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「ストリートファイターV」が目指すのはコミュニティを一つにまとめあげること。Capcom Cup会場で小野Pに話を聞いてみた
現時点で明らかとなっている情報は少ないものの,PlayStation 4とPCのクロスプラットフォーム対戦が謳われており,また公開されたトレイラーでは新システムの存在を匂わせるなど,その詳細が気になっている人は少なくないだろう。
初代「ストリートファイターIV」から7年振りの完全新作となる「ストリートファイターV」で,カプコンは何を目指すのか。「Capcom Cup Finals 2014」が開催された12月のサンフランシスコで,本作のエグゼクティブプロデューサー・小野義徳氏に話を聞いてみた。
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「ストリートファイターV」公式サイト
スペシャルトレイラーに込められた意味
4Gamer:
12月6日のPlayStation Experienceで発表された「ストリートファイターV」(以下,ストV)について聞かせてください。Capcom Cupでも新たなデモが公開されましたが,いずれも大きな反響がありました。
いやあ,日本のPRスタッフがアクセルを踏みすぎてしまって,1日ばかり前倒しで大反響をいただいてしまいました(笑)。
4Gamer:
実は原田さん(バンダイナムコゲームスの原田勝弘プロデューサー)とご一緒させていただく機会があって,そのときこっそり顛末を聞いてしまいました。なんでも,あのときは原田さんから小野さんに連絡があったのだとか。
小野氏:
ああ,これはぜひ書いておいてほしいんですが,あのバカが先に煽るようなツイートをしたから余計広まっちゃったんですよ。こっちの朝4:00に原田くんから電話がかかってきて,「俺ちょっとヤバいことしちゃったかも。あれは今日じゃないよね」って。……今日じゃねえよ!(笑)
4Gamer:
ちゃんと書いておきます(苦笑)。改めて,まずはストVのコンセプトについてお話いただけますか。
小野氏:
開発チームには“リセット”がコンセプトだと伝えています。初代の「ストリートファイターIV」(以下,ストIV)を作るときは,ストIIへの“原点回帰”を目指しましたが,稼働から6年が経ったことで,ストIVシリーズも尖ったゲームになってきました。その尖った部分をリセットしたうえで,これまでのシリーズを遊んでくれていたプレイヤーが再び入ってこられるようなタイトルを目指したいと。
4Gamer:
トレイラーでは,かつてのシリーズにあったシステムを彷彿とさせるシーンがいくつか見られました。ガードクラッシュらしきものだったり,オリジナルコンボの始動演出に見えなくもない動作だったりとか。
小野氏:
現時点では詳しくご説明できませんが,トレイラーを見て皆さんが感じている印象は,僕らが目指そうとしているストVとそれほどズレていないと思いますよ。もっと言うと,皆さんにそうやって妄想してほしいから,ああいうゲームシステムの種を散りばめた映像になっている面もあります。
4Gamer:
それらのシステムは,すでにゲームに組み込まれていると考えていいのですか?
小野氏:
今はまだ,種を撒いている段階というのが正しいかもしれません。開花するかどうかはまだ分からないので,皆さんからのご意見や感想はどしどし受け付けています。公式ブログのコメント欄でもいいし,ほかの場所でも構いません。よく「小野見てるか」って言われますけど,ちゃんと見てますから(笑)。その中から,我々もヒントを拾っていきたいと思っています。
4Gamer:
トッププレイヤーからは,「ガードクラッシュはぜひ入れて欲しい」という意見をよく聞きます。今のシステムだと守りが強すぎて,あまりアクティブには攻められないと感じているようです。
小野氏:
そこは僕らも分かっているつもりで,ストVはもう少し自分から前に出られるゲームになったらいいなと思っているんです。観戦している側としても,もうちょっと攻防に動きのあるほうが,きっと楽しいはずですから。……と,言ってしまうと「じゃあガードクラッシュは入るんだ」って皆さんは思うのでしょうけど(笑)。
4Gamer:
あとトレイラーや今日のデモプレイでは,ステージの壁が壊れるシーンがありましたね。春麗が吹っ飛ばされて,ラーメンの丼を頭に被っていたりとか。
小野氏:
あれは演出です! ということにしておいてください(笑)。
4Gamer:
ではキャラクターについてはどうでしょうか。ストIVでは,最終的に44名ものキャラクターが参戦することになりましたが,ストVもこれを引き継ぐのでしょうか。
小野氏:
これだけキャラクターがいると,もうトッププレイヤーでもそのすべてを把握するなんて無理ですよね。ストVについては,少なくとも最初はもう少し落ち着いた人数にしたいと思っています。先ほども新キャラクターとしてナッシュをお披露目しましたが,実はそれを伝えたかったという意図もあるんです。「ストVはストVであって,“スーパーウルトラ”ストリートファイターIVではない」っていうね(笑)。
4Gamer:
ああ,なるほど……。あれ? じゃあガイルは出ないってことですか?
小野氏:
ガ,ガイルに関しては今言うと……やばい,やばい。4Gamerさんにノセられるところでした。あのトレイラーをじっくり見てほしいのですけど,あれはある種の意思表示として作っています。ゲームシステムしかり,キャラクターしかり,「こういうものを目指していますよ」という方向性をまずはしっかり伝えて,それを見ていただいた上で,その是非を皆さんに判断してもらいたい。
4Gamer:
あのトレイラーには,そんな意味があったんですね。
小野氏:
それはもう,考え抜いて作ったトレイラーですから(笑)。
コミュニティを一つにまとめることを目指す「ストV」
4Gamer:
ではゲームそのものではなく,それをとりまく環境――プラットフォームについて聞かせてください。ストVでは,PS4とPCのクロスプラットフォーム対戦への対応を謳っていますが,現時点での反響はいかがですか。
小野氏:
日本からの反響を見ると,「どんな形でのクロスプラットフォーム対戦になるのか」という中身の部分への関心が高いみたいです。対して北米地域からは「Xbox Oneはどうしたんだ」という声が大きい。そういう反応は僕らも想定していましたが,案の定,発表後はFacebookやTwitterでご批判を受けることになりました。
4Gamer:
PlayStation Experienceで公開されたトレイラーでは,“EXCLUSIVELY ON PS4 AND PC”(PS4/PC独占)とはっきり書かれていました。その狙いはどんなところにあるのでしょうか。
小野氏:
例えば「ウルトラストリートファイターIV」(以下,ウルIV)だと,現状はアーケード,PS3,Xbox 360,そしてPCで遊べるわけですが,コミュニティがそれぞれのハードで分かれてしまっていますよね。これが問題なんです。これは(バンダイナムコゲームスの)原田君ともよく話すのですが,今日のような大会を開くときに,これは大きなデメリットとなります。
4Gamer:
良く分かるお話です。格闘ゲームは対戦相手が多いということ自体が,大きな魅力の一つとなりえますからね。
小野氏:
ええ。だからストVでは,これら分断されてしまっているコミュニティを“1つにしたい”という想いがあります。そんな中で,ソニー・コンピュータエンタテインメント(以下,SCE)さんが「コンソールとPCのクロスプラットフォーム対戦に対応でき,協力もできる」と,いち早く答えをくれた。それがこの選択の理由なんです。
4Gamer:
では,ストVでアーケード版が出ることはないのでしょうか。
小野氏:
僕らは決してアーケードを無視したいわけではありませんし,Microsoftさんが非協力的だったというわけでもありません。ただ,何度も繰り返すようですが,今はコミュニティを一つにしていくという課題を優先したいと考えています。
4Gamer:
「鉄拳7」で実現しつつある,店舗間ネットワーク対戦にも通じるお話ですね。
小野氏:
「鉄拳7」は僕も触らせてもらいましたが,あれはうまくやったなって思っているんです。単に技術的な部分だけでなく,ゲームデザインレベルでの工夫もあって。これが受け入れられるなら,我々もいつかやってみたいと思っています。
4Gamer:
クロスプラットフォームでコミュニティを一つにしようとするストVと,店舗間対戦でアーケードをつなげようとする「鉄拳7」。ある意味,目指しているのは同じ場所なのかもしれませんね。
小野氏:
ええ。入口や手段が違うだけで,ゴールは同じだと思っています。いまある対戦環境が格闘ゲームにとって理想なのかというと,僕はまだまだ足りてない部分があると思っていて。ストリートファイターと鉄拳,どちらが先に21世紀に相応しい対戦ツールとなるのか,ライバルとして競い合っているんです。お互いに,良いところはパクりあいつつね(笑)。
4Gamer:
では,日本のプレイヤーが気にしている「どんな形で」という部分についてはいかがですか。日本のプレイヤーが心配しているのは,恐らくPC版に多いだろう,不正行為をはたらくプレイヤーの存在だと思うのですが。
小野氏:
おっしゃるとおりで,それらについては僕らもしっかり取り締まりをしていかなくてはならないと思っています。
4Gamer:
PC版があると,ハックされて内部データが簡単に見られてしまうという問題もありますね。フレームや当り判定といったデータが早いタイミングで明らかになると,ゲームの寿命が短くなってしまう可能性もある。
小野氏:
それは確かにあります。ただ僕としては,そういったデータは最初から開示していいと思うんですよ。まだ社内でも意見が分かれるところではありますが,細かなデータを活用することで初めて見えてくる世界も実際にあるわけで。それが皆さんの燃料になるんじゃないかと。
4Gamer:
おっしゃる通りです。
小野氏:
例えば,今日ここに集まった人達なんかは,まさにそういった世界――いわばワールドクラスのコミュニティですよね。一方で,高校サッカーだとか,草野球だとか,おじさん達の休日のフットサルだとか,そういった草の根のコミュニティもある。
4Gamer:
プラットフォームごとではなく,レベルごとや地方ごとにあるいろんなコミュティ。それもつなげたいということですか?
小野氏:
そうです。なにも皆がワールドカップを目指さなくてもいい。でも,それらは地続きであるべきだと思うんです。これもまた,コミュニティを一つにするということです。
4Gamer:
競技人口の多さが,その競技のレベルを支えるという面は確かにありますね。それこそ野球やサッカーみたいなスポーツの世界では顕著ですが。
小野氏:
まさにスポーツのようにです。観戦する楽しみがあって,スタイルに応じた遊び場があって,知識が共有・継承されていくということ。その環境を整備することでコミュニティを一つにまとめあげていくのが,ストVの目指すべき一つの目標だと思っています。
2015年のCapcom Pro Tourに向けて
4Gamer:
では,そのワールドクラスのコミュニティについて聞かせてください。先ほどの発表で,2015年もCapcom Tourが開催されることが明らかになりましたね。
小野氏:
ええ。SF25周年大会よりも大規模なものになると思います。格闘ゲームのプロゲーマーもここ数年でずいぶん増えてきました。プロゲーマーの皆さんには格闘ゲームの訴求の一ベクトルを支えていただいていると思っています。そのプロゲーマーの皆さんがよりもっと参加をしたくなる大会にしたかったことと,その大会をサポートすることで,より多くの格闘ゲームプレイヤーや格闘ゲーム視聴者が増えることを期待している現れだと思っていただいていいかと思います。
4Gamer:
それがカプコンが公式世界大会を開く狙いだと。
小野氏:
ストIV以降,カプコンはコミュニティへの歩み寄りをはじめて,格闘ゲームのe-Sports化に取り組んできました。これって,要は将棋やチェスなどと同じなんですよ。世界各地での盛り上がりをメーカーがちゃんとサポートすることで,新しい世代につなげていきたいんです。
4Gamer:
今回のCapcom Cupでも,フランスのValmaster選手やアメリカのNuckleDu選手など,これまであまり名を知られていなかった強豪の活躍を目にすることができました。
小野氏:
日本やアメリカだけなく,大小含めたコミュニティは世界中にあるんです。そういった小規模なコミュニティに対してどうアプローチすれば良いのか,というのが今年のCapcom Cupの一つの目標でした。我々はやはり企業ですから,コストパフォーマンスを考えると,どうしても人の多いところにフォーカスせざるを得ない部分があります。そこで考えたのが,F1のようなポイント制のツアーだったんです。
4Gamer:
ではポイントの付与は,プレイ人口というより,コミュニティ単位で割り振られていたということなのでしょうか。
小野氏:
ええ。これまでは,世界大会へ出場するには,渡航費の問題などもあって,スポンサーがつくような有名プレイヤーでないと難しい側面がありました。でもこの形なら,小さなコミュニティに属する人にもチャンスがあります。1ポイントの重みはどこの大会でも一緒ですから。
4Gamer:
オンラインでもポイントが付与される大会があったというのが新しいと感じました。それによってブラジル代表のChuChu選手が選出されたわけですし,より多くの人に門戸を開くという意味では成功したといっていいと思います。
小野氏:
はい。今回このシステムを運用してみて色々と見えてきたので,来年のCapcom Cup 2015に向けて,より多くの人達がサンフランシスコを目指せる土台作りをしていきたいです。逆に各地のコミュニティには,ポイント制をうまく利用してシーンを盛り上げてくれると嬉しいですね。
4Gamer:
分かりました。そのストVですが,来年のCapcom Cupには間に合うのでしょうか。今のところ公式には発売日未定とのことですが。
小野氏:
全くもって未定です。なにがしかの形でテストもしたいですし,リリースはその後になるんじゃないですかね。
4Gamer:
開発はストIVシリーズと同じく,ディンプスとカプコンが共同で行っているのですよね?
小野氏:
ええ。ただ,PS4での開発なので規模はさらに大きくなっています。人手を確保するために,僕が広告塔になったこともありました。またディンプスさんだけでなく,カプコン社内でも色々なチームから人材を引っ張ってきています。ストIVを作るときは「もう格闘なんてジャンルはやりたくない」みたいな空気がありましたが,今では随分と風向きが変わってきて,色んな人が手伝ってくれています。
4Gamer:
分かりました。続報を楽しみにさせていただきます。では,最後にシリーズファンに向けて何かメッセージをいただけますか。
小野氏:
「ストリートファイターIV」シリーズが立ち上がってから7年目に入り,そろそろ油も出ないんじゃないかというぐらい胡麻をすってきたわけですが,未だに味わい続けてくれる人達がいて,本当に感謝しています。美味しいといっていただける人がいる限り,僕らは続けていくつもりです。
そしてストVでは,もう一度新しい苗と土を入れ,新たな木を育てたいと思っています。皆さんにはぜひその木を育てる水になっていただいて,ストVを大樹に育てていただければと思っています。皆さんぜひ,よろしくお願いします
4Gamer:
本日はありがとうございました。
――2014年12月14日収録
「ストリートファイターV」公式サイト
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(C)CAPCOM U.S.A., INC. 2016 ALL RIGHTS RESERVED.
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