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  • Lo-Fi Games
  • 発売日:2018/12/06
  • 価格:3500円(税込)
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[TGS 2018]ついに正式リリースが目前に迫った「Kenshi」。そのデザイナーへ足掛け10年以上に渡る開発の日々を聞いた
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印刷2018/09/26 15:51

インタビュー

[TGS 2018]ついに正式リリースが目前に迫った「Kenshi」。そのデザイナーへ足掛け10年以上に渡る開発の日々を聞いた

 東京ゲームショウ2018のインディーゲームコーナーは年々,国際色が豊かになると同時に,Steamのアーリーアクセスとして販売されている作品の出展も増えている。
 Lo-Fi Gamesの手がける「Kenshi」もそんな作品のひとつだ。オープンワールドのパーティベースRPGとして開発されている本作は,Steamで長らくアーリーアクセスとして提供されてきた由緒正しいインディーズゲームである。

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 2011年にアルファ版が発表されてから7年が経過した今,ついに「Kenshi」は正式リリースのときを迎えようとしている(2018年12月予定)。「オープンワールドで,一本道ではないシナリオ」「圧倒的に過酷で殺伐とした世界」などなど,さまざまに尖った個性を持ち,その尖りっぷりが日本でもゲーム実況を通じてスマッシュヒットにつながった本作。今回は,デザイナーのクリス・ハント氏に「Kenshi」が歩んできた道のりを聞いた。

Lo-Fi Games クリス・ハント
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10年以上前に始まった「Kenshi」の制作


4Gamer:
 Kenshiはとてもユニークなゲームですが,作るにあたって参考にした作品にはどのようなものがありますか。

クリス・ハント氏:(以下,クリス氏)
 自分が参考にしたのは,初代「Fallout」と「Fallout 2」,それからXCOMシリーズですね。このような複雑な内容を持った作品が,とても好きなんです。
 でも最近,こういうゲームはあまり見なくなってしまいました。自分としては,ソロプレイで楽しめて,ゲーム内でいろいろなことができるクラシックな作品を作りたいと思ったんです。

4Gamer:
 「Kenshi」が初めて世に出たのは7年前ですが,開発は何年前から始めていたのでしょうか。

クリス氏:
 もうかれこれ10年以上前になりますかね……。

4Gamer:
 10年! そうなるとちょっと疑問なんですが,「World of Warcraft」のリリースが2004年ですから,その頃はまだMMORPGがはやっていた時期かと思います。「Kenshi」をMMOないしMOのゲームとして作ることは考えませんでしたか。

クリス氏:
 それは考えませんでした。やはり自分はシングルプレイのゲームが好きですので。
 「Kenshi」はあくまでも,マネジメントやストラテジーが中心となった作品なんです。それも,大事なのはチームなり集団なりをマネジメントすることです。

4Gamer:
 「Kenshi」ではいわゆるゴアな表現があちこちに見られますが,なぜでしょうか。

クリス氏:
 実を言うと,自分としてはもっとゴアな表現のあるゲームにしたかったんです。例えば,腹を切られると腸がはみ出してくる,そんなゲームにしたかったんですよね。ただ,技術的な問題もあれば,なによりやればやるほど実際に販売するのが難しくなるという問題もあり,現状の表現に落ち着いています。
 ただ自分としては,「ポテトと人体は違うものだ」という思いがあります。人間の身体には血が流れており,内臓も詰まっています。そういったところをないがしろにした表現では,人間の命が軽く見えてしまうと思うんです。
 それに,キャラクターがひどい状況になると,それをなんとかしてあげたいという気持ちになるじゃないですか。そういう気持ちはキャラクターへの思い入れや愛着につながっていくんです。

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黒澤映画の影響を受けた「Kenshi」


4Gamer:
 ゲームのタイトルが「Kenshi」ですが,なぜ日本語のタイトルを選んだのでしょうか?

クリス氏:
 このゲームは日本文化の影響を強く受けているからです。特に黒澤映画やアニメの影響が強い作品となっています。もちろん,登場する武器や衣服,あるいは格闘技といったものにも,日本的なモチーフがふんだんに使われています。

4Gamer:
 近年になって「Kenshi」は日本でも大いにブレイクしましたが,その知らせを聞いてどう思われましたか。

クリス氏:
 とにかく驚きました。
 でも正直なことを言いますと,しばらくの間「日本で自分のゲームがはやっている」ことに気づいていませんでした(苦笑)。売上の推移を見て,日本で急に売れたのを知った,という感じですね。
 ただ,日本でも「Kenshi」が受け入れられ,たくさん売れているのは,とても嬉しいです。

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4Gamer:
 日本ではゲーム実況がきっかけとなって「Kenshi」が盛り上がりましたが,日本人による実況動画を見たことはありますか。

クリス氏:
 YouTubeで見ました。自分は日本語がわかりませんが,食人族から必死で逃げようとする動画で,とても面白いものになっていたと思いますよ。

4Gamer:
 自分もそうですが,日本のゲーマーはせっかちなところがあり,「Kenshi」のゲーム進行速度をもっと加速したり,あるいは一気に未来までスキップしてしまったりできるようにならないかと期待している人は少なくありません。これについてはどのようにお考えですか。

クリス氏:
 そうですね,現状ではそのような機能を実装する予定はありません。これには2つの理由があります。
 1つは技術的な問題ですね。あまりにゲームの進行速度を速めすぎるとシミュレーションの速度と処理速度が釣り合わなくなり,データがおかしくなる可能性があります。また,キャラクターのデータ上の位置と画面上の位置がズレるといったことも考えられます。
 もう1つはゲームのテイストによるものです。自分としては「Kenshi」の広い世界を見渡しながら,ゆっくり,じっくりと遊んでほしいと思っているんです。

4Gamer:
 日本のユーザーの間ではグラフィックスの大規模な改修・改善があれば嬉しいという声もありますが,これについては予定はありますでしょうか。

クリス氏:
 こちらも現状では予定していません。確かに「Kenshi」はずいぶん昔から作り続けていますので,グラフィックスの水準が現代に比べるともう一息,というところはあると思います。
 ですがそこに手をかけるよりも,ゲームの内容をより良くすることに重きを置きたいんです。「Kenshi」をより面白いゲームにすることが,最も大切なことですから。


6年間,1人でひたすら「Kenshi」を作る


4Gamer:
 「Kenshi」の制作スタッフについて教えていただきたいのですが,どんなチーム構成なのでしょうか。

クリス氏:
 制作スタッフは全部で4人です。
 自分がゲームデザインとプログラム,サム・ジンがプログラマー,妹のナタリー・ハントがシナリオとビジネス関係を見て,オリー・ハットンがグラフィックスの担当となっています。
 これ以外に,音楽とSE担当が1人,メディア・アーティストが1名いますが,彼らはフリーランスです。

妹のナタリー氏とクリス氏
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4Gamer:
 基本となるチームが4人というのは,インディーズスタジオでも比較的小規模だと思いますが,「Kenshi」の発展にあわせてチームを大きくする計画はありますか。

クリス氏:
 ありません。「Kenshi」の制作にあたっては,この小さなチームで,互いにリラックスして意見を交換しながら作っていけたことが,非常によく機能したと考えています。

4Gamer:
 ちょっと生臭い話になるのですが,4人の小規模チームとはいえ,「Kenshi」の収益だけで食べていくのは大変なことかと思います。こういった財政上の問題に対し,少なからぬインディーズスタジオが下請け仕事を入れることで対策していますが,「Kenshi」チームではどうしているのでしょうか。

クリス氏:
 自分たちは特に下請けの仕事を取ってきたりはしていません。パブリッシャから財政的な支援を受けてもいません。現状では,純粋に「Kenshi」を作って売ることで商売を成り立たせています。
 インディペンデントであるというのは,何物にもかえがたい宝物だと思っています。

