インタビュー
これからはHTML5ゲームの時代が来る? 月間総PV611億のYahoo! JAPANが放つ,“第三のゲームプラットフォーム”
法人の多くがスマホに注力し始めていてゲーム業界全体に少なからぬ影響があるうえ,射幸性をクローズアップしたマネタイズ手法や,もはや“不正”といってもよいランキング操作,開発費の高騰によるリクープの難しさなど「いろいろ言いたいこと」もあるにはある。
それでも,いままでのゲーム業界が努力してもあまりうまく捕まえられなかった“ライトゲーマー層”をわんさか集めてきて,広い視野で見たときのゲーム業界そのものの発展に大きく寄与していることもまた,事実であるように思う。小学生がクラス中でモンストをプレイして,お母さんがLINEでツムツムにハマり,おばあちゃんがタブレットでパズドラをやる時代なのだ。
そんなスマホゲーム市場も,ごく一部の“成功者”になることを目指してさまざまな会社がトライしているが,完璧にレッドオーシャン化したことでかつての手法がそのまま通じるはずもなく,ひっそりと屍だけが積み重なっていくのが現状だ。
コンシューマはコンシューマで“続編”と“リメイク”ばかりがもてはやされており(多くのユーザーが望んでいるから売れるわけで,それは仕方のないことなのかもしれないが),「果たしてそれだけでいいんだろうか」と思っている業界人が少なくないというのもまた,よく聞く話である。
ゲームはアートではない。プレイヤーに遊んでもらって初めて“生を受ける”ものだ。「面白くないゲームが遊ばれない」のは仕方がないことだが,現状のゲーム市場はそういう規範で動いていない部分も多分にあり,ゲーム開発者の中にも,苦しい思いをしている人が多くいると聞く。
とはいえ,動き出したものは止められないし,止めなければならないようなものでもない。そんな中,激戦の中で必死に生き延びるのもよいが,「新しい“場”を作ればよいのではないか」と動き出した会社がある。ポータルサイトの雄ヤフーだ。
「ゲームの面白さで勝負できる場を作りたい」と語るヤフーの,今後の展望をちょっと聞いてみたのでお伝えしよう。
「Yahoo!ゲーム」公式サイト
「Yahoo!かんたんゲーム」公式サイト
「Yahoo!かんたんゲームプラス」公式サイト
4Gamer:
お久しぶりでございます。本日はよろしくお願いします。
脇さんとはずいぶん長いお付き合いですが,ここ最近ずっと静かでしたよね。
脇 康平氏(以下,脇氏):
はい,ご無沙汰してます(笑)。
4Gamer:
久々にお会いしたら,セガからヤフーに移って何か新しい挑戦を始めたと聞いて,こうしてお時間をいただいたわけなんですけど。
脇氏:
はい,わざわざありがとうございます。4Gamerさんには,前職時代に大変お世話になったので本当に嬉しいです。
4Gamer:
しかしまさか,セガからヤフーに行くとは思いませんでした。で,具体的にはどんなことをしてるんですか?
はい,実は僕がヤフーに来たのは,やりたいことがあったからなんです。
僕はセガ時代,「デーモントライヴ」というゲームをプロデュースしたりもしてましたが,その前は実は新規事業部に在籍していたんです。
4Gamer:
その“新規事業部”がきっと何か今回の話と関係あるんだろうとは思いますが,そこでは何をしてたんでしょう。
脇氏:
「ゲームのエッセンスを利用した新しいエンターテイメント領域が作れないか」という感じのことを,割と真剣に追求していたんです。
4Gamer:
ゲーミフィケーション的な?
脇氏:
分かりやすく言うとそうですね。それがやりたいと思ったきっかけは,実は2000年代前半だったりするんですが……。
4Gamer:
ずいぶん遡りますね。
脇氏:
そのころ,そろそろ自分でゲーム企画を立ち上げたいと思って色々動いていたんですが,開発費が高騰してしまって,業界全体でなかなかリスクが取れない時期がありました。
4Gamer:
あぁ,PS2(プレイステーション2)の全盛期あたりですね。
脇氏:
ええ。その時に色々企画を立てるなかで「遊びって,別にこの形だけじゃないよな」と思ったんですね。 つまり,この「遊び作りのノウハウ」って,もっと色々な領域に転用できるんじゃないだろうかと……。
4Gamer:
なるほど。
脇氏:
そこから,ゲームのエッセンスを利用した新しい領域に積極的にチャレンジしてたんです。カラオケ機のプロデュースとか(笑)。
4Gamer:
カラオケ機まで作ってたんですか!
ほかにも,バーチャルリアリティ技術を利用したヒーリング体験装置とか,テレビの視聴履歴で育つキャラクター育成サービスのプロデュースとか,本当に色々やってましたね……。ただなかなかうまくいかず,苦労してました。
そんなときに,ソーシャルゲームという新たなジャンルが誕生して,そこからさらにFacebookアプリとかが来て。で,スマホでFree to playという新しいビジネスモデルが本格化しはじめました。セガも本格的にその領域に注力していくというタイミングで,立ち上げからその部隊に合流して,リサーチから組織の立ち上げからゲームのプロデュースまで経験させてもらいました。
4Gamer:
ちゃんと聞いたことはなかったんですが,そういう流れだったんですね。
脇氏:
はい。お会いしたのはちょうどそのころだったと思います。それでデーモントライヴをプロデュースして一段落したころ,ヤフーがゲーム事業を立ち上げる,しかも普通のゲームではなくて,ヤフーならではのゲームで世の中を変えていく……とのことで,声をかけてもらって今に到ります。
4Gamer:
あのころから「ヤフーがゲームでなんかやるっぽい」って噂だけはありましたしね。
脇氏:
その“ヤフーならではのゲーム”というのが,セガの新規事業部時代に僕が目指していたことの延長上にある気がしたんです。育ててくれた古巣への愛着はありましたし苦渋の決断でしたが,業界全体のことを考えたときに,こういう動きもあっていいかな,と。
4Gamer:
セガではそれが実現出来ない?
脇氏:
うーん……やはり,ヤフーしか持ち得ない様々なサービスはもちろん,日本で最も閲覧されているポータルサイトというものは,ゲーミフィケーションという視点で考えたときにはヤフーにしかない武器ですよね。
4Gamer:
確かにゲーム業界人的な視点で言うと,ヤフーの持つパワーって,もう少し有効に使えばいいのになぁ,もったいないなぁ……と思わないでもないわけですが,そこを使ってどうにかしようという話ですね。
脇氏:
はい,それで何か業界的にも新しいキッカケが生まれれば,といったところです。
「遊びを作れる人」が埋もれないようにしたい
4Gamer:
しかしゲームプロデュース業からまた一転してますが,そもそも違う道を選択しようと思ったのは,今のゲーム業界になんらかの問題点を感じているということですか?
いえ,ゲームを作るのも大好きですし,そこを諦めたつもりはないんですよ。ただ実際に現場には,自分より優秀なクリエイターがゴロゴロいるんですね。そしてその中には,能力を埋もれさせてしまっている人もたくさんいるんです。
最初にそう感じたのは,さっき述べたとおり2000年代前半あたりで「コンシューマ業界,やばくない?」と囁かれ始めた時代だったりするのですが。
4Gamer:
みんながなんとなくヤバい空気を感じ始めていたあたりですね。
脇氏:
当時はみんな「このままじゃまずいぞ」って思ってましたよね。開発費が高騰していく割に全然数字が伸びないからビジネスとして辛いな,とか……。でもなにより厳しかったのは,その状況ゆえに“チャレンジ”ができなくなって,新しい企画やタイトルがほとんど通らなくなったんですよね。リスクを負わず,続編ばかり作ってるというか。
4Gamer:
そうでしたね。って,いまでもあんまり状況は変わってなさそうですが……。
脇氏:
ゲームを作る人って,本当に優秀だと思ってるんです。ゲームを作るというか「遊びを作れる人」かな。人のプリミティブな欲求を理解して,研究して,それをきちんと形に仕上げて届けられるというのは本当にすごい能力だと思うんですよ。
なので,そういう「遊びを作れる人」が埋もれないようにしたいという思いが,まずあります。
4Gamer:
その思いを,Yahoo! JAPAN(以下,Yahoo!)を使って――というと語弊がありますが――具現化する?
脇氏:
僕も,いまの肩書こそゲームプロデューサーとは少し違いますが,根っこの部分はやはりプロデューサーなんだと思っています。
4Gamer:
ええ。
脇氏:
よく言われる話ですが,例えば宮崎 駿さんのような天才クリエイターがいますよね。でも彼に作品を作り続けてもらうためには,鈴木敏夫さんのような,それを“お金に変える力”があるプロデューサーがいないと,成立しないと思うんです。
4Gamer:
あぁ,なんとなく分かりました。
脇氏:
自分なりの方法で,もっとクリエイターがのびのび泳げる“新しい海”を探していきたいと思っているんですね。それで,その新しい海で優秀なクリエイターの人達にどんどん新しい遊びを生み出してもらって,最終的には世の中全体が楽しくなるようにしたいんです。
4Gamer:
その場所を作り出すのが,いまの自分の使命であると。
……ある程度分かってて聞くんですが,そういう役割はスマホのマーケットが担ってきたのでは?
脇氏:
違うとは言いませんが,さすがに厳しくなってきていると思います。遊びの型も新しいモノは生まれていませんし,硬直化してきていて,一部の勝ち組が盛り上がっているだけになってますよね。
コンシューマでもインディーズなどがもてはやされていますし,スプラトゥーンなど久々に新規IPのヒット作も出ましたけど,そうはいっても厳しいことに変わりはありません。
4Gamer:
「マーケット全体」の話でいえば確かにそうですね。
国内コンシューマの市場規模がどんどん減ってきているのは歴然とした事実です。スマホの市場は約7000億にまで急成長したと言われているのに。
4Gamer:
まぁ数字は嘘をつきませんからね。
脇氏:
でもスマホはスマホで,勝ち組のみなさんがワイワイ言ってるだけで,そんな状況下で「ゲームが作りたい」「発想には自信あるけど儲け方がよく分からない」みたいな人達が,埋もれてしまってるんじゃないかと思って。
4Gamer:
かつては,そのあたりの受け皿となるのがスマホマーケット――というかアプリマーケット――だったと思うんですが,あっという間に変わっちゃいましたね。いまでもそういう作品はたくさんあるんですが,あまりにも目立たなくて,それを知る手段が事実上ない。
脇氏:
ランキングの仕組みが,ああいう形になってますしね……。実質,ランキングが最高のプロモーションツールになってしまっているので。
4Gamer:
最近はプラットフォーマーも手を入れつつあるようですが,順位を上げるためのブーストなるものが商売になるという,わけのわからないおかしなランキングですからねえ。
脇氏:
諸説ありますが,まぁそれはそれで作り上げられた市場ではありますし,大事に盛り上がってほしいんですけど,もっと領域を広げてそこを追及していくことも,僕は大事だと思っているんですね。
これ全然偉そうに言うようなことじゃないんですが,曲がりなりにもプロデューサーをやった経験があるので,「ゲーム業界を新しく広げるためにこんなことを始めます!」と言ったときにちょっとは説得力を持つかなぁ,という期待もあります。作り手の気持ちに寄り添えるという点で。
4Gamer:
まぁベンチャーキャピタルの人が同じことを言ってもさすがに説得力がないですからね(笑)。
Yahoo!ゲームというプラットフォームで展開される
HTML5ゲームのポータル
4Gamer:
それで,前振りが長くなっちゃってる気がしますが,「ゲーム業界を新しく広げるため」にヤフーでやることってなんなんですか?
脇氏:
まずはHTML5ゲームのプラットフォームを本格的に作っていこうかと。
4Gamer:
ヤフーなので「HTML5ゲーム」という部分に違和感はあまりないんですが,“プラットフォーム”を作るんですか?
脇氏:
はい,実は昨年の夏から,Yahoo!ゲームの中に「かんたんゲーム」というHTML5ゲームのコーナーが立ち上げられたんです。まずはBooster Mediaという会社さんと組んで実験的なところからスタートしたんですが,それが予想を超えて伸びてきたということでこのたび,プラットホームとして正式に育てていくことになりました。
4Gamer:
そのプラットホームの収益モデルは,現状だと広告?
脇氏:
そうです。ゲームの中で広告を表示してそれをレベニューシェアさせていただくという形を取っていますね。
4Gamer:
広告のレベニューシェアとはいえ,ヤフー規模ですしね……。ところで今現在だと,具体的にはどんな人が遊んでるんでしょう。
脇氏:
いわゆるネイティブゲームのユーザーとは少し違ってて,あまりゲームリテラシーの高くないライト層が多いですね。当初からそこまで大きなプロモーションはしていなかったんですが,あれよあれよという間に人が集まり始めまして。あと,なにより目を見張ったのは,滞在時間がすごく長いということです。
4Gamer:
ゲームである以上,滞在時間は増えるとは思いますが,脇さんが「目を見張る」というくらいなので相当な時間なんでしょうね。
脇氏:
さすがに公表はできないんですが,結構な数字です。1日平均でそんな長時間遊ぶんだ,と。あとユーザーさんの特性でいうと,2種類あるうちの「かんたんゲーム」というのはとてもカジュアルで,「かんたんゲームプラス」はBooster Mediaさんにやっていただいている若干リッチなものになっています。
4Gamer:
はい,存じております。
脇氏:
なんとなく両者のユーザー層が違うことは容易に想定できると思うんですが,この“層”がまたヤフーらしいなぁという部分でして,「かんたんゲーム」は40〜50代の年配男性が多くて,一方「かんたんゲームプラス」は30〜40代の女性が多いんです。
4Gamer:
どっちも業界的には,そこまでがっちりとつかめてはいない層ですね。
脇氏:
ですよね。Yahoo!ゲーム全体ではリッチなブラウザゲームなどもあるので,もっと若い男性層が多いわけで,期せずして明らかな棲み分けができたんです。そしてHTML5ですから,PCはもちろんスマホやタブレットでも遊べるんですけど,スマホでやっている女性が非常に多いんです。この人達が一体どこから来たのかというのは,非常に興味深いですね。
4Gamer:
きっとYahoo!の通常のサービスから誘導されるわけですよね。30〜40代の女性なんて,既存のゲーム業界が狙おうにも,乙女ゲー以外ではなかなか狙えない層ですし。
脇氏:
そうですね。Yahoo!のトップと導線が張られているので,その影響も大きいのかな,と。「なんでネイティブゲームをダウンロードして遊ばないんだろう?」とちょっと思ったりもするんですけど,継続率もかなり高いんですよね。
4Gamer:
30〜40代の女性も普通に「ゲーム」をしたいと思ってるんですね。ちょっとやっぱりイメージ的にあんまりマッチしないので新鮮です。もちろん年齢的には“第一期ファミコン世代”なので,中にはコアな人もいるでしょうけれど。
そうですね。最近では主婦の方なんかもアプリをやってるとは聞いていますが。そういう方達が,Yahoo!を使っていてたまたま「なんかゲームしたいな」と思ったところで見つけて,遊び始めてくれたんですかね。
最初はたまたまかもしれませんが,それをきっかけにずっと夢中になってくださってるというのが,また一つ興味深かったところです。
4Gamer:
バリバリにネイティブゲームを遊ぶという方向にはいかないんですね。ダウンロードがちょっとまだ怖い……とかかな。それとも単純に「お金がとてもかかる」と思っているか。
脇氏:
それもあるのかもしれませんね。更新ダウンロードが多いとかパスワードを忘れるとか……。
4Gamer:
あぁ確かにアップデートは面倒だな,と思うことはあります。外でできない(Wi-Fi以外では更新できない)こととかもあるし,ダウンロードやアップデート後の初回読み込みに時間がかかったり。
脇氏:
アプリもずいぶん浸透したとはいえ,そういうものにまだ慣れていない方は,アップデートとかパスワードとか,ちょっと抵抗があるのかもしれません。HTML5であれば,お気に入りにさえ入れておけば,好きな時にアクセスしてプレイできますからね。
4Gamer:
ゲームを立ち上げるときのハードルは確かにめちゃくちゃ低いですよね。
新しい“選択肢”を提示することが,
業界の裾野を広げることになる
脇氏:
本格的に宣伝をバリバリやってみたというより「HTML5だからマルチデバイスでいいよね」「だからとりあえず入れてみる?」というところから始めたという経緯なんですけど,まるで呼応するかのようにHTML5の技術もあれよあれよと成長してきて。
4Gamer:
ちょっと前にずいぶん話題になりましたよね。「次はHTML5が来るぞ!」的な。
脇氏:
2012年とかですかね。セガ時代に,ちょうど4Gamerさんとお話ししたころだと思うんですけど,ネイティブがここまでブレイクしてないころに,HTML5が来るかもよ,って話してましたよね。
4Gamer:
そうですね。ゲーム業界的には,2011年くらいからそんな空気があった気がします。
脇氏:
当時,社内で「ちょっと調べてみて」って言われて,上司の指示でHTML5技術を調べてみたこともあったんですよ。あのころはFacebookとかでもHTML5に注力みたいな話もあって,WebGLはどうなんだろう,みたいな。ただネイティブ市場の成長が思いのほか速すぎて,いつの間にか忘れられてしまってましたよね。
まぁそもそもモダンブラウザのシェアが少なかったりとか,ほかにも要因はありましたけども。
4Gamer:
当時からスマホはほぼ対応してた気はしますけどね。あと広告以外のマネタイズがしづらいという問題は無視できないと思います。
そういうことも含めて,ネイティブ市場の仕組みが完成されすぎていたんでしょうね。優良なタイトルも徐々に揃ってきていましたし。
ただ今ここにきて,HTML5に書き出し可能なUnity 5.1が出たりとか,モダンブラウザもシェア率が8割ぐらいまできていたりとか,徐々に環境は変わってきています。2016年はWebGL元年だ,という人もいますし。
4Gamer:
最近ではFlashが排除され始めてきて,「もしかしてHTML5を取り巻く環境って変わったのかな」という部分もありますね。
まぁでも一番の問題は,最初のほうの話の繰り返しになっちゃいますが,ネイティブ市場で作って出しても,数に埋もれて目立てないからキツいというのはあると思います。
脇氏:
データでも出ているようですけど,新規ダウンロード数はあまり増えておらず,その割にお金を払う人は徹底して払っているという。ARPPU※だけは上がってるけど,新規ユーザーの伸びは鈍化してるということで,コア化が進んでますよね。
※ARPPU=Average Revenue Per Paid User(課金ユーザー1人当たりの平均売上金額)。ちなみにARPU=Average Revenue Per User(ユーザー1人当たりの平均売上金額)。どちらも「アープ」と読む。
4Gamer:
開発費の問題も無視できなくなってきましたし。
そうですね,開発費平均が1億を超えているそうですし。さらに,一部の勝ち組コンテンツはバンバンお金を使ってTV CMとかでかなりプロモーションしてランキング上位に張り付くので,そこでどうやって新しいタイトルをアピールするのかというところで,消耗戦になっている感があります。
4Gamer:
勝者と敗者がいるのは仕方ないんですが,一部の勝ち組が完全に独占状況になっているのは,あれはあれであんまりよくないことだと思うんです。
脇氏:
はい。なのでまた,一時期のコンシューマ市場の苦しみに似てきたなぁと。
4Gamer:
まさに歴史の繰り返し。
いきなりリッチなコンテンツを増やしたくはない
4Gamer:
あとHTML5って,極端な言い方ですけど機材であったりツールであったり,開発費をほとんどかけなくてもなんとかなるというのも,個人の開発者にとっては魅力だと思うんですよね。昨今は開発環境もフリーでいろいろ揃えられますが,HTML5は,極端な言い方をすればエディタで出来るわけですし。
脇氏:
そうですね。しかも一度作ってしまえば,「ブラウザ」さえ対応していればあらゆる機種で動きますし。
4Gamer:
その辺の互換性って,昨今では正確にはどんな感じですか?
脇氏:
スマホだとiOS 8,Android 4以降は問題ないです。
4Gamer:
じゃあ割と大丈夫そうですね。
脇氏:
そこへもってきてWebGLが登場したので,HTML5のゲームって結構な勢いで加速していくと思ってるんです。
4Gamer:
HTML5上でのゲームを語ろうと思ったら,確かにWebGLは重要な役割を果たす気がしますね。
脇氏:
とはいえ……いきなりみんながWebGLを使ってまたリッチなコンテンツを作り始めてしまうと歴史は繰り返す状態になってしまうので慎重に育てたいところです。
4Gamer:
といいますと。
脇氏:
Yahoo!ゲームのプラットフォームに「かんたんゲーム」と名づけた意図としては,すぐにリッチになってほしくないっていう思いもあるんです。
新しい海で,クリエイターが伸び伸びと新しい遊びを提案出来る時間を少しでも長くしたいな,と思っていて。それを支えるビジネス基盤を我々は一生懸命作って行く,という感じですね。
4Gamer:
なるほど。“エンターテインメントのエッセンス”という部分の話ですよね,きっと。
脇氏:
そうです。WebGLでどこまで表現できるかを追求し出すと,また開発費が上がっていっちゃいますし,それよりは「こういう遊びはどうだろう」という幅が生まれてくれると嬉しいですね。
4Gamer:
そういうことが望まれている部分も確かにあるでしょうし。
脇氏:
でも今いるお客さんは,“簡単に誰でも手軽に遊べる”というところで,暇つぶし……というとちょっと言葉が悪いですが,そんなに深く考えずに気楽に楽しんでくれている層なんです。そういう人達がアレルギーを起こさない程度に,毛色の違う新しいコンテンツを少し足しながら裾野を広げていくといいますか。
4Gamer:
なるほど。まずはその層を大事にしたいと。
脇氏:
今いる方々も大事にしますし,既存のゲームユーザーの方や新たな層も獲得していくというのが理想です。
4Gamer:
最終的にはどういう形が理想だと思ってるんでしょうか。やはり「第三のプラットフォーム」?
脇氏:
そこまで行けたら最高ですね。ただネイティブ市場にぶつかるというよりは,チャネリングの選択肢として共存出来れば良いと思っています。
4Gamer:
HTML5でゲームを作ったら,それを公開する場所が必要ですしね。
脇氏:
いますでにその傾向はありますが,HTML5の技術や開発環境といったところもこれから整備されていくと思っています。そういった部分が底上げされてきたときのために,その“場所”はぜひ準備しておきたいです。
4Gamer:
広告以外のマネタイズはどういう方向で考えてるんでしょう。
脇氏:
おっしゃるとおりまずは広告が外せませんが,新しいマネタイズ手段もこれから増やしていきたいと思っています。
4Gamer:
いま「増やしていきたい」と言ってるということは,すでになんらかアイデアベースのものがある?
脇氏:
ヤフーならではのマネタイズ手段としてサブスクリプションとか。
4Gamer:
あ−,確かにヤフーとサブスクリプションは相性良さそうですね。
脇氏:
どういう形でやるかは今後のさらなる検討が必要ですが,ヤフーにはプレミアム会員という仕組みもありますし,色々検討していきたいと思っています。
4Gamer:
このあと,各デベロッパさんとこの件について話をしていくわけですよね。
脇氏:
そうですね。
4Gamer:
個人制作の作品は置くんですか?
脇氏:
今の時点では,ないですね。
4Gamer:
ということは,将来的にはアリ?
脇氏:
検討したいとは思っています。
4Gamer:
なるほど。つまりプロフェッショナルが作った作品が置かれるわけで,ということは,かなりキチンとしたマネタイズがないと「どちらも美味しくない」という状況になっちゃいますよね。なので先ほどの質問なのでした。
脇氏:
ええ,そこは我々も真剣に考えています。
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