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「強くてニューゲーム」を繰り返す,ローグライクなTRPG。ドラゴンブック「片道勇者TRPG メディア向け体験会」レポート
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印刷2016/06/14 20:45

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「強くてニューゲーム」を繰り返す,ローグライクなTRPG。ドラゴンブック「片道勇者TRPG メディア向け体験会」レポート

 2016年6月9日,東京・飯田橋のKADOKAWA第3本社ビルにて,ドラゴンブックの新作テーブルトークRPG「片道勇者TRPG」のお披露目イベント「片道勇者TRPGメディア向け体験会」が開催された。

 「片道勇者TRPG」は,SmokingWOLF氏が制作したインディーズゲーム「片道勇者」を原作としたテーブルトークRPG(以下,TRPG)。「リアリティショーRPG キルデスビジネス」などで知られる冒険企画局の齋藤高吉氏が制作を手がけ,またSmokingWOLF氏も監修という形で関わっているという。
 本稿では体験会で判明した内容をレポートするとともに,齋藤氏へのインタビューもお届けしていこう。

富士見ドラゴンブックから6月18日に発売される「片道勇者TRPG」。サイズはB6版で,価格は1600円(税別)。表紙イラストはモタ氏が担当している。なお,ドラゴンブック・サポートショップ(DBSS)に指定されている店舗で購入すると,冒険をよりハードなものにする追加ルール「人類には早すぎる旅」が入手できるとのこと
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「片道勇者TRPG」サポートブログ



簡単キャラメイクで始まる「片道勇者TRPG」


 「片道勇者TRPG」の冒険の舞台となるのは,インディーズゲーム版「片道勇者」と同じく,徐々に迫り来る「闇」に飲み込まれようとしている世界だ。その世界を救うため,勇者であるプレイヤー達は,冒険の旅に出ることになる。「フリーダ王女」や「ヴィクター王」など,原作の登場人物がNPCとして登場するほか,アイテムなども原作準拠のものが多数登場。もちろん原作を知らずとも楽しめるシステムではあるが,原作ファンなら,クスりとできるようなサービスが多数盛り込まれているという。

NPCとして登場する原作キャラクター達。原作とは違ってNPCを仲間にすることはできないが,イベントをこなすことでPCがNPCの力を受け継いだり,NPCの姿へと変身することもあるそうだ
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 ゲーム開始後,まずプレイヤーには「キャラクターシート」「伝説シート」の2枚のシートが配られる。これらには色々な情報が書かれているが,このうちプレイヤーが決めなければならないのは,キャラクターの「クラス」「特徴」,個人目標である「クエスト」と,そして「キャラクター名」の4点だ。

 クラスはその名のとおりキャラクターの職業を表すもので,原作と同じ「剣士」「騎士」「狩人」「理術士」のほか,条件を満たすことで選択可能な「海賊」「冒険家」「詩人」「勇者」の8つのクラスがある。スキルや能力値,初期装備はクラスによって自動的に決まり,レベルアップ時の成長もクラスごとに固定なので,データ面だけならクラスを選ぶだけでほとんど決まってしまう仕組みだ。
 特徴はほかのTRPGにおけるスキルや特技のようなもので,特定の能力値を上昇させたり,キャラクターの種族を変更したりなど,さまざまな効果のものがある。初期状態のPCは,その中から2つを選んで身につけられる(取得に条件があるものは除く)。
 クエストはPC個人に与えられる目標で,ゲーム開始当初はほかのプレイヤーには非公開な情報だが,ゲーム中に条件を満たせば公開情報となり,クエストに書かれたイベントが発生。クリアすることで,さまざまな恩恵が得られる。今回のテストプレイでは,ゲームマスターからランダムなクエストが与えられたが,本来は自分で好きなクエストを選ぶことができるとのことである。

 キャラクターメイクはこれだけなので,慣れたプレイヤーなら数分程度で準備が整うはず。事前に把握しておくべき情報が少ないので,初心者にも優しい,非常にシンプルなシステムといえるだろう。

キャラクターシート(左)と伝説シート(右)。伝説シートはほかのTRPGにおけるレコードシートに当たる。PCにはそれぞれ体力を表す「LIFE」と元気さを表す「ST」が設定されており,LIFEが0になるとそのキャラクターは死亡。STが0になると,以降ST減少値の2倍がLIFEから差し引かれることになる。STはさまざまな場面で減少するので,STをいかに管理するかが肝になりそうだ
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世界が終わる前に


 本作のゲーム進行は,マップを使用して行われる。プレイヤー達はまず王様の城に集まり,そこをスタート地点としてマップを進んで行く。マップは1日目,2日目というように日付で区切られていて,それぞれの日付には3つのイベントが用意されている。イベントはNPCと出会うものや,モンスターとの戦闘が発生するものなど,種類はさまざまで,PC達はこれらをこなしながら,右へ右へと進んで行くことになる。

こちらが本作で使用されるマップ。なお,イベントはクエストを公開したときに発生するイベントで上書きも可能で,不都合なイベントの場合は,これで打ち消してしまうのも1つの方法だ
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 もう少し具体的に見ていこう。プレイヤーは,1日あたり「昼」「夜」の2回行動できる。昼は先にも言ったイベントをこなすフェイズで,3つのうちから好きなものを1つ選んで処理しよう。全員がイベントをこなしたら,次は夜のフェイズだ。

 夜は,次のエリアに設定されているイベントを調べる「偵察」,ほかのプレイヤーなどと仲を深める「交流」,ランダムイベントを発生させる「探索」,次のエリアに移動する「進行」の4つの行動が行える。
 「進行」以外の行動はどれもSTを消費するもので,かつ,どれか1つしか行えない(行わなくてもいい)。また最後は必ず「進行」を行わなくてはならず,PC全員が移動すると1日が経過したことになる。

