連載
そうだ アニメ,見よう:第213回は「負けヒロインが多すぎる!」。失恋した3人のヒロインと,ぼっち系主人公で描く“敗走系青春ストーリー”
小説家・雨森たきび氏のデビュー作となるライトノベル「負けヒロインが多すぎる!」(ガガガ文庫/既刊8巻,イラスト:いみぎむる氏)。本作は,第15回小学館ライトノベル大賞ガガガ賞の受賞作「俺はひょっとして、最終話で負けヒロインの横にいるポッと出のモブキャラなのだろうか」の文庫化作品で,配信サービス「マンガワン」や「裏サンデー」にてコミック版(作画:いたち氏)も連載中の注目作だ。
というわけで,「そうだ アニメ,見よう」第213回のタイトルは,同作をアニメ化した「負けヒロインが多すぎる!」(毎週土曜24:30〜TOKYO MX/群馬テレビ/とちぎテレビほか)。制作はA-1 Pictures,シリーズ構成は「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」や「トロピカル〜ジュ!プリキュア」の横谷昌宏氏が担当。監督は「SHAMAN KING」や「かぐや様は告らせたい-ウルトラロマンティック-」の北村翔太郎氏が務めている。キャラクターデザイン・作画監督として「ソードアート・オンライン」や「とある魔術の禁書目録」などを手掛けたベテランの川上哲也氏が参加している。
「負けヒロインが多すぎる!」
その翌日から杏菜は代金の返済のために,和彦にお弁当を毎日持ってくることになり,クラスメイトに内緒の友人関係がスタートした。
そんな中,和彦は陸上部で活躍するクラスメイトの焼塩檸檬(CV:若山詩音)が同じくクラスメイトの綾野光希(CV:小林千晃)に好意を持っていることを知る。しかし,どうやら光希には別の相手がいる模様。
さらに,幽霊部員として入部していた文芸部で,和彦はそこでも部員の小鞠知花(CV:寺澤百花)が部長の玉木慎太郎(CV:小林裕介)に恋心を抱いていることを知る羽目になる。ところが,慎太郎は副部長の月之木古都(CV:種﨑敦美)の幼馴染みで,こちらも恋の成就は難しそうだ。
やがて,檸檬は光希に彼女がいることを知り,そのショックからか文芸部に入部することに。杏菜も草介への思いを断ち切るように入部し,和彦を中心に奇妙な人間関係が形成されるのだった。
3人の“負けヒロイン”たちと“ぼっち少年”
ラブストーリーには振られ役の女性,いわゆる“負けヒロイン”がつきものだ。複数のヒロインが出てくる作品では,最終的にどのヒロインが選ばれるかが焦点となり,その結果次第で良くも悪くも盛り上がる。
古くは河下水希氏の「いちご100%」や古味直志氏の「ニセコイ」,最近では春場ねぎ氏の「五等分の花嫁」などが記憶に新しい。
本作「負けヒロインが多すぎる!」には,そんな“負けヒロイン”として3人の少女が登場する。明るく食いしん坊の杏菜,天真爛漫なスポーツ少女の檸檬,引っ込み思案の知花はそれぞれ独自の魅力を持っているが,ヒロインたちの恋はどうもうまくいかない。そんな3人とたまたま知り合いになった和彦は,学校で孤立し,かまってくれるのは妹の佳樹(CV:田中美海)だけという“ぼっち少年”だ。
クラスでも接点のなかった3人と和彦は,それぞれの失恋をきっかけに仲良くなり,心を通わせていく。本作は,心に傷を負いながらも明るく前に進もうとする3人と,いつの間にか巻き込まれ,彼女たちを見守る羽目になった主人公の姿をコメディタッチで描いた“敗走系青春ストーリー”となる。
アニメ「かぐや様は告らせたい」シリーズのスタッフが勢ぞろい
“失恋”が描かれる本作だが,杏菜をはじめヒロインたちはカラッとしたものだ。時々「女の子は2種類に分けられるの。幼馴染みか,泥棒猫か」などと毒を吐いたり,落ち込んだりもするが,少女期特有の明るさで和彦を惑わせてくる。
そんな魅力的なヒロインたちを,監督の北村氏は瑞々しく描いている。全体的にレベルの高い2024年夏アニメだが,キャラクターの描き込みや動きの表現は,今期でもトップクラスだと感じた。それもそのはず,今回の制作チームには,大ヒットアニメ「かぐや様は告らせたい」シリーズのスタッフが多数参加しているのだ。
