連載
結のほえほえゲーム演説:第28回「『ニューダンガンロンパV3』についてネタバレなしで語りたい」
私はゲームの発売日を心待ちにしつつ,「このゲームでどんな思いが生まれるのだろう」と想像しながら過ごす時間が好きです。幼少期,買えなかったゲームの攻略本を熟読するのが趣味だったからかもしれません。
ずっと待っていたゲームの発売日は,やっとプレイできる! という喜びの半面,想像を楽しむ時間が終わってしまう寂しさ,名残惜しさも少なからずあります。
初回特典や限定版の確保を済ませたあと,数日間寝かせて,よし! と意気込んでプレイを始める,なんてこともある私です。
……が! このタイトルはそうはいかない。「ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期」(PlayStation 4 / PlayStation Vita)。
「ダンガンロンパ」シリーズだけは,些細なネタバレも食らわない状態でクリアしたい。シリーズの超絶どんでん返しや極悪サプライズを知っている身としては,そんな欲求が湧き上がるのは仕方のないことでしょう。
ネタバレを食らわず,まっさらな心で物語に立ち向かいたい。誰の邪魔もさせない。私の心を動かしてみるがいい,ダンガンロンパ!!
そうして私の寝不足地獄は始まったのです……。
「あ,そろそろ寝る時間だ。でもそろそろコロシアイが起こりそうな気配がするんだよなぁ。誰が被害者になるかだけでも見てから寝よう」
「うわあああマジかあああこいつが今回の被害者かあああ。誰が犯人か全然分からない……。とりあえず捜査パートをプレイして犯人の目星を付けてから寝よう」
「え,どうしよう。学級裁判が始まるのに犯人が全然分からない。不安だ……。手がかりだけでも確かめてから寝よう」
「うわあああ何この展開。事件の真相が衝撃的過ぎて寝れないじゃないか。気持ちを落ち着けるためにもう少しプレイを続けなければ……」
完全にこのループでしたね。
前置きが長くなりましたが,今回の連載ではクリアしたばかりのニューダンガンロンパV3について語ります。
才囚学園
ダンガンロンパシリーズでは,「超高校級」の称号を与えられた学生達がコロシアイゲームに参加させられてしまいます。
今作の物語の舞台は,才囚学園。
コロシアイに参加する16人の「超高校級の生徒」のために作られた学園です。屋内でも至るところに植物が生えていて,カジノやいかがわしいホテルなど,教育施設らしからぬ設備も。
コロシアイが起こり,学級裁判をクリアすると,それまで進めなかった学内の新しいエリアが開放されていきます。ダンガンロンパの醍醐味の一つは,こうして徐々にエリアが開放されているところにあります。
キャラクター達が新しいエリアに入り,それぞれが施設を楽しそうに見学していると,それはもう不安で不安で……。プレイしながら「どうかこのエリアでコロシアイが起きませんように!!」と祈りながら探索するわけですよ。
施設の中にある道具を見ながら「あぁこれトリックに使われそうだなー」なんて予想したりして。このイヤな予感が的中して道具が事件に使われても,使い方や事件の展開を当てられないのが悔しいんです。毎回,予想外過ぎるトリックが待っているものですから……。
才囚学園のエリアは,終盤まで謎が多く,歩いているだけでありとあらゆる不安に駆られます。夜時間に出歩いている最中に,後ろを振り返るとキャラクターが立っているとき,身体がビクッとするくらい驚いてしまうのは私だけでしょうか。
いや,彼らはただ立っているだけで,話しかけると普通に会話してくれるんですけどね。時折びっくりしてしまうんです。BGMがなくて静かなのも,本当に何が起こるか分からなくて怖いんですよねぇ……。ここまで立ち絵にビクビクするのは,「スーパーダンガンロンパ2 さよなら絶望学園」の澪田ちゃんがトラウマになっているからなのかもしれない。
個人的に才囚学園4階の怪しさは,中野ブロードウェイの4階に似ている気がします。
超高校級の生徒達
この世界には,政府が実施する特別な奨励制度「ギフテッド制度」に認定され,超高校級の称号を与えられた学生達が存在します。
才囚学園には,超高校級の才能を持つキャラクター16人が集められています。今回も濃いメンバーばかりなのですが,登場時にひときわキャラが立っているなぁと思ったのが白銀つむぎです。
アニメやゲームの世界にヲタクキャラが登場する場合,いまいちリアリティが感じられないのは世の常ですが,この白銀つむぎは,本物のコスプレイヤーがしそうな生々しい発言を連発してきます。恐れ入りました。
白銀つむぎの発言にもあるとおり,現実世界でも,作品への愛よりも自分が目立つことを重視するコスプレイヤーは存在します。その一方,原作に対する愛を武器に,自分の正義を信じる(白銀つむぎのような)コスプレイヤーも存在するもので。
余談ですが,コスプレの世界って,自分の正義を貫くことで,暗に何かを否定する,という姿勢がとても激しい世界のように思います。“誰もが人に見られるステージ”にいるからこそ,評価されたり否定されたりするのが当たり前で,だからこそ,自分のコスプレ,自分の主義主張に対しては,「誰に何を言われようとこうだ!」という強固な意志を持ち続けないとやっていけないんです。私がコスプレイベントでコスプレをたしなんでいたのは1999年〜2004年くらいの短い間なのですが,おそらく当時も今も“コスプレイヤーあるある”は大して変わっていないように思います。
白銀つむぎさんの日常会話は,コスプレイヤーとしての主張の強さをちょくちょく感じさせられるんですよね。自分の興味がある分野では主義主張が強いけど,それ以外は周囲の雰囲気に任せてしまうような。周囲には伝わらないアニメ,ゲームネタを口走ってしまう空気の読めなさも妙に生々しいです。
小高さんはベテランコスプレイヤーに取材でもしたのだろうか……と気になって仕方ない今日この頃です。
学級裁判の新要素
ダンガンロンパといえばコレです,学級裁判。
個人的に,アドベンチャーゲームにおけるゲームシステム面の“新要素”は,煩わしいものになる危険性が非常に高いものではないかと思っています。プレイヤーとしては物語と推理を進めたい気持ちが強いので,新要素を煩わしく感じてしまうことが多々あるんですよね。
しかし,ニューダンガンロンパV3においての新要素は,物語の中にスッとなじんでいて,ストレスを感じさせません。味わったことのない感覚に素直に驚くことができたので,どうか一度プレイして味わってみてほしいです。
<偽証>
これによってあえて嘘をつき,矛盾していない発言をも論破できるようになりました。これまでダンガンロンパシリーズの学級裁判では,難題に対して愚直に立ち向かってきたプレイヤーの一人なので,こんな大胆な作戦をとるのは内心ヒヤッヒヤで……。どうにか切り抜けられたときの安堵感といったらないです。
<パニック議論>
複数のキャラクターが三つのウィンドウで同時に発言をするので,情報量が多く,矛盾点を見つけるのがより難しくなります。ここは本作のキャラクターによるワチャワチャ感の一番の見せ所でもありますね。思わず「う,うるせええええ!!!」と苦笑いしてしまうほどのカオスっぷり。
<議論スクラム>
学級裁判中に意見が真っ二つに分かれた場合に発生します。二つの陣営に分かれて議論し,議論が噛み合うように,発言の順番を並び変えて議論を成立させます。二つの陣営が向かい合い,次々と論破が成功するテンポの良さは爽快です。
論破成功すると味方陣営のキャラクターが合わせてセリフをキメる演出がとにかくカッコ良いんですよ。意外なメンバーで陣営を組むことになったときほど,協力し合っている実感が沸いてきます。
学級裁判で最も緊張する場面は,何といっても犯人を名指しするシーンでしょう。
物語の中では主人公が「犯人は分かった」と言っているにも関わらず,こちらはまったくピンと来ていない……それでも無情にもやってくる選択画面といったらもう!! 心臓バクバクですよ!!
まさか……? とビクビクしながらカーソルを合わせ,それが正解だったときの「うわああああああ」って気持ち。
物語の中の主人公の視点に一歩遅れて到達したときの,ゾワッとした感覚。あれこそがまさにアドベンチャーゲームの醍醐味ではないでしょうか。
今回はとくに林原めぐみさん演じる最原君の驚いた演技が絶妙で,「えっ?」という,本当に理解できずに思わず出てしまった一声に共感できます。
「ニューダンガンロンパV3」の魅力
だからこそ,一人,また一人と魅力的なキャラクターが死ぬと,残りのキャラクターと共に,私も憔悴してしまいそうになります。ときに励まされながらキャラクターと共に元気を出すうちに,感情移入度もどんどん強くなっていきます。
そして本作で印象的だったのは,事件のトリックを「どうやって解かせるか」です。毎章,驚かされ,裏切られ……真相にたどり着いたときの気持ちは,達成感だけではなく,あらゆる感情がとめどなく溢れてきます。
ちなみに,本作の1章は公式からプレイ動画配信の許可が出ています。
小高さんがTwitterで発言していたように,SNSを見てみると,1章ですらネタバレを考慮した発言が見受けられます。これはどういうことかというと,プレイヤーが思わず「この衝撃を味わってくれ(それまで何も言えない)」と思ってしまうからではないでしょうか。現に私も,この原稿を書きながらそういった思いで,ネタバレを避けよう避けようとしています。
公式は1章公開OKと言ったのに、1章すらネタバレしない人が多い。ネタバレしない方がこれからプレイする人が楽しめると、言いたい気持ちを抑えての配慮。凄いです。あ、このスタンスを強要する訳ではありませんよ。ただ、ユーザーさん同士で配慮しあって楽しんで頂けると幸いです。
— 小高和剛 (@kazkodaka) 2017年1月13日
賛否両論ありますが,作り手がプレイヤーのダンガンロンパへの愛,そしてダンガンロンパの力を信じてるからこそのV3だったんじゃないかと思いました。これからこの作品をプレイする方には,必ずエピローグまでプレイしてほしいです。
どんなに言葉を尽くしてもあの衝撃を例えることはできないし,そんな無粋な真似もできない。ただ無言でそっとコントローラを握らせ,あの衝撃をくらったあとにそっと後ろから肩を叩いてニッコリ微笑みたい。今の私はそんな気持ちでいっぱいです。
P.S.
限定版「超高校級の限定BOX」についてくる「オリジナルアニメ スーパーダンガンロンパ2.5 狛枝凪斗と世界の破壊者」のソニアさんがめっちゃ可愛かったです……。左右田とソニアさんが好きな私にとってご褒美でした。今は手に入れづらいかもしれませんが,こちらも必見です。
最近プレイしているゲーム(2017/1/28)
PlayStation 4:「FINAL FANTASY XV」
PlayStation 4:「ペルソナ5」
PlayStation 4:「ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期」
PlayStation Vita:「サガ スカーレット グレイス」
ニンテンドー3DS:「ポケットモンスター サン・ムーン」
ニンテンドー3DS:「桃太郎電鉄2017 たちあがれ日本!!」
iOS:「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」
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ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期
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