連載
そうだ アニメ,見よう:第207回は注目のジャンプアニメ「怪獣8号」。攻殻機動隊のProduction I.Gが手掛けるSF作品の出来栄えは?
ウェブコミック配信サイト「少年ジャンプ+」で連載中の,松本直也氏によるバトル漫画「怪獣8号」(ジャンプ・コミックス/既刊12巻)。「SPY×FAMILY」と並んで同サイトの看板とも言える本作は,第31話公開時点で1億PVを突破した注目作だ。2021年の「次にくるマンガ大賞」Webマンガ部門で第1位を受賞し,コミックスの国内累計発行部数は,2023年12月時点で1200万部を突破している。
というわけで,「そうだ アニメ,見よう」第207回のタイトルは,同作をアニメ化した「怪獣8号」(毎週土曜23:00〜テレビ東京ほか)。制作はProduction I.G,シリーズ構成・脚本は「コードギアス 反逆のルルーシュ」や「機動戦士ガンダム 水星の魔女」の大河内一楼氏が担当。監督は「消滅都市」や「ルパン三世 GREEN vs RED」の宮 繁之氏と,「大図書館の羊飼い」やショートアニメ「ひかり〜刈谷をつなぐ物語〜」を手掛けた神谷友美氏の2人体制となっている。
「怪獣8号」
「二人で怪獣を全滅させよう」。
かつてそう誓い合った幼馴染みの第3部隊隊長・亜白ミナ(CV:瀬戸麻沙美)の活躍に,やるせなさを感じる日々の中,カフカは防衛隊員を目指す職場の後輩・市川レノ(CV:加藤 渉)と出会う。
レノから,防衛隊の年齢制限が引き上げられることを知らされたカフカは,再び入隊試験を受けようと決意を新たにする。しかしその矢先,謎の生物に浸食されて身体を怪獣化されてしまう。「怪獣8号」と呼称され,防衛隊に追われる立場になったカフカは,レノの協力で正体を隠し,防衛隊員選抜試験に挑む。
試験会場で出会った高飛車な少女・四ノ宮キコル(CV:ファイルーズあい)には大口を叩いたものの,体力審査では周囲についていけず散々な結果に。続く最終審査で巻き返そうと意気込むカフカだが,その内容はまさかの“怪獣討伐”で……。
32歳の主人公の“再起の物語”
本作の舞台は,地震や台風のように“怪獣”が災害の一部と捉えられている架空の世界。中でも怪獣発生率が世界屈指の日本は,世界中から「怪獣大国 日本」などという,どこかで聞いたようなフレーズで揶揄されている。
地震の規模を示すマグニチュードと同様に「フォルティチュード(ft.)」という,怪獣の規模を示す指数も存在し,自衛隊とは別に怪獣に対応する「日本防衛隊」なんてものも組織されている。
主人公のカフカは,その防衛隊を目指す32歳のサラリーマンだ。試験に落ち続けて自信を失い,一度は夢をあきらめかけたが,レノとの出会いをきっかけに一念発起。幼馴染と肩を並べるために,再び防衛隊を目指す。
32歳は少年漫画の主人公として,かなり“おじさん”の部類になるが,これは原作者の松本氏が自身をモデルにしているのだという。なりたいものになれず,それに近い別のところで生きていた者の,再出発の物語になるのだとか。
16歳のキコルからおじさんと呼ばれ,若いライバルたちに侮られながらも,持ち前の怪獣への知識や不屈の精神で立ち向かっていく。そんな主人公カフカの姿を,笑いあり涙ありでドラマチックに描いているのが,本作「怪獣8号」なのだ。
追跡劇のハラハラ感を演出
幼馴染みのミナと共に「怪獣を全滅させよう」と約束したカフカだが,なぜか自分が追われる立場の怪獣になってしまっている。防衛隊発足以来,初の未討伐対象「怪獣8号」となったカフカは,なんとか変身をコントロールし,バレないように日々努力している。
何とも皮肉な構図だが,これも「最強の主人公が追われながら目的地を目指す話を描きたい」という松本氏の発想から生まれたシチュエーションなのだとか。フィクションでよくある“追跡劇”の醍醐味を表現しているわけだ。
そのほかにも,映画「シン・ゴジラ」や「パシフィック・リム」から着想を得たものがストーリーにはちりばめられているそうなので,探してみるのも面白いかもしれない。
ちなみに,「シン・ゴジラ」の総監督を務めた庵野秀明氏率いるスタジオカラーが,本作では怪獣デザイン&ワークスとして参加している。
Production I.GのSF表現に注目
怪獣化した時のカフカは,人間サイズのコンパクトなボディに似合わない,強大な力を発揮する。第2話「怪獣を狩る怪獣」では,ほかの怪獣をパンチ一発で粉砕してしまっていた。そんな力を内包した怪獣8号のバトルシーンを,「攻殻機動隊」シリーズや「BLOOD+」などで知られるProduction I.Gは,さまざまなエフェクトを駆使した演出で表現している。
また,防衛隊の戦闘用スーツや銃火器はもちろん,施設の映像パネルといった小物にまでこだわっているのも見逃せない。昨今はアニメ「黒子のバスケ」や「ハイキュー!」などのスポーツものにも注力しているが,こうしたSF作品のクオリティを見ると,さすがProduction I.Gだと感心するばかりだ。
カフカとレノの“バディ要素”も
2024年春アニメの中で,トップクラスの話題作となる「怪獣8号」。怪獣をメインテーマに人間ドラマやバトル,コメディなど,さまざまな要素が詰め込まれた作品となっている。まだ物語の序盤だが,なぜ,カフカは怪獣化したのか。防衛隊にカフカの正体はバレてしまうのかなど,今後の展開が気になるところ。
個人的には,カフカとレノの“バディ要素”もお気に入りなので,このコンビの活躍シーンが増えることを願うばかり。ともあれ,ストーリーやアニメとしての完成度などをひっくるめて,今期のイチオシ作品だ。
TVアニメ「怪獣8号」公式サイト
TVアニメ「怪獣8号」公式X
放映データ |
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2024年4月7日〜 |
毎週土曜23:00〜テレビ東京ほか |
キャスト | |
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日比野カフカ/怪獣8号:福西勝也 | |
亜白ミナ:瀬戸麻沙美 | |
市川レノ:加藤 渉 | |
四ノ宮キコル:ファイルーズあい | |
保科宗四郎:河西健吾 | |
古橋伊春:新 祐樹 | |
出雲ハルイチ:河本啓佑 | |
神楽木葵:武内駿輔 | |
小此木このみ:千本木彩花 |
スタッフ | |
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原作:松本直也(集英社「少年ジャンプ+」連載) | |
監督:宮 繁之 神谷友美 | |
シリーズ構成・脚本:大河内一楼 | |
キャラクターデザイン・総作画監督:西尾鉄也 | |
怪獣デザイン:前田真宏 | |
美術監督: 木村真二 | |
色彩設計:広瀬いづみ | |
3D監督:松本 勝 | |
撮影監督:荒井栄児 | |
編集:肥田 文 | |
音響監督:郷文裕貴 | |
音楽:坂東祐大 | |
オープニングテーマ:YUNGBLUD「Abyss」 | |
エンディングテーマ:OneRepublic「Nobody」 | |
怪獣デザイン&ワークス:スタジオカラー | |
アニメーション制作:Production I.G |
■Blu-ray&DVD情報
Vol.1 初回生産限定版/通常版
2024年7月17日(水)発売
『怪獣8号』Vol.1 通常版Blu-ray
価格:8,888 円(税抜価格8,080 円)
仕様:カラー/1080p High Definition 16:9 ワイドスクリーン/日本語リニアPCM 2.0ch ステレオ/1層(BD25G)
字幕:バリアフリー日本語字幕
収録分数:約71分(#1〜3収録)+映像特典/DISC 枚数:1枚
『怪獣8号』Vol.1 通常版DVD
価格:7,777 円(税抜価格7,070 円)
仕様:カラー/16:9LB/日本語リニアPCM 2.0ch ステレオ/2層
字幕:バリアフリー日本語字幕
収録分数:約71分(#1〜3収録)+映像特典/DISC 枚数:1枚
通常版特典
<仕様>
三方背ケース(日比野カフカ)
初回版・通常版共通特典
<映像特典>
アニメ化発表特報
ノンクレジットオープニング
ノンクレジットエンディング
WEB予告(1〜3話)
<音声特典>
キャストオーディオコメンタリー
スタッフオーディオコメンタリー
<封入特典>
ブックレット(20P)
アニメ『怪獣8号』調査報告書vol.1
※内容(予定)
●第1話〜第3話アニメPが選ぶ各話見どころ紹介
●キャラクター設定(カフカ、レノほか)
●美術ボード(モンスタースイーパー社)
●怪獣デザイン設定
●BD/DVD限定!スタッフインタビュー
(1)大河内一楼(シリーズ構成・脚本)
(2)プロデューサー座談会
作中ロゴを使用したデコレーションステッカーセット
※初回生産限定版の在庫終了後は、通常版のみの販売となります。
※特典内容・商品仕様は予告なく変更になる場合がございますのでご了承ください。
(C)防衛隊第3部隊 (C)松本直也/集英社
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