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東京レトロゲームショウ2015:第9回 ワールドクラスのヒット作「MYST」とは,どのようなゲームだったのか
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印刷2015/07/09 12:00

連載

東京レトロゲームショウ2015:第9回 ワールドクラスのヒット作「MYST」とは,どのようなゲームだったのか

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今週のテーマ:何をどうしていいやらさっぱり分からない素敵な世界

 常に前を向いて働く忙しい現代人が,ふと立ち止まって昔を振り返る。そんな暮らしの句読点が,この「東京レトロゲームショウ2015」だ。自分で書いててちょっと疑わしいが,おそらくそういう主旨の連載だ。さて今週は,グラフィックスアドベンチャーの金字塔といわれる「MYST」を取り上げてみよう。

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 オリジナル版の「MYST」は,1993年にMacintosh向けにリリースされている。北米でのパブリッシャはBrøderbundで,開発を担当したのは「The Manhole」「Cosmic Osmo」などで,とくにMacユーザーに知られたゲームデベロッパのCyan Worldsだった。

 現在「MYST」シリーズは「Steam」やGOG.comで入手可能だが,売られているのは2000年にリリースされたPC向けのリメイク版「Myst: Masterpiece Edition」で,オリジナル版に比べてグラフィックスやBGM,効果音などが大幅にパワーアップされたバージョンだ。このほか,1997年の続編「Riven: The Sequel to MYST」や,2005年の「Myst V」,完全3Dになった2000年の「realMYST」などが購入できるが,さすがにオリジナルのMacintosh版は見あたらない。

「MYST島」全景
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 「MYST」は発売と同時に欧米を中心に大ヒット作となり,2002年まで「Best-selling PC games」(最も売れたPCゲーム)のタイトルを保持していたという(4Gamer表記では,PCはWindowsマシンのことだが,この場合はMacintoshを含む)。ちなみに2002年に売り上げ本数で「MYST」を抜いたのは,ウィル・ライト氏の「The Sims」(邦題「シムピープル」)だった。

気がつくと,見知らぬ桟橋に立っている
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 Cyan Worldsの創設者の1人,Robyn Miller氏の話によれば,「MYST」はもともと「インタラクティブな本を作りたい」という企画でスタートしたという。開発には,同社の「The Manhole」と同様「HyperCard」が使われた。
落ちている手紙を読む。全体的に英文テキストは多めだ
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 QuickDrawの開発で知られるアップルフェローのビル・アトキンソン氏が1987年に制作した「HyperCard」は,テキストやグラフィックスだけでなく,動画や音声まで置ける仮想的なカードを作成し,カード相互の関係を簡単なプログラムで設定することで,「スタック」と呼ばれるソフトウェアを容易に開発することができた。

 史上初のオーサリングツールといわれている「HyperCard」は,オーサリングツールとして使えるバージョンは有償だったが,スタックを実行するだけの「HyperCard」は無料でMacintoshに添付されていたので,ユーザーなら誰でもプレイできたわけだ。ちなみに筆者も当時「HyperCard」の有償版を購入し,スタック「戦車大図鑑」を作りかけたが,トップページに音楽を付けたあたりで早くも挫折している。

さまざまな謎を秘めた,図書館
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物語の鍵を握る,赤い本と青い本
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 話が脱線したが,ゲームの物語はこんな感じだ。オープニングでプレイヤーは「MYST」と題された謎の本を手にしている。そして,続く場面では,なぜかその本に描かれた「MYST島」にいる自分を発見することになる。探索を進めると,やがて青い本赤い本が見つかるので,それらのページを開くと,青い本にはSirrusが,また赤い本にはAchenarという二人の人物が閉じ込められているのが分かる。彼らの話によれば,欠けたページを見つけることで,彼らは本から出られるという。
 というわけで,プレイヤーの任務は,さらに別の“時代”に行くことのができる4冊の本を見つけ出し,その本とつながる時代へ行って謎を解き,欠けたページを手に入れることだ。イヤだと言っても,ほかにやることはないので仕方ない。果たして,彼らはなぜ本に閉じ込められているのか,というか,人を本に閉じ込めるとはどういう超技術なのか? そして,SirrusとAchenar,さらに本の著者は何者なのか? という感じでゲームが進んでいく。ファンタジーやSFのようだが,ちょっと違う,独自の世界観だ。

美しいが,なんとなく荒涼とした雰囲気のグラフィックス
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 ゲーム画面は2Dなのだが,右を向けば右側の光景が,前へ進めば前方の光景が描かれ,プレイしていると,なんとなく自分が3次元空間にいるような気分になれる。Macintosh向けの定番CGツールだった「StrataVision 3D」で作成されたグラフィックスは,当時としては非常に美しく,QuickTimeを使ったムービーシーンも新鮮だった。
 当時,32回分割払いでMacintosh IIsiを購入した筆者は,プレイのためにさらにCD-ROMドライブに投資せざるを得なかったが,「すごい。これこそマルチメディアだ」と思ったことを記憶している。もっとも,いまだに,マルチメディアという言葉の意味がよく分からないけど。

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島には,さまざまな施設やオブジェクトがあり,無言で「謎を解くんだ!」と迫ってくる。ああ,こんがらがる
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 とはいえ,クリアしたか? と聞かれると,伏せ目がちにならざるを得ない。上記のMiller氏はGDC 2013のレクチャーで,「わざとらしくないパズル」を開発指針の1つとして挙げていたが,パズルの難度は割と,というかかなり高く,よほどの記憶力の持ち主でない限り,見たものや聞いたことをメモしておく必要がある。最近のタイトルに比べればやはりいろいろ不親切で,ゲーム世界にポンと投げ出されたような気分になる。
 攻略サイトどころかインターネットもなく,攻略本もない,という状況だったので,クリアするには,「このゲームを解いてやる」というモチベーションが必要だったのだ。しかし,今は違う。しようと思えばカンニングもできるので,一世を風靡したこの世界的タイトルに興味があるという人は,ぜひ筆者と共にチャレンジして,一風変わった世界観を思う存分堪能してほしい。このページに掲載したスクリーンショットが冒頭部分しかないことなんか,気にしてはいけないのだ。……うう,進まない。

本文では,2Dもなかなかいい,と書いたが,やはり3Dのほうがいろいろと便利。忙しい現代人には,完全3D空間になった「realMYST: Masterpiece Edition」もオススメしたい。内容はほぼ同一だ
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Steam「Myst: Masterpiece Edition」紹介ページ

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