そんなスタッフのセンスあふれるオープニング「つよがるガール feat. もっさ(ネクライトーキー)」(ぼっちぼろまる)が公開されているので,ぜひ視聴してみてほしい。
豊橋市の名所がそのまま登場
作品の舞台となるのは,原作者の地元である愛知県豊橋市だ。作中には,市内の名所である「JR豊橋駅内」「豊橋市地下資源館」「豊川稲荷」などがそのまま登場する。和彦たちが通う高校は「愛知県立時習館高校」をモデルにしているとのこと。
エンディングの「LOVE2000」(八奈見杏菜/遠野ひかる)は,実際の風景を使用したものとなっているので,聖地巡礼もはかどりそうだ。ちなみに,杏菜が振られたファミリーレストラン「ガスト」も,「ガスト豊橋橋良店」がモデルになっている。
ラブコメ好きの原作者の思いが詰まった作品
恋愛ストーリーでは,本来注目されない“負けヒロイン”にスポットライトを当てた本作。自身がラブコメ好きで,「僕の心のヤバイやつ」や「かぐや様は告らせたい」に強い影響を受けたという雨森氏の思いが詰まった作品となっている。
アニメ版は,原作のさまざまな部分をシェイプして,かなりテンポよく進行している。和彦と杏菜ら3人の関係は,どう変化していくのか。この3人の中からもやはり“負けヒロイン”が誕生してしまうのか。今後の展開が気になる作品だ。
TVアニメ「負けヒロインが多すぎる!」公式サイト
TVアニメ「負けヒロインが多すぎる!」公式X
放映データ |
---|
2024年7月〜TOKYO MX/群馬テレビ/とちぎテレビほか |
キャスト | |
---|---|
温水和彦:梅田修一朗 | |
八奈見杏菜:遠野ひかる | |
焼塩檸檬:若山詩音 | |
小鞠知花:寺澤百花 | |
温水佳樹:田中美海 | |
月之木古都:種﨑敦美 | |
玉木慎太郎:小林裕介 | |
袴田草介:逢坂良太 | |
姫宮華恋:和氣あず未 | |
綾野光希:小林千晃 | |
朝雲千早:上田麗奈 | |
甘夏古奈美:上坂すみれ |
スタッフ | |
---|---|
原作:雨森たきび「負けヒロインが多すぎる!」(小学館「ガガガ文庫」刊) | |
キャラクター原案:いみぎむる | |
監督:北村翔太郎 | |
シリーズ構成:横谷昌宏 | |
キャラクターデザイン:川上哲也(A-1 Pictures) | |
サブキャラクターデザイン:齋藤 悠(A-1 Pictures) | |
メインアニメーター:三浦琢光(A-1 Pictures) 竹田茜(A-1 Pictures) 原島未来(A-1 Pictures) | |
ビジュアルボード:大谷藍生 有原慧悟 | |
プロップデザイン:木藤貴之 | |
色彩設計:村上彩夏(A-1 Pictures) | |
美術設定:平義樹弥(A-1 Pictures) | |
美術監督:畠山佑貴 | |
美術ボード協力:滕翀 | |
美術:草薙 | |
3D監督:栗林裕紀 | |
撮影監督:宮脇洋平(A-1 Pictures) | |
編集:廣瀬清志 | |
音楽:うたたね歌菜 | |
音響監督:吉田光平 | |
音響効果:長谷川卓也 | |
制作:A-1 Pictures | |
主題歌 OP:「つよがるガール feat. もっさ(ネクライトーキー)」ぼっちぼろまる | |
ED:「LOVE2000」八奈見杏菜(CV:遠野ひかる) |
■Blu-ray&DVD情報
負けヒロインが多すぎる! 1
発売日
2024年9月25日(水)
収録話数
第1話〜第2話
完全生産限定版Blu-ray
¥8,000円+税/ANZX-17221
完全生産限定版DVD
¥7,000円+税/ANZB-17221
完全生産限定版特典
・キャラクター原案・いみぎむる 描き下ろしアクリルボード
・キャラクターデザイン・川上哲也 描き下ろしジャケットイラスト
・オリジナル・サウンドトラックCD VOL.1
・ジャケットイラストポストカード
・特製ブックレット
・映像特典:オープニングムービー/WEB予告(第2話・第3話)ほか
(C)雨森たきび/小学館/マケイン応援委員会
- この記事のURL: