インタビュー
[TGS 2015]あの“旧約”がスマホ/PS Vitaでフルリメイク。「聖剣伝説 -ファイナルファンタジー外伝-」プロデューサーに新生FF外伝の特徴や,シリーズ25周年に関する構想を直撃
本作は,1991年にリリースされたゲームボーイ向け同名タイトルのリメイクで,ストーリーなどの内容をそのままに,グラフィックスやユーザーインタフェースに変更を加え,現代のゲームとして遊びやすく仕上げているという。
今回4Gamerでは,「FF外伝」のプロデューサーを務めるスクウェア・エニックスの小山田 将氏に,本作の仕様や変更点,そして2016年に25周年を迎える聖剣伝説シリーズの展開などについて聞いてみた。
「聖剣伝説 -ファイナルファンタジー外伝-」公式サイト
ゲームボーイ版「FF外伝」をベースにしつつ,新たなプレイヤー層の獲得も視野に
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。「FF外伝」が今冬配信予定であることが発表されましたが,このタイミングでFF外伝をリリースする狙いについて教えてください。
聖剣伝説シリーズは,2016年6月に25周年を迎えます。以前から公言しているとおり,私はこのシリーズをきちんと継続していきたいと考えていますが,その第1作となるFF外伝は,いろいろな事情があり,現在ではフィーチャーフォンでしかプレイできません。そこでシリーズ25周年を前に,今の時代に合わせたプラットフォームでリリースしようと考えたんです。
4Gamer:
聖剣伝説ファンが一番気になるのは,リメイク版FF外伝がどんな内容になるのか,という部分だと思います。ぜひ可能な範囲でお聞かせください。
小山田氏:
基本的な内容とストーリーは,ゲームボーイ版FF外伝そのままです。ひらがなだった部分を漢字にしたり,現在の倫理基準と照らし合わせて一部の語句を変更したりということはやっていますけど。その上で,ビジュアルや操作面を現代風に最適化しています。
4Gamer:
なるほど。つまり,いわゆる“旧約”をフルリメイクするわけですね。
小山田氏:
そういうことです。フィーチャーフォン版のときにはカラー表示で作り直しましたが,今回は3Dグラフィックスとタッチインタフェースを採用しました。
4Gamer:
キャラクターが3Dモデルになり,キャラクターデザインも一新されていますよね。
小山田氏:
今回,キャラクターデザインには,フィーチャーフォン版FF外伝やiOS版「聖剣伝説2」(iOS / Android),「聖剣伝説 RISE of MANA」(iOS / Android 以下「RoM」)でご協力いただいた,イラストレーターのHACCANさんを起用しています。フィーチャーフォン版ではリアルに近い等身だったんですが,今回はデフォルメ頭身にして聖剣伝説2,3以降のイメージを出しています。HACCANさんには,もともとのファイナルファンタジー色を残しつつも,昨今の聖剣伝説の色を組み合わせてほしいと依頼しました。
4Gamer:
RoMで初めて聖剣伝説の名前を知ったという人達にも,馴染みやすいデザインというわけですね。
小山田氏:
そうですね。そういった層にアピールしたいという狙いもありました。何しろ24年前のゲームですので,触ったことがない,あるいはもう忘れているという方も多いでしょうから。
4Gamer:
ちなみにRoMのプレイヤー層は,具体的にどんな感じなんでしょう。
小山田氏:
アンケート結果ではなく,寄せられた感想などからの推測になってしまうのですが,20代後半から40代という感触です。性別比は男性7:女性3というところでしょうか。
4Gamer:
今回のFF外伝も同じ層がターゲットになるんでしょうか。
小山田氏:
それはもちろんですが,できればもっと若い人達にも手に取っていただきたいと考えています。この機会に聖剣伝説シリーズを知っていただければと。
4Gamer:
聖剣伝説といえば,音楽に関する評価も極めて高いシリーズですが,今回はどうなるのでしょう。
小山田氏:
作曲者であるイトケンこと伊藤賢治さん監修のもと,ご自身によるアレンジも含めて,あらためて収録し直しています。イトケンさんご自身も,FF外伝はスクウェアに入社して初めてメインで作曲を手がけたタイトルということで,非常に思い入れが強いとおっしゃっていました。全曲とも,今の時代に合わせた楽曲になっていますので,ぜひご期待ください。
操作面は,スマートフォンやPS Vitaに合わせた遊びやすい仕様に変更
4Gamer:
ビジュアル面以外で,変更点や新しい要素はありますか。
