インタビュー
「CARAVAN STORIES」の原点は異文化が入り交じる“台湾”。離職率の低いAiming台湾スタジオで制作陣に話を聞いてきた
CARAVAN STORIESのグラフィックスはATWが中心となって制作されており,温かみのある手描きの背景や,日本人にも馴染みやすいキャラクターなども同スタジオによって生み出されている。
今回4Gamerは,本作の大きな特徴といえる手描き感のあるグラフィックスを制作した台湾のATWにお邪魔し,特別にスタジオ内を取材させてもらった。そこで,ATWの総経理 平田尚武氏や,各セクションを代表する制作陣,そして本作のプロデューサーを務める高屋敷 哲氏と,アートディレクター兼マネージャーの久保貴美氏に,CARAVAN STORIESの原点やこだわり,開発秘話などを聞くことができたのでお届けする。
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異文化が入り交じる台湾
そこから生み出される“世界で戦える”作品
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。さっそくですが,Aimingの台湾スタジオであるAiming Inc. Taiwan Branch(以下,ATW)について教えてください。
平田尚武氏(以下,平田氏):
Aimingには,東京の本社に加え,大阪,フィリピンにもスタジオがあるんですが,Aimingのグラフィックススタジオという位置づけで5年前に設立されたのがATWです。現在ではエンジニアの採用を始めたり,ゲームを運営する部署を立ち上げたりと,グラフィックス以外の仕事もできるよう,機能を拡張させている段階ですね。
もともとはAmo(ATW副総経理兼開発統括)を含めた3人で立ち上げたんですが,現在は280名ほどの規模になり,グラフィックススタジオというポジションにとどまらず,今後,Aimingがアジア方面にアプローチしていく際の拠点としての役割も担う予定です。
ATW 総経理 平田尚武氏 |
ATW 副総経理兼開発統括 Amo氏。CARAVAN STORIESでは3D背景の制作と管理を担当 |
4Gamer:
数年で280名に……すごい伸び方ですね。先ほどオフィスを見学させていただきましたが,若い方が多い印象を受けました。
平田氏:
ATWの平均年齢は約26歳で,なるべく真っ白なキャンパスのような,フレッシュな人を雇い,まっさらな状態で東京本社や大阪スタジオにおける,日本のクオリティラインなどを含めた制作に関する考え方を学んでもらいたいという思いがあります。
4Gamer:
若いだけでなく,想像以上に女性が多くてビックリしました。
平田氏:
6〜7割くらいは女性です。一時期はもっと女性比率が高くて,台湾のとあるインターネット掲示板で,「あの会社は女性しか採用しない」みたいな書き込みを見かけたこともありました(笑)。そう思われてしまうくらい女性比率は高いですね。
4Gamer:
なぜここまで女性の比率が高いのでしょうか?
平田氏:
実は,台湾の兵役が関係しています。台湾の男性は大学を卒業したら一年間兵役に就く必要があります。お達しがくる時期が定まっていないこともあって,最大で2年ほどの差が生まれることもあるんですよ。25,26歳のクリエイターだと,その数年はとても大きな差となります。
4Gamer:
なるほど。そういう理由があったんですね。
平田氏:
もちろん,男性に能力がないという話ではありませんし,ATWで言えば,リーダー達の男女比はそれほど女性に偏っているわけでもないんです。ただ,社会構造的に台湾の働いている女性達はものすごくしっかりしているんですよ。
台湾は共働きが一般的で,出産して会社に戻ってくるまでの流れがすべてセットになっています。しっかりと自分のポジションを確立して職場に復帰する。そういう意味でも仕事に対する意識がとても高いですね。早い人だと三か月くらいで会社に戻ってきますし。こうした点は日本と異なる部分で,外部向けの窓口を始め,総務,人事,財務のトップを女性が担っていることも多いです。
僕も女性には敵わないので,値段交渉の場などに女性が出てきたら秘書にがんばってもらっています(笑)。
4Gamer:
交渉がうまそうな平田さんでも敵わないとは……(笑)。ところで,面接にはいろいろな方がいらっしゃると思いますが,採用する際に重視している部分はあるんでしょうか?
平田氏:
面接の際には,ポートフォリオを中心に審査を進めています。また,その人の現在よりも,作品から感じ取れる将来の可能性を見るようにもしていますね。それと,チームワークができるかどうかも大事な要素です。弊社は編成されたチームをベースに仕事を任せているので,能力がズバ抜けていてもチームワークができない人は,最大限の力を発揮できないことが多いんですよ。
4Gamer:
どこまでいっても,仕事は人と人のつながりですもんね。ところで,スタジオを台湾に置くメリットはどこにあるとお考えですか?
平田氏:
立地がいいというのが大きいです。アジアではシンガポールがよく拠点になりますが,日本から6時間かかりますし,土地代,人経費など考えるとそこまで合理的ではないんですよ。その点,台湾は日本から3時間の距離ですし,東南アジア圏へのアクセスも非常にいい。そして何より,台湾が親日国であるということは大きいですね。日本と台湾は密接なつながりがあるので,仕事がものすごくやりやすいんです。
僕は台湾に15年住んでいて,いろんな国の人と仕事をしたことがあるんですが,台湾での仕事のやりやすさはピカイチだと思いますよ。
4Gamer:
少し脱線してしまいますが,昨日,台湾を観光していた際,なんだかみんなが優しかったのも,そういうことなのかなと妙に納得しました。
平田氏:
アジア人同士は,なんとなくどこの国の人か見分けがつきますもんね。それと,台湾の人達は幼いころからさまざまな国のコンテンツに触れているという点も,台湾の強みですね。ゲームであれば,日本,アメリカ,中国,韓国,アニメや漫画は日本,映画であればハリウッド。そういう多様な文化やコンテンツを受け入れる環境で育ったからこそ,世界に通用するものを生み出していけるのではと考えています。
4Gamer:
確かに,そう聞くといろいろなうま味を凝縮できそうですね。ちなみに,みなさんお好きな日本作品はあるのでしょうか?
Edge氏:
私が日本のコンテンツに触れるキッカケになったのは漫画の「ドラゴンボール」です。そこからアニメや関連ゲームに興味を持って……。幼少期はファミコンにどっぷりハマりました。
平田氏:
あれ,「ちびまる子ちゃん」と「ドラえもん」も好きじゃなかったっけ?
Edge氏:
ちびまる子ちゃんのアニメは私も大好きです。ドラえもんは台湾の子供達が大好きでとても人気がありますね!
4Gamer:
その流れだと「サザエさん」の話題も飛び出しそうですが……!
Edge氏:
サザエさんはあまり放送されていないので,もしかしたら知っている人が少ないかもしれません。同じような系統だと,「あたしンち」はけっこう人気がありますね。あと,「クレヨンしんちゃん」も大人気です!
平田氏:
Amoもなんか見てなかったっけ?
Amo氏:
「聖闘士星矢」は今でも見ています。熱血な感じがすごくカッコイイです。
4Gamer:
今聞いた感じだと,ちょっと昔の作品が人気なんですね。最近の作品はどうでしょう?
Edge氏:
最近ってほどでもないのですが,「夏目友人帳」は結構人気です。
4Gamer:
自分は見ていないのですが,猫さんが印象的な作品ですね。
Edge氏:
そうなんです! ニャンコ先生がとてもキュートで……。
平田氏:
Colaはどうなの?
自分も昔から放送されている作品ばかりですね。「機動戦士ガンダム」とか「SLAM DUNK(スラムダンク)」とか。
4Gamer:
男の子って感じのラインナップ(笑)。今の話で思い出したんですが,台湾で一番人気のスポーツはバスケットボールらしいですね。これはスラムダンクの影響が大きいんでしょうか?
