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「勇者ヤマダくん」には“良い音”を入れることにこだわった。「勇者ヤマダくん公式飲み会 〜音楽のゆうべ〜」をレポート
会場では,本作でディレクターを務めた木村祥朗氏が,同プロデューサーであるDMM.comの岡宮道生氏とともに,サウンドを担当した杉山圭一氏,主題歌「逆行人生」を歌うカオリーニョ藤原さん,そしてヤマダくんのボイス担当であるくんろくさん,女優・タレントの結さんらとトークを繰り広げた。本稿ではイベントの模様をレポートしよう。
会場のロフトプラスワンには多くのファンがつめかけ,ほぼ満員状態に |
イベントでMCを務めたローリング内沢氏 |
ゲームにちなんだスペシャルメニューも提供された |
オリジナルグッズ「アスパラさんTシャツ」や,カオリーニョ藤原さんのCDも販売された |
「勇者ヤマダくん」公式サイト
“良い音”を入れることにこだわった「勇者ヤマダくん」
2回めとなった公式飲み会は,ゲームを彩る音楽やボイスの制作秘話が披露された。
まず木村氏は,「ゲームにおいて音は大事である」という信念から,勇者ヤマダくんでは“良い音”を入れることにこだわったと述べる。
スマホ向けのゲームは,音を聞かずに遊ぶことが珍しくないこともあってか,ダウンロードする容量を削減すべく,音に対する配慮があまりなされないケースがあるそうだ。しかし,勇者ヤマダくんでは,たとえ容量が多くなっても“良い音”を入れていく姿勢を貫いたという。
勇者ヤマダくんでディレクターを務めたOnion Gamesの木村祥朗氏 |
同じくプロデューサーを務めたDMM.comの岡宮道生氏 |
「ドット絵職人」の倉島一幸氏 |
「ダンジョン職人」の池田トム氏 |
背景デザイナーの田崎リョウ氏 |
リードプログラマーの大久保タクマ氏 |
もちろんただボーカルが入っているだけではなく,カッコよすぎず,かつ,笑いを狙っている感じがあからさまでもいけない……というのだから,木村氏の注文の厳しさがうかがえる。いくつも作り直して,自然に笑いを誘う現在のものになったそうだ。
以上のように,ギャグの温度感については,笑えなくても,やり過ぎてもダメという高度なセンスが必要になるのだが,どういった判断を下すかは,協議制ではなく木村氏の感性に一任されていたそうだ。
木村氏は,もの作りのうえで「お互いに遠慮することが一番マズイ」との考えを持っているそうだが,それでも,論理的ではなくセンス的な判断でダメ出しせざるを得ないことについては申し訳なく思っていると語っていた。
そんなやりとりを経て作られた曲の中で,プロデューサーの岡宮氏は,アジャが登場した時にかかるBGMを一番のお気に入りに挙げる。「アジャ来た!」というシャウトが印象的だが,杉山氏によると,ゲームのために収録されたものではなく,「運命的な出会い」から生まれたのだという。
ゲーム開発中に「アジャはインドから来た天才プログラマー」という設定を聞いた杉山氏は,インド映画などで使われるようなフリーの音声素材を集めていたところ,その中に「アジャ来た!」としか聞こえないものを見つけて,即座に採用を決定したそうだ。
もちろん,こんな偶然が何度も続くわけはなく,先に述べたダンジョンスタート時のジングルなど,杉山氏が歌う機会が非常に多くなったそうだ。
ヤマダくんのボイスを演じるのは,役者経験のないサラリーマン
くんろくさんは,杉山氏とは古くからの知り合いである,役者経験のない普通のサラリーマンだ。ヤマダくんのキャスティングが難航して困った杉山氏が,「36歳のサラリーマンっぽくってダメな感じの声の人はいないか」と探したところ,浮上したのが高校で同級生だったくんろくさんだったという。ゲームの主役ともなれば,役者の知名度やマーケティングなど,さまざまな要素を考慮してキャスティングするだろうが,本作においては「ヤマダっぽいか否か」という一点だけが選考の基準になったとのこと。
イメージどおりの声ということでヤマダくん役を射止めた(?)くんろくさん。仕事を終えてから収録に臨み,現場では木村氏や杉山氏の指示をこなす役者魂を見せたそうだ。その姿勢を木村氏は「注文への対応力がすごく,過去に演劇をやっていた人なのではないかと思った」「“ヤマダくんの声を演じる才能”がある人だ」と絶賛していた。
主人公を演じたくんろくさんは,ゲームで自分の声を聞いてみて不思議な気持ちがしたという。知り合いにも勧めてみたところ「お前の声が聞こえてくるところは飛ばしてもいいか?」と,にべもなく言われたそうだ。
木村氏は,楽曲使用の交渉を進める過程を「恋のようなもの」だと表現した。尊敬するカオリーニョさんに嫌われたくないのはもちろん,ゲームに偏見を持っている人もいることから,「どうすれば理解を得られるのか」と悩みながらアプローチしていったというから,いかに木村氏がカオリーニョさんに惚れ込んだかがうかがえるだろう。
会場ではカオリーニョさんと杉山氏がスペシャルユニットを組み,舞台上で「逆行人生」などの曲を披露。サビでは観客も一緒になって歌うなど,アットホームな空間を生み出した。
また今後の展開として,勇者ヤマダくんのサントラCDの企画が進行中であることと,かねてから予告されていた,植松伸夫氏やTHELONIOUS MONKEESの楽曲が使用されたダンジョンの実装が近づいていることが明らかにされた。詳細についてはあらためて発表されるとのことで,続報を待ちたいところだ。
最後に木村氏は,「勇者ヤマダくんは配信して終わりという作品ではありません。皆さんの意見を取りいれて,もっと良いものにしたいと考えていますので,一緒にゲームを遊んでいってほしいです」と,ファン達に熱いメッセージを送り,イベントを締めくくった。
「勇者ヤマダくん」ダウンロードページ
「勇者ヤマダくん」ダウンロードページ
(C)DMM.com POWERCHORD STUDIO / Onion Games
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