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Red Bullが先導する格ゲー競技シーンの手応えと展望。「Red Bull Gaming U 2016」後の松井 悠氏に話を聞いてみた
松井氏といえば,2012年にスタートしたRed Bull主催のe-Sportsイベント「Red Bull 5G」に初期から関わり,「Red Bull Gaming U」の立ち上げに携わってきた,同イベントの立役者でもある。
トッププレイヤー同士の競技シーンの盛り上げから,競技人口の引き上げまで幅広く活動する氏に,本イベントの手応えを聞いてみた。
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学生が主役のRed Bull Gaming U
4Gamer:
本日は長時間のイベント,お疲れ様でした。Red Bull Gaming Uは今回で3度目の開催ですが,その開催経緯について改めてお聞かせください。
振り返れば,4年前に開催した第1回は,Xbox 360の「Halo 4」を題材に,電気通信大学のキャンパスをお借りして行ったイベントでした。“Gaming U”の“U”というのは「University(大学)」の意でして,その名のとおりのイベントだったんですね。
4Gamer:
ああ,そうでしたね。
松井氏:
そうなんです(笑)。その2年後,「(合宿形式なら)別に大学でなくても良いのでは」ということになりまして,千葉県にあるオリンピックの強化選手用合宿所で「ぷよぷよテトリス」(PS4 / PS3 / Xbox One / Wii U / PS Vita / 3DS)を使って開催したのが第2回で,今回が3度目になります。
4Gamer:
今回はストVが競技種目として選ばれましたが,その理由は?
松井氏:
2015年にボンちゃん選手がRed Bullアスリートとなり,続いてウメハラ選手も今年になってRed Bullと契約するに至りました。であれば,今年はストVしかないだろう,というのは自然な流れだったんです。そこで,大学対抗戦を主催しているTOPANGAさんと組み,大学生プレイヤーを対象としたイベントにすることが決まりました。
4Gamer:
なるほど。1校あたり3人1チームなのは,TOPANGAの大学対抗戦をベースとしているからなんですね。
松井氏:
そうです。その1校につき,1人講師を付ける形にしたいと考え,さまざまな方にお声がけしました。皆さんCapcom Pro Tourなどで忙しい中,8名ものプロプレイヤーに集まっていただき,大変感謝しています。
4Gamer:
本当に,豪華な講師陣が集まりましたね。
松井氏:
もう,講師陣が決まった段階で「あっ,これは絶対面白いことになる」という確信がありました。初日の講義についても,内容は講師の皆さんにすべてお任せでしたので,チームごとに特色が出たのも面白かったですね。
4Gamer:
まるでどこかの有名予備校や進学校みたいな講義もあったとか。
松井氏:
ホワイトボードに大きく「昇龍拳」と書かれている部屋があったりとかね。なぜか紛れ込んでいた油性マーカーで書かれていたので,後片付けがものすごく大変でしたけど(笑)。
4Gamer:
講義内容も興味深いですが,2日目のトーナメントも,少し変わったレギュレーションが取られていました。
松井氏:
トーナメントは配信がありますから,視聴者としては学生より,プロの試合が見たいというのが本音だと思うんです。しかしGaming Uは学生が主役のイベントですから,プロの試合ばかりになっては前提が崩れてしまいます。
4Gamer:
学生3人+講師1人の4on4で,ポイントが並んだ場合は学生同士の代表戦になる仕組みでした。
松井氏:
ええ,最初は学生が1ポイント,講師が2ポイント持つ形で考えていましたが,講師陣からそれでは意味がないとフィードバックをいただいて。結果的に学生同士で決着が付く形になりました。
4Gamer:
どのチームも真剣に取り組んでいて,負けたチームがすごく悔しそうだったのが印象的です。
松井氏:
そうですね。結果的にすごくいいイベントになったと思っています。
もちろん,今回の形式がパーフェクトというわけではなく,改善できそうな部分はいくつかありました。厳密に言えば公平でない部分もあったかもしれない。ただ,このイベントが生徒と講師の皆さんのコミュニケーションの場であることを考えれば,あまりガチガチに締め付けるようなものにはしたくなかった。結果的に,それが良い方向に働いたと思っています
4Gamer:
トーナメント進行がスームズなのも驚きでした。こうした大会イベントは,時間が押すことこそあれ,早く終わることは普通ないですから。
松井氏:
見ていた方が気付かれたかどうかは分かりませんが,実は2台進行で回していたんですよ。PS4はコントローラの接続時に認証が入る関係上,どうしてもそこで時間をロスしてしまいます。そこで,1試合ごとに台を入替えることで,短縮を図りました。今回は,それがうまくいったのだと思います。
Gaming Uの狙いと,来るRed Bull 5G 2016に向けて
4Gamer:
トーナメント後,参加された学生の皆さんに話を聞いてみたのですが,「今回のために初めて会った人とチームを組んだ」「そもそも格闘ゲームに触れたのが初めて」という人もいて,驚きました。
松井氏:
エントリーを募ったときは,果たして応募があるのか我々も不安でしたが,Twitterなどを駆使してチームメイトを探した人が多かったみたいです。そうしたコミュニケーションもGaming Uの狙いの一つですからね。探せば意外といるものですよ(笑)。
4Gamer:
10〜20年前だと,サークルやバンドメンバー募集のように張り紙をしたり,雑誌に投稿して連絡が来るまでひたすら待ったりしたものですけど(笑)。
松井氏:
中には勝手に張り紙をして,大学の事務課に呼び出されてしまった人もいたみたいです(笑)。
4Gamer:
ああ,“まさに”ですね(苦笑)。学生の皆さんにとっても,プロゲーマーとの交流は得がたい経験だったと思います。
松井氏:
これは格闘ゲームに限ったことではありませんが,最近はプロ選手や賞金制の大会が増えてきたこともあって,e-Sportsの側面が取りざたされる機会が多くなりました。しかし一方では,ゲームセンターで培われてきたような対面でのコミュニケーション――勝ったり負けたりしながら競い合っていくのが,本来の姿だったわけで。ゲームセンターが少なくなりつつある今,そうした機会を少しでも増やしたいというのが,このGamein Uの狙いの一つでもあるんです。
4Gamer:
それでいうと,少しお行儀が良すぎる気もしますね。もちろん良い意味で,ですが(笑)。
松井氏:
灰皿やイスが飛んできたりとかね(笑)。今時の学生さん達はそういう経験はなかなかないかもしれない。いずれにせよ,学生の皆さんも講師陣も笑顔でイベントを終えることができましたし,配信のコメントも好意的で胸をなで下ろしています。
4Gamer:
今後のGaming Uについてですが,これからも定期的に開催されるのでしょうか。
松井氏:
次回についてはまだ何も……本当に毎年毎年,状況に応じて決定しているので,何とも言えないのが正直なところです。何かしら発表ができるまでお楽しみに,という感じですね。
4Gamer:
毎回競技タイトルが変わっていますが,次も違うタイトルに?
松井氏:
それも,まだ分からないですね。ただ過去に参加された皆さんは,自主的に集まって同窓会的な活動をしたり,Gaming Uチームで大会に参加してくれているようなので,手応えは感じています。もちろん改善点もいろいろあるので,次回があるなら活かしていきたいです。
4Gamer:
では可能性としての話ですが,例えば複数タイトルでの実施など,イベントとして規模を大きくするようなことはお考えですか。運転免許の合宿みたいな形式であるとか。
松井氏:
LP10000になるまで帰れません,みたいな? それも面白いですね(笑)。ただ,こうしたイベントはどうしても都市部での開催になってしまうので,もう少し地方の人が参加しやすいイベントにしたいという思いがRed Bullにもあるようです。あくまで展望としてですが,地方や遠隔地で開催できればいいなと。
4Gamer:
ますます楽しみになってきました。
松井氏:
少なくとも,参加した人や配信を見た人が,1人でも多く「Gaming U,楽しかったな。さあ,家帰ってゲームやろう」という気持ちになってもらえるようなイベントにしたいです。
4Gamer:
分かりました。最後にGaming UやRed Bull 5Gを楽しみにしている読者に向けて,メッセージをいただけますか。
松井氏:
今年でRed Bull 5Gは5度目の開催になりますが,いよいよ日本を飛び出し,イギリスでも開催することになりました。こうした世界大会で“日本発”というのは前例がないそうで,個人的にも非常に感慨深いものがあります。
4Gamer:
日本のRed Bull 5Gは東西対決ですが,イギリス版ではどうされるのでしょうか。
松井氏:
イギリス版では南北対決ですね。この二分するというのが,地域によっては非常にセンシティブなことになりかねないので,気を使っています(苦笑)。
また日本版の競技タイトルやレギュレーションなども,もうしばらくすれば発表できますので,こちらも楽しみにしていてください。
4Gamer:
期待しています。本日はありがとうございました。
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