Cola氏:
それもあると思いますし,そもそも台湾という国自体がそんなに大きくないので,サッカーや野球のように大きなコートを必要とするスポーツは普及しにくかったのかもしれません。
平田氏:
バスケはビックリするくらい人気ですよ。「夜市」(※)とかにフリースローのゲームがよく置かれているんですが,台湾の人達ってみんな上手なんです。両手に1球ずつ持って連続で投げる姿は当たり前で(笑)。
(※)さまざまな食べ物やグッズなどを販売する店舗が並ぶ,お祭りのような市場のこと。ほぼ毎日いろいろな場所で開催されており,台湾の名物となっている。
Edge氏:
実は私も結構自信あります(笑)。台湾の人は小さい頃にいっぱいやってるので,得意な人はかなり多いと思いますよ。
ドワーフとスチームパンクの融合。自由な発想から生まれるCARAVAN STORIESならではのファンタジー
4Gamer:
ATWでは,基本的に本社からオーダーを受けてグラフィックスの制作をしていると思うのですが,どのような流れで制作が進んでいるのでしょうか?
平田氏:
プロジェクトによって担当が違うので,定型的な流れはないんです。日本側の担当と台湾の担当が直接打ち合わせをして進め方を決めています。
4Gamer:
となると,平田さんは各プロジェクトにどういう関わり方をしているんでしょうか?
平田氏:
基本的にはチームリーダーに一任しているので,開発面で僕が関わることはほぼゼロです。っていうと仕事してないみたいに聞こえるのですが(笑),問題が起こったときには僕が解決しますし,責任も負います。もちろん,問題が起こらないよう,事前にさまざまな手を打ちつつですが,基本はみんなが自由にやれる環境作りを目指していますね。
4Gamer:
意地悪な質問ですが,実際のところみなさんはどう感じていますか?
Edge氏:
とてもやりやすいです! この前も平田さんにヘルプに入っていただいてすごく助かりましたし……。その時々に発生した問題などに対して,柔軟にやり方を変えることがやりやすさにつながっていると思います。
4Gamer:
ヘルプが必要な案件があったということですね(笑)。
平田氏:
基本,Edgeはクールに仕事を進めるので,テンパってる姿を見せないんですが,この前は珍しく余裕がなかったですね(笑)。というのも,「幻塔戦記グリフォン」のときからそうなんですが,高屋敷さんと久保さんのプロジェクトは,極めてゲーム開発っぽい振り方なんですよ。突然の発注とか,いつまで経ってもオーダーがこないとか(笑)。
ただ,EdgeとかColaはグリフォンのときから可愛がってもらっているので,その分,急な案件などの対応力は鍛えられましたね。
4Gamer:
そんなEdgeさんをテンパらせたのはなんだったのでしょう?
Edge氏:
仕事としては,とくにかくいっぱいアイコンを描いてほしい,というものだったんですが,その数が膨大で……(笑)。
おそらく,数だけ出せばいいのであれば,それはできたと思うんですよ。ただ,付き合いが長い分,高屋敷さんと久保さんがどこまでのクオリティを求めているか,っていうのはEdge自身も分かっていて,そのクオリティで指定された数を期間内に仕上げるというのは,ATWの人間をかき集めても間に合わない,という結論に至ったんでしょうね。
ATWに早い段階から参加しているEdgeが,「これはマズイです……」みたいな話を持ってきたのって数えられるほどしかないんですが,そのうちの1回がこの件ですね(笑)。
Edge氏:
最終的には,日本側が調整してくれました。
高屋敷 哲氏(高屋敷氏):
実は,発注したのはまた別の者なんですが,すごい無茶な内容だったので,横で聞いていて「どこまで本気なの……?」って思っていました(笑)。
平田氏:
自分もEdgeがテンパってる姿を見て,「あ,これはやばいやつだな」と感じましたね。ただ,CARAVAN STORIESはAimingとして注力しているタイトルなので,多少無茶があるのは分かっているんです。
そこでATWの制作チームには「間に合わない場合の解決方法を考えてほしい」と伝えてあって,正直,残業しちゃえば簡単なんですが,ATWでは僕以外は原則残業禁止なので,ほかの解決方法を考えてもらっています。それでもどうしようもない時は残業をお願いすることもあるんですが……。さっきの件で言えば,アイコンに優先度を付けてもらい,必要なものから納品する形に変更して,ことなきを得ました。
高屋敷氏:
そもそもな話になっちゃうんですが,CARAVAN STORIESって規模感に対して,制作期間がとても短いんですね。本格的に動き出したのが2016年5月くらいで,今がちょうど1年くらいなんですが,本当に1ミリも余裕がない状態で,どうしても漏れが出ちゃったりすることがあって……。
