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「Bloodstained: Ritual of the Night」プレイレポート。探索とバトルが緊密に絡み合った,王道の面白さがここにある
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印刷2019/06/28 00:00

プレイレポート

「Bloodstained: Ritual of the Night」プレイレポート。探索とバトルが緊密に絡み合った,王道の面白さがここにある

 2019年6月18日に発売された「Bloodstained: Ritual of the Night」のプレイレポートをお届けしよう。本作は,「悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲」をはじめとする探索型アクションゲームで知られる五十嵐孝司氏最新作で,氏が手がけてきた作品を正統進化させた遊び甲斐のあるゲームとなっている。

※日本から購入できるのはPC版。コンシューマ版(PS4/Xbox One/Nintendo Switch)の発売時期は未定。

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「Bloodstained: Ritual of the Night」公式サイト


 思えば長く待ったものだ。「Bloodstained: Ritual of the Night」(以下,Bloodstained)がクラウドファンディングサイトのKickstarterで出資を募ったのが2015年だった(関連記事)。2017年の発売を目指して開発が進められたものの,開発体制の変更に伴ってリリースが2018年前半に延期となり(関連記事),PS Vita版の中止,Wii U版がNintendo Switch版に変更されるなどの紆余曲折を経て,ついに発売に至ったというわけだ。

 本作を手がける五十嵐氏は,KONAMIで「悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲」「悪魔城ドラキュラ 蒼月の十字架」といった探索型アクションゲームを手がけたクリエイター。“主人公が能力を拡張しながら広大なマップを探索する”というスタイルは多くのプレイヤーから支持され,同ジャンルのハシリである「メトロイド」と,「悪魔城ドラキュラ」の英語題「キャッスルヴァニア」をあわせて「メトロイドヴァニア」というジャンル名が生まれたほどだ。
 氏が手がけるメトロイドヴァニアは,2010年の「悪魔城ドラキュラ ハーモニー オブ ディスペアー」を最後に新作が途絶えており,現行環境への移植も行われていない。つまり「Bloodstained」は,メトロイドヴァニア作りに定評ある五十嵐氏が,9年ぶりに世に出す新作というわけだ。


ボスを倒して探索の範囲を広げる。王道メトロイドヴァニアの面白さ


 「Bloodstained」の舞台は18世紀のイギリスだ。かつて錬金術士に改造され,悪魔の力を使うことができる「シャードリンカー」と呼ばれる特殊な存在となった主人公・ミリアムは,同じくシャードリンカーである親友のジーベルが人類に復讐しようとするのを止めるため,彼が召喚した悪魔の城へ乗り込んでいく。

シャードリンカーは,特別な力を得た代償として悪魔の力に侵食されていくという宿命を背負っている
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全ての悪魔を憎む謎の男・斬月は,悪魔の力を使うミリアムに対し警戒心を露わにする
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ミリアムに味方する教会のシスター・ドミニクは,城の深部で実験器具に興味を示すなど,その振る舞いには怪しいところがある

 メトロイドヴァニアの面白さは探索とキャラクターの成長にあるが,本作ではその両方を楽しむことができる。
 悪魔の城は無数の小部屋に分かれており,その道行きは平坦ではない。いかにも崩れそうな壁を殴って壊したり,開閉する足場をタイミング良くジャンプしたりと,ちょっとした謎を解いて先へ進む場合もある。ステージはかなり広大だが,ゴシックな回廊や,無数の書物が並ぶ図書館,東屋が並ぶ庭園,ステンドグラスの飾られた教会など,バリエーション豊かなロケーションが用意されており,通った道は自動でマッピングされるため地図を埋めていくのが楽しい。“回転する巨大な歯車を飛び渡る中,飛来する魔物の首に悩まされる”という,ファンにはニヤリとさせられるシチュエーションもあり,次はどんな趣向が凝らされているのかと先へ進みたくなる。

普通に移動するより,バックダッシュやジャンプキックを使った方が速く,メトロイドヴァニアファンとしてはニヤリとさせられる
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 本作にはオートセーブが存在しないため,未踏破の領域に踏み込む時はドキドキしてしまう。“体力が残り少ないが,セーブポイントが見つかる可能性にかけて先へ進むべきか,それとも「転移石」で安全な村へ撤退すべきか……”という,冒険のジレンマがスパイスとなってくれる(冒険の途中でセーブする「中断セーブ」機能があるので,中断したいときに活用するといいだろう)。
 城の中には普通の手段では進めないような地形が存在する。ジャンプでは明らかに届かない位置にある足場や,行く手をふさぐ巨大な柱,広がる地下水脈などの先に,豪華な宝箱や体力の上限を上げるアイテムがこれ見よがしに置かれているため,探索の意欲をそそられる。

