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東京レトロゲームショウ2015:第8回 30年続いたシリーズのルーツを探るべく「SUPER大戦略」を遊んでみよう
ゲーマーなら,誰しもその名前を聞いたことがあるはずの「大戦略」シリーズ。調べてみると,第1弾となる「現代大戦略」が発売されたのは1985年のことで,つまり,今年で生誕30年を迎えることになるわけだ。まさに,日本有数のご長寿シリーズといっても過言ではないだろう。というわけで,今週の「東京レトロゲームショウ2015」は,そんな「大戦略」をピックアップしてみたい。余談ながら,初代「現代大戦略」が発売されたとき,まだ生まれていないという読者も少なくないと思うが,筆者はすでにいい大人だった。そのときはまだ独身だったが,今も独身だ。
プロジェクトEGG「SUPER大戦略」紹介ページ
初代「現代大戦略」は,当時ポピュラーだったNECのパソコン,PC-9801シリーズ向けにリリースされた。64種類の兵器は生産国別になっておらず,それらが64×64ヘックスのマップで戦うというものだった。マップによっては最大4か国が対戦できたというが,伝聞調なのは,実はアタシ,実際のゲーム画面は残念ながら見たことがないからだ。理由はあとで述べる。
ちなみに「現代大戦略」を開発した人はアバロンヒルの戦略ボードゲーム,つまり「ウォーゲーム」のファンだったが,当たり前のことながら,ボードゲームは対戦相手がいないとプレイできない。いつでも遊びたかったために,コンピュータゲームを開発した,という話を覚えている。そのため,初代「大戦略」は,見てくれもシステムもボードゲームそのままで,マス目として「ヘックス」が採用されたのも,ボードゲームを見習ってのことだろう。
そんな「大戦略」シリーズがブレイクしたのは,1987年の「大戦略II」のときで,生産国の概念や海上ユニット,間接攻撃など,そのときに施された数々のパワーアップ要素は,現在まで続いている。
そこから今日までシリーズは続き,さまざまなコンシューマ機にも移植されてきた。それは,タイトルを並べるだけで記事がいっぱいになるほどで,書いているほうは楽だけど,そんなことしたらたぶん偉い人に怒られるというアンバイだ。途中,リアルタイム制が採用されたり,第二次世界大戦がテーマになったり,空軍が主役になったり,さらには萌えキャラが登場したりと,いろいろな試みも行われている。
さて,現在D4エンタープライズが運営している「プロジェクトEGG」では,「大戦略」シリーズのうち,1986年の「大戦略88」や,1991年のX68000版「キャンペーン版大戦略II」など,いろんな作品がプレイできるが,今回遊んでみたのは,1988年にPC-8801向けにリリースされた「SUPER大戦略」だ。
当時の筆者は8ビット機のPC-8801をボーナスで買ったが,PC-9801は高くて手が出せず,「大戦略」をうらやましく思っていたところ,「大戦略II」をベースにした「SUPER大戦略」がPC-8801向けにリリースされたので,ようやくプレイできたという思い出がある。まあ,それ以前にはもうPC-8801向けの「大戦略88」とかあったのだが,長くなりそうなので略したい。
プレイヤーは,ブルーとかレッドといった好きな勢力を選んで,歩兵とか戦車とかのユニットを生産し,敵の首都を目指して進撃する。生産できるのは,首都と首都から5ヘックス以内の都市だけで,生産には資金が必要だ。そのため,前線が敵の首都に接近するにつれて,新たに生産したユニットの移動距離は長くなり,長期的な戦略眼などが必要になってくる。また,各ユニットには「燃料」の概念があるので,適宜補給しないと,敵ユニットに接近して,さあ戦いだというときに限って燃料切れになったりする。ちなみに筆者は「高価な戦闘機を燃料切れで墜とす男」として,かつての職場では知られた顔であった。照れるなあ。
資金は毎ターンもらえるが,中立,もしくは敵の都市や空港を占領することで,もらえる資金が増えていく。わが占領軍が,さあ,金や物資を出しなさい,さもないと(略)と都市住民に迫っている姿が目に浮かんで微笑ましいが,都市ではユニットの補給も可能になるため,占領行為は非常に重要だ。
占領できるのは歩兵だけだが,歩兵は移動速度が遅いので,トラックや兵員輸送車,輸送ヘリコプターなどに乗せて移動するといった大人のテクニックが要求される。
「SUPER大戦略」の場合,マウスは使用できず,操作はファンクションキーやカーソルキーなどを駆使して行う必要がある。まずそのへんで戸惑ってしまう人もいるかもしれないが,そのもどかしさもまたレトロゲームのたしなみだといえるだろう。コンピュータ史上,マウスがいかに重要な発明であるか分かってしまうのも,レトロゲームの良さなのだ。無理?
敵AIはそれほど強いわけではないので,以上のような手順を繰り返していけば,ほとんどの場合,勝てる。とはいえ筆者は昔,「SUPER大戦略」ではなかったと思うが,負けたことがあり,それをメーカーの人に話したら「まさか!」と非常にびっくりされた経験がある。
という自慢話はともかく,序盤の資金不足をしのいで軌道に乗れば,あとは作業チックに進んでいくだろう。単調といえば単調なのかもしれないが,なんだかやめられないゲーム性を持っているのが不思議だ。戦闘は,ユニット同士が接触したときに発生するが,勝敗には確率の要素も割とあって,高価な虎の子の戦車部隊が歩兵に撃退されてしまったりする。
あるいは,これだけの部隊がいれば大丈夫だろうと考えていたら,意外に消耗してしまい,慌ててユニットを生産したりなど,順調なようで,ときどき「しまった!」ということが起こるので,それが良いスパイスになっているのだと思う。敵の思考中にちょっと原稿を書き,それが終わったら「どれどれ」という感じで戦いを再開するという,ある意味,まったりプレイが可能であり,1試合がそれほど長くないので,何度でもプレイしたくなってくる。
さまざまな要素が増えた現在,ちょっと難しくなってきた感もある「大戦略」シリーズだが,あんまりプレイしたことがないという人は,ぜひ昔の作品に挑戦してそのエッセンスを感じ取ってほしい。
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