レビュー
「ザナドゥ」30周年記念。PCゲーム史上に燦然と輝く金字塔の歴史を振り返ろう
と書いてはみたものの,30年という月日は長い。若い読者なら「名前しか聞いたことがない」という人も多いだろう。また,ザナドゥはほかに類をみないタイプのゲームであるため,そのシステムを継承,あるいは模倣した作品がなく,「○○のルーツ」「ザナドゥ系ゲームの元祖」といった語られ方をされる機会すらほとんどない。そこで今回は,往年のファンに懐かしんでもらうのはもちろん,その後の世代の人達にザナドゥという作品を知ってもらえるよう,この歴史的な名作を振り返ってみたい。
ザナドゥの時代
(日本ゲーム産業の源流としての国産PCゲーム)
現在の日本ゲーム産業には,大きく分けて2つのルーツがある。ひとつは「アーケード系」で,メーカーとしてはナムコ,セガ,コナミ,カプコンなどが,当時このフィールドを中心に活動していた。もうひとつのルーツとなるのが「国産PC系」だ。主にこちらで展開していたのが,エニックスやスクウェア,光栄といったソフトハウス系のメーカーで,ザナドゥを生み出した日本ファルコムは,その雄と言うべき存在だった(社名はいずれも当時)。
現在の感覚では,「PCゲーム」というとオンラインゲームや海外ゲームというイメージが強いかもしれないが,1980年代のPCゲーム市場には数多くの国内メーカーが並び立ち,成熟期を迎えつつある状況にあった。そして,当時のハードウェア的な環境もあって,アーケード側でアクションやシューティングの名作が生み出されていたのに対し,シミュレーションやRPGといったテキストや数値を扱うジャンルの傑作がPC系メーカーから数多く輩出されていた。今から振り返れば,後に世界に冠たる地位を確立した日本ゲーム産業の,重要な土台が作られた時期だったといえる。
このような,勢いを持った当時のゲーム市場において,ひときわ強い輝きを放ったタイトルがザナドゥであり,その存在感はまさに「別格」だった。
40万本という記録(首位不動のランキング)
ザナドゥを語るとき,必ず引き合いに出されるのが「40万本」というセールス記録だ。この数字自体,当時のPCゲーム市場規模を考えると驚異的なものだが,それを達成する過程が際立って印象的だった。総じてゲームは発売直後に集中的に売れることが多いが,ザナドゥは売り上げトップの座に長期間にわたって居座り続けた結果,異例のレコードを達成しているのだ。
具体的な数字を挙げると,当時のPCゲーム界のメインストリーム雑誌であった「ログイン」と「コンプティーク」で,それぞれ15か月,17か月にわたり1位をキープし続けた※。ロングセラーのソフトであっても,売り上げは徐々に下がっていくのが常だが,1年以上もトップ――もちろん,1位でない期間も売上ランキングの常連であり続けた――というのは,現在との市場状況の違いを考慮してなお,桁外れであり圧倒的だったと言っていい。当時のプレイヤーには,数字を引き合いに出さなくても「絶対首位のザナドゥ」として強く記憶されているだろう。
※雑誌ランキングは「リバイバル ザナドゥ」のパッケージ記載のデータに基づいている
ザナドゥの魅力
(プレイヤーから評価を勝ち得たその内容)
当時,PCゲームというのは世間的にメジャーな存在ではなく,情報の量も,プレイヤーの絶対数も,けっして多くなかったが,それゆえにプレイヤー層はある意味「限られた精鋭」で構成されていた。そのようなプレイヤーから長きにわたり強く支持され続けるというのは容易なことではないのだが,それを達成できたのは,ゲームの完成度が並はずれて高かったからだろう。
では「その内容とは?」「魅力とは?」という話になるのだが,これを端的に説明するのが,実は簡単でない。ものすごくざっくりとザナドゥを紹介すると,サイドビューのフィールド(複数のフロアから成る地下世界)とトップビューの「塔=屋内ダンジョン」とで構成されるアクションRPGで,プレイヤーの目的は最深部にいるキングドラゴンを倒すこと,ということになる。これだけの説明では,それほど特徴のあるゲームだとは思われないだろう。あえて特徴的なポイントを挙げるなら,「ゲーム全体で手に入るリソース(お金や経験値など,冒険に必要な資源)の総量が決まっていて,その使い方が攻略のキモになる」という構造が挙げられるだろう(詳しくは熟練度の項で後述)。ザナドゥというのは,そういうゲームなわけだが,それでザナドゥの魅力のすべてを伝えきれるかと言えば,違う。ザナドゥはこれらすべてが絡み合って重層的な面白さを生み出しており,その魅力をマクロに説明することがなんとも難しいのだ。
そこで,ザナドゥの魅力の中から「現代的な視点で見て特徴的」と思われるものをいくつか紹介してみようと思う。現在のゲームでは廃れてしまった要素も少なくないので,当時のプレイヤーには懐かしく,知らない人には新鮮に感じてもらえるかもしれない。
ザナドゥの基本画面。サイドビュー構成で,マップを自在に移動するには,ジャンプを駆使しなければならず,非戦闘時にもアクション性が求められる |
「塔」の内部はトップビュー構成で,複数の部屋が迷路状に連なっている。扉を開くと「鍵」を1つ消費する。不用意に進んでいくと,探索中に鍵がなくなって閉じ込められることも |
「オープンワールド」的でありつつ独特な自由さ
RPGのよくある売り文句の1つに「自由度が高い」というものがあるが,ザナドゥには独特の「自由さ」がある。ゲーム中の道筋となるストーリーもなければ,俗にいう「フラグ」なんてものもほとんど存在しない。だから,自由に動き回れるだけでなく,経験値の積み重ねさえも無視して,「いきなり最深部の強力な装備を取りに行く」といったアクロバティックなプレイも可能だ。それでいてゲームバランスは「投げっぱなし」ではなく,緻密に計算されている。この「緻密だけど,それを突きぬけることができる工夫の余地」に妙味があり,どんなタイプのプレイヤーでも「自分なりのゲームの組み立て」ができたのだ。
プレイヤーごとの工夫の余地が非常に大きく,アレコレと試行錯誤しながら進めていく過程が楽しい |
フラグと言えそうなのは,伝説の剣「Dragon Slayer」が眠る塔に入るために4つの「Crown=王冠」が必要となることくらい |
武器防具やアイテムの熟練度
ザナドゥが緻密なゲームと感じられる要因の1つに,「熟練度」というパラメータの存在がある。ザナドゥの武器,防具やアイテムには,それらを使いこなすための「熟練度」が設定されていて,使い込めば使い込むほどに威力/効果が増す。使い慣れていない上位の武器よりも,徹底的に使い込んだ下位の武器のほうが強かったりするのだ。つまり,手に入れたばかりの武器防具は「本来の性能」を発揮できていないわけで,装備品が本来の期待性能を発揮するためには「熟練度を上げる」というプロセスが欠かせない。
そして,これがポイントなのだが,ザナドゥでは出現する敵の数に上限があり,熟練度を無限に上げることはできない。だから,無計画に敵をたくさん倒し続けると,強い武器を鍛えることができず,のちのち苦労するなんてことも起きてしまう。武器を「いつ持ち替え」「どう敵を倒すか」さえ問われるゲームというのはなかなかなく,こうした細かなポイントもザナドゥが攻略的と言われる所以だ。
ちなみに,ラスボスを倒すのに有効な最終武器「Dragon Slayer」は,一般モンスター相手には大した威力を発揮しない……というか非常に弱いため,これをどう鍛えるかが,終盤の大きな課題になっている。
熟練度を上げられるアイテム,「Magic Glove」と「Rod」。アイテムを取るとその場で効力が発揮されてしまうので,優れた武器,魔法を手に入れるまで置いておくのも1つの手だった |
鎧や盾といった防具の熟練度もダメージを受けることで上昇する。弱い魔法などをあえて食らうことで,熟練度を上げるというテクニックも必要 |
長旅を生き抜くための「Food=食料」
その昔,多くのRPGがサバイバルの表現としてシステムに組み込んでいたのが,食料を表すパラメータ「Food」だ。RPGで描かれている冒険の旅とは極めて過酷な環境に身を置く行為であり,敵と戦う以前に「自足して生き抜くこと」自体が困難なことなのだ。それらをゲーム内で表現しようとしたとき,「食料の確保」は必然的にクローズアップされるフィーチャーだ。当時流行した「ゲームブック※」でも,食料の確保と消費配分は大きなテーマになっていたし,「テーブルトークRPG」の多くにも食料の要素は設定されている。
ザナドゥにもFoodのパラメータがあって,欠乏すると飢え死にしてしまうため,食糧の確保は重要な課題となる。Foodは,敵を倒して直接獲得できるほか,食料品店でも購入できるのだが,ここでも問題になるのが「敵の数に上限がある」という事実。「敵が有限」=「手に入るGoldが有限」=「Foodも有限」ということになるので,プレイヤーキャラクターが生存できる期間には理論上の上限があるのだ。熟練度と合わせ,ザナドゥにおけるリソース管理の重要性を示した要素といえるだろう。
※読者の選択によってストーリーの展開と結末が変わるように作られた書籍
所持している食料を奪ったり,モンスターそのものを食材にしたりと,Foodはモンスターからも獲得できる |
あまりFoodにばかりお金を費やすと,装備拡充に回す資金が足りなくなる。Goldというリソースの配分も悩ましい |
ゲームへのチャレンジを楽しむスタイル
当時は,クリアすると「終了認定証」なるものを発行してもらえたゲームがかなりあった。よくよく考えてみると現在ではあり得ないような話であり,隔世の感がある。「終了」が「認定」されるということは,裏を返せば「全員がクリアできる」ことなど,まるで前提とはなっていなかったのだ。
RPGに限らず当時のゲームは「基本的にクリアは困難」「クリアできた人は特別」という難度がふつうだった。だから,現在なら「ネタバレ」として忌避されるような謎解きの情報交換は日常茶飯事だったし,知り合いの誰かがゲームをクリアしたら「エンディング見せて」と家に押しかけていくことさえあったほどだ。
ザナドゥも当時のそうした風潮からは外れていない。前述のリソース管理の失敗などによって理論上クリア不能という状態に陥ることは珍しくなく,分厚いマニュアルに掲載されている「初心者へのアドバイス」にも,冒険に失敗してリトライすることを前提にした記述がある。こうした,「クリア」の価値が現在とは大きく違っていた時代感覚があって,ゲームというものがトライ&エラーと試行錯誤の繰り返しによる「チャレンジ」と捉えられていた。こうした当時のトレンドを反映した難度構成もザナドゥの特徴の1つと言えるだろう。
こうなると,貴重なアイテムを消費しない限り脱出は不可能という詰みの一例。この程度のハマりは日常茶飯事 |
LEVEL1でよく見かけるMantleは,無駄遣いすると,あとあと苦労することに。長期的に見て「詰み」となるケースも |
KRM=カルマ
当時のファンがザナドゥについて語るとき,必ずと言っていいほど登場するキーワードが「KRM」だ。これは「カルマ」と読み,人間のいわゆる業(ごう)を表すパラメータだ。プレイ中に「よくないこと」をすると,どんどん累積されていく。具体的には,・Goldがないのにセーブしようとした(セーブにはお金が必要,ビンボー人はセーブもできない!)
・特定の無害な敵を殺めてしまった
のふたつ。曲者なのが後者で,KRM対象のモンスターは「間違って接触した」程度のことで瞬殺できてしまう貧弱な輩ばかり。知っていてもうっかり殺してしまうことがままある。さらに,ここに設計の巧みさと底意地の悪さがにじみ出ているのだが,KRM対象モンスターは塔内の「避けては通れない重要なポイント」に配置されていることが多く,じつにタチが悪い。
KRMが溜まるとどうなるのかといえば,「TEMPLE=寺院」に入れてもらえなくなるという,至極シンプルなペナルティが科される。TEMPLEはレベルアップの場で,つまりは「レベルが上げられなくなる」という実に困った事態に陥ってしまうのだ。いったん溜まったKRMを減らすには,塔内などにある「毒」をあえて飲むことが必要で,これもまた当時のファンの間で必ず話題になるネタの1つ。毒のアイテムを取ると「It's Poison!」のメッセージとともにHPが半減(!)し,KRMがちょっとだけ減少する。通常,毒は探索の障害であり,お目にかかりたくないアイテムの筆頭なのだが,それが特定のシチュエーションでは最も有益なアイテムに変わるという,捻りの利いた構造がじつに巧妙なのだ。ちなみに,あらゆるリソースに上限があるザナドゥでは,当然毒の数さえも限られている。
塔内に配置された「殺すとKRMが増える」モンスター。なんらかの方策を講じるか,はたまた迂回路を探すか |
増えてしまったKRMは,「Potion=毒のアイテム」を取ることで少しだけ減らせる。贖罪の日々は続く |
最終武器が最強でない,最終LEVELが最後でない意外性
ゲームのそこかしこにプレイヤーの予想を外すようなひねりが加えられているのもザナドゥの特徴だ。「毒でKRMが減る」システムもそうだし,熟練度の項で書いたように,最終武器である「Dragon Slayer」が一般の敵に対してまるで強くないというのもその一例(最大ダメージ武器として活躍するのは,並び順で1つ手前の「Vorpal-Weapon」)。また,数字上の最終ステージは「LEVEL10」なのだが,クライマックスの舞台はそこではなかったりする。
こうした意外性はプレイに妙味を加えているのみならず,プレイヤーの想像力を刺激し,会話やモノローグに代表される「テキスト的なストーリー要素」が存在しない本作に,ある種の物語性を与える役割を果たしている。ザナドゥというゲームは,一見すると数字的で無機質なものに見えるかもしれないが,システムに仕込まれた「予想を裏切る仕掛け」を通じて,叙情性がかもし出されているのだ。こうした巧みなデザインにこそ,歴史に名を残す傑作の本質があると思える。
ザナドゥ シナリオII
(システムを煮詰めた高難度シナリオ)
ザナドゥ発売の約1年後,記録的なヒットが続く中で続編が登場した。その名の通り「追加シナリオ」という位置付けで,プレイには前作のディスクが必要だった。内容的には「最初からキャラクターを作成」して,前作以上の規模を誇る新規マップを冒険するという「完全新作」なのだが,特筆すべきは,その難度の高さ。前作をやり込んでいるプレイヤーに向けた,じつに挑戦的なバランスになっている。ちょうど同じ時期にリリースされた「スーパーマリオブラザーズ2」も前作から大幅に難度が上がっていたことで知られ,当時のゲームシーンに「さらなる挑戦」を求める空気があったことが分かる。
ザナドゥ シナリオIIでは,いくつかの新フィーチャーが導入された。主だったところを,いくつか挙げていこう。
・特殊な地形
上に乗るとダメージを受けるトゲトゲの床や,重力に従って滑り落ちてしまう坂など,行動を制限する地形が加わって,マップ構造はさらに複雑化している。地形に阻まれて進むことも戻ることもできなくなるという,いわゆる「詰み」状態になるケースもグッと増えた。
・階層構造の複雑化
前作は,LEVEL1,LEVEL2と階層を順に進んでいく構造であり,階層間をつなぐCAVEも,上下に隣接するLEVELにしかつながっていなかった。しかし本作では,LEVEL1のCAVEをくぐると,いきなりLEVEL4に出るなど,階層のつながりが複雑になっている。しかも,メッセージ欄に移動先のLEVELが表示されないため,現在位置の把握が困難。敵も,必ずしも階層順に強くなっていくわけではないので,やたら強い敵がいる階層に突然と出てしまうといったケースもしばしばあった。
・ショップの個性化
前作では装備のカテゴリごとにショップが分かれており,同一カテゴリの店の品揃えはどこも同じだった。しかし,シナリオIIでは各店舗が「カテゴリの枠を越えて」別個の商品を扱うようになっている。販売価格も買い取り価格も店によって異なるため,「A店で買ってB店で売却することで差益を得る」なんていうことも可能だった。シナリオIIは総じて高難度ではあるのだが,前作では入手方法が限られていたアイテムが店で買えるようになったこともあって,リソース管理に関しては前作より楽になったように感じられた。
・新アイテムの導入
前作から,いくつかのアイテムが追加されている。代表的なのが,壁を作り出す「Silver Rose」や,塔内の壁を溶かす「Acid」,ハシゴを作り出す「Ladder」などだ。これらはいずれも,シナリオII攻略の鍵を握っている。一方で前作のアイテムの一部,たとえば「Ruby」や「Br.Potion」などは廃止され,キーアイテムだった「Mantle」や「Mattock」は機能を制限されることになった。
・LEVELごとに異なるBGM
ザナドゥはBGMが美しいことも特徴のひとつ。前作では,名曲「LA VALSE POUR XANADU」の旋律がゲーム全編を彩っていた。シナリオIIでは各LEVELに異なるBGMが用意されており,LEVELによって雰囲気は別物となっていた
前作では貴重品だったアイテムも売買できるようになり,ゲーム内の物品価値に大きな変動がもたらされた |
乗るとダメージを受ける痛そうな地形。ある意味,シナリオII最大の障害がコレ。ダメージは所持品の量に比例する |
リバイバル ザナドゥ
(原典を損なわない丁寧なリメイク作品)
第1作から10年の時を経てリリースされた,いわゆるリメイクにあたる作品が「リバイバル ザナドゥ」だ。初代ザナドゥを忠実に再現しつつ,当時の主流マシンであった「PC-9801VM以降」の水準に合わせて作り直されている。グラフィックスはオリジナル版よりも高解像度かつ多色な「400ライン16色」にリニューアル。サウンドはステレオ対応を果たし,さらに楽曲も追加されていた。とりわけ楽曲は,シナリオIIのようにLEVELごとに用意されたものに加えて,塔の内部にも専用のBGMが添えられ,非常に多彩になっている。
また,本作にはイージーバージョンが存在する。このバージョンは,べつにモンスターが極度に弱体化しているわけではなく,油断しているとすぐに手痛いダメージを受けてしまうあたりはオリジナル版と変わらない。どのへんが“イージー”なのかというと,新たに「MAP」というコマンドが追加されていて,いつでもマップを参照できるようになったところだ。
ザナドゥはもともとマップ構造が難解な作品であるため,このサポート機能だけでも,ゲームは相当に進めやすくなる。このマップにはレーダー機能もあり,モンスターの所在もリアルタイムで把握可能。塔内でも全体図に加えて,モンスターの所在や鍵のかかった扉などを余さず示してくれるという高性能ぶりだ。
トレーニンググラウンドのCHRのお姉さん。400ライン16色というグラフィックス性能の向上を実感させてくれた |
リバイバルザナドゥ イージーバージョンのマップ機能。赤点で表示されているのがモンスターだ |
リバイバル ザナドゥ2
(「リバイバル」ベースの完全新作)
リバイバル ザナドゥをベースに,マップやモンスターを全面刷新した作品で,当時「完全新作」としてリリースされた。初代ザナドゥのリメイクであるリバイバルの新マップバージョンという,シリーズの派生ツリーの先端に位置する作品だ。
ゲーム内容は初代ザナドゥとシナリオIIの中間のような仕様で,「アイテムの種類」や「ショップが種類別に商品を扱っている」といった点は,初代のスタイルをそのまま踏襲。一方,シナリオIIからは,乗るとダメージを受ける床などといった「特殊な地形」が導入されていて,フィールド探索部分に関しては初代に比べてややハードになっていた。結果としてゲーム全体の難度は,初代より難しくシナリオIIよりマイルドになっている。初代から大きく時を隔てて発売されたため,プレイしていない人も多いと思うが,ザナドゥに慣れたプレイヤーなら「新鮮な気持ちで,ほどよい手応えで」遊べるおススメの一作だ。
