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一度は“底に落ちた”作品がランキングを駆け上がる逆転劇。「クルセイダークエスト」のプロジェクトマネージャーが登壇したセッションをレポート
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印刷2017/04/28 16:53

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一度は“底に落ちた”作品がランキングを駆け上がる逆転劇。「クルセイダークエスト」のプロジェクトマネージャーが登壇したセッションをレポート

 韓国で開催されたイベント「Nexon Developers Conference 17」の最終日(2017年4月27日),「『クルセイダークエスト』ストアチャート好走の振り返り」と題されたセッションが行われた。

 「クルセイダークエスト」iOS / Android)は,一時はサービスの継続が危ぶまれるほど人気が底に落ちたが,2016年度下半期から2017年度上半期にわたって,韓国におけるアプリマーケットでストアチャートを駆け上がる“逆転劇”があったタイトルだ。

 セッションには,Load Completeで本作のプロジェクトマネージャーを担うキム・ボラム氏が登壇。「勝負手を打つときは最大限の効果を出そう」というキーワードを冒頭で提示し,その舞台裏を語った。

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 キム氏いわく,勝負手とはプレイヤーの大規模な流入を期待できるほどの切り札のこと。同社にとってはクルセイダークエストにおける2周年記念イベントや,コラボレーション企画,そして夏休みシーズンに向けた施策などが該当するという。

 しかし,大きな施策の準備となると,それに関わる人的リソースが増えるため,スケジュールを容易に動かせなくなる人が増えていき,リリースする時期を変えることが難しくなる。
 最初に開発チームが決めたのは,いつリリースし,その日までにどのようなものを開発できるのかを,いかにして管理するかということ。そこでは開発目標についての議論も必要になったとキム氏は述べた。

 まずアップデートのタイミングで復帰するプレイヤーも増えるので,サーバーへの負担をどのようにして改善すべきか。また,従来のプレイヤーに引き続き楽しんでもらうために,プレイモチベーションを刺激するべく,口コミで広がるような仕掛けも用意しようという方向で,開発目標を定めたそうだ。

 また,アプリの容量が3GBという点も改善が必要だった。本作はドット絵テイストなので,プレイヤーには容量の少ないカジュアルゲームと捉えられることもある。
 外見はたしかにクラシックな印象だが,実際には3Dのグラフィックスを採用しており,ほかの3D作品と比べても多くの容量を必要とする設計で,ここは弁明の余地がないような状況だったという。

 アプリの容量を減らすために開発チームが取った選択は,これまで使用していたUnity 4からUnity 5へとエンジンをアップグレードさせること。実際に着手する前に前例を調べてみたそうだが,見当たらなかったようだ。他社がやらないのには何か大きな理由があるはずだと不安にもなったが,そうこうしているうちにもどんどんプレイヤーが離脱していく状況で,このままだとサービスの寿命が短くなるだけである。

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 結局のところ,サービスが存続の危機に陥るくらいならアップグレードを実行したほうがよいという結論に至り,Unity 5の導入が決まったとキム氏は話した。

 導入にあたり,ゲームのリソースをまとめ直し,アート担当者たちはフォルダの構造を整理。それに伴いファイル名が変わったため,企画者はデータシートの構造を変更することになった。プログラマー達はコードの修正に時間を費やし,その後は全員でQA(デバッグ)をしたという。ここまでに費やした期間は約3か月だ。そうした経緯でアプリの容量は3GBから1GBまでに縮小できたとのこと。

 改善点はほかにもあったとキム氏は付け加えた。サービスから2年間,定期メンテナンスを告知どおりの時間に終了できないケースが多く,プレイヤーは不満を溜めていたそうだ。このままではプレイヤーからの信頼を失うことになりかねない。

 そこで開発チームは,旧来のサーバーを最適化し,その結果,メンテナンスを延長するケースがほぼなくなったとのこと。また,プレイヤーの不満を解消できただけでなく,社内の各方面における作業スタッフからも定期メンテナンス日の負担が減ったという意見も挙がったそうだ。

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 キム氏は次に,プレイヤー体験のブラッシュアップに手を加えたという。

 ゲームにおけるチュートリアルというものは,アップデートのためのコンテンツ開発に人の手が割かれてしまい,リリース時から変わらないままになりがちになる。クルセイダークエストも同様で,派手さや華麗さが不足しており,強制的にやらされる部分が多く,そこでの離脱者が多かったとキム氏は話した。

 そこでチュートリアルの内容と流れをいちから再構成することになった。伝説の勇者がカットシーンと共にチュートリアルの途中で参入し,シナリオに期待感を高める要素などが盛り込まれ,これまで強制的にやらされる場面をプレイヤーの選択でスキップできるようにしたという。これらの改善によってチュートリアル中の離脱者は大幅に減少したそうだ。

 チュートリアルに手を加えたあとは,プレイ指標の活性化に乗り出したとキム氏は続ける。
 昨年は,クルセイダークエストのアップデート間隔が1〜2か月となっており,これはモバイルゲームとしては間隔が空きすぎていた。そのためプレイヤーは暇を持て余すようになってしまい,アップデートの内容を消化したあとは,次のアップデートまでデイリーのタスクを行うだけの作業を繰り返すだけで,モチベーションを維持できていなかったという。

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 この改善は,開発チームの中から,プレイパターンに変化を与えるようなイベントを計画しようというアイデアが出たことをきっかけに,進むこととなった。その第1弾はいわゆる収集イベントで,やり込むと追加ボーナスの報酬がもらえるという仕組みが採用された。
 プレイパターンはあまり変更せずに,普段なら5回挑戦して「おしまい」となるところを,10〜20回挑戦すると報酬が追加されるという仕組みにしたのだそうだ。

 すると,プレイヤー達はイベントに備えて複数の勇者を育成するようになった。開発チームはここでストーリー性を高めてキャラへの愛着を深くしてもらう必要があると思い至ったという。

 クルセイダークエストは,海外にもファンがいるタイトルだったので,オンライン懇談会なる生放送を実施し,まずは意見の収集に努めたとのこと。

 また,制作中の新コンテンツについて,開発チームがなぜその制作に至ったのかというビハインドストーリーと,制作過程の紹介を事前に周知させることも目的にしていたそうだ。現在までに韓国,台湾,中国で実施されており,中国では同時視聴者数が16万人を超えて驚いたともキム氏は話していた。

 そのほかにも開発者レターを定期的に公開したり,媒体にインタビューを載せてもらう機会を増やしたりした結果,プレイヤーにアップデートまでの期間を楽しみにしてもらえるようになったとのこと。
 今では開発者ノートのコメント欄に「アップデートが待ち遠しい」といった書き込みを多く見かけるようになったそうだ。

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 キム氏は次の一手として,クルセイダークエストを遊んでいない人にも目を向ける必要があるとした。サービス開始から2年が経つタイトルなので,タイトルだけは知っているというプレイヤーもたくさんいるはず。リリース直後にプレイしてみたが,好みではないからと離脱した人もいたかもしれない。そういった人々にクルセイダークエストを遊んでもらうための努力をする必要があるとキム氏は説明した。

 しかし,それはクオリティを高めるしか方法がないとも考えており,現在はプレイヤーがより感動できるコンテンツを制作するために,注力しているそうだ。

 キム氏は最後に,マーケティングを大々的に実行したり,大規模アップデートを実施したりと,会社によって勝負手になるタイミングは異なるが,「何をすれば大きな効果があるか」を1つずつ着実にこなしていけば,嬉しい結果が返ってくるはずだと述べて,セッションを締めくくった。

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「クルセイダークエスト」公式サイト

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