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印刷2018/12/11 17:29

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宮崎県小林市で活動中の「シムシティ課」が意見交換会を開催。「シムシティ ビルドイット」を通じて,若い世代に街作りに関心を持ってもらうプロジェクト

画像集 No.002のサムネイル画像 / 宮崎県小林市で活動中の「シムシティ課」が意見交換会を開催。「シムシティ ビルドイット」を通じて,若い世代に街作りに関心を持ってもらうプロジェクト
 宮崎県小林市は,スマートフォン向けアプリ「シムシティ ビルドイット」iOS / Android)を用いたユニークな取り組みを行っている。小林市の職員らが宮崎県立小林秀峰高等学校の有志とともに「シムシティ課」を設立し,若い世代の在住者に街作りを親しみやすい形で考えてもらうべく,定期的にワークショップを開催しているのだ(※関連記事その1その2)。

 シムシティ課は設立から約3か月が経過しており,本プロジェクトに関する意見交換会が,東京都内にある三菱地所の本社で本日(12月11日)開催された。要するに,シムシティ課がバーチャルで考え続けてきた街作りに対し,大手不動産会社である三菱地所,すなわちリアルの街作りのプロからアドバイスを受けるという試みである。意見交換会の模様を本稿でレポートしよう。

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 宮崎県の南西部にある小林市は,四方を山に囲まれた自然豊かな場所である。“蛇口をひねるとミネラルウォーターが出てくる”と言われるほどの名水の地でもあるそうだ。
 その一方で,ほかの地方都市と同様に“過疎化”という大きな課題を抱えている。しかも大学などがなく,高校を卒業した若者の多くが市から離れているそうだ。そのため小林市は,成人を迎える前の高校生に,自分たちが住まう街の未来や,街作りに興味を持ってほしいと最初に考えたという。

 しかしながら,従来の街作りは書類上で行われることが多く,実際に住まう人達にとってはなかなかイメージしにくい。そういったなか,街作りをゲームとして楽しめる「シムシティ」シリーズは,うってつけの題材というわけだ。また,高校生もみんな持っているスマホで遊べるという点も含め,シムシティ ビルドイットに白羽の矢が立てられたようだ。

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 このシムシティ課には,小林市の宮原義久市長と小林市役所の職員,そして小林秀峰高校の生徒31名が参加している。メンバー間には,リアルの小林市の地形を模したマップデータがゲーム内で共有され,これをベースに,住みやすい街作りをそれぞれ行っていったという。
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 実際の小林市には性別,年齢,職業などが異なる,さまざまな人たちが暮らしている。ひとくちに「住みやすい街作り」といっても,その条件は大きく異なるだろう。そこでシムシティ課の参加者を8つの班に分け,異なるペルソナ(架空の人物像)を設定し,それぞれの立場で住みやすい街作りを目指したという。

 そして,シムシティ ビルドイットで「バーチャルにおける理想の小林市」を実現したあと,「リアルの小林市」と見比べて,何が足りないのかを考え,今後の課題や対策を考えていったそうだ。

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 今回の意見交換会では,シムシティ課に所属する小林秀峰高校の女子生徒2名が活動報告を行った。2名が所属する班は「海外出身者で,仕事だけでなく気分転換や利便性などを求める」とペルソナを設定し,中国・上海をモデルケースに「都会と田舎が共存する街」をゲーム内の目標として掲げたという。

 実際の街作りとしては,マップの左側を田舎エリア,右側を都会エリアとして設定。田舎エリアでは自然を活かした公園やキャンプ場などを,都会エリアでは高層ビルやランドマークそして娯楽施設を,それぞれ設置していったという。そして両エリアは大きな橋で結ばれ,暮らす人達はその日の気分などに応じて自由に行き来できるという風にしたそうだ。

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田舎エリア
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都会エリア
両エリアは橋で結ばれ,住民が気軽に行き来できるようになっている
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 2人がバーチャルで理想の街作りをひとしきり満喫したあと,リアルの小林市をあらためて見てみると,なかなかに厳しい状況のようだ。高層ビルやランドマークが無いのはともかく,テレビのチャンネル数が少ない,市営バスが2時間に1本しか来ないなど,軽く50個を超える不満点がリストアップされたという。
 気を取り直して本来の目的に立ち返ると,外国人にとっては「市内における各地の説明に,英語表記がなされていないのは不便」と考えたそうだ。そこで,現在在住している外国人にヒアリングを行いながら,外国人向けのガイドマップを作成して,駅や市役所などに設置することを検討しているとのこと。

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 これらの活動に対し,三菱地所の社員からもさまざまな意見が出された。要約すると,田舎の在住者にとっては都会の良さが目に付き,また憧れるかもしれないが,田舎ならではの良さもたくさんあるだろう。そもそも外国人がどういった目的で小林市に訪れるのかを考えると,田舎であることは承知のうえで,そこにある魅力があるはず。
 ヒアリングを行うと,たとえば小林市には見事な桜並木があり,昔は九州全土から観光客が訪れていたという。そのシーズン期にSNSを使ってアピールを行うのは,小林市ならではの活動ではと指摘していた。

 ちなみに三菱地所では,誰がどういう目的で街に住まうことを,想像力を膨らませながらリアルの街作りを行っているという。過疎化が進む田舎では,車を運転できないため買い物が行いにくくなったり,街灯のない夜道を通学しなければならなかったりすることも多く,さまざまな事例を考えながら街作りを行っているそうだ。

意見交換会の会場となった三菱地所の本社は皇居のすぐ近くにある。いかにもシムシティで作られたかのような,整然としたビルが立ち並ぶエリアだ
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 過疎化は多くの地方都市が抱える問題で,ゲームで体験したからといって,いきなり解決というわけにはいかないだろう。しかしながら,自分たちが住まう街の未来や,街作りに興味を持ってもらうためのファーストステップとして,本プロジェクトには一定の成果があったのではと考えさせられた。
 12月14日には小林市で活動報告会が開催される予定で,小林市の宮原義久市長や市職員,そして市民に向けて,シムシティ課の人たちが考えた将来構想がプレゼンされるとのこと。公式サイトでも経過が報告されると思われるので,興味を持った人は随時チェックしてみよう。

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「宮崎県小林市 シムシティ課」公式サイト


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