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[E3 2015]EAが期待する「Unravel」とは? 開発元のクリエイティブディレクターに話を聞いた
その発表前には,EA Studiosのエグゼクティブバイスプレジテントを務めるPatrick Söderlund(パトリック・ソダールンド)氏が壇上に立ち,次に紹介するタイトルがいかにEAにとって重要かを語るなど,こりゃまたどんな大作が登場するのかしらと思ったのだが,ステージの大型スクリーンに現れたのは,毛糸で作られた小さな赤い生き物だった。
客席で身構えていた筆者は,ちょっと「あらら」となってしまったのだが,続いて本作のクリエイティブディレクターを務めるColdwood InteractiveのMartin Sahlin(マーティン・サーリン)氏が登場して,このUnravelがスウェーデンのスタジオが制作する横スクロールのパズルアクションであることを明らかにしている。
お婆さんの籠から転がり落ちた毛糸玉から生まれた主人公「Yarny」は,やがておっかなびっくり外へ出て,小さな大冒険を繰り広げる。鉢も石ころもYarnyにとっては障害物。赤い糸を放ち,それらを乗り越えて前に進んでいく。そんなゲームだったのだ。
時期は未定ながら,日本でのリリースも同時発表されたこのUnravel。E3 2015の会場において,Sahlin氏に話を聞く機会を得たので,その内容を紹介したい。
「Unravel」はMartin Sahlin氏のパーソナルな作品
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まず,Coldwood Interactiveについて教えてもらえますか。
Martin Sahlin氏(以下,Sahlin氏):
私達のスタジオは,スウェーデンの北のほう,ウメオ(Umeå)という街にあります。街も小さいですが,私達のスタジオも小さくて,14人しかいません。
設立は2013年で,これまでスキーゲームや,格闘ゲームなどを制作してきました。ですが,今回のUnravelはこれまで作ったゲームとは全然違う,初めての,とても「パーソナル」な作品なんです。
Martin Sahlin氏 |
プレスカンファレンスで使われた,Coldwood Interactiveの様子 |
4Gamer:
パーソナルな作品というのは,具体的にどういうことなんですか。
Sahlin氏:
いろいろな意味があります。世界観は,私が生まれ育った場所をモデルにしていまして,きっと多くの人がなかなか見られないような風景がそこにはあります。それを,ゲームをプレイする人達と共有したい。そんな個人的な思い入れのある作品なんです。
Unravelのもともとのテーマは,人と人を結びつけるものを考えることでした。Yarnyがゴールに到達するまで,いろいろな冒険をすることになりますが,彼の投げる赤い糸は,人と人を結びつけるもののメタファーになっています。
4Gamer:
こう言っちゃうのもなんですが,Unravelは,あまりEAらしくないタイトルですよね。なぜ,EAがパブリッシングを担当することになったのか,経緯を教えてください。
Sahlin氏:
実は,EAとは以前,一緒に仕事をしたことがあるのです。「バトルフィールド:バッドカンパニー2」のPC版を手伝ったんですよ。スウェーデン人同士ということで,DICEとはお互いに面識もできたりしまして,そんなある日,Patrick(※前出のPatrick Söderlund氏)から「最近何を作っているのか」と連絡があり,彼にこのゲームを見せたんです。
奇妙なミーティングでしたよ。大作を量産するEAのような会社が,我々の小さなゲームを必要とするわけがないと思っていたので。見せられただけでも嬉しかったんですが,パトリックはこのゲームを本当に気に入ってくれました。これこそ,EAが次に必要するコンテンツだと。そんなわけで,一緒に仕事をすることになったんです。
4Gamer:
それはなんだか面白いですね。ところで,あらためてゲームの説明をしてもらえますか。
Sahlin氏:
はい。Unravelは,サイドスクロールのプラットフォームアクションです。毛糸でできた小さな主人公のYarnyが,毛糸を投げて障害物を乗り越え,ゴールを目指します。
4Gamer:
題材はファンタスティックですけど,グラフィックスはすごくリアルですね。
Sahlin氏:
そう言ってもらえると,嬉しいですね。基本的には2Dのゲームで,奥行きの概念はありませんが,糸の動きなどは物理演算を行っていますし,グラフィックスをリアルにすることで,3Dっぽさを感じてもらえることを狙っています。サイドスクロールながら,サンドボックス的な雰囲気も出せたらとも考えています。
4Gamer:
使用されているのは,やはり「Frostbite」ですか。
Sahlin氏:
いえ,独自のエンジンです。ある会社のゲームエンジンを拡張して,徐々に作り上げていきました。
4Gamer:
14人しかいないのに,オリジナルのエンジンまで作ってしまうんですね。
Sahlin氏:
私達には,いろいろな能力があるんです。まあ,本当のことを言うと,それほど大げさなものではないのですが,エンジンはゲームの心臓なので,大切にしています。
4Gamer:
発売日は今のところ,未発表でしたね。開発の進捗はいかがですか。
Sahlin氏:
ほぼ完成しています。ゲームのプレイフィールはコンシューマ機のそれで,PCゲームとはちょっと違う雰囲気に仕上がると思います。
4Gamer:
話がそれてしまうのですが,スウェーデンには,大きなところから小さなところまで,優れたゲームデベロッパがたくさんあります。これは,どういう理由によるものなんでしょうか。やっぱり,食事のおかげですかね。
Sahlin氏:
興味深い質問ですね。でも,分かりません。DICEのように素晴らしいスタジオが成功を収めると,それを見た人達が「オレもやってみたい」と,みんなが挑戦するようになり,お互いに切磋琢磨しながら雪だるま式に増えていったんじゃないでしょうか。違うかな。
4Gamer:
では,Sahlinさんはどうしてゲーム開発者になろうと思ったんですか。
Sahlin氏:
私は,もともとコンピュータアートに興味があって,MacintoshのMac Paintでずっと絵を描いていました。たぶん,ウメオで使われた最初のMacintoshですね。それはともかく,だから最初は,ゲームを作ろうとはまったく考えていませんでした。
それからアートスクールに行ったんですが,同じ学校に通っていたJacob(ジェイコブ)という友達がゲーム制作の会社を作ったと聞いたので,入れてもらったんです。なぜかというと,ジェイコブはバンドもやっていて,私はそのバンドの大ファンだったからです。
4Gamer:
偶然の産物だったわけですね。そろそろ時間のようですので,最後に読者にメッセージをお願いします。
Sahlin氏:
はい。今までずっと黙っていましたが,ようやくUnravelについてお話しできるようになって,良かったです。私達が作ってきたものを,なるべく早く皆さんにプレイしてもらいたいと思っています。
4Gamer:
本日は,どうもありがとうございました。
「Unravel」公式サイト
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(C)2015 EA International (Studio and Publishing) Ltd.
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