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邪神達が大激突で地球がヤバイ。「クトゥルフ神話TRPG」のSandy Petersen氏が手がけるボードゲーム「Cthulhu Wars」プレイレポート
同作は,クトゥルフ神話の邪神達が未来の地球で激突するというボードゲームだ。クトゥルフ,ハスター,シュブ=ニグラス,ニャルラトホテプといったお馴染みの邪神達が,地球の覇権をかけて激突する本作は,クトゥルフ神話ファンにとって,夢のようなゲームといって過言ではない。さらに「クトゥルフ神話TRPG」で知られるSandy Petersen氏がゲームデザインを手がけるとあっては,期待するなというほうが難しい。
というわけで,SPIEL会場で本作を遊んでみたときの模様を,プレイレポートとしてお届けしていこう。
Kickstarter内「Cthulhu Wars」プロジェクトページ
Green Eye Games公式サイト(英語)
クトゥルフ神話の邪神達が大激突
まず,本作の概要を改めて説明するところから始めよう。
多くの読者はご存じだろうが,クトゥルフ神話(Cthulhu Mythos)とは,アメリカのパルプホラー作家,H・P・ラヴクラフトとその友人達によって生み出された架空の神話体系だ。宇宙から飛来した邪神達(Great Old Ones)により,人知れず世界が脅かされているというこの世界観は,ラヴクラフトの没後も多くの作家達に愛され,今なお新たな物語が書き綴られ続けている。
中でもクトゥルフ神話の普及に大きな影響を与えたのが,1983年にChaosiumから発売された「Call of Cthulhu Roleplaying Game」だ。クトゥルフ神話の世界観をベースにしたテーブルトークRPGである同作は,出版社を変えつつも日本語版が販売され続け,現在はエンターブレインより「クトゥルフ神話TRPG」の名前で出版されている。
そして,その「クトゥルフ神話TRPG」のゲームデザインを手がけたSandy Petersen氏がChaosiumを離れ,自らが起こしたGreen Eye Gamesで立ち上げた企画が「Cthulhu Wars」というわけである。Kickstarterで資金募集が行われ,目標4万ドルのところ,140万3981ドルが集まってしまったという逸話を持つタイトルということになる。
さて「Cthulhu Wars」の舞台となるのは,冒頭にも述べたとおり未来の地球。それもクトゥルフらの邪神が復活を遂げ,信徒以外の人類は殲滅された後の世界である。各プレイヤーは4柱の邪神――「Great Cthulhu(偉大なるクトゥルフ)」「Yellow Sign(黄の印 / ハスター)」「Black Goat(黒き山羊 / シュブ=ニグラス)」「Crawling Chaos(這いよる渾沌 / ニャルラトホテプ)」のいずれかとなり,人類が滅んだ地球で最大勢力となることを目的に相争う。
具体的には,勝利点にあたるDoom Pointを集めていくわけだが,そのためにはできるだけ多くの地域を支配下におき,異次元につながるゲートを増やさなくてはならない。そのために,まずは信徒達を各地に赴かせ,ゲートを建設していくことになるのである。
暗躍する「這い寄る混沌」陣営の結末は?
