インタビュー
スマホ向け新作アクションRPG「真・三國無双 斬」が9月19日に満を持して配信。2人のキーマンが語る,その仕上がりとは
本作は,コーエーテクモゲームスの「真・三國無双7」をベースに,台湾SO-CAYENNE MOBILE ENTERTAINMENTが開発したモバイルアクションRPG。真・三國無双シリーズの爽快かつダイナミックなアクションを再現しており,先行して配信された海外での累計ダウンロード数は1000万以上に達している。
今回4Gamerでは,ネクソン モバイル事業本部 本部長 金 起漢氏と,コーエーテクモゲームス ω-Forceブランド プロデューサー鈴木亮浩氏に,本作の日本展開について話を聞いたので,その内容をお届けする。
「真・三國無双 斬」公式サイト
デベロッパの高い技術力によって
スマホ上で再現された“無双らしさ”
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。さっそくですが,「真・三國無双 斬」のプロジェクトが発足した経緯などを教えてください。
鈴木亮浩氏(以下,鈴木氏):
コーエーテクモゲームスは「IPの創造と展開」という方針を掲げており,「真・三國無双」シリーズもさまざまなプラットフォーム,そしてさまざまな国や地域に展開しています。その一環として,3年ほど前に「真・三國無双」を再現できる海外のデベロッパがないか探していました。
当時の私は仕事で頻繁にアジアに出向いていたので,台湾や中国のデベロッパとコンタクトを取ることも多かったんです。その中でも,かなり開発力が高いと感じたのが,今のSO-CAYENNE MOBILE ENTERTAINMENTのスタッフでした。
そこで,「ぜひ一緒にスマホ向けの『真・三國無双』を作ろう」ということになり,開発も順調に進んでいきました。
4Gamer:
話はトントン拍子に進んだのでしょうか。
鈴木氏:
SO-CAYENNEのスタッフは技術力は確かなのですが,運営のノウハウを持っていませんでした。そこであらためてパブリッシャを探すことになったんです。
金 起漢氏(以下,金氏):
一方,私どもネクソンはグローバルにスマホゲームを配信している企業ですから,それにふさわしいタイトルを常に探しています。その中でコーエーテクモさんから相談を受けたのが,開発中のスマホ向け「真・三國無双」でした。
またコーエーテクモさんとネクソンは,「三國志曹操伝 ONLINE」で一緒に海外展開した事例もあります。そうした縁もあって,今回の件もぜひ一緒にと。
4Gamer:
ネクソンでは,スマホ向け「真・三國無双」のどういった部分がグローバル展開向きだと考えたのでしょうか。
金氏:
まず「真・三國無双」は,日本だけでなく全世界で有名なIPです。また“一騎当千の爽快感”というユーザーエクスペリエンスが,当時のアジア圏におけるアクションRPGの流行とマッチするのではないかとも考えました。
4Gamer:
3年ほど前から開発が始まったとのことですが,実際に「真・三國無双 斬」を海外配信するまでの開発期間や開発規模などを教えてもらえますか。
金氏:
開発が始まったのは2015年の8月頃で,グローバルの配信開始が2017年の3月ですから,開発期間は約1年半といったところです。開発規模は60人前後と聞いています。
日本版のローカライズとカルチャライズには,2018年の2月頃に着手しました。
4Gamer:
デベロッパのSO-CAYENNE MOBILE ENTERTAINMENTの印象はいかがですか。
鈴木氏:
SO-CAYENNEが「こういう感じのゲームにしたい」と,最初に彼らの開発したゲームを見せてくれたんですけれども,すごくアクション性が高く「スマホでもこんなに動くのか」と感心しました。そういった技術力の高さが,一番印象的でしたね。
その技術力のおかげで,「真・三國無双 斬」もそれほど開発期間を必要とせず,スムーズに“一騎当千”のアクションを再現できました。
金氏:
やはり技術力の高さが印象的です。先ほどアジアにおけるアクションRPGの流行の話をしましたが,その中でもプレイヤー1体に対して敵が数十体登場し,それらすべてがスムーズに動くゲームを作れるデベロッパは,ほかにありませんでした。
またSO-CAYENNEのスタッフは,ディレクターを筆頭に「無双」シリーズのファンなんです。スマホ向けにしっかりした「真・三國無双」を作ろうという彼らの情熱は,私達の提案を前向きに受け入れてくれることにつながり,非常に仕事がやりやすかったです。
4Gamer:
ということは,SO-CAYENNE MOBILE ENTERTAINMENTが作ったスマホ向け「真・三國無双」は,最初から“無双らしさ”を実現していたのでしょうか。
鈴木氏:
そうなんです。基本的にモデルやステージといった開発に必要なデータは,「真・三國無双7」で使ったものをコーエーテクモからSO-CAYENNEに提供しているのですが,実は「真・三國無双 斬」には新規のイラストが多数登場します。そうしたイラストはSO-CAYENNEが描き下ろしたものなのですが,まるでコーエーテクモ側で用意したかのようなクオリティに仕上がっているんですよ。彼らが本当に「真・三國無双」の世界観を理解しているということが,よく伝わってきました。
4Gamer:
コーエーテクモゲームスから,ネクソンやSO-CAYENNE MOBILE ENTERTAINMENTに向けて,「『真・三國無双』シリーズのここは絶対に変えないでほしい」というリクエストはあったのでしょうか。
鈴木氏:
ゲームシステムなどについてはお任せしていました。コーエーテクモが担当したのは,主に世界観の監修です。
とくにストーリーは今回オリジナルで作ったものですから,しっかり監修しました。また日本版向けに日本語に戻すにあたり,テキストやセリフ回しを厳密にチェックしました。セリフ一つで,武将の印象が変わってしまうこともありますから。
4Gamer:
最近では武将の数も増えてきましたし,それだけでも大変そうです。
鈴木氏:
そうですね。でもそこは曲げられない部分ですから,しっかり時間をかけました。
武将のストーリーを描く期間限定イベントなど
日本独自の展開も
4Gamer:
それでは「真・三國無双 斬」を開発するうえで配慮したポイント,スマホゲームとして注目してほしい部分などを教えてください。
何より,「真・三國無双」シリーズならではの“一騎当千の爽快感”を,スマホ環境で忠実に再現することが第一のポイントでした。
もう一つは,プレイアブルキャラとして登場する武将一人一人のアクションを再現することです。武将それぞれにアクションが異なりますから,武将を切り替えながらゲームを進めることで,飽きずに楽しめる部分にぜひ注目してほしいです。
4Gamer:
ゲームのサイクルはどのようになっているのでしょうか。
金氏:
基本的にはストーリーを進めつつ,武将と装備を育成していきます。ただFree-to-Playですから,有料アイテムをどう使うかによって成長モデルが変わる部分もあります。
またいろんな武将を集めていくという,コレクション的な要素もあります。
4Gamer:
「真・三國無双 斬」ならではの遊びはありますか。
金氏:
仲間と協力して敵将と戦うレイドバトルの「幻影討伐戦」や,プレイヤー同士が競う「武闘場」など,新たなマルチプレイモードを用意しています。これらのモードは,スマホ版ならではの「真・三國無双」として,新鮮な気持ちで楽しんでいただけるのではないでしょうか。
4Gamer:
そうした新しいマルチプレイモードの,海外における評判を教えてください。
金氏:
非常に好評です。やはりスマホゲームとコンシューマゲームでは,プレイ時間や遊ぶ環境が異なりますから,それぞれに合わせたコンテンツが必要になります。「真・三國無双 斬」では,そうしたことを踏まえてしっかりとマルチプレイモードを作り込んでいったことが,いい結果につながったと捉えています。
4Gamer:
それらの積み重ねとして,グローバル版「真・三國無双 斬」は2018年1月に1000万ダウンロードを記録しました。この高い実績は,もともと予想していたのでしょうか。
金氏:
さすがに,1000万もの数字を記録するとは予想できませんでした。ただ,配信前から海外でファンサイトが作られていましたし,また配信開始後に台湾で200人のユーザーを招いて開催したオフラインイベントでは,抽選に漏れた人達が「どうにかしてイベントの内容を見られないか」と会場付近に集まったりと,海外にも非常に熱心なファンが多数いらっしゃいます。そういったファンベースと「真・三國無双 斬」のクオリティが合わさった結果,1000万という数字を達成できたのではないでしょうか。
4Gamer:
日本における「真・三國無双 斬」の配信は,海外から遅れること1年半以上となります。その間,日本向けにローカライズとカルチャライズを行っていたとのことですが,配慮したポイントを教えてください。
ネクソンでは,国や地域ごとにしっかりとしたローカライズとカルチャライズを施してからゲームを配信することを方針として掲げています。ただ,ほかのタイトルだと1年ほど期間が必要になるのですが,「真・三國無双 斬」は半年ほどで済みました。これは原作である「真・三國無双7」の内容がしっかり再現されていたので,グラフィックスなどコアな部分に大きな改修が必要なかったということが理由です。