久保貴美氏(以下,久保氏):
さきほどの件で言えば,先行プレイ会が7月1日に行われることが決定していたのですが,実は表に出せないような仮アイコンを使っていたりして,このままじゃマズイということになり,急遽アイコン作りをお願いすることになりました。ただ,その段階では,リストなどもまだ整っていない状態で,いざしっかりと出してみたら,ものすごく膨大な量であることに気づき,その結果,相当な無茶振りになってしまったんです……。
CARAVAN STORIES プロデューサー 高屋敷 哲氏 |
CARAVAN STORIES アートディレクター兼マネージャー 久保貴美氏 |
4Gamer:
さきほども平田さんがおっしゃってましたが,そうした経験はスタッフの成長につながっているのでしょうか?
平田氏:
そうですね。だいぶ打たれ強くなりました(笑)。
高屋敷氏:
本来はこちら側がもっと強くならなければならないんですが……。
平田氏:
いや,開発側はしょうがないですよ。突発的なものがあるのはこちらも理解していますし,それをどうやって救っていくかというのも,我々の仕事だと思っています。ATWで受け止めきれなかったら破綻するので,何が何でもここでどうにかする,というのは常に意識していますね。
高屋敷氏:
本当にありがとうございます。めちゃめちゃ信頼しています。
久保氏:
Edgeとはグリフォンの頃からの付き合いで,2〜3年かけて同じ作品を作ったという経験もあり,そうした面でもとても信頼していますね。なので,CARAVAN STORIESが動く際も,こちらからEdgeを指名させてもらいました。
4Gamer:
みなさんとは昨日の観光からご一緒させてもらっていますが,本当にお互いを信頼してるなと感じました。ちなみに,グラフィックスのコンセプトは,日本と台湾,どちら側が考えたものなのでしょうか?
高屋敷氏:
CARAVAN STORIESに関しては,ColaとEdgeに大まかな世界観を伝えたのち,アートを出してもらって,そこから僕のほうで設定を考えていきました。基本は,ガッチリとしたやり取りがあったわけではなく,キャラクターや種族に関する最低限の設定を伝えただけですね。見た目の部分に関しては完全にお任せしていましたし,ATWのほうで世界を作ってきたと言っても過言ではないと思います。
4Gamer:
EdgeさんやColaさんは,制作するにあたってとくに意識されたことはありますか? 話を聞く限りオーダーがザックリしているので,かなり自由度が高かったと思うのですが。
Edge氏:
最初に高屋敷さんから言われたCARAVAN STORIESの設定は,世界観がファンタジーであること,種族がたくさんいること,くらいだったんです(笑)。ただ,私達はもともと豊かな世界を表現したいという思いが強かったので,これだけの自由度はある意味でチャンスだったのかもしれません。
4Gamer:
思った以上にザックリとしたオーダーですね(笑)。
Edge氏:
あと,キャラクターと種族は,ありふれたデザインにはしたくなかったので,バラエティに富んだものにすることも意識してました。加えて,王道ファンタジーではあるんですが,みんながビックリするような設定にも挑戦しています。そういったアイデアを高屋敷さんに話し,それをまとめてもらいましたね。
高屋敷氏:
グラフィックスの制作は,台湾のメンバーにできるだけ多くのアイデアを出してもらうところからスタートしていて,最初は5人くらいのチームだったんですが,5人それぞれが独特な絵柄や世界観を見せてくれて……。台湾のメンバーから出たアイデアって,ほとんどが僕の中にはない発想で,最初のデザインを見た時はハッとさせられましたね。僕の世界になかったものを継ぎ足してくれたので,凄く刺激を受けました。
4Gamer:
そういう意味では,先ほど平田さんがおっしゃっていた異文化が入り交じる台湾にスタジオを置くことのメリットが出ている感じですね。
高屋敷氏:
そうですね。そして,さまざまな検討を重ねた結果,Edgeのキャラクターデザインと,Colaの世界背景が今回の目指しているものにフィットしそうだったので,これらをベースにCARAVAN STORIESのデザインが進行していきました。
Edge氏:
CARAVAN STORIESでは2Dチームにメンバーが10人くらいいるんですが,制限をかけず,自由にアイデアを出してもらっています。私は主にそれらのアイデアをまとめる作業なんですが,スタッフには,新鮮さを感じるようなデザインにしてほしいと,お願いしていますね。
4Gamer:
キャラクターデザインの部分で,とくに「ここに注目してほしい!」みたいなところはありますか?