では,実際のゲームの流れを見ていこう。なお,このレポートはあくまでテスト版でのものなので,細かなルールや用語が製品版とは異なる場合がある。その辺りはどうかご了承いただきたい。
プレイヤーには,まずそれぞれ担当する邪神とその眷属(配下),そして信徒を表すフィギュアが配られる。そのほかにゲートマーカーと専用の管理シートなどがあるのだが,中でも重要なのはそれぞれの邪神の特殊能力が書かれた「Faction Sheet」で,これによって勢力ごとの個性が表されている。例えば筆者が担当することになった「這い寄る混沌」だと,戦闘面ではやや劣る半面,信徒や眷属が余分に行動できたり,ほかのプレイヤーを翻弄する陰謀が使えるといった具合だ。この上に,さらに一定条件を満たすと使用できる「Spell book」が配置される。
各勢力は初期状態で1つのエリアを支配下に置いており,その支配地域にはゲート1つと信徒6体が置かれている。なので,まずは信徒を1歩前進させ,支配地域を広げることにしよう。しかし,そうすると早くも赤いフィギュアの「黒き山羊」勢力と隣接してしまうことなる。信徒は戦闘能力のない弱々しい存在なので,このままでは敵の捕虜となりかねない。というわけで,Power Pointを余分に使って,眷属である「Haunting Horror」を召喚することにする。
そうしてターンを進めていくと,黄色いフィギュアの「黄の印」達も我が勢力の近くまで足を伸ばしてきた。どうもこの地球は,4人の邪神にとっては狭すぎるようだ。しかし,あえてこちらから追い払うようなマネはせず,とにかくゲートの建設(必要コスト3点)を急ぐことにする。コストギリギリのところで3つ目のゲートが完成し,これで「Spell book」の第一条件をクリア。特殊能力「Madness」が使えるようになった。戦闘で「Pain」(痛み)を受けたフィギュアを自由に移動させられるという,強力な効果をもったものである。
本作の戦闘は,基本的にダイスで行われる。戦闘に参加する邪神やその眷属達は,それぞれに定められた個数のダイスを振り,ダメージを与え合う。6の目は「Kill」(死亡)で,4と5の目が「Pain」,1〜3は「Miss」という扱いだ。「Kill」が出れば,その数と同じだけの眷属をボードから除外せねばならず,「Pain」が出れば,残った眷属の中からこれを受ける者を選ばなくてはならない。そして「Pain」を受けた眷属は,その戦場からの撤退を余儀なくされる。
このとき,その眷属達の移動先を決めるのは眷属達が所属するプレイヤーだが,特殊能力「Madness」があれば,「Pain」を与えたプレイヤーがその撤退先を指定できるのだ。こうして盤上をコントロールすることできるようになった筆者は,「黄の印」と「偉大なるクトゥルフ」の乱戦に介入しつつ,自分の都合のよい方向へ敵を追い払い,支配地域を広げていくことに成功する。
こうして盤面を制圧するに至った筆者は,邪神達の勢力争いで,ついにトップに立った。ゲームの終了条件であるDoom Point30点まであと少しだ。しかし重要なルールを一つ見落としていた。それが「Elder Sign」である。先にも述べたとおり,ゲームの勝敗は勝利点であるDoom Pointによって決まるのだが,これを手にするにはゲート建設していくほかにも,実は方法がある。余ったPower Pointを「Ritual of Annihilation」(消滅の儀式)につぎ込むことで,Doom Pointを即座に獲得でき,さらに「Elder Sign」まで得られるのだ※。「Elder Sign」のチットには,裏面にゲーム終了後に獲得できるDoom Point(1〜3点)が書かれているので,勝敗はこれをオープンにしてみるまで分からない。
Doom Point30点までいち早く到達した筆者だったが,結局はこの「Elder Sign」分のポイント差で,2位の「偉大なるクトゥルフ」陣営に敗れてしまった。
※「Ritual of Annihilation」にはリスクもあり,性急にDoom Pointを獲得しすぎると,Instant Death(即死=即ゲーム終了)が発生する可能性がある。
総重量5kgの重量級ながらファン垂涎の一作
そんな本作にあえて苦言を呈するとすれば……やはりサイズと重量だろう。巨大なボードに,これまた巨大なフィギュアが展開する様は実に壮観ではあるのだが,総重量が5kgと聞けば,尻込みしてしまう人も少なくないのではないろうか。
Green Eye Gamesでは,現在受注生産(価格は199ドル)を行っており,KickStarterで支援を行った最初のプレイヤー達の手元に届き始めている頃だという。筆者ももちろん購入の手続きを行ったが,12月20日現在,まだ手元に届いていない。年内には届いて欲しいと思いつつ,どこに置いたものやら悩む日々である。ちなみに拡張マップや追加勢力として「Azathoth(アザトース)」「Windwalker(風に乗りて歩む者イタクァ)」「Opener of the Way(ヨグ・ストース)」「Sleeper(ツァトゥグァ)」などが予定されている。
なおSandy Petersen氏によれば,同社では「Cthulhu Wars」に続き,Chaosium時代に手伝っていたファンタジーRPG「Rune Quest」の世界を舞台にしたミニチュアゲーム「Glorantha: the Gods War(仮)」の開発に取りかかっているという。こちらは「Rune Quest」の舞台であるグローランサのうち,ジェナーテラ大陸を舞台とした神々のバトルを描くものとなる予定とのことだ。こちらも楽しみにしておこう。
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