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ハロー!Steam広場 第318回:正直に行くも嘘に塗れるも自分次第な中古車販売シム「Car Trader Simulator」
「すちーむ」ってなぁに?というよい子のみんな集まれー! 「ハロー! Steam広場」は,PCゲームのダウンロード販売サイトSteamで公開されている気になるタイトルを,筆者が独断と偏見でピックアップして紹介する,とっても有意義なコーナーだ。毎週欠かさずチェックすれば,積みゲーを崩すのにあと2回くらいは転生が必要そうな上級Steamerにジョブチェンジできるかも。
ハロー!Steam広場 第318回は,中古車販売店の経営を体験できる「Car Trader Simulator」を紹介しよう。プレイヤーは,合法または非合法な手段で商材となる車を入手し,それを顧客に売ってお金を稼いでいく。まっとうな商売も,適当なアピールで欠陥車を売るのもプレイヤー次第だ。
正直に行くも嘘に塗れるも自分次第な中古車販売シム「Car Trader Simulator」
アーリーアクセスとは,開発途中のゲームを購入して,デバッガー兼プレイヤーとして参加できる,Steamの販売形態の1つだ。今回はポーランドのデベロッパLive Motion Gamesが手掛ける「Car Trader Simulator」を紹介しよう。
本作は,中古車販売店の経営を体験できる,少々変わったシミュレーションゲームだ。といっても,国道沿いで見かけるような在庫が豊富で立派なカーショップを初めから経営できるわけではない。プレイヤーは,幾ばくかの開店資金と賃貸のガレージだけが手元にある駆け出しの社長として,中古自動車ビジネスを切り盛りしていかなければならないのだ。ゲーム開始直後は在庫台数ゼロで,従業員すらいない。最初はまさに“自称CEO”というわけだ。
ゲームの基本的な流れは,車を仕入れる → 回収して整備(しなくてもいい) → 広告などで周知して買い手を探す → 商談でなるべく高く売る,といった形で進む。時間はリアルタイムで進むし,一定時間ごとに物件の賃料と従業員の給料を払う必要があるため,何もしないでいると破産してしまう。というわけでまずは,商材である中古車を入手しなくてはいけない。
最もスタンダードな仕入れ先は,業者向けのオークションだ。一定時間ごとに順次競りがおこなわれ,ライバルより高額を提示できれば落札され,プレイヤーの在庫商品となる。ただし,競りが白熱すれば原価が上がるため,黒字を出すのがは難しくなる。競りの相場はスピードメーターようなゲージでリアルタイムで表示されるので,これを参考にしつつ手を出すかどうかを決めよう。
また,ゲーム内のスマートフォンからは個人売買の自動車をチェックできるので,こちらを定期的に確認するのも有用だ。入手した車は,運転手を雇ってガレージに運ぶことで整備が可能になり,同じく整備士を雇って修理させれば,どこに出しても文句のない“商品”になるというわけだ。なお,この時点で車の塗装も可能で,客のニーズに合わせた色に変更できるようになっているが,もちろん追加の予算が必要となる。
「原価なんぞ知るか! とにかく俺は手っ取り早く稼ぎたいんだ!!」というせっかちなプレイヤー向けには,非合法な手段も用意されている。本作では普通に従業員の一人として「泥棒」を雇うことが可能で(しかも給料制),マップ内をうろつかせるとめぼしい自動車を発見し,盗んできてくれる。
本来は仕入れなければいけない商材がほぼ無料で“拾って”こられるので,利益率は飛躍的に上がるが,もちろん犯罪行為なのでリスクがある。泥棒はマップ内を巡回している警察に捕まれば留置所に入れられてしまうし,保釈金を払わなければいずれ,雇い主から指示されたことを白状してしまう。
本作には「合法性」と「世評(評判)」という2つのパラメータがあり,悪事を実行したときやそれが表沙汰になるほど,これらがみるみる減少していく。広告にお金を出して無理矢理イメージアップすることも可能だが,基本的にはおおっぴらに言えないことを繰り返すほど,人から嫌われる悪徳業者になっていくというわけだ。
さて商品が用意できたら,あとは売るだけだ。スマートフォンを開くと一定数の顧客が並んでおり,こちらから連絡することで商談を開始できる。客にはそれぞれ固有のニーズがあり,それにマッチする車両ほど売れる可能性が高まる。とはいえ条件をすべて満たす必要はなく,ある程度クリアしていれば意外と話が進んだりするので,とりあえず提案は,するだけしてみて損はない。
商談の最中には,エンジンの調子など,客が気になっているポイントを聞いてくることがあるが,実はここで嘘をつくこともできる。要するに故障車の修理代をケチりたいときは,「新車同様」と言いくるめて売りさばくことができる……というわけだ。基本的にその場で嘘が見破られることはないが,あとからクレーム騒ぎになることもあるし,評判にも影響を与えるので,誠実になるかどうかはボス次第となる。とはいえいずれにしても車が売れれば即座に入金され,それを元手にビジネスを続けることはできるわけだ。
運転資金が増えれば車を保管しておけるガレージも増やせるし,より高単価な高級車も扱えるようになっているはずだ。ただ前述したようにすべてはリアルタイムで進んでいるので,人員や施設が増えるほど忙しくなり,細かいところまで手が回らなくなる可能性がある点は注意したい。
本作にはサンドボックスとキャンペーンのモードがあり,プレイ開始時にどちらかを選ぶ仕組みとなっている。前者は基本的にひたすら自動車売買にいそしむモードで,後者のキャンペーンは基本ルールは同じだが,導入部にムービーが表示されたり頻繁にイベントが起こったりとストーリー性が強く,さらに選択によって優良業者を目指すか,悪徳業者に堕ちるかのルート選択があったりするのが特徴だ。
ただし,UIやテキストなど一通り翻訳済みのサンドボックスモードに対して,キャンペーンは会話の大部分がなぜか中国語になっていたり,選択肢が全部空白になっていて何が書いてあるのかすらわからないなど,原稿執筆時点ではローカライズが正常ではなかった。キャンペーンをプレイしたいときは英語設定でプレイした方がいいだろう。
全体としては,地図を上から見下ろすようなメイン画面は少々クラシカルな印象が地味だが,シミュレーションとしては斜め上の窃盗行為をひっくるめて「車を安く買って(もしくは“拾って”)高く売る」という基本部分が面白くて,ついついプレイを続けてしまう魅力がある。現状,ローカライズの質がお世辞にも良好と言えないのは前述のとおりだが,アーリーアクセスゆえと割り切って改善に期待しておきたい。
商材は自動車だが,それ自体の知識は特に必要なく,あまり人を選ばず楽しめるだろう。ゲーム中の随所に出てくる,自分の分身であるうさんくさい中年男性も,慣れてくればなかなか愛嬌があるように見えてくる……かもしれない。中古自動車を売買するというテーマ自体も珍しい一作なので,興味があるならぜひ手に取ってみてほしい。
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