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  • 発売日:2015/10/08
  • 価格:59.99ドル
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ベルギーの鉄道ボードゲーム「SteamRollers」プレイレポート。和気あいあい系かと思いきや,意外にシビアな競争が楽しめる
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印刷2015/12/28 13:43

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ベルギーの鉄道ボードゲーム「SteamRollers」プレイレポート。和気あいあい系かと思いきや,意外にシビアな競争が楽しめる

画像集 No.005のサムネイル画像 / ベルギーの鉄道ボードゲーム「SteamRollers」プレイレポート。和気あいあい系かと思いきや,意外にシビアな競争が楽しめる
 ストラテジーゲームの世界には,鉄道ゲームと呼ぶべきジャンルがある。PCゲームで言えば「A列車で行こう」「Railroad Tychoon」シリーズがこれにあたるし,最近では「Mini Metro」のような作品もある。
 アナログゲームにおいても,鉄道ゲームは大きなジャンルだ。Mayfairからたくさん出ている「19XX」シリーズや「蒸気の時代」のようなコアゲームから,日本の「ひも電」(Okazu Brand)まで,硬軟取り混ぜて数多くの傑作がある。
 が,この鉄道ゲームというジャンルは,愛好者の趣向なのか,それともデザイナーの好みなのか,どうしても「1手違いでしのぎを削る」系の,競争が激しいゲームになりがちだ。加えて鉄道を敷設するというギミックが絡むため,どうしても広いプレイスペースを要求しがちでもある。

 そんな中,SPIEL’15に登場したFlatline Gamesの「SteamRollers」は,比較的省スペース&シンプルなルールで楽しめる鉄道ゲームになっていた(もっとも,ゲーム展開としてはいわゆる「ガチ系」だが)。というわけで,読者の中にもきっと少なからず存在するであろう鉄道ゲームファンに向けて,「SteamRollers」のプレイレポートをお届けしていこう。


Flatline Games公式サイト(英語)



「線路を手書きする系」の鉄道ゲーム


 あくまで筆者の分類だが,アナログの鉄道ゲームには大きく分けて2つの種類がある。鉄道をタイルで表現するゲームと,鉄道をマップ上に手書きで書き込んでいくゲームだ。
 前者は普通のボードゲームと同じようにプレイできるが,「30度曲がった線路のタイルがほしい」「90度曲がった線路のタイルがほしい」といった具合に,線路を引くたびにタイルを探す必要がある。事前に仕分けしておけばいいのだが,タイルの枚数が多いため,なんのかんので面倒だ。
 後者は引きたい線路タイルを探す手間なく,好きな形状で線路を引いていける。1ゲームごとにマップをコピー機などで複製しておく必要があるのがちょっと面倒だが,そこさえクリアすればさほど困ることはない。ホワイトボードの上にマップが印刷されていて,そこにマーカーで線路を引くという場合もあるが,これはこれで手が汚れやすいのが難点だ。

 「SteamRollers」は,後者の「線路を手書きする」タイプの作品だ。ボックスにはカラーで印刷された剥ぎ取り式のマップが同梱されているので,とりあえずはこれを人数分配れば準備は完了だ。
 ただ,本作のマップにはちょっとした工夫が凝らされていて,マップは2種類必要になる。運送すべきリソースが表示される全体マップと,個人が線路を引く個人マップである。

中央にある,キューブが置かれたマップが全体マップ。線路が書き込まれているのが個人マップだ
画像集 No.002のサムネイル画像 / ベルギーの鉄道ボードゲーム「SteamRollers」プレイレポート。和気あいあい系かと思いきや,意外にシビアな競争が楽しめる

 各プレイヤーは,それぞれの手元にある個人マップに線路を書き込んでいく。このため「そのマスにはもう俺の線路が引いてあるから,横入りはさせないぜ」という,鉄道ゲームによくある光景は発生しえない。逆に言えば,そういう陣取り的な手段でほかのプレイヤーを妨害することはできないのだ。
 ゲームの勝利は勝利点の獲得数で決まり,その得点の多くは,運搬した荷物の量と,引いた線路の長さによって得られる仕組みだ。「ほかのプレイヤーの線路によって,自分の線路が妨害されない」ということは,つまり自分自身が立てたプランの善し悪しによって,勝敗が決定されるということになる。


一見穏やかな展開に見えるが……


 さて,陣取りによる妨害が起きないということで,「SteamRollers」はほかの鉄道ゲームに較べて,競争の要素が少ないようにも思える。だが実際に遊んでみると,その中で起こる競争はなかなかに熾烈だ。
 というのも,本作にはターンの開始時に参加人数+1個のダイスを振るという要素がある。このときの出目を,手番が回ってきたプレイヤーから順にピックしていき,獲得した出目で行える行動が決まってくるのだ。
 例えばプレイヤーAが,「5」と表示された都市のあるエリアに線路を引きたいと思ったなら,「5」の目のダイスをピックしなくてはならない。あるいはプレイヤーBが,「3」と表示された都市に置かれたキューブを,ほかの都市に運びたいと思ったなら,Bは自分の手番で「3」の出目をピックする必要がある。