4Gamer:
 自分たちの作品を作ることに完全に集中しているのはとても素晴らしいことかと思いますが,とはいえ「Kenshi」が実際にお金になるまでの開発初期は,どのように経営を成り立てせていたのでしょうか。

クリス氏:
 「Kenshi」を制作する最初の6年間は,自分が1人で作っていました。週に2日,夜警の仕事をして稼いで,残り5日は「Kenshi」を作るという生活ですね。1人で作っているぶんには,こんな感じでなんとかなります。

4Gamer:
 それは――決して簡単なことではないように思えます。

クリス氏:
 そうですね,実際,自分はお金に対してはストイックにやってきましたし,今もそれは変わりません。自分に対する給料はミニマムにして,それでも大変な時期はありました。
 1人でやっていた頃に作っておいた,いわば「開発の貯金」がありましたから,なんとか乗り切れた感はありますね。


「Kenshi」が得た良好なユーザーコミュニティ


4Gamer:
 「Kenshi」はユーザーコミュニティが活発ですが,そこからのフィードバックの印象を教えてください。

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クリス氏:
 「Kenshi」コミュニティにはハッピーな人が多く,ゲームをとても楽しんでもらえていると感じています。フィードバックもポジティブな意見をもらうことが多いですね。
 もちろん中にはネガティブなものもありますが,そのほとんどはいわゆるバグレポートのようなもので,これもまた開発にあたって大いに役立っていると思います。

4Gamer:
 「Kenshi」は非常に大きなゲームに育ちましたが,テストプレイはどのように行っているのでしょうか。

クリス氏:
 コミュニティ依存でテストを行っています。具体的に言えば実験的なバージョンをコミュニティにプレイしてもらって,そこからフィードバックをもらうというやり方ですね。
 また,なにせこの規模のゲームですから,既存コンテンツのゲームバランスを調整するのも,もう自分たちだけは不可能なんです。ですので,バランス調整はコミュニティからの意見を聞いて,それを踏まえて調整するという形を取っていますが,うまくいっていると感じています。
 なんにせよ,とても素晴らしいコミュニティが得られたことには,大いに感謝しています。

4Gamer:
 日本語へのローカライズも行われていますが,これもコミュニティからのものですか。

クリス氏:
 もともとはファンが作ってくれたローカライズがありましたが,日本のユーザーが急激に増えたことを踏まえて,翻訳会社に頼んで作ってもらいました。
 ただ現状,会話の言葉づかいが綺麗すぎるという問題点があるのは,こちらでも把握しています。なのでこのあたりはもっと汚い言葉づかいになるよう,改善していく予定です(笑)。

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4Gamer:
 もう1つ,ファンとして気になる点に,MODサポートがあります。「Kenshi」は継続的にバージョンアップが続けられており,正式リリース後もサポートは続くと聞いていますが,どこかの段階で古いMODが使えなくなるようなことはあり得ますか。

クリス氏:
 原則的にはそういうことが起こらないようにサポートしていきたいと思っています。もちろんこれはセーブデータについても同様で,古いセーブデータが使えなくなるようなことが起こらないようにしたいです。

4Gamer:
 「Kenshi」ファンの中には,「この素晴らしいゲームにもっとお金を払いたい」と思っている人も少なくないと思いますが,DLCが発表されることはあるのでしょうか。

クリス氏:
 ゲームのサポートは続けますが,DLCの予定はありません。自分はマイクロ・トランザクションが嫌いです。なによりゲームというのは,1つの完成された作品としてリリースされるべきだと思っています。

4Gamer:
 最後になりますが,「Kenshi」以外に,何か新作の予定はありますか。

クリス氏:
 まったくない……とは言い切れません。まだ開発には手をつけていませんが,始めたらスピードアップしていくのは間違いありません。それに,チームを拡大することもあり得ます。
 ともあれ現状,多くは語れない,というステータスです(笑)。今はチーム全員が「Kenshi」に集中している状態ですね。

4Gamer:
 本日はお忙しいなか,ありがとうございました。

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