連載
【短期連載】「ウォーゲームってなんすか?」と聞かれたときに聞かせたい話。第三夜「対戦相手は必ずいまーす!」
以前はとても困難だった対戦相手も,インターネットのおかげでずいぶん探しやすくなった。ブームだった1980年代と比べても,新作は継続して供給されるし,連載第2回で紹介したとおり,中身も進化を続けている。
3回連載の最後となる今回は,そんな現在のウォーゲームのラインナップから,ウォーゲーム事始めに相応しいタイトルを,“ゲーマーのプロファイル別に”紹介してみたい。また「いやウォーゲームを買っても,やる相手も広げる場所もなくて」という人に向けた情報も合わせて掲載しておくので,参考にしてほしい。
「ウォーゲームってなんすか?」と聞かれたときに聞かせたい話。第一夜「ウォーゲーム帝国の興亡」
「ウォーゲームってなんすか?」と聞かれたときに聞かせたい話。第二夜「戦争を机上に再現する思考」
入門にオススメなウォーゲームカタログ 2018年夏版
初心者から「ウォーゲームをやってみたい」と言われたとき,どのタイトルを最初に勧めるかは,ウォーゲーマー達の間でも,長く議論されてきたテーマだ。「定番の入門用」とされている製品もあるが,筆者としては「その人がウォーゲームに何を求めているのか」の方が大事だと思っている。ここでは遊びたい人がウォーゲームに「何を求めているのか」をテーマに,初心者にオススメしたいタイトルを選んでいる。
なお紹介しているタイトルはいずれも2018年8月現在において,メーカーに在庫があって「新品」が購入可能な製品の中から選んでいる。紹介しているタイトルを購入する場合は,ネット通販ならウォーゲームを長きにわたって取り扱っている「ボードウォーク岡山店」や「クロノノーツ」「サンセットゲームズ」が有名どころでオススメだ。また,個人ブランド「ボンサイゲームズ」を立ち上げた中黒 靖氏が運営する「小さなウォーゲーム屋」も,最新のウォーゲームが付録についた海外雑誌をはじめ,斬新なアイデアを導入した製品を揃えている。さらに,専門誌を発行しているコマンドマガジンのネット通販サイト「a-game」と「ゲームジャーナルオンラインショップ」でもバックナンバーや別冊などを購入できる。いやはや,いい時代になったものである。
実店舗ではやはり首都圏に集中してしまうものの,神保町の書泉グランデ3階は箱入りウォーゲーム,およびウォーゲームが付録の海外雑誌が充実している。ほか,イエローサブマリンの「秋葉原RPGショップ店」と「新宿ゲームショップ」も品ぞろえが良いのでオススメだ。新品はもちろん中古の取り扱いも多く,タイミングによってはオークションで高値がつくような,貴重なビンテージ品が並ぶこともある。都内の読者は足を運んでみるといいだろう。
■ウォーゲームのメカニクスに興味があるユーロゲーマーなら
ドイツ戦車軍団(国際通信社 / 税別3800円)
近年流行しているヨーロッパ生まれのボードゲーム――いわゆるユーロゲームの延長として,ボードゲームの新たな側面を体験してみたいのなら,競技性に優れていてかつルールや駒の数がそれほど多くない,比較的短時間で遊べるタイトルがいいだろう。そこでオススメなのが「ドイツ戦車軍団」だ。
同作はウォーゲーム未経験者のためにデザインされた「作戦級」陸戦ウォーゲームで,第二次世界大戦のドイツ陸軍を扱い,1ターンは2日間に相当する。
プレイヤーは交互に駒を動かして戦闘を行い,戦力比とダイス目で戦闘結果を求め,戦線を構築し,包囲して敵を除去するなど,ウォーゲームの主流である陸戦作戦級で必要とされる局面を,ひととおり学べる。
プレイ時間は短いシナリオで30分から2時間程度と,中〜重量級のユーロゲームとあまり変わらない。扱っているシナリオも実際にあった戦闘ばかりで,1つの製品で「エル・アラメイン」「ダンケルク」「ハリコフ攻防戦」「コンパス作戦」を体験できる。ダンケルクの戦いは最近映画になったこともあって知っている人も多いだろうし,細かいところでは「ガールズ&パンツァー 劇場版」には,本作(のエル・アラメイン)を遊んでいるとおぼしきシーンが登場している。そのあたりをきっかけにして友人を誘ってみるのもいいかもしれない。
■戦車が出てくる映画やアニメが好きなら
TANKS+(国際通信社 / 税別4600円)