「ダメージ地形」「滑り落ちる地形」などが導入され,ほどよく攻略のしがいがある「いい具合の難度」 |
オリジナルのボスキャラのほか,従来の作品で登場したボスも再登場。そのリニューアルされた姿も一見の価値あり |
風の伝説ザナドゥ/風の伝説ザナドゥII
(さまざまなファルコム作品のエッセンスを凝縮)
厳密な意味で初代ザナドゥの系譜に位置付けられるのは,ここまでに挙げた作品となるのだが(他機種版や,コンシューマ機に移植されたバージョンは存在する)最後におまけを。今回の特集では,PCエンジン スーパーCD-ROM2でリリースされた「風の伝説ザナドゥ」2作品についても軽く触れておきたい。風の伝説は本家ザナドゥと同じく「ドラゴンスレイヤー」シリーズのナンバリングタイトルであり,またザナドゥはもちろん,イースやソーサリアンといった往年のファルコム作品と同じ雰囲気を持つ作品でもあるからだ。
風の伝説ザナドゥ(PCエンジン スーパーCD-ROM2) |
風の伝説ザナドゥII(PCエンジン スーパーCD-ROM2) |
風の伝説ザナドゥシリーズは,ストーリー要素が濃いトップビュー型のRPGだ。本家ザナドゥシリーズとは,システムも雰囲気も大きく異なるが,その内容はとても興味深い。フィールドやダンジョンでのアクションバトルは,いわゆる「半キャラずらし」が有効なイーススタイルであり,ストーリー進行のフラグ立てのプロセスは「ソーサリアン」に近く,武器や防具の熟練度はザナドゥと共通しており,主人公が仲間たちに支えられて,聖剣ドラゴンスレイヤーを手に偉業を達成するというストーリー展開は「ドラゴンスレイヤー英雄伝説」を彷彿とさせる。
風の伝説ザナドゥ
ショップにおけるアイテムの売買はルーレット的な方式で,結果によって買取り価格に若干の変動が生じる |
フィールドで敵とぶつかり合うイース風のバトル。武器,防具の熟練度は常時ステータス欄に表示される |
付け加えるなら,各章のボスステージは,横スクロール型のアクションになっており,これは「ワンダラーズ・フロム・イース」を思わせるところがある。約言すると,当時のファルコム作品の要素を詰め込んだ「往年のファルコムの集大成」的なゲームなのだ。PCエンジンのスーパーCD-ROM2でのリリースだったため,PCゲームを中心にプレイしていた人には他の作品にくらべ馴染みが薄いかもしれないが,機会があればぜひ触れてみてほしい。
風の伝説ザナドゥII
ボスステージに入るとサイドビューとなる。スライディングや下突きなど,アクションも多彩 |
いわゆる「フラグ立て」を繰り返すプレイフィールはソーサリアンを彷彿とさせる |
ここまで,さまざまな切り口でザナドゥとその関連作品を振り返ってきたが,少しでも当時の「空気」を感じてもらえたなら幸いだ。1980年代というのは,いくつもの「名作」が生み出された時期で,それらの中には現在もシリーズとして受け継がれ,最新作がリリースされているものも多い。そんな中にあって,冒頭にも書いたように,ザナドゥはフォロワー的な作品も続編もないがゆえに,今なお「オンリーワン」の存在として輝き続けているといえる。
生誕30周年を記念して2015年12月26日にSBクリエイティブからリリースされる「ザナドゥ コンプリートコレクション」には,上述のタイトルがすべて収録されているので,今あらためて,その「オンリーワン」の価値を振り返ってみるのもいいだろう。アレコレと考えながら「自分だけの」プレイスタイルを組み立てていく過程は楽しく、戦略がうまくいったときの喜びは何物にも代えがたい。
30年経っても変わらぬ楽しさ。再プレイで味わいが増していく奥の深さ。ザナドゥは、まさに不朽の名作と呼ぶにふさわしい作品なのだ。
Amazon.co.jpの「ザナドゥ コンプリートコレクション with マップ&データ」予約受付ページ
※予約受付は2015年11月4日まで- 関連タイトル:
ザナドゥ コンプリートコレクション with マップ&データ
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