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 こうした障害を越えるにはいくつかの方法がある。別の部屋を経由するか,ボスや悪魔を倒して「シャード」を手に入れ,特殊能力を身に付けるかだ。
 シャードとは悪魔の力が結晶になったもので,空中を飛び回るボスを倒せば「2段ジャンプ」,光となって高速移動するボスなら「リフレクションレイ」で反射しながら飛び回れるなど,悪魔の能力を身に付けられる。ボスに勝てた快感ばかりか,“やった! この特殊能力があれば,気になっていたあそことこことそこの部屋が抜けられるじゃないか!”とさらに探索意欲がアップする。この解放感はメトロイドヴァニアならではだろう。

光となり,鏡に反射しながら飛び回るボス。この能力があれば,細い穴も抜けられるのでは?
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ステンドグラスが掌の形となって襲いかかってくるボスを倒すと,ボスを召喚して巨大な物体を掴めるようになった
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悪魔を倒し,力や装備を奪って強くなる。モチベーションが喚起されるバトル


 悪魔と戦ってミリアムを成長させていくのも非常に楽しい。経験値でのレベルアップはもちろん,悪魔が落とす装備やシャードを身に付ければミリアムがパワーアップし,新たな技が使えるようになるので,ついついバトルを繰り返したくなる。この辺りはアクションRPG的な面白さだ。

ステージの中には,本作の前日譚「Bloodstained: Curse of the moon」がモチーフになったものも存在
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 本作では防具やアクセサリーといった装備品を身に付けることができ,パラメータの高低が与える影響も大きい。それぞれの装備品が強化するパラメータは異なってるため,全ての項目を満遍なく上げることはできない。要するに“あちらを立てればこちらが立たず”となっているので,自分のスタイルに合った装備品の組み合わせを模索していかなければならないのだ。特に序盤ではパラメータの1ポイントに一喜一憂しつつ装備品を選んでいくことになるのだが,五十嵐氏が手がけてきた作品群を遊んできた人には懐かしい感覚だろう。

 装備品の中には“銃の威力を上げる”,“銃の連射速度を上げる”など,特定カテゴリの武器を強化するものもあり,特化型の構成も可能だ。こうした組み合わせは「ショートカット」に保存可能なので,遠距離では銃特化の構成で撃ちまくり,敵が近づいてきたら接近戦用の装備にするといったように,状況に応じて瞬時に切り替え,バトルを有利に運ぶことができる。

装備の組み合わせは「ショートカット」に保存でき,一瞬で変更が可能
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 また,装備品に応じてミリアムの外見が変化するのに加え,ゲームを進めるとミリアムの髪型やコスチュームの色を変えられるようになるため,ファッション性を重視してトータルコーディネイトするのもいいだろう。特にメガネや仮面といったアイテム類が外見に影響を及ぼすのは嬉しいところだ。
 もちろんパラメータを重視するのもアリだが,不気味な「石仮面」の上に,浮かれた「サンタ帽」を被るような,ミスマッチな組み合わせになりがちだ。カットシーンにも反映されるため,あえてシュールな組み合わせにして,スクリーンショットを撮影しつつ大笑いするのもいいだろう。

ゲームを進めると,とある場所でミリアムの髪型やコスチューム,肌の色を変えられるようになる
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装備の中には,ミリアムの全身が変化するものも。「ショベルアーマーの鎧」は敵であるショベルアーマーと同じ姿になれる
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 武器は「大剣」「剣」「短剣」「刀」「武足」「銃」など数多くのカテゴリが存在。カテゴリごとに攻撃の速度や範囲が異なるのはもちろんのこと,同じカテゴリの武器でも,コマンドで発動する「奥義」の有無や種類が異なるため,自分好みの一振りを探したい。
 例えば,筆者お気に入りの「螺旋剣」は大剣カテゴリに属する武器で,普通の大剣はヒット数が1発のみだが,この剣は多段ヒットの性能を持っている。ゲームが進むと一撃辺りの威力は物足りないが,多段ヒットのそれぞれのタイミングでバックステップによるキャンセルを受け付けるため,ヒットアンドアウェイの戦闘に有用だ。

「アウトサイダーナイト」からは,彼が使うのと同じ「螺旋剣」がドロップする。大剣だが多段ヒットの能力を持つ変わり種だ
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 もちろん,武器によって得意な間合いや速度が異なるので,頭上から攻めてくる敵が多い時は広範囲をカバーできる大剣を,動きが素早い相手には連打できる武足を使うなど,状況に応じて使い分けるのも重要になってくる。
 また,体力が多い敵には,高威力の背面突き「アサシネイト」を使用できる短剣を選んだり,攻撃が単調な敵には,カウンター必殺技「土壇場返し」を持つ刀を選んだりと,武器特有の技を使用するのも大事だ。

「ショベル」は槍カテゴリで,突いて攻撃する。リーチは長いが手元に攻撃判定がない。短剣の奥義「アサシネイト」は背後から敵を攻撃する
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 武器の入手方法は“城の中で「レシピ」を手に入れ,材料を使って「錬成」する”,“お金で買う”などがあるが,運が良ければ強い悪魔からのドロップで良い武器が手に入ることもある。中には“移動しつつ高速で攻撃できる”という,往年のキャッスルヴァニアプレイヤーならニヤリとできる品もあるため,いろいろな悪魔を狩りたくなってくる。

武足(戦闘用ブーツ)の「トイシューズ」は歩き回るとプゥプゥと音がする
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剣「ルァハ・バラル」は移動しつつ高速攻撃可能で,懐かしのアレを彷彿とさせる性能
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 本作の特筆すべき要素として,前述したシャードと呼ばれるMPを消費しての特殊攻撃があるのだが,多数の悪魔にそれぞれシャードが用意されており,飛び道具を発射したり,悪魔を召喚したり,ミリアム自身が悪魔に変身したりと,かなりのバリエーションが存在する。
 触手で攻撃する「ウェパル」を倒せば,ミリアムが触手を操れるようになったり,バニーガール風の「リリム」を倒すと,ミリアム自身がリリムと同じ姿になれたりと,シャードの能力は入手した悪魔に対応しているので,“この敵からはどんな効果のシャードが出るのか”とワクワクしてしまう。

悪魔を倒した際,運が良ければ「シャード」が手に入る。ミリアムがシャードで刺し貫かれる様が痛々しい
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空飛ぶ怪画「ポルターガイスト」を倒して,ミリアムの周囲にポルターガイストが巡るシャード「グレイトフルアシスト」をゲット
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魔法の本「ダンタリオン」のシャードを手に入れると,ダンタリオンが周囲を浮遊し,能力アップのバフをかけてくれる
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「デュラハンマ」からは頭をモーニングスターのようにブン回せるシャードが出現する
バニーガール風の「リリム」を倒してシャードを手に入れれば,ミリアムもバニーガールに変身
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 プレイしていて強く感じたのが,プレイヤーのモチベーションをかき立てる手腕の巧みさだ。広大なマップを歩き回ると,新たな悪魔が出てきてシャードや装備を集めたくなる。手に入れたシャードでさらに先のマップへ進めるようになり,そこには新たな悪魔や地形が存在し,シャードや装備を集めたくなる……という繰り返しで,探索とバトルが緊密に絡み合っている。探索とバトルのそれぞれにやりがいが用意されているので,探索が好きな人も,バトルが好きな人も,どちらも楽しめるだろう。
 ちなみに,本作の難度はそれほど高くなく,ボス戦で詰まったらレベルを上げてのゴリ押しも可能となっている。アクションゲームの猛者や,メトロイドヴァニアが得意な人に向けた作品ではなく,幅広い層のプレイヤーが楽しめるという印象だ。

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 唯一,日本では家庭用ゲーム機版の発売が遅れているのは残念である。携帯機と相性が良い内容だけに,Nintendo Switchで遊びたいと考えている人もいると思うが,現在は海外版パッケージを買うしか術ない。

 本作の探索の楽しさとバトルの面白さを支えるのは,モチベーションを喚起するゲームメカニズムであり,装備品やシャードのバリエーションといった物量である。メトロイドヴァニアの教科書的なゲームとして,今後の同ジャンルに対する水準を引き上げた印象を受ける。アクションや探索が好きな人にはぜひ遊んでほしいと思う。今後はローグライクモードや協力プレイなどの無料アップデートも予定されており,9年間待っただけのことはある作品と言い切れる。



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