その一方では,日本で展開するにあたって,さらなるバランス調整が必要でした。海外で高い評価を受けたとはいえ,コンテンツのボリュームを踏まえると,まだまだバランスを調整する余地があったんです。
また日本の皆さんには,毎日新しいことを求める傾向があるので,日本版では期間限定イベントを追加する予定です。
4Gamer:
どんな内容のイベントになるのでしょうか。
金氏:
例えば,特定の武将を中心に据えたストーリーが展開するイベントですね。
そのほか,参加者全員が一つの目標達成に向けて頑張るイベントなどを企画しています。目新しいイベントを次々に投入することで,ユーザーのモチベーション維持を図ります。
4Gamer:
先日,ネクソンのオーウェン・マホニー社長が「日本版『OVERHIT』は,カルチャライズによって海外版と大きくゲーム性が異なる」という旨の発言をしていたのですが,日本版「真・三國無双 斬」もグローバル版とは大きく違うのでしょうか。
金氏:
カルチャライズによるゲーム性の変化には,タイトルごとの事情があるんです。「真・三國無双」シリーズはもともと日本のタイトルですから,「真・三國無双 斬」もグラフィックスやゲーム性に関しては,日本の皆さんが求めるものと差があるわけではありません。そうしたコアな部分に関しては,従来の「真・三國無双」シリーズと同様に楽しんでいただけるでしょう。
もちろん細かい部分では,日本の皆さんの嗜好性に合わせた変更を加えています。例えば期間限定イベントで武将のストーリーを展開するのは,日本の皆さんが物語性に重きを置く傾向があるからです。またマルチプレイも,グローバル版ではランダムマッチングなのですが,日本版では「友人と遊びたい」という傾向に沿って,ルームマッチングを追加しています。
4Gamer:
日本版に着手したのが2018年の2月頃というお話ですが,海外での配信開始から約1年の期間が空いているのには,何か理由があるのでしょうか。
金氏:
「真・三國無双 斬」は,おかげさまで配信直後にグローバルで300万ダウンロードを達成しました。そのため,デベロッパのSO-CAYENNEもグローバル向けの開発にリソースを割かなければならなくなり,結果として日本版に取り組むのが遅れてしまったわけです。
4Gamer:
コーエーテクモゲームスとしては,日本での配信時期が2018年秋になるということを想定していたのでしょうか。
鈴木氏:
具体的な時期を想定していたわけではないですけれども,海外からあまり遅れることなく日本で配信することを理想としていました。
ただ予想以上にグローバル版の反響が大きかったので,これはやむを得ないだろうと。コーエーテクモとしてもグローバルでここまでヒットしたタイトルは「真・三國無双 斬」が初めてですから,無理に日本版に着手するよりもグローバル版をしっかりやってほしいという気持ちがありました。
中国では呂布が嫌われているのに
娘の呂玲綺は人気が高い
4Gamer:
それでは,海外展開も含めていくつか教えてください。グローバル版「真・三國無双 斬」は,どのあたりの国や地域で人気が高いのでしょうか。
金氏:
基本的にアジア全般で人気が高いです。とくに台湾,香港,韓国といった,もともと三国志が浸透しているところの人気が高いですね。
鈴木氏:
グローバル版は11言語に対応しているので,ベトナムやタイといった東南アジアの国でもかなりの人気を誇っています。
4Gamer:
グローバル版「真・三國無双 斬」には,海外のユーザーからどのようなリクエストが寄せられているのでしょうか。
金氏:
今は蜀のストーリーを中心に展開しているので,「早く魏と呉のコンテンツを充実させてほしい」というリクエストが寄せられています。
またメインとなる武将から順に実装しているのですが,「早く自分の好きな武将と,そのアクションを実装してほしい」というリクエストも多いですね。
あとは「自分の好きな武将を,もっと強くしてほしい」というものもあります。
4Gamer:
どのくらいの年齢層をターゲットに据えていますか。
鈴木氏:
本編の「真・三國無双」シリーズは,20〜30代が中心です。また1作目が2000年に発売されましたから,その頃からずっと遊んでくださっていると,もう40代という方もいらっしゃいます。
逆に「真・三國無双 斬」は,もっと若い10代の方も遊んでくださるんじゃないでしょうか。
金氏:
ネクソンでは,コーエーテクモさんからいただいたデータをもとに,まずは30〜40代の男性を中心とし,その上で20代やもっと若い層を見据えたマーケティングを行っています。
4Gamer:
国や地域によって,武将や魏呉蜀の国家の好みは異なるのでしょうか。
鈴木氏:
シリーズを通しての話になりますが,多少ばらつきはありますけれど,基本的にはイケメン武将の人気が高いですね。
勢力だと,魏か蜀の人気が高いです。呉はストーリーの描かれ方などが,あまり支持されていないのかもしれません。
あと中国では,呂布が嫌われているんです。
4Gamer:
何か理由があるのでしょうか。日本では,最強キャラとして結構人気がありますよね。
鈴木氏:
呂布は史実上,裏切り者ですからね。以前,呂布を中心にしたストーリーを展開したときは,中国で「何で裏切り者のアイツが主人公なんだ」といわれたこともあります。
金氏:
そういった国や地域ごとの好みの違いは,どの武将をアイコンに選ぶかという部分にもかかってくるんです。日本だと趙雲で間違いないんですが,中華圏では関羽にしたりしています。
鈴木氏:
アメリカでは周泰が人気なんですよ。
4Gamer:
男性ユーザーが主なターゲットなのに,男性武将がアイコンになるスマホゲームというのは日本だと珍しいですよね。多くのタイトルでは可愛い女性キャラを選んでいる印象がありますから,「真・三國無双 斬」も女性武将がアイコンになるんじゃないかと思っていました。
金氏:
やっぱり「真・三國無双」シリーズというと,皆さんがよくご存じなのはあの象徴的なタイトルロゴだと思うんです。その次が趙雲や関羽といった国や地域ごとの人気武将なんですよね。そのため,アイコンはそういった皆さんがご存じのものを選んだほうが認知度が高まるんです。
4Gamer:
なるほど。女性武将といえば,最近の「真・三國無双」シリーズだと,日本では呂布の娘も人気がありますけれども,やはり中国では嫌われているのでしょうか。
鈴木氏:
面白いことに,呂玲綺は中国でも人気が高いんです(笑)。
4Gamer:
親は関係ないと(笑)。そのほか女性武将の人気に関して国や地域ごとに見られる違いはありますか。
鈴木氏:
例えば中国では,孫尚香や王元姫が人気です。一方,貂蝉は人気がないわけではないんですが,古参のわりにはトップになれないんです。
また台湾では,大喬が人気ですね。
4Gamer:
「真・三國無双 斬」では,武将の着せ替えはできるのでしょうか。
金氏:
今はまだないのですが,もちろん実装を検討しています。
4Gamer:
「真・三國無双」シリーズはキャラクターモデルのクオリティも魅力の一つですから,夢が膨らみますね。女性武将の水着姿とか。
金氏:
お金の話になってしまいますが,そこはマネタイズを考えると外せない部分です。
4Gamer:
配信開始前に気の早い話ですが,配信開始後の予定で今教えてもらえることがあればぜひ。
金氏:
繰り返しですが,定期的に期間限定イベントを開催します。
またステージなどを追加する大型アップデートは,今のところ2か月に1回程度を予定しています。
4Gamer:
コラボレーションなどの予定はありますか。同じコーエーテクモゲームスの「戦国無双」とのコラボなどは結構面白いんじゃないかと思うのですが。
金氏:
「戦国無双」とのコラボが実現できるかどうかはともかく,ユーザーの皆さんに新しいことを提供していく上では,確かにほかのIPとのコラボは重要だと考えています。そこはコーエーテクモさんとも密に相談して決めていきます。
4Gamer:
最後に,「真・三國無双 斬」に注目している人に向けてメッセージをお願いします。
鈴木氏:
コーエーテクモとしては「真・三國無双 斬」を,スマホ上で見事に「真・三國無双」シリーズを再現した素晴らしいゲームだと考えています。大変お待たせしましたが,全世界1000万ダウンロードという実績をひっさげ,ようやく配信する準備が整いました。配信が始まったら,ぜひ遊んでいただきたいです。ぜひ事前登録もお願いします。
金氏:
ネクソンではグローバル版「真・三國無双 斬」を配信してから,日本版の配信に着手しました。もともと日本のゲームですから,最初に日本で配信を始められるとよかったのですが,いろいろあって今回のような展開になっています。その分,皆さんに楽しんでいただけるよう,グローバル版で検証を重ねた内容に一層の改修を加えた,万全な状態で皆さんの元にお届けします。ぜひご期待ください。
4Gamer:
ありがとうございました。
「真・三國無双 斬」公式サイト
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