小山田氏:
お話ししたとおり,ストーリーの流れには基本的に変更はありませんが,演出面は大きく変わります。ゲームボーイ版では容量の関係などから省略せざるを得なかった演出を,一部再現したりもしています。こうした演出は,聖剣伝説の生みの親である石井さん(石井浩一氏)が,当時考えていた構想をベースにしました。
たとえばゲームボーイ版には,仮面を取ったシャドウナイトのデータが収録されているんですが,ゲーム本編には登場しませんでした。そこで今回あらためて,もともとの構想どおりに実現しましょうと。
4Gamer:
操作面ではどうでしょう。
小山田氏:
スマートフォン版の操作は,RoMと同じくバーチャルパッドを使ったタッチ操作と,一部の機種に限定されるかもしれませんが,外付けのコントローラに対応しています。
またゲームボーイ版の4方向移動をタッチ操作で再現するのはハードルが高いので,今回は移動方向を自由に入力しつつ,思い通りのアクションを取れるような操作性にチャレンジしてみました。
またNPCと話すときに,ゲームボーイ版ではただぶつかるだけで会話が始まりましたが,今回はボタンを押すことで会話をします。以前の仕様のままだと,今のプレイヤーにはうるさく感じられると思いますし。
そのほか,当時のままだと遊びにくい点にも調整を加えています。たとえば移動しながら攻撃すると突き攻撃になり,そこから三連突きにつながるようになっています。
4Gamer:
操作にも時代に合わせた変更を加えているわけですね。
小山田氏:
もう一つ,ユーザーインタフェースに,操作コマンドをリング上に表示する「リングコマンド」を採用しました。聖剣伝説2以降のシステムなので,本来FF外伝にはなかったものですが,今回はタッチ操作ということで取り入れてみました。
4Gamer:
確かにリングコマンドがあると,聖剣伝説っぽさがグッと高まる感じがしますね。FF外伝にも違和感なく収まっていると思います。
小山田氏:
そうおっしゃっていただけると嬉しいですね。
4Gamer:
そのほか変更などはありますか。
小山田氏:
ボスモンスターは,ゲームボーイ版のイメージを壊したくないという思いもありますから,当時のアクションに新たな動きを加えるという形式を取っています。全般には,昔を思い出しつつ,3DアクションRPGとして楽しめる内容を目指しました。
4Gamer:
熱心なFF外伝ファンは,ゲームボーイ版のボスバトルの攻略法を覚えていると思いますが,そのまま通用するのでしょうか。
小山田氏:
そこは,実際に手に取って確認していただいたほうがいいと思います。ボスも,ゲームボーイ版では1方向にしか攻撃してきませんでしたが,今回はいろんな方向を向きますしね。ですから,今回はどのボスも背中が見えるんです。
……実をいうと,今回のボスも最初はゲームボーイ版と同じアクションを取らせてみたんです。しかし今の3Dモデルでそれをやると,すごく違和感が出るんですよ。たとえば軌道が直線的だったり,決まった行動パターンしか取れなかったり。そういった部分を自然に表現したり,あるいはガルーダがバッサバッサと飛んでいる姿を実現したりしつつ,昔の雰囲気をいかに再現していくかということを考えました。
4Gamer:
実際に戦ってみるのが楽しみですね。
ちなみに今回,ボイスは収録されているのでしょうか。
小山田氏:
今回は入れていません。そのあたりはファンの皆さんそれぞれに思うところがあるでしょうから,「声が入るなら,この人かな」と想像しながらプレイしていただければと思います。
ただ,もしも皆さんからのリクエストが多いようであれば,あとから実装することも検討できるかと思います。そうなると,ボイスを前提としたセリフに変更するようなことも視野に入れなければなりませんね。ゲームボーイ版のセリフは,少々淡泊ですから。
4Gamer:
当時はデータ容量などの関係で,セリフを必要最小限に抑える必要がありましたからね。
小山田氏:
シナリオは弊社の北瀬(北瀬佳範氏)が手がけたものですから,仮にセリフを変更するならば,北瀬本人と相談することになるかと。
4Gamer:
お話を聞いていると,現代風のアレンジというのも難しそうに思えますが,今回,FF外伝をリメイクするにあたって苦労した点はありますか。
小山田氏:
フィーチャーフォン版を作るときに一度調査をしているので,実は技術面以外はそんなに問題はありませんでした。
技術面でもっとも大変だったのは,グラフィックスを2Dから3Dに変更したところです。もともとの2Dグラフィックスはマップチップをタイル上に並べて表示しているので,パース的には嘘をついているんですね。これを正しく3Dにしてしまうと整合性を取るのが難しいんです。
