるんじゃないかなと思いますね。
4Gamer:
そういえば,ダビスタの生みの親である薗部博之さんは,本作の開発に関わっているのでしょうか?
姥氏:
アドバイスはたくさんいただいています。ちょっとした一言が,すごい助けになることもあるんですよ。パリティビットのスタッフの方が,「(薗部さんの)あんな話初めて聞きました」って言うくらい深い話もしてくれたので,うまくダビスタの良いところを引き継げたのではないかと思います。
神谷氏:
薗部さんには,「(ダビスタの)この要素は何のためにあるのか」といったシステムの本質的な部分を教えてもらい,我々がそれを独自に解釈してゲームに実装するというやり方で開発を進めています。
4Gamer:
薗部さんもアドバイザーとして開発に関わっていると聞いて,ますますダビマスへの期待が高まってきました。それでは,最後になりますが,読者へ向けてメッセージをお願いします。
神谷氏:
ダビマスは,スマホ向けにいろいろとアレンジを加えているのですが,本質の部分はまごうことなきダビスタなので,ファンの方には安心して遊んでほしいと思います。
過去作であがっていた不満点はできるかぎり解消し,今までで一番面白いダビスタになるように全力で開発しているので,リリースを楽しみにしていてください。
4Gamer:
本日はありがとうござました。
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