映画やアニメからウォーゲームに関心を持った場合,映像イメージが強いので戦車が1駒1両で登場する「戦術級」がピタリとはまる。ただ,戦術級は「場所による装甲の厚さの違い」や「建物や地形の影響」など,戦場を再現するための細かいルールが多くなりがちで,難度が高い傾向にある。そんな中にあって,この「TANKS+」はルールがシンプルでオススメできるタイトルといえる。
タイトルに“+”がついてることからも分かるように,同作はかつて販売されていた戦車戦ウォーゲーム「TANKS!」の拡張版として登場したタイトルだ。「TANKS!」はドイツ軍とソ連軍の戦車を扱った入門用ウォーゲームとして,復刻版が発売されると同時に完売するほど人気があり,拡張版ではさらにイギリス軍と米軍も追加された。
こうした戦術級タイトルでは収録されている戦車の数や,付属するシナリオの数が重要になるが,「TANKS+」には36種類の(対戦車火器を含む)戦車と,11種類のシナリオが用意されている。中には「フューリー」「遠すぎた橋」など,映画から引用したタイトルのシナリオもあるので,戦争映画から入る人にはもってこいだろう。
ぱんつぁー・ふぉー2(国際通信社 / 税別2400円)
アニメ「ガールズ&パンツァー」(以下,ガルパン)の公式戦車道ボードゲーム第2弾。劇場版で登場した大学選抜との試合を再現したのが,この「ぱんつぁー・ふぉー2」だ。といっても「戦車同士のアクロバティックな一騎打ち」といった,ガルパンらしいアクションシーンの再現ではなく,劇場版のテーマの一つでもあった「大隊中隊小隊といった部隊運用」を重視したデザインとなっている。マップもマス目が敷き詰められた「ヘクスマップ」でなく,戦場を大きく区切った「エリアマップ」で表現され,1駒1両ではあるものの,移動と戦闘は複数の駒をまとめて処理する方式だ。
ガルパンがモチーフのウォーゲームということで,戦車だけなくキャラクターにも駒が用意されていて,さらにカードを引きながらゲームを進める「カードドリブン」方式を採用。引いたカードに書いてあるコマンド(射撃や移動,あるいは劇中のエピソードを再現するイベント)を実行しながら進行していく。
小隊長や中隊長,大隊長といったキャラクターの駒には,それぞれ能力が用意されていて,カードを引ける枚数が増えたり移動力や命中力が向上したりといった要素もあって,原作の世界観をうまく再現している。
■日本海軍の艦船に興味があるなら
聯合艦隊(サンセットゲームズ / 税別6800円)
いろんなアニメやゲームの影響で,日本海軍艦艇に関心を寄せる人がかつてないほど増えている。彼らは艦名なんて当たり前で,そのスペックから戦歴,そして歴史的IFの可能性についても豊富な知識を有していたりする。となれば,その歴史のIFを試したくなるのが常であり,そうした流れはタミヤのプラモデル「ウォーターラインシリーズ」の頃から変わりない。
そうした人達に向けてオススメしたいのが,日本海軍による水上砲雷戦が楽しめるウォーゲーム「聯合艦隊」だ。1駒1艦で1ターン6分,1へクスあたり1000メートルというスケールながら,個艦を精緻に再現するのではなく,戦隊もしくは艦隊レベルでの海戦を重視したゲームデザインで人気を博している。
大編成の艦隊による水上砲雷戦を,ウォーゲームに慣れていない人でも扱えるよう艦艇データは最小限に抑えられており,損害を受ける場所も「兵装」「船体」だけと把握しやすい。ときに複雑になりがちな損害箇所の処理がないため,プレイフィールは軽快ながら,「特殊命中」によって誘爆ののち轟沈といったシーンが生まれることもあり,水上砲雷戦らしい戦いが楽しめる。
登場する艦船についても,新造時/近代化改装後/艦種変更後といったバリエーションが用意されている艦もあり,シナリオも第二次世界大戦〜大正末期の仮想戦までを完備。もちろんシナリオの自作も可能で,歴史のIFを楽しむにはうってつけのタイトルとなっている。
激突南太平洋(国際通信社 / 税別2200円)
連載第2回でも紹介したように,ミッドウェー海戦に代表される空母戦は,日本でも関心の高いモチーフといえる。しかし「現役」のウォーゲームでとなると限られるのが現状だ。そんな中でも,「激突南太平洋」は空母戦を扱った数少ない入門用の製品として,オススメできるタイトルといえる。