 このサイクルをプレイヤーが全滅するか,あるいは一定の日数で登場する魔王を撃破するか,あるいはシナリオで定められたタイムリミットまで進行するまで繰り返すのが,本作の1セッションだ。ただし,初期状態のPCでは魔王を倒すことはほぼ不可能なので,まずはタイムリミットを迎えることが目標となるだろう。

本作の行為判定は,「2D6+能力値」の上方判定で行われる。またロールプレイを行うことで,判定にプラス修正がはいる「ジャッジ」システムがあるのも面白い。どういうロールプレイをすれば良いかは,「ジャッジ」によって決まっているので,初心者でもやりやすいはずだ
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伝説ポイントを溜めて「強くてニューゲーム」に挑め


伝説ポイントは,レベルアップやクエストのクリア数など,セッションの結果によって獲得できる。これを使えば新たな特徴を獲得したり,装備を持ち越せるようになる
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 さて実際にプレイしてみて分かったのだが,本作のキャラクターはとにかく死にやすい。戦闘を無傷で切り抜けることが難しいうえ,弱いモンスターでも囲まれたら簡単に死ねる。先ほど,まずはタイムリミットまで進行するのが目標といったが,それすらも困難なほどだ。つまり,ある程度死ぬことが前提のバランスになっている。

 死亡したPCは,通常のTRPGのようにロストすることはなく,その後も「幽霊状態」となって,セッションに参加し続けられる。ただ見ているだけでなく,ほかのプレイヤーの手助けもできるので,死んでしまっても楽しめなくなるということなないだろう。
 そしてセッションが終了すると,転生を行って新たなセッションを始められる。レベルや所持金,装備などは初期状態に戻ってしまうものの,セッションごとに獲得できる「伝説ポイント」によって,PCは徐々に強くなっていく。

 また転生を行ったキャラクターは,そのたびにクラスや特徴を変更できる。セッションごとに違うクラスを使いつつ,伝説ポイントは溜めておくことも可能なので,セッションを繰り返すことによるマンネリも防ぐことができる。もちろん,最後まで1度も死なずに進んで行くことも(シナリオの難度にもよるが)可能で,実際に今回筆者が参加した卓では,最後まで誰も死なずに生き残ることができた。


クリアできるもんなら,してみやがれ――齋藤高吉氏 ミニインタビュー


 本稿の締めくくりとして,「片道勇者TRPG」の制作者である冒険企画局の齋藤高吉氏のインタビューをお届けしよう。

4Gamer:
 本作が生まれた切っ掛けを教えてください。

冒険企画局の齋藤高吉氏。体験会では,自らゲームマスターとなってセッションを盛り上げてくれた
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齋藤高吉氏(以下,齋藤氏):
 原作である「片道勇者」は,実は出た直後くらいに少し遊んだことがありました。「神話創世RPG アマデウス」関連でドラゴンブック編集部さんと何度も打ち合わせをするようになり,そのとき編集の方からお声かけをいただいたのが,この「片道勇者」のTRPG化だったんです。プレイ経験もあったので,お引き受けすることにしました。

4Gamer:
 制作にあたって,とくに意識したことはあるでしょうか。

齋藤氏:
 原作のテイストを再現することと,なるべく単純に,簡単にすることですね。原作の要素を削り過ぎてしまうと,原作ファンの楽しみまで奪いかねないので,その辺りの兼ね合いが難しかったです。データやゲームの流れなどはあまり弄らずに,「片道勇者」っぽさを出すようにしています。

4Gamer:
 遊んでみると,確かに原作どおり「死ぬのが当たり前」のゲームバランスでした(笑)。

齋藤氏:
 僕もそんなゲームばかり作ってますから(笑)。原作がそもそもローグライクゲームですし,それと僕が普段作っているPCがすぐ死ぬゲームは,相性が良かったのかもしれません。

4Gamer:
 原作をあまり知らない人でも,楽しめるでしょうか。

齋藤氏:
 「片道勇者」の世界観設定やゲームの流れなどは,ルールブックにも説明がありますし,原作を知らなくても楽しめると思います。もちろん原作を知っているほうがより楽しいのは間違いないので,どちらも遊んでいただけたら嬉しいですね。

4Gamer:
 最後に,ファンにへのメッセージをお願いします。

齋藤氏:
 本作は軽くて何回も遊べるゲームを目指して制作したTRPGです。原作の1プレイと同じくらい気軽に遊んでいただけたら嬉しいですね。それから,歴戦のTRPGファンに向けては,「これ,難しいぜ?」と言っておきたい(笑)。最終的な難度は,「クリアできるもんなら,してみやがれ」というところまで上がっていくので,我こそはという方は,ぜひチャレンジしていただければと。

4Gamer:
 ありがとうございました。



 体験会ではタイムリミットまで2日間のセッションを2回プレイしたが,どちらもプレイ時間は1時間程度といったところで,確かに気軽に遊べるTRPGという印象だった。セッション自体やキャラメイクが短いだけでなく,GM側のシナリオ準備も簡単とのことだったので,興味のある人はぜひ遊んでみよう。

 なお,ドラゴンブックでは,Twitterを使った参加型ゲーム「片道勇者オンライン」を,6月中旬より配信する予定とのこと。原作やTRPG版の外伝的な物語が楽しめる内容とのことで,制作は原作者であるSmokingWOLF氏が担当している。ファンはこちらもお見逃しなく。

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フリー版「片道勇者」公式サイト

PLAYISM「片道勇者プラス」販売ページ


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