少し分かりにくいが,マップ中央左にあるグレーの都市は「3」で,右下にある紫の都市は「6」。グレイの都市に置かれた紫のキューブを紫の都市に運ぶなら,この2都市を線路でつないだ上で,「3」の出目をピックしなくてはならない
画像集 No.003のサムネイル画像 / ベルギーの鉄道ボードゲーム「SteamRollers」プレイレポート。和気あいあい系かと思いきや,意外にシビアな競争が楽しめる

 このように,「荷物を運ぶ」「線路を引く」といったアクションそのものはプレイヤーの意志で選択できるが,「それをどこで行うか」は,ターンの初めに振られたダイスの出目と,それをピックできたかどうかによって影響を受ける。
 上の状況において,場に「3」と「5」の目が1つずつしかないなら,先に手番が回ってくるプレイヤーAは「5」ではなく「3」をとり,「3」のエリアに線路を引いた方がいいだろう。そうすれば,プレイヤーBがこのターンに荷物を運ぶことを阻止できるからだ。
 このように,陣取りでほかのプレイヤーを妨害することはできないが,アクションを制限することでなら,本作でも妨害は可能だ。これが「SteamRollers」におけるバトルの要諦となる。やはり「ビジネスは機先を制するのが重要」といったところだろうか。


プレイヤー自身で発展させられる,佳作鉄道ゲーム


 これ以外のゲームのルールは簡単で,ありていに言えば「よくある鉄道ゲーム」である。荷物は長距離(=複数の都市を経由して)運んだほうが得点をたくさん得られるが,そのためには機関車のエンジンを強化しておかねばならないといった仕組みは,アナログの鉄道ゲームを何かしらプレイしたことがある人であれば「ああ」と思いあたることだろう。
 また,特殊な効果を発揮するカードも用意されており,これまたターン開始時に振るダイスをピックすることで手元に確保できる。カードは10種類ほど存在するが,ゲームに登場するカードは,ゲーム開始時にランダムで6種類が選ばれる仕組みなので,ゲームごとに違った展開が期待できる。

一見広大なプレイエリアが必要なように見えるが,これはイベント用に拡大したマップを使っているためだ。実際にはもっとコンパクトで,かつ短時間で楽しめる,比較的ライトなタイトルといえる
画像集 No.001のサムネイル画像 / ベルギーの鉄道ボードゲーム「SteamRollers」プレイレポート。和気あいあい系かと思いきや,意外にシビアな競争が楽しめる

 ただ,「SteamRollers」の明らかな弱点として,ゲームがあまりにも抽象的という点は,指摘しておかなければならない。「赤い都市からグレーの都市を経由し,黄色の都市に荷物を運ぶ」というのは,ゲームメカニクスとしては必要十分かもしれないが,やはり「秋葉原から新宿を経由して中野に人を運ぶ」ほうが,少なくとも日本の関東圏のプレイヤーにとっては,遊んでいて楽しいことは間違いない。

 こういった問題は,「SteamRollers」のマップが極めて簡単に自作できるという点を利用することで,解決が可能だ。マップに具体的な地名を書き込んで,それをコピーして個人マップとすれば,それだけでゲームの趣はぐっと増すだろう。
 なお,そういった地名の配置が,現実の地形と一致している必要はあまりないだろう。PCゲームの「Civilization」シリーズを見れば分かるように,最初は「なんでパリの隣に地続きでワシントンがあるの?」と感じても,遊んでいるうちに「そういうもの」として楽しめるようになる。

 このように,「SteamRollers」は重いタイトルになりがちな鉄道ゲームを,思い切ってライトな方向に振った佳作である。プレイのテンポもよく,ルール説明から入って1時間もあれば,ゲームはきっちり完結するだろう。これまた日本語版の予定は今のところないようだが,コンポーネントの言語依存性は低いので,鉄道ゲーム好きはぜひ輸入版でも遊んでみてほしい。

 ちなみに個人的には,剥ぎ取り式のマップが付属しない廉価版が販売されたらなあ,と思うことしきりである。マップの画像データがネット上で配布されているのだから,各プレイヤーが自分のスマートフォンなりタブレットなりの「画像に書き込みができるアプリ」にそのデータを読みこめば,個人マップは紙で提供されなくても支障はない。
 ボードゲームをまるごとアプリ化するのはいろいろ困難を伴うが,こういった「ちょっとした工夫」で利便性や拡張性を向上させることは可能だと思うので,デザイナーにはぜひ,可能性のひとつとして考慮していただきたいところだ。

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