プレイレポート
磁気の力を使いこなし,巨塔に秘められた謎を解き明かせ。「Teslagrad」のプレイレポートを掲載
本作の特徴は,「磁気」の力にフォーカスしたユニークなギミックの数々。プレイヤーの分身である少年は,磁気を操るさまざまなガジェットを駆使して,巨塔に隠された謎に迫っていく。同じ色同士では反発し,違う色同士では引き寄せ合う赤と青の磁気をうまく利用し,行く手を阻む仕掛けを解いていくのだ。
本稿では,そんなシンプルながら遊び応え抜群な「Teslagrad」の魅力を紹介していこう。
まるで絵本のような世界観
道を切り開くのは「磁気」と「ひらめき」
スチームパンクやヨーロッパ文化をモチーフにしたという,独特の世界観が目を引く本作。注目すべきポイントとして,手描きのグラフィックスから生まれる,絵本のような親しみやすい雰囲気がある。あたたかみのあるアニメーションや美しいBGMも相まって,どこかノスタルジーを刺激してくれるのだ。
さらに,ゲーム中からテキストを排除し,絵と雰囲気のみでプレイヤーに“物語”を感じさせる手法が実に見事。巨塔を登っていく途中で見られる人形劇や,ステージに隠された宗教画のようなイラストから,さまざまな謎が明らかになっていく。
言ってみれば「あえて説明しない」ことでゲームへの没入感を高めることに成功しており,こうして紹介記事による解説を行うことすら“野暮”と思わせてしまうような魅力がある。
ゲームのキモとなるガジェットは,殴った対象に磁気を与える「マグネグローブ」,瞬間移動で特定の障害物を通り抜けられる「ブリンクブーツ」,磁気をまとうことで浮遊したり天井に張り付いたりできる「ポラリティクローク」,離れた場所に電磁波を放てる「テスラスタッフ」の4種類。どれも巨塔の探索を進めていくうちに入手できる。
ブロックをくっつけたり,逆に反発させたりしたい時にはマグネグローブで磁気を与え,道を阻むオブジェクトはブリンクブーツですり抜けるなど,攻略の糸口はガジェットの特性を理解することで掴めるだろう。
しかし,序盤こそ基本的なもので乗りきれるギミックの使用法も,ステージが進むにつれて複雑に。例えばポラリティクロークで張り付けそうな天井が少し離れたところにある場合は,ブリンクブーツで空中を移動してから使用する必要があるなど,複数のガジェットを組み合わせなければ攻略できない場面も出てくる。プレイヤーの応用力と発想力が試されるのだ。
なお,本作にはステージ途中にセーブポイントが存在せず,ゲームオーバーになるとステージのスタート地点からやり直しとなる。試行錯誤を重ねながらギミックの全容を把握していくところなどは,昔ながらの横スクロールアクションを彷彿とさせ,一筋縄ではいかないが,そのぶんクリアできた時の達成感も非常に大きい。リトライにストレスを感じさせない良好なテンポも,特筆すべきポイントだ。
また,巨塔のところどころに,プレイヤーより何倍も大きなボスが待ち構えている。初見では思わずひるんでしまうが,ここでもガジェットの応用が攻略のカギとなる。ステージのギミックも含めて冷静に動きを観察し,倒す方法を模索しよう。
本作をプレイしている中で個人的に最も遊び応えを感じたのがこのボス戦だ。最初はダメージを与える方法を見つけられず,幾度もゲームオーバーを繰り返したが,敵の猛攻をかわしながら,有効なガジェットの使用法をひらめいた瞬間の快感は筆舌に尽くし難い。絶えず変化する状況と,手に汗握るプレッシャーの中で展開されるスリリングなボス戦はプレイヤーにアクションゲームの醍醐味を存分に味わわせてくれるはずだ。
優れたプレイアビリティと個性の両立
磁石に引き寄せられるような面白さ
実際にプレイしてみて,見た目よりもずっと骨太な仕上がりだと感じられた本作。磁気という明確なコンセプトがゲームを引き締めているおかけで,プレイヤーがひらめきという快感を得られる機会が多く,アクションゲームとしての「真っ当な面白さ」を堪能できる作品だ。前述したように,シビアながらもリトライを苦痛と感じさせないプレイアビリティも,ゲームとしての高い完成度に一役買っている。
また,ただ出来の良いアクションゲームでは終わらず,独特のビジュアルによって確固たる個性をも確立しているところも見逃せない。遊びはじめたら最後,プレイヤーの心は磁気を帯びたかのようにグイグイと本作に引き込まれていくことだろう。
余計な気疲れとは無縁な,磁石をオモチャにして遊んでいた子供の頃と同じ感覚でプレイできる「Teslagrad」。蒸気と磁気が彩る不思議な世界,謎に満ちた巨塔へと,足を踏み入れてみてはどうだろうか。
「Teslagrad」公式サイト
(C) 2013 Rain AS. All rights reserved.
(C) 2013 Rain AS. All rights reserved.