とくに地面に対してキャラクターを垂直に立てると,顔がまったく見えなくなってしまいます。それではゲームとして没入感が損なわれてしまいますから,ほかのタイトルがどうしているのかを参考にして,実際には垂直ではなく少し角度を付けた状態にしています。
4Gamer:
なるほど,“ならでは”の苦労と言えそうですね。
小山田氏:
さらにその状態でキャラクターを動かすと,今度はほかのオブジェクトにめり込んでしまったりと,いくつか乗り越えなければならない課題がありました。
そうやってオリジナル版の雰囲気を残しつつ,今の技術をどう融合させるかという部分にはとても気を使いましたね。
4Gamer:
FF外伝は熱心なファンが多いですから,雰囲気を壊さないことは最重要課題と言えるかもしれません。
小山田氏:
おっしゃるとおりです。逆に3Dにして良くなった部分は,高台に上がると遠景が見えるようになったことです。たとえば海の見える場所では,向こうに陸地が見えたりするので,フィールドを冒険している感覚が強くなりました。FF外伝に思い入れがある方にこそ,ぜひ確認していただきたい部分ですね。
2016年はシリーズ25周年記念イベントを予定。「聖剣伝説2」「3」のリメイクも検討
4Gamer:
プラットフォームをスマートフォンとPS Vitaに決めた理由について教えてください。
小山田氏:
まずはRoMを遊んでいただいた方に,同じ環境で遊べる形で提供しようと。また今後の状況に応じて,PS4や3DSにも展開できればいいなと考えています。
4Gamer:
内容は,スマートフォン版もPS Vita版も同じだと考えていいわけですよね。
小山田氏:
はい。どちらでも遊びやすい環境を選択していただけます。
4Gamer:
ビジネスモデルはどうなるのでしょう。RoMはFree-to-playでしたが。
いわゆる落としきりで,一度ご購入いただければずっと遊べます。具体的な価格は未定ですが,昨今のスクウェア・エニックスの落としきりスマートフォンゲームと同じくらい……1400円前後になるのではないかと考えています。
4Gamer:
配信開始は今冬となっていますが,具体的のどのあたりのタイミングを予定していますか?
小山田氏:
可能なら年末年始には配信したいです。よほど大きなトラブルが発生しないかぎり,3月までお待たせするようなことはないでしょう。
4Gamer:
それでは聖剣伝説シリーズの今後の展開についても教えてください。以前,RoMの公式生放送で,25周年を記念して「聖剣伝説5」を据置機でリリースするという発言もありましたが。
小山田氏:
まだ具体的なお話をするには難しいタイミングなんですが,企画は進めていますので,今後の発表にご期待ください。
また今回のFF外伝が好評だったら,聖剣伝説2や3も同じようなリメイク版を出したいと考えています。
4Gamer:
聖剣伝説2はiOS版がすでにリリースされていますが,それとは別にということですか。
小山田氏:
そうです。今後,スマートフォンのスペックが向上し,表示解像度が上がっていく中で,以前のiOS版聖剣伝説2は遊びにくくなっていくことが予想できます。もし皆さんが望んでくれるのであれば,どこかのタイミングでリメイクしたいですね。
また聖剣伝説3に関しては,スーパーファミコン版以外でリリースしていないので,ぜひチャレンジしたいです。ゲームのボリュームが大きいという課題を乗り越える必要がありますけれど。
4Gamer:
楽しみですねぇ。ところで,25周年記念イベントなどの開催はお考えですか?
小山田氏:
こちらも具体的なお話はまだできませんが,ぜひやりたいと考えています。
4Gamer:
それこそイトケンさんのライブとか。
小山田氏:
ええ,そういった感じで,いろいろ展開できたらいいなぁと。
4Gamer:
期待が高まりますね。それではFF外伝の配信,そして聖剣伝説シリーズ25周年の展開を心待ちにしている人達に向けてメッセージをお願いします。
小山田氏:
「聖剣伝説」シリーズは2016年6月に25周年を迎えます。今回のFF外伝を筆頭に,今後もさまざまなシリーズ作品を,ファンの皆さんが望まれる形で展開していきます。ぜひよろしくお願いします。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「聖剣伝説 -ファイナルファンタジー外伝-」公式サイト
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