レビュー
これぞまさに原点回帰。待望の本格ラリーゲームが登場
DiRT Rally(アーリーアクセス版)
2012年にリリースされた前作「DiRT Showdown」以来,実に3年ぶりの新作となるわけだが,どうやら手軽に遊べるカジュアル向けではなく,ラリーゲームの代名詞といえる「Colin McRae Rally」(Codemastersから1998年発売)を彷彿させる味付けになっているようだ。アーリーアクセス版という形なので,すべての機能が実装されていない状態であることには留意しつつ,そのあたりが実際にどうなっているのかをお伝えしよう。
なお,今後は随時アップデートされていく予定で,具体的なスケジュールとしては,6月に新モード「Rallycross」,8月にマルチプレイ対戦などが発表されている。つい先日,5月中にアップデート予定だった「Pikes Peak」がスケジュールどおりに実装されており,開発は順調に進んでいると考えてよさそうだ。
また,本稿では5月26日付けでリリースされた「Patch V 0.4版」をプレイしている。今後のアップデート次第で,ゲームと記事の内容に異なる部分が出てくる可能性があることはご了承を。
Steam「DiRT Rally」タイトルページ
「DiRT Rally」公式サイト
まずは,現時点で収録されているラリーカーから見ていくと,1960s,1970s,1980s(RWD),GROUP B(4WD),GROUP A,2010s,Pikes Peakといった,年代やカテゴリで分けられた20車種となっている。
■記事掲載時点の収録車種
- MINI Cooper S
- LANCIA Fulvia HF
- FIAT 131 Abarth
- FORD Escort MkII
- LANCIA Stratos
- BMW E30 M3 Evo Rally
- FORD Sierra Cosworth RS500
- MG Metro 6R4
- AUDI Sport quattro Rallye
- FORD RS200
- PEUGEOT 205 T16 Evo 2
- LANCIA DELTA S4
- FORD Escort RS Cosworth
- SUBARU Impreza 1995
- LANCIA Delta HF Integrale
- MINI Countryman Rally Edition
- FORD Fiesta RS Rally
- PEUGEOT 205 T16 Pikes Peak
- AUDI Sport quattro S1 PP
- PEUGEOT 405 T16 Pikes Peak
往年の名車から定番のラリーカーまで有名どころが揃っている印象だが,ここ最近のラリーカーが収録されていないのが少し残念なところだ。とはいえ,このあたりは今後追加されるかもしれないので,先々の楽しみにしたい。
もちろん,ラリーカーごとに駆動方式や車重,馬力,ミッションなどに違いがあり,それぞれ挙動特性が異なっている。セッティングに関しては,ブレーキバランス(Brake Bias),デフギア(Differential),ギア比(Gears),前後のサスペンション,ダンパーの調整が可能だ。スライドバーによって,比較的細かく調整できるので,セッティングマニアな人も満足できるだろう。
ただし,コースに応じたプリセット設定は用意されていない。デフォルトの設定から,自分なりに煮詰めていくしかないので,初心者には辛いかもしれない。
現時点で実装されているラリーの舞台となるロケーションは,有名な開催地であるギリシャ,モナコ,ウェールズの3か所。それぞれに12コースあり,計36コースが用意されている。
乾燥地帯のグラベル(非舗装路)がメインとなるギリシャは,細かい砂地の路面で非常に滑りやすく,乱暴なステアリング操作では簡単に挙動が乱れてしまう。オーバースピードでコーナーに入れば,コース外へと弾き出されることだろう。
ウェールズもグラベルがメインだが,ギリシャとは質が違い,粒が粗い砂利路面でシットリと濡れたグラベルだ。また,森林地帯を走り抜けたり,コース脇に伐採した木材が積まれていたりと,「Colin McRae Rally」を楽しんでいた人ならば,ニンマリできるシチュエーションが待っている。
モナコはターマック(舗装路)がメインであるが,モンテカルロらしいスノーラリーが展開する。ドライ,ウェット,スノー,アイスと刻々と変化する路面に,ドライバーは適宜対応する必要があるのだ。
ラリーコースだけでなく,世界で最も有名なヒルクライムコースであるPikes Peakも収録されている。山頂を目指し,峠道を駆け上るPikes Peakの美しい景色が見事に再現されているのだが,モンスターマシンで走行中に風景を眺めるのは極めて困難なので,リプレイでじっくり眺めてほしいところだ。
Pikes Peakには全長約20kmのフルコースのほか,フルコースを3つに区切ったショートコースが用意されている。一般道なので路面はターマックのみだ。また,コースレイアウトは同じだが,路面の約半分がグラベルになっている「MIXED SURFACE」コースも用意されているので,モンスターマシンでのドリフトだって堪能できる。
なお,コースごとに時間帯や天候の異なるシチュエーションを設定でき,雨や雪が降りしきるような過酷な環境にも挑める。とくにナイトステージは,フロント回りを軽くぶつけただけでライトポッドが割れて視界が狭くなるなど,昼間のレースでは体験できない難しさや楽しさを味わえる。
メインのゲームモード「CAREER」には,各地で開催されるレースを転戦しながらチャンピオンシップを戦っていく「CHAMPIONSHIPS」,チームクルーの雇用などを行う「TEAM MANAGEMENT」,そして世界中のプレイヤーとクリアタイムを競い合う「ONLINE EVENTS」が用意されている。
