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そうだ アニメ,見よう:第201回は劇場版「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」。20年越しの新作の見どころは“キラとラクスの恋の行方”
2024年1月26日から公開中の劇場版「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」の観客動員が100万人を突破した。公開から2週間(18日間)で,興行収入も26.8億円を突破し,歴代ガンダムシリーズの最高興収である「機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編」(1982年公開)の23億円を上回った。
というわけで,「そうだ アニメ,見よう」第201回のタイトルは劇場版「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」。制作はバンダイナムコフィルムワークス,キャラクターデザインは平井久司氏,監督は福田己津央氏が務め,主題歌は西川貴教 with t.komuroの「FREEDOM」,エンディングテーマはSee-Sawの「去り際のロマンティクス」となる。
なお,ストーリーに関するネタバレが含まれているので,未鑑賞の人は注意してほしい。
劇場版「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」
その後,プラント最高評議会議長の娘であるラクス・クライン(CV:田中理恵)との出会いや,幼少の頃の親友であるアスラン・ザラ(CV:石田 彰)との再会,さまざまな戦いを経て,キラは地球連合軍にもザフト軍にも属さない第三の立場として,双方の戦闘を終わらせるための戦いを始めた。
そしてC.E.75。ザフトのデュランダル議長(CV:池田秀一)の死により,管理社会構想である「デスティニープラン」は消滅したが,同時に大戦終結後の世界を安定させる指標は失われた。
各地で独立運動が起こり,ブルーコスモスによる侵攻はくり返され,人々はさらなる戦乱と不安の最中にあった。事態を沈静化するべく,ラクスを初代総裁とする世界平和監視機構「コンパス」が創設され,キラたちはその一員として,各地の戦闘に介入する。
そんな中,ユーラシア連邦からの独立を果たした「ファウンデーション王国」から要請があった。ブルーコスモス本拠地へのコンパス出動を求めるものだ。要請を受け,キラたちはラクスを伴い,王国へと向かうのだった。
20年越しの完全新作がついに公開
2004年放送の「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」より約20年の時を経て,「機動戦士ガンダムSEED」シリーズが帰ってきた。21世紀最初のガンダムとして,2002年に放送が開始された同シリーズは,それまでの「宇宙世紀」とは異なる「コズミック・イラ(C.E.)」を舞台とし,新鮮なストーリーやキャラクターが人気を集め,新たに多くの女性層からの支持を獲得。新世代のガンダムシリーズとして一世を風靡した作品だ。
その後,続編として劇場版の制作が2006年に発表されていたが,長らく続報が途絶えていた。そして2023年7月,ついに公開日が発表となり,1月26日に待望の全国ロードショーがスタートしたのだ。
“シリーズ完全新作”と謳われる本作は,どんな作品なのか。不安と期待に胸を高鳴らせながら劇場へ足を運んだ筆者の雑感をお届けしたい。
本作のテーマは「愛」「資格と価値」
物語の舞台は,前作から2年後のC.E.75。デュランダル議長によるメサイア攻防戦後の世界が描かれる。戦争が終わった後も混迷の時代は続き,コンパスに所属するキラやシン(CV:鈴村健一),ルナマリア(CV:坂本真綾)らは治安維持の名のもとに戦いを続けていた。
今回のストーリーは,2006年の制作発表から少しずつ変更され,最終的にキラとラクスのラブストーリーに固まったという。ラブストーリーには恋敵がつきもの。本作では,新キャラクターのオルフェ・ラム・タオ(CV:下野 紘)が登場し,2人の間に立ちふさがる。TVシリーズ中にあれだけしっかりとした絆で結ばれていたキラとラクスに,最大のピンチが訪れるわけだ。
SEED FREEDOMは「愛」「資格と価値」が大きなテーマになっているのだとか。2人の恋の行方に注目してほしい。
マイティストフリをはじめ新MSが多数登場
ガンダムシリーズの華というべきモビルスーツ(MS)の活躍も見逃せない。公開前から話題となっていたライジングフリーダムガンダムをはじめ,イモータルジャスティスガンダムやギャンシュトローム,デスティニーガンダムSpecII,そしてPVでお披露目されたマイティーストライクフリーダムガンダムなど,数々の新MSが登場している。
当時は作画中心だったMSも,今回は3DCGで表現。“脱ガンダムSEED”を目指したというアクションシーンは,とんでもないスピード感で目が追い付かないほど。重厚感あふれるメカの質感も好印象だった。
そして福田監督が特にこだわったのが,戦艦のアクションシーンだ。本作にはお馴染みの「アークエンジェル」に加え,スーパーミネルバ級の戦艦「ミレニアム」が登場する。「絶対にちゃんとやろうと思ったのは,戦艦が飛翔するところです」と福田監督が太鼓判を押した戦艦のシーンは,たしかにハッとさせられるほど印象的だった。艦隊同士の砲撃戦や,MSの発着シーンなど,制作スタッフのこだわりが,本作を盛り上げる要因なのだろう。
SEEDシリーズの“お祭り”作品
20年越しのシリーズ集大成とも言える本作。キラとラクスだけでなく,アスランとカガリ(CV:森なな子),シンとルナマリアの恋の行方,イザーク(CV:関 智一),ディアッカ(CV:笹沼 晃)のその後もさりげなく触れられており,気になっていたファンとしては,胸のつかえが下りる思いだ。
DESTINYでは,ちょっと不遇な扱いを受けていたシンの活躍シーンも多く,かつての主役の面目躍如といったところ。強敵ブラックナイツの出現,アスランのズゴックなど,見どころも多いが,やはりキラとラクスが搭乗するマイティーストライクフリーダムガンダムがすべて持って行ったという印象だ。
劇場には,男性のガンダムファンだけでなく,数多くの女性ファンも見受けられたが,上映後は皆,この“お祭り”作品に満足気な顔をしていた。福田監督が完成報告会見で「皆さんなら20回ほど楽しめると思います」と話していた通り,一度では受け止めきれないほどのボリュームがある作品で,見逃している部分も多そう。自分もまた足を運んでみたい。きっと新しい発見に出会えるはずだ。
劇場版「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」公式サイト
劇場版「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」公式X(旧Twitter)
放映データ |
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2024年1月26日〜 |
キャスト | |
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キラ・ヤマト:保志総一朗 | |
ラクス・クライン:田中理恵 | |
アスラン・ザラ:石田 彰 | |
カガリ・ユラ・アスハ:森なな子 | |
シン・アスカ:鈴村健一 | |
ルナマリア・ホーク:坂本真綾 | |
メイリン・ホーク:折笠富美子 | |
マリュー・ラミアス:三石琴乃 | |
ムウ・ラ・フラガ:子安武人 | |
イザーク・ジュール:関 智一 | |
ディアッカ・エルスマン:笹沼 晃 | |
アグネス・ギーベンラート:桑島法子 | |
トーヤ・マシマ:佐倉綾音 | |
アレクセイ・コノエ:大塚芳忠 | |
アルバート・ハインライン:福山 潤 | |
ヒルダ・ハーケン:根谷美智子 | |
ヘルベルト・フォン・ラインハルト:楠 大典 | |
マーズ・シメオン:諏訪部順一 | |
アウラ・マハ・ハイバル:田村ゆかり | |
オルフェ・ラム・タオ:下野 紘 | |
シュラ・サーペンタイン:中村悠一 | |
イングリット・トラドール:上坂すみれ | |
リデラード・トラドール:福圓美里 | |
ダニエル・ハルパー:松岡禎丞 | |
リュー・シェンチアン:利根健太朗 | |
グリフィン・アルバレスト:森崎ウィン | |
ギルバート・デュランダル:池田秀一 |
スタッフ | |
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企画・制作:サンライズ | |
原作:矢立 肇、富野由悠季 | |
監督:福田己津央 | |
脚本:両澤千晶、後藤 リウ、福田己津央 | |
キャラクターデザイン:平井久司 | |
メカニカルデザイン:大河原邦男、山根公利、宮武一貴、阿久津潤一、新谷 学、禅芝、射尾卓弥、大河広行 | |
メカニカルアニメーションディレクター:重田 智 | |
色彩設計:長尾朱美 | |
美術監督:池田繁美、丸山由紀子 | |
CGディレクター:佐藤光裕、櫛田健介、藤江智洋 | |
モニターワークス:田村あず紗、影山慈郎 | |
撮影監督:葛山剛士、豊岡茂紀 | |
編集:野尻由紀子 | |
音響監督:藤野貞義 | |
音楽:佐橋俊彦 | |
主題歌:「FREEDOM」西川貴教 with t.komuro | |
エンディングテーマ:「去り際のロマンティクス」See-Saw | |
製作:バンダイナムコフィルムワークス | |
配給:バンダイナムコフィルムワークス、松竹 |
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