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[SPIEL’15]Kickstarterとボードゲームの幸せな関係。日本展開の話題も飛び出した,Kickstarterゲーム部門担当者インタビュー
Kickstarterは,そんなクラウドファンディングの最古参企業であり,また最大手でもあるサービスだ。出資の募集を開始したその日のうちに,目標額である2億5000万円弱を調達した「シェンムーIII」(PC / PS4)のニュースなどで,ほとんどの読者はその名前を聞いたことくらいはあるだろう(関連記事)。
そしてこの流れは,もちろんボードゲーム界にも大きな影響を与えている。SPIEL’14でお披露目されたSandy Petersen(サンディ・ピーターセン)氏の「Cthulhu Wars」はKickstarterを通して実現したタイトルの一つであり,そのほかにも数多くのタイトルがこのサービスを通してこの世に産み落とされてきた。そのKickstarter自らが,今回のSPIEL’15ではブースを構えていたことからも,親和性の高さが見てとれるというものだろう。
今回4Gamerは,そのKickstarterブースにて,ゲーム部門の担当であるというLuke Crane氏に詳しく話を話を聞いてみた。ボードゲーム産業におけるKickstarterの立ち位置や,ボードゲーム関連プロジェクトの特徴,またKickstarterが日本の市場をどう捉えているかについてなども聞いているので,興味のある人はぜひ読み進めてみてほしい。
Kickstarter公式サイト
ボードゲームジャンルのプロジェクト達成率は驚きの90%
4Gamer:
KickstarterがSPIELに出展していると聞いて,お話を聞きにやってきました。今日はボードゲーム関連のプロジェクトについて,Kickstarterがどんな風に考えているのかをうかがえればと思っています。
Crane氏:
(非常に流暢な日本語で)よろしくお願いします。
4Gamer:
あ,あれ? 日本語がすごくお上手ですね。発音も完璧です。
Crane氏:
ありがとうございます。でも,日本語は挨拶くらいしかしゃべれないんです。なのでインタビューは英語でお願いします(笑)。
4Gamer:
分かりました(笑)。ではまず最初に,ボードゲームの分野で,Kickstarterがどのように活用されているのか,現状を教えていただけますか。
Crane氏:
Kickstarterは2009年に始まったサービスですが,ボードゲームでは,その最初期からデザインや出版に活用されてきました。ただ,最初の頃はどちらかというと昔のゲームのリメイク支援だったり,あるいはアウトレット品の販売支援だったりが多かったですね。
4Gamer:
自分も復刻版やリプリント支援のプロジェクトをいろいろ見た覚えがあります。
Crane氏:
ですが,状況は変化してきています。ボードゲームにおいても,より新しいことをやろうとする人達に,Kickstarterを利用してもらえるようになってきました。ゲームという産業において,斬新なアイデアというのは,実際にそのゲームをパブリッシュする側にとって,製品化のリスクが大きすぎることがママあります。
4Gamer:
パブリッシャがリスクを取れないために,製品化されないアイデアが,世の中にはたくさんあるわけですね。
Crane氏:
そうです。そういったアイデアは,結果的にパブリッシャによってせき止められてしまうことが起きてくる。こうした「せき止められたアイデア」を実現するために,Kickstarterが使われるようになってきたんです。ですが,変化はこれだけではありません。
4Gamer:
と,いいますと?
Crane氏:
もともとドイツのボードゲームには,アートワークに優れた作品が数多くありました。ですが,デザイン面を重視したタイトルは,ここ数年で顕著に増えてきていると感じます。ドイツ以外の地域に目を向けても,同じ傾向なのです。
4Gamer:
確かに,おっしゃるとおりです。SPIELの会場を見渡しても,ただアイデアが良いというだけでは,注目を集めるのは難しいと感じます。なにせ,出展されているゲームが多すぎますから。
Crane氏:
そのとおり。こうなってくると,商品価値を保つために,あるいはほかのゲームと差別化するために,デザインに一定以上のコストをかけなくてはなりません。ここSPIELでも,コンポーネントのクオリティは毎年向上し続けていますし,マーカーやフィギュアといった大がかりなガジェットを使うタイトルも増えています。当然,コストは増えるので,そのための予算を調達する場として,Kickstarterが活用されはじめているのです。
4Gamer:
うーん,なるほど。それが良いことかどうかは一概に言えませんが,見た目に楽しい作品が増えてきているのは間違いなさそうです。
ところで,Kickstarterはいわゆるクラウドファンディングのサービスですから,目標金額が達成されれば良いのですが,それに届かないこともありますよね。ボードゲームのジャンルでは,実際のところどの程度のプロジェクトが成功を収めているのでしょうか。
Crane氏:
このジャンルの達成率は非常に高く,90%に達していますね※。
※Kickstarterの平均的な成功率は,2015年の調査で36.77%と言われている。90%は極端に高い数値といえるだろう。
4Gamer:
90%! それはすごいですね。
Crane氏:
ボードゲームの場合,ほかのジャンルと比べて目標となる金額が低めであることが多いことが,高い達成率に影響している面はあると思います。ですが,それでも90%というのは,素晴らしい数字ですね。ただ……一つだけ弱点といいますか,このジャンル特有の傾向も見られます。それは,製品のリリースが遅れがちということです(笑)。もちろん最終的にリリースはされるのですが,期日より遅れるケースが全体の70%を占めています。
4Gamer:
あらら……。これまた高めな数字ですね。
Crane氏:
そうですね(苦笑)。とはいえ,バッカー(投資者)達と緊密に連絡をとりながら継続しているプロジェクトがほとんどですし,我々もそれほど問題視はしていません。Kickstarterは単なる資金集めの場だけではなく,ゲームデザイナーとプレイヤーをつなぐコミュニティという側面も持ちますからね。このジャンルのプロジェクトは,そうした一面の好例といってよいと思います。
日本展開を視野に入れ,動き始めたKickstarter
4Gamer:
Kickstarterは日本でもかなり有名になりましたし,実際に日本から利用している人も少なくはないと思うのですが,実際のところどうなのでしょうか。
日本からのアクセスは,現状でもかなり活発です。バッカーのベスト10を統計で出せば,必ず日本はランクインしてきますから。これを踏まえて,Kickstarterは今後,日本でも展開していくことを考えています。時期については,いまのところハッキリお伝えすることができませんが,そうなれば,サイトの使い勝手などは格段に便利になるはずです。
4Gamer:
おお,それは期待大ですね。
Crane氏:
もちろん「日本での展開」というからには,単なるサイトのローカライズだけには止まらない施策も盛り込むつもりです。市場の調査はすでに始めていて,先日は京都で開催されたBitsummitにも参加しました。日本のインディーズゲームの状況を知るためです。
4Gamer:
日本のインディーズゲームシーンには,どんな印象を持たれましたか?
Crane氏:
何より強く感じたのは,諸外国との「違い」の部分ですね。もちろん地域ごとに特色は出るものなので,単純な良し悪しの話ではありませんが,クラウドファンディングに求められるもの,期待される立ち位置がほかとは異なるように感じました。またクラウドファンディングの周辺に育っている文化にも違いがあるようです。だからこそ,私達はコミュニティと相互に協力し,お互いの見えていない部分を補いあっていかなくてはならないと考えています。
4Gamer:
では,日本のボードゲームについてはどうでしょうか。このSPIEL’15にも,日本から数多くのブースが出展されていますが。
Crane氏:
日本のボードゲームは,とにかく美しいですね! ゲームデザインはもちろんのこと,イラストレーションのクオリティにも特筆すべきものがあります。こんな素晴らしいゲームのデザイナー達とKickstarterを通じて仕事ができると思うと,今から興奮が止まりません(笑)。
4Gamer:
PCゲームの場合,開発さえ終わってしまえばダウンロード販売で低コストの世界展開が可能ですが,ボードゲームの場合はそうもいきません。こうした問題に対して,Kickstarteはなにかサポートを考えているのでしょうか。
Crane氏:
もちろんです。Kickstarterはアフターキャンペーンにも力を入れているので,輸出に関しても相談を受け付けています。ぜひお声掛けいただければと。
4Gamer:
分かりました。最後に日本のゲームファン,またKickstarterのユーザーに向けて,メッセージをいただけますか。
Crane氏:
日本の皆さんには,日頃からKickstarterをご利用・ご注目いただくなかで,多くの支援をいただいています。この場を借りて,ぜひ,日本の皆さんにお礼を言わせてください。(極めて流暢な日本語で)「ありがとうございました!」
4Gamer:
こちらこそ,本日はありがとうございました。
Kickstarter公式サイト
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