さらに「CHAMPIONSHIPS」は,レースタイプが異なる「RALLY」と「HILLCLIMB」から選べる。「RALLY」のチャンピオンシップは,使用するラリーカーの年代とカテゴリによってコース数が異なり,たとえば1960sのラリーカーを選ぶと,ウェールズ,ギリシャ,モナコの順にそれぞれ4コースの計12コースで戦うことになる。
実際のラリーと同じく,2コースを走破するとサービスパークでラリーカーを修理することができるが,ダメージが大きければ完全には修復できない。その場合はダメージを負ったまま,次のコースに挑まなければならない。
ただし,「TEAM MANAGEMENT」で優秀なクルーやエンジニアを雇用しておくことで,修理作業の効率を上げられる。つまり,短時間でより多くのダメージを修復できるようになるというわけで,チームマネージメントにまで関与できるというのは新鮮だった。
一方,「HILLCLIMB」のほうは,Pikes Peakのみでチャンピオンシップを戦うことになる。3台のラリーカーが選択可能だが,いずれも暴力的なパワーと独特のエアロパーツを装備したモンスターマシンだ。
さて,肝心のラリーカーの挙動に関してだが,Codemastersの触れ込みどおり,かなりシミュレータ寄りになっている。レース中にも目まぐるしく変わる路面状況に合わせて,挙動をコントロールする必要があるため,ステアリングを真っ直ぐにしたまま走れる場所は無いに等しい。常に小刻みなアクセルワークとステアリングコントロールが求められる。また,コーナーに適切なスピードで進入しているつもりでも,きちんとフロントタイヤに荷重をかけなければ,アンダーステアとなって外側に押し出されてしまうのだ。
ただし,「コテコテのシミュレータ」というほどではなく,ラリーカーをコントロールする楽しさを味わえる絶妙なバランスになっている。分かってもらえる人は限定されると思うが,「Colin McRae Rally」と「Richard Burns Rally」(SCi Gamesから2004年発売。レビュー記事)の中間といったような挙動で,その当時,「Richard Burns Rally」に悪戦苦闘していた筆者としては,本作の挙動特性は非常に気に入っている。
以下に筆者の走りを収録したプレイムービーを掲載しているので,そのあたりの雰囲気が伝われば幸いだ。
ちょっとばかり気になったのは,ターマックのタイヤのグリップ感。まるで路面に吸い付くようにグリップするので,少々違和感を覚えた。とくに,ターマックがメインで峠道を駆け抜ける「HILLCLIMB」では,ラリーカーのコントロールにかなり苦戦したので,このあたりのバランスは今後のアップデートで調整されることを期待したい※。
※6月10日 筆者追記:原稿執筆後の6月3日,「Patch V 04.1版」がリリースされ,ターマックの挙動が大幅に改善された。非常にコントロールしやすくなり,不自然なクイックさは解消されている。とくに「HILLCLIMB」のターマックでは,アンダーステアやオーバーステアにならないギリギリのところを感じながらコーナーを攻められるので,一段と面白くなっている。
また,ラリーカーはレース中に大小さまざまなダメージを受ける。そのボディダメージの再現はもちろんのこと,マシンの挙動などに変化が生じるメカニカルダメージの再現も見事だ。ちょこちょことフロントをぶつけていれば,ラジエーターにダメージが蓄積して水温が上がるため,パワーは落ちていく。激しくタイヤをぶつければ,アライメントがズレて真っ直ぐに走れなくなるといった具合である。
コースアウトしてパンクすることもあるし,タイヤの摩耗に注意しなければ,大きな破裂音と共にタイヤがバーストしてしまうこともある。当然,場合によっては途中リタイヤを余儀なくされるだろう。
前述した「TEAM MANAGEMENT」でチームクルーの充実を図っておかないと,クラッシュ以外の突発的な出来事で順位を落とすことになるという,そんなラリーの醍醐味を存分に味わえるのだ。
なお,近年リリースされたドライブゲームでは,時間を巻き戻してミスをなかったことにできるフラッシュバック機能が当たり前のように搭載されているが,本作にはない。スタートからゴールまで非常に長いコースばかりなので,終盤でクラッシュしてやり直し……という状況は避けたいところだ。
最後に,コントローラについても触れておこう。
今回,筆者は「Xbox 360 コントローラー フォー ウィンドウズ」(ゲームパッド)と「Xbox 360 ワイヤレス レーシング ホイール」(ステアリングコントローラ)でプレイしたのが,その結論としてはゲームパッドでも十分にプレイ可能。ただし,微妙なステアリングやアクセルのコントロールは,アナログスティックやトリガーでは少々難しいシーンがあった。
一方,ステアリングコントローラとの相性は抜群で,ゲームパッドと比べると非常にプレイしやすいうえ,タイムも上がった。あくまでも筆者の感想ではあるが,ステアリングでプレイするほうが面白さは格段にアップするといえる。
ここのところ,めっきり勢いがなかったラリーゲームだが,久しぶりに新作が登場したということで,「DiRT Rally」に注目している人は少なくないはず。ただ,アーリーアクセス版でありながら3480円という価格なので,購入を躊躇しているかもしれない。
しかし,「Colin McRae Rally」シリーズ,「DiRT」シリーズ,そして「Richard Burns Rally」をプレイしたことがある人なら,ぜひ遊ぶべき1本だと強調したい。終始,緊張しながらラリーカーをコントロールし,フィニッシュした瞬間にドッとのしかかってくる心地よい疲労感。これが味わえる新作の登場が嬉しくてたまらない。
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