Edge氏:
キャラクターの豊かな表情を出すことがCARAVAN STORIESの趣旨なので,全員が美男美女ではなく,太ってるおじさんや大柄な男がいる点には注目してほしいですね。個人的には,CARAVAN STORIESは種族が多くて個性のあるキャラクターをたくさん作れるので,とてもやりがいがありますし,楽しんでやれています。
4Gamer:
Colaさんは世界設定を担当されているとのことですが,制作するにあたってとくに意識されている部分はどこでしょうか?
Cola氏:
私は,CARAVAN STORIESのベースであるファンタジーに重点を置きつつも,リアリティのある要素も大切にして,デザインを考えています。
例えば,最初にドワーフのマップを提案したんですが,私はスチームパンクの世界が好きなので,そのテイストを入れてみたんです。個人的なイメージですが,ドワーフとスチームパンクの組み合わせはあまり見たことがなかったので,絶対に通らないと思ったんですが,意外にも採用してもらえて……。
4Gamer:
日本側は最初見たときはどう感じたのでしょうか?
高屋敷氏:
とても良い印象でした。僕は20年くらいゲームを作っていますが,経験があるからこそ自分の中に制限をかけてしまうことも多いんですね。一方,メンバーが自由に考えてくれたアイデアのほうはすごく面白いですし,僕の発想からは絶対に出てこない。
突拍子もないものだと,最初は「んん?」と思うんですが,すぐに答えを出さずに1〜2日くらい時間を空けて,頭の中で世界観を再構築してみると,結構良いなって思えることも多いんですよ。その日に答えを出すと,絶対にNGを出してしまうので(笑)。もちろん,全部通すわけではなく,キャラクターデザインでいえば,1回ガンダムみたいなのがきちゃって,さすがに行き過ぎちゃったなと思い,NGを出したこともあります。
4Gamer:
おお,個人的にはとても好みですが,これは確かにイカツイですね。
高屋敷氏:
デザインとしてはとてもいいのですが,ビームシールドとかビームサーベルとか,ちょっとCARAVAN STORIESの世界ではオーバーテクノロジー過ぎて……。かなり悩んだんですが,今はまだ早いかなという結論に至りました。そういう意味では,いろんなものを落としてしまっているので,本当に贅沢にやらせてもらっていますね。
今までで関わったタイトルの中で,ここまでデザインにリソースをかけられるタイトルは初めてです。日本側には「FFXV」に関わったメンバーもいるのですが,「ここまでしなかった」と驚くくらいのレベルですね。
キャラクターのアクセサリーなども細かい部分までこだわってくれているのに,落とすことになってしまったりすると,もったいない……といつも感じます。
4Gamer:
ただ,落とされたものもどこかでまた使える機会があるかもしれないですよね。
高屋敷氏:
そうですね。素晴らしいものばかりなので,うまく活用していきたいです。
4Gamer:
ちなみにデザインに関しては,ある程度日本を意識したテイストにしているのですか? それともグローバル基準で?
Edge氏:
ATWは基本的に,日本のゲームが好きな人を集めています。面接の時も,日本のゲームが好きかどうかは必ず確認していますし。なので,当然日本のユーザーが好みそうなデザインは意識していますね。
Cola氏:
ただ,日本に寄りすぎたデザインにならないようにすることも気をつけています。CARAVAN STORIESは,いわゆる日本の王道RPGではないので,日本らしさを意識しつつも,一定の割合で,グローバル基準のファンタジー要素も取り入れることは意識していますね。
ただ綺麗なだけのグラフィックスにはしたくない
手描きだからこそ描けるもの
4Gamer:
手描きテイストのグラフィックスも本作の大きな特徴ですよね。最初からこのテイストで行こうという話だったんですか?
久保氏:
もともと,デザイン画のイメージそのままのものをモデルとして作り上げることが絶対条件でした。なので,最初は綺麗なタッチをできるだけ生かしたものを作ったんですが,最終的に手描きのテイストに落ち着きましたね。というのも,綺麗なテクスチャーやモデル,風景画も素晴らしいと思うんですが,それだけでは印象に残らないんです。そんな時に担当のエンジニアと相談をして,手描きのタッチを入れるようにしました。モデラーが何人いても手描きテイストのイメージで統一できるように,静画で落とし込む作業はずっと続けていましたね。
4Gamer:
3Dモデルチームはどういった部分にこだわって制作したのでしょうか?
CARAVAN STORIES 3Dキャラクターチーム 副リーダー August氏 |
August氏:
テクスチャーの段階で手描きっぽさを残すようにし,リアリティが必要なものは色が豊かなになるように意識しました。あと,細かい部分のディテールは少し省略されているんですけど,そうすることによって,完全なリアリティではなく手描き感を出すようにしています。
4Gamer:
省略することでグラフィックスの容量を軽減することも狙っていたのでしょうか?
August氏:
いえ,とくに狙ったものではなくて,結果的に負担を軽減させることにつながった形です。
久保氏:
CARAVAN STORIESはスマートフォン対応のゲームなので,表現の関係上,ローポリゴンで作ることも必要になってくるんですね。通常であれば綺麗な三面図などを用意するのですが,そうした工程を飛ばして,デザイン決定後はラフの状態でモデルに入ることもあります。
4Gamer:
なるほど。
久保氏:
その後,デザイン画に描いてあるキャラクターの形やシルエットをモデラーが把握してからモデル制作に入るんですが,モデラーには“どこに視点を持っていきたいか”“どこに注目してもらいたいか”をきちんと決めるよう,意識させていますね。この方法は日本のチームでは浸透しているのですが,ATWではまだまだ浸透していないので,日本で研修してもらったりしています。
Amoも去年の頭から半年くらい日本で研修してましたよね?
そうですね。2016年1月から6月くらいまで日本の本社で研修させてもらい,技術面だけではなくて,どういった視点で取り組んでいるのかなども勉強させてもらいました。
個人的に日本で学んだ部分で印象的だったのは,リアリティを追求する姿勢です。例えば,オークの村を作るにしても,文明レベルを考慮してオーク達ができることとできないこと,あっていいものとあってはいけないものを考えるんです。
4Gamer:
細部までこだわっているんですね。
Amo氏:
また,橋の上をプレイヤーキャラクターが通るとき,下にはオーク達の村が見えるので,普段使っている生活道具などから「生活感」が見えるような工夫をしていたりします。
このほかにも,ただプレイするだけではなく,遊び手が自由にフィールドを動き回れる楽しさ,これも非常に大切なことだと学びました。これら以外にもたくさんのことを学び,台湾に持って帰ってチームに共有したことで,確実にクオリティアップにつながりましたね。
4Gamer:
なるほど。ちなみに,Amoさんが一番思い入れのあるところはどこでしょうか?
Amo氏:
私は一番最初の村が好きですね。初めて作ったマップなんですが,制作当初はColaの描いたイメージボードと一致しなくて,どうしても納得ができなかったんです。直すとなると一から直すことになるので,納期などを考えるとかなり厳しかったのですが,やはりクオリティを求めたかったので,作り直す決断をしました。
クオリティの追求にあたり,草の生え方や細かい動き,草と石はどういう配置だったら自然に見えるのかなど,いろいろと研究し,その結果,なんとか納得のいくクオリティまで到達できたので,印象に残っていますね。
さきほどの研修の話なんですが,私の感覚だと,研修というよりは,日本の背景チームリーダーの隣でAmoが一緒に制作している感じが強かったです。最後は,お互いの考えが分かるくらいには通じ合えていたと思いますし。……っていうとちょっとBLっぽい感じに聞こえるんですが(笑)。
そのおかげもあってか,Amoが台湾に戻ったあとも,直接会わずともしっかりと意思疎通ができますし,クオリティの維持と向上につながっている気がします。日本での研修はATW側だけでなく,我々にとっても良い経験でしたね。
平田氏:
半年って長いようで短いと思うんですが,実は短期間でそれだけ仲良くなれたのは,久保さんのおかげなんですよ。というのも,研修期間中に,突然Amoから楽しげにスキーをしている写真が送られてきまして,よくよく話を聞いたら久保さんに新潟まで連れていってもらって,みんなでスキーを楽しんだとかで……。そもそも台湾って雪が降らないので,台湾の人は雪が好きなんですよ。
4Gamer:
ああ,なるほど! 確かに台湾って暑いイメージが強くて雪とは無縁そうです(笑)。というか,今の話もそうですが,CARAVAN STORIESに関わっているメンバーはみなさん仲がいいですよね。
平田氏:
そうですね。ATWで言えば,面接のときにもチームワークができるかどうかは重点的に見てますからね。
4Gamer:
離職率がとても低いとも聞いていますが,チームワークを重視した結果が別の形でも現れていますね。
立ち上げの頃は僕が不慣れなこともあり,多少バタバタした時期もありましたが,おかげさまで,今では非常に低い離職率を維持しつつ,従業員数を順調に増加させられています。その影響でそろそろオフィスに人が入りきらなくなってきて,ついさっきまでオフィスのレイアウトを考えていました。答えは出ませんでしたが(笑)。
4Gamer:
規模が大きくなり続けているATWですが,野望みたいなものはあるのでしょうか?
平田氏:
まずは台湾で一番のゲームスタジオになりたいですね。その想いはロゴにも現れています。ATWのロゴって独自のデザインになっていて,チェッカーフラッグみたいなものが描かれているんですよ。チェッカーフラッグって1位の人が振ってもらえるものなので,ナンバー1を目指すという意味が込められています。もちろん,さらにその先となると,世界で仕事をすることもイメージしていますね。
4Gamer:
みなさんとても楽しそうに仕事をしているので,そうした人達が作った作品がどんなものに仕上がるのか,すごく期待しています。では,そろそろ時間も迫ってきているので,最後に平田さんから一言いただけますか?
平田氏:
多くの人にCARAVAN STORIESを遊んでいただきたい,その一言に尽きますね。ATWとしてもガッチリと制作に取り組んでいるタイトルですので,将来的には台湾でもCARAVAN STORIESが遊べるようになると嬉しいです。
その時に,自分が作ったものがどういう形で台湾の人に遊んでもらっているのか,その姿をスタッフに見せてあげられればいいなと思います。まずは日本でのサービスを頑張って成功させたいですね。
4Gamer:
ありがとうございました。
ATWはペットと一緒に仕事をすることが許可されているそうで,この日はイグアナを連れてきているスタッフがいた |
スタジオ内には,Aimingがメインスポンサーを務めるプロe-Sportsチーム「DeToNator」の面々も |
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