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[E3 2016]Fullbrightの探索アドベンチャー「Tacoma」をチェック。なぜ,宇宙ステーションは無人となったのか?
本作の舞台は,宇宙開拓が可能となった2088年の世界において,地球と月の中継地点として建設された宇宙ステーション「タコマ」である。
ただし,タコマは何らかの理由によって現在は無人となっている。主人公のAmy Ferrier(エイミー・フェリアー)は,タコマに何が起きたのかを知らされることなく,そこに残された人工知能「オーディン」の回収を請け負う。やがてAmyは,装着したAR(拡張現実)デバイスに3D映像として映し出される乗組員達の記録をたどっているうちに,タコマが無人になった理由に興味を持ち,その調査を開始するのだ。
本作は,タコマ内部に重力を発生させるべく,巨大な磁気装置がステーションの周囲を回転しているなど,作り込みの細かさを感じられる作品となっている。また,ARデバイスの設定も凝っており,例えばセキュリティコードの入力には,Amyのジェスチャーをゲーム内ARデバイスで読み取るという形を採用していたりするのだ。
なお,船内のところどころに手書きのポスターやメッセ―ジが飾ってあるが,これは無機質な宇宙船内部に少しでも人間味を与えようという狙いであるらしい。Fullbrightの創設者の1人であり,調査やサウンド周りを担当するKarla Zimonja(カーラ・ジモンジャ)氏によると,実際の国際宇宙ステーション(ISS)内部でも,こうした飾り付けは行っているのだそうだ。
さて,タコマに何らかの事件が発生した当時,ステーション内部にいたクルーは6人。プレイヤーはところどころに残されたメンバーの記録を,ARデバイスによって3D映像として表示することができる。
また,その映像は船内にある別のカメラが録画中という設定にもなっている。そのためプレイヤーは,ある地点で調理しながら世話話をしていた2人の映像を見てから別の部屋に移動し,その部屋でオーディンと会話していた別のクルーの映像を再生したり巻き戻したりして何度も確認しつつ,さまざまな映像の断片からこの船の中で起きた出来事を調べられるのだ。
Fullbrightでゲームデザイナーを務めるSteve Gaynor(スティーブ・ゲイナー)氏の説明によると,映像は細切れになった状態でさまざまな場所に存在し,プレイヤーはそれぞれをじっくりと確認しながら謎を追い求めていくことになるが,ゲームのエンディングではすべてのプレイヤーが一つの結論に達するようにまとめてあるとのことだった。
なお,現地で披露されたライブデモでは,タコマの外部に何らかの事故が発生したことや,酸素は50時間分しか残っていないこと,にも関わらず外部へ救助メッセージは送れないという,6人のクルーにとってまさに踏んだり蹴ったりの大ピンチが訪れたことが判明した。
この後,各クルーがどのような行動を取ったのか,ひょっとしたら自分が回収しに来た人工知能のオーディンが事件に大きく関与しているのではないか……といったさまざまな疑問が,ゲームを進めるにしたがって徐々に解き明かされていくことになるようだ。
Gaynor氏によると,Gone Homeはまったく人との接点がないままに静かに進行してくゲームだったが,Tacomaではそのゲームシステムを人の会話という観点から練り直した“後継作”という位置付けだという。会話シーンを何度も再生し直したりする必要があるため,Gone Homeよりは長い4〜5時間のゲームプレイを想定しているらしい。
2014年12月の制作発表以来,ここしばらくさまざまなゲームイベントに出展しながら開発が進められてきたTacoma。もしオーディンが事件に関わっているとすれば,Amyの身の安全も心配になってくる。こうしたストーリー性の強いアドベンチャーゲームのファンにとっては気になる作品だろう。
今回は多言語に翻訳しやすいプログラムになっているそうで,Fullbrightは日本語などへのローカライズも検討している様子だった。もっとも,英語版の発売は2017年春の予定なので,ローカライズが実現するにしても,まだしばらく待つ必要がありそうだ。