この「激突南太平洋」は,長きにわたってボードゲーマー達から支持を集めた「日本機動部隊」(エポック社→国際通信社)をベースに「南太平洋海戦」を扱ったタイトルとして,1986年にエポック社から発売された「シミュレーション入門2」に収録された作品の復刻版だ。復刻にあたりさらなる改修が加えられ,「第二次ソロモン海戦」のシナリオと,そのキャンペーン(長編シナリオ)を追加収録。さらに「日本機動部隊」の索敵ルールまで搭載し,絶版となってしまった「日本機動部隊」のリリーフ役として遊ばれることも少なくない。
なお空母戦を再現したウォーゲームとしては,このほか「海空戦 南太平洋 1942」(同人作品/税別5000円)が日本語で楽しめ,かつ新品で購入できる唯一のタイトルとなる。「激突南太平洋」よりも難度は高いが,空母戦をより細かく再現したタイトルとして,興味のある人は挑戦してみてはいかがだろうか。
■戦闘機や爆撃機,空戦に関心があるなら
ダウン・イン・フレイムズ(国際通信社 / 税別3600円)
ミリタリーでは空戦もまた重要で,愛好家が多いジャンルといえる。それゆえ古くはアバロンヒルの「Air Force」や,SPIの「Air War」といった伝説的な名作が存在しているのだが,三次元機動を扱うことから難度はどうしても高くなりがちな側面があった。しかし,近年ではこのジャンルでも難度を抑えた製品が登場してきている。
国際通信社から発売されている「ダウン・イン・フレイムズ」は,カードゲームでありながらも,「空戦で重要なのは,互いの相対位置とエンジンパワーの違い」という部分にメカニクスを集約し,好評を呼んでいるタイトルだ。
登場する戦闘機や爆撃機,攻撃機は,第二次世界大戦期の日米英独ソ,そしてポーランドの各国から55機種が幅広く収録されていて満足度が高い。機動に関するルールはバッサリ省略されているものの,多彩な操縦テクニックを駆使してギュンギュンと大空を飛び回り,相手の背後にピタリとつけたタイミングで必殺の射撃をズトンとお見舞いする――そういった雰囲気と“実際の空戦の流れ”を体感できる意味で,「映画やアニメで見たスピード感あふれる空戦」を期待する人にオススメの一作だ。
F-16 ファイティングファルコン(国際通信社 税別価格2200円)
映画「トップガン」が封切られた1986年当時,「うおおおお! トムキャットでミグ撃墜したい!」となった青少年の多くが挑んだウォーゲームがSPIの「Air War」だった……のだが,その超高難度に挫折した練習生も少なくなかった。そんな状況を救うべく登場したのが,同年にエポック社から発売された「シミュレーション入門2」に収録された「F-16 ファイティングファルコン」だ。開発はレックカンパニーが手がけており,2013年に国際通信社から再販が行われたため,現在も入手が可能となっている。
登場する航空機は,最新でも「F-16」「F-15」「F-14」「MiG-23」とオリジナル版が登場した当時のまま(ただ,再版にあたって4種の同世代機と2つのシナリオが追加されている)だが,ベトナム戦争やベッカー高原,そしてフォークランドと有名な戦争や紛争で起きた空戦シナリオを収録。複雑になりがちな移動のルールは,「高度の低い機から先に移動する」「飛行機の姿勢に変化する移動力は,一目で分かるマトリックス表で処理する」といった工夫で遊びやすくしている。
■太平洋戦争の大きな流れに興味があるなら
太平洋戦史(国際通信社 / 税別4000円)
太平洋戦争を,始まりから終わり(もしくは結末の見えた末期)までプレイするウォーゲームとなると,どうしても大がかりになりがちだ。しかし,その全体像を2〜3時間で把握できてしまうのが「太平洋戦史」の大きな魅力と言える。
拠点と拠点を線で結んだ「ポイント・ツー・ポイント」式のマップを採用する同作は,ヘクスマップより扱いやすく,また日米の空母/戦艦/重巡洋艦が1隻1駒で登場。選択ルールを使えば,重雷装艦の「北上」「大井」姉妹や,史実では未完成だった空母「伊吹」「笠置」,そして戦艦「信濃」も登場させられる。なお陸軍は大きく抽象化されており,「戦闘に生き残った軍艦が多ければ戦力十分」と見なす扱いとなっている。
連載第2回でも触れた「資源」の問題は,艦隊を出撃させるときに消費される「資源カード」として再現し,後半になればなるにつれ米軍が有利になっていく様は,手札にできるこの「資源カード」の枚数として反映される。「資源カード」はまたイベントカードでもあって,「日本軍の慢心」で艦隊が大打撃を受けたり,「水雷戦隊の活躍」で奇襲をかけたりといったことも起こり得る。
■大河ドラマのような幕末に思いを馳せたいなら
江戸幕府の黄昏(シミュレーションジャーナル 税別価格3600円)
米ソの冷戦時代を再現したGMTのボードゲーム「トワイライト・ストラグル」(日本語版の販売はクロノノーツ)は,ユーロゲーマーにもよく知られたタイトルだが,ゲームデザインはそのままに,その舞台を日本の幕末に置き換えたのが「江戸幕府の黄昏」だ。
史実におけるペリーの来航から大政奉還への流れを背景に,プレイヤーは米ソならぬ,佐幕勢力と倒幕勢力に分かれて,自勢力の影響力をより多くの藩に及ぼすことを目指す。
ゲームは基本的にカードドリブンで進行し,イベントとして「安政の大獄」「桜田門外の変」といった事件が発生する。いずれも大河ドラマなどで馴染みのある出来事であるはずなので,その方面から入ってくる人にも勧めやすい。駒に戦闘力や移動力が設定されているようなガチガチのウォーゲームではないので,「ちょっと目先の違う,それでいて馴染みのあるテーマ」を求めるユーロゲーマーにもオススメのタイトルだろう。
ウォーゲームハンドブック2017「田原坂の戦い」(国際通信社 / 税別2400円)
ウォーゲーム専門誌「コマンドマガジン」で知られる国際通信社が毎年発行してる「ウォーゲームハンドブック」には,付録として入門用のウォーゲームが付属するのが通例となっている。2017年12月に発売されたその最新版「ウォーゲームハンドブック2017」に収録されたのが,この「田原坂の戦い」である。
同作は,西南戦争の戦況に大きな影響を与えた「田原坂の戦い」と「高瀬の戦い」を,1へクスあたり1キロ,1ターンが3日間,1駒は1個大隊(政府軍)または1個中隊(旧薩摩藩勢力)というスケールで扱ったウォーゲームとなっている。ゲームデザインは,先に紹介した「ドイツ戦車軍団」がベースなので,やはり入門用に相応しい。
冊子には,西郷隆盛と「西南戦争」の解説記事もあり,ウォーゲームを楽しむ要素の1つである「史実の知識を得て,疑問に思ったことを追体験で確かめる」といった楽しみ方にも最適だ。また4Gamerでお馴染みの徳岡正肇氏による,コマンドマガジンでの連載コラムを“まとめ読み”できるのも見逃せないところだ。
■現代日本を取り巻く軍事と政治に関心があるなら
レッド・ドラゴン・ライジング(国際通信社 税別価格5400円)
東アジアの西太平洋海域における「将来起こるかもしれない」軍事衝突を扱うウォーゲームとして,2008年に米国のウォーゲーム専門誌「Strategy&Tactics」の250号で初めて紹介された「レッド・ドラゴン・ライジング」は,以来長きにわたって高い人気を得ているウォーゲームでもある。
同作では海軍や陸軍,空軍の軍事的衝突の可能性だけでなく,関係諸国における政治情勢が軍事作戦に及ぼす影響まで反映されていて,ゲームで発生するイベント次第で,同盟国が軍事的作戦から離脱して対立陣営に加わることすら起こり得る。
現在入手可能な最新版は,「いずも型護衛艦」や艦載タイプの「F35」,トランプ政権発足によって予想される政治想定まで追加されており,南沙諸島と尖閣諸島を独立したエリアとしたバリエーションマップまで完備するという,まさに2017年の世界情勢が反映されたものとなっている。シナリオも「米国と同盟を破棄して中国と軍事同盟を結んだ日本」といったものも用意されていて,まさに“幅の広い”可能性を試すことができる。
(コラム)もっと「違う時代」のウォーゲームをしたいと思ったら
ウォーゲームの新作は続々と登場してきているものの,いざ新しいタイトルに手を出してみようとすると,どんなゲームか分からないことがままあるものだ。国産タイトルならまだしも,海外タイトルの場合は顕著で,そのようなときには実際にプレイしたウォーゲーマーによるプレイレポートを参照するといい。以下に取り上げるゲームタイトルが多いサイトへのリンクを掲載するので参考にしてほしい。
ウォーゲームの対戦相手を探すには
日本市場におけるウォーゲームの流通は大幅に改善され,購入事情も数多くの製品の中から自分に合うものを選べるまでに回復しつつある。しかし,
「といっても,相手がいないことには」
という現実は,実をいうと1980年代に起きたブームのころからずっと言われてきた問題だったりもする。そもそも一緒にプレイする相手を見つけることが難しいのだ。しかし,その対戦相手問題も今では好転してきている。そこで最後にこの問題を解決する方法について,いくつか筆者の考えを述べてみたい。
ただ,いきなり現地に行っても満席だったり,新規のメンバーを募集していない場合もあるので,訪れる前に代表者に連絡しておこう。訪問希望日と合わせて,「自分はまだウォーゲームをしたことがない」「こういう理由でウォーゲームをしてみたい」と伝えておけば,新規参加に対応できるサークルであれば希望にあったタイトルを用意してくれるはずだ。
とはいえ,そうしたサークルは都市部に集中してしまいがちで,居住地によってはどうしても近場のサークルが見つからない,ということもあるだろう。そうした場合に利用できるのが,アナログウォーゲームをオンラインで遊ぶためのツールだ。その代表的なものに「VASSAL」がある。4Gamerでも使い方を(やや古い記事ではあるが)紹介したことがあるので,参考にしてほしい。
なおVASSALでウォーゲームをプレイするには,VASSAL本体のほかに,対応するタイトルのモジュールを入手する必要がある。これは専門誌であるコマンドマガジンやゲームジャーナルのWebサイトにまとまっているので確認してみよう。
それでもダメなら,いっそ自分がウォーゲームサークルを作ってしまうのも選択肢の一つだ。普段ウォーゲームを買っている行きつけのショップがあるのなら,そこには必ず同好の士も足を運んでいるはず。そんな風に仲間を探し,新たなサークルを立ち上げたウォーゲーマーもいるので,諦めずに挑戦してみてほしい。
ウォーゲームは不思議だ。少数のコアなウォーゲーマーと,しぶとく事業を続けてきたわずかな業界人達の執念によって,なんだかんだ50年近く続いている。現在もユーロゲームの人気をよそに,マイペースで製品が販売され,マイペースでプレイし続けている人達がいる。ウォーゲームの懐は深い。取り上げるテーマに対する興味関心があればより楽しめるのは確かだが,そうでなくても,競技性を重視した製品もあれば史実の追体験を重視した製品もある。最近では「その場のノリ」を盛り上げることができる短時間で終わるカードゲームも増えてきた。
「ウォーゲームってなんすか?」と思ったら,経験者に遠慮なく声を掛けてほしい。経験者は聞かれたら,遠慮なくプレイに誘ってみよう。ウォーゲームは数多く,その中には満足して続けてやりたくなる製品がきっとある。一人でも多くの人が,この興味深い世界に足を踏み外してもらたら幸いだ。
(コラム)なぜ「デジタル」ではなく「ボード」にこだわるのか
それは「マップを,ひいては戦況を一目で把握できない」という問題だ。フルHDや4Kといった,高解像度の大画面ディスプレイを安価に購入できる現代ではあるが,それでもデジタルウォーゲームの仮想マップで戦況を把握しようとすると,スクロールやズームなしには困難だ。これが面倒かつストレスで,(あくまで個人的な見解だが)「やっぱボードで対面対戦がいいや」となってしまう。もちろん戦闘解決の早さなど,デジタルならではのメリットはあるものの,この戦況を把握する視野の広さ(=情報量)という一点において,デジタルはまだまだボードに敵わない。
とはいえ,今後はどうなっていくかは分からない。筆者が期待しているのはVRの進歩だ。 広大なマップや積み重ねたコマを,VR対応のヘッドマウントディスプレイに表示できれば,スクロールやズームのストレスからは解放される。現在の普及価格帯のVRではまだ性能が足りないが,「VR対応の高解像度VASSAL」が登場したとき,ようやくウォーゲーマーは距離を越えて対戦できる環境を手にできる……かもしれない。
「ウォーゲームってなんすか?」と聞かれたときに聞かせたい話。第一夜「ウォーゲーム帝国の興亡」
「ウォーゲームってなんすか?」と聞かれたときに聞かせたい話。第二夜「戦争を